自然派志向のすすめ
 造園業に携わっていることもありますが、人は、自然の中に"ある"と思っています。
もちろん、進んだ技術のおかげで、より快適な暮らしができているとも思います。ただし、その結果、より忙しくなっているのも事実ではないでしょうか。
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そんな中で、私が、昨年出会ったお気に入りの家2軒を紹介します。
 まず一つ目は、大分県豊後高田市の住宅。平成22年度のエコハウスモデル事業のひとつとしてIターンの徳永夫妻が手掛けられたものです。この住まいは、自然豊かな田舎で里山の生活するための、自然エネルギーを活用した省エネ型住宅で、地元の建材を活かした瓦葺きの木造平屋建てです。しかも、地域との交流や子供たちが遊びに来たときには泊まれる部屋があり、また夫婦それぞれの趣味を楽しめる場所もあるという、多様なライフスタイルを楽しめる場が用意されています。日本の夏は高温多湿ですが、この住まいには、エアコンなどの機械設備に頼らず夏を過せる仕掛けがしてあります。敷地周辺の風向きを考慮した卓越風を直接取込む開口部を設置し、さらに、風を取り込める袖壁や建物の配置をしています。東側から入った風は室内中を通り抜けて西の窓から出ます。室内の空気はよどむことがなく、いつも新鮮です。また、大きな引込み戸を開放すると、木々の緑を通り抜けた自然いっぱいの風が入ってきます。その風が部屋の温度を下げます。 壁は、土壁造りで、居間には三和土の土間があります。これは調湿機能があるので、さわやかな空気が生まれます。日当りと風通しも良く、周囲の景観にも良くマッチした自然エネルギー活用型省エネ住宅です。
(http://www.env.go.jp/policy/ecohouse/challenge/challenge19.htmlより引用)
この住まいには、"風の動き"を調べ、和室前の池を通過する風によって、夏の涼を取入れるやり方と、一つの薪ストーブの暖を全体にいきわたらせる仕組みがあり、これは私のお気に入りです。
 二つ目は、大分県安心院のいもり谷、榑松さんのストローベイルハウス(ワラ壁)の家。
いもり谷を走っていると意外に目立ちます。東京出身の榑松さんは、「大きな豆の木」という屋号の手作り納豆製造販売を営まれています。
3年前に建てられたこの建物は、骨格と屋根以外は、ほぼ手作りの家。ワラブロックを積んだり、漆喰をぬったりと、施工当時の様子を撮った写真を見せていただきました。自然体で暮らしている榑松さん一家にあこがれを感じます。

*自分で撮った写真が行方不明なので、新建築の雑誌より引用しました。
いずれの取り組みも、自然から多くの事を学びながら、その恵みを生活の場にうまく取り入れたものとして、深い感動を覚えました。
田代 憲司
 <(有)田代造園>
(11/09/17掲載)
 
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