持続可能な業界であるために

 皆さんこんにちは。
 異分野から造園の世界に入ってきての感想は?と問われ、この原稿を書かせていただくこととなりました。私はもともと建築の世界にいたこともあって今回の執筆依頼をいただいたと思いますが、皆さんがどう思われているかは別として、私自身は異分野から参入してきたという認識はあまり持っていません。と申しますのも、建築工事には植栽を含んだ外構工事が付随するのが通常でありまして、造園工事のうち整備工事については建築外構工事とあまり内容が変わらないからです。
 もっとも、いわゆる造園の営みには、建築の仕事とは異なる面が二つあります。
 一つは、あえていうまでもないことですが、造園が主に生きものを対象とするものであって、非常にデリケートな側面を有していることです。施工場所の土壌や気候の影響を直接に受けるわけです。これは、図面上に顕在化されにくい要素でもあります。
 もう一つは、従来から造園が担ってきた分野が、国際的な環境への取組みの流れの中で、以前にも増して重要性を帯びるようになってきていることです。
 1992年にリオ・デ・ジャネイロで「環境と発展に関する国連会議」(UNCED)が開催され、リオ宣言やアジェンダ21、生物多様性条約、気候変動枠組条約などが採択されました。このときキーワードとして用いられたのが、「持続可能な発展」(sustainable development)という概念です。この概念は、2007年に北九州市が策定した北九州環境基本計画においても中核的概念として位置づけられています。
 「持続可能な発展」概念は多義的な概念ですが、ここでは@自然のキャパシティ内での自然の利用、A世代間の衡平という二つの意味を含むものとして捉えたいと思います。今後、造園が担っていくべき自然再生や生物多様性の保全、温室効果ガス吸収源としての緑化推進といった分野は、@Aのいずれにも資するものです。したがって、造園は「持続可能な発展」の実現において重要な役割を担っているというべきです。
 このことは、造園に従事する者がまず認識しなければならないことでして、国際社会の動きに応じ適宜積極的な提言を行っていく必要があります。そんなわけで、造園に係わる仕事に携わるようになって、私も木とか土壌とかについて多少は勉強しようかなーと時折(本心は真剣にですが・・・・)思ったりもしています。
水野 晴之
 <(株)水野文化園>
(11/03/08掲載)
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