秋植え球根を楽しもう! 〜チューリップ〜
 コートが欲しくなる季節がやってきました。
 暑かった夏が過ぎ、紅葉の秋もこれからが見頃です。そろそろ、夏から頑張った花たちも次の季節へバトンタッチです。冬を越え来年の春まで楽しめる花たちを選んで植替えですね。
 パンジーやビオラはもちろんですが、春の一瞬を楽しむ「球根」に今年はトライしてみませんか。

 「球根」で「何を植える?」と聞かれるとやはり「チューリップ」でしょうか。想像がつく花だからかもしれませんね。
 今回は「チューリップ」を中心にお話をしましょう。
 チューリップ(学名:Tulipa gesneriana)、ユリ科、地中海沿岸が原産地です。
 名前の由来は、学名(トゥーリパ・ゲスネリアーナ)と呼びます。トゥーリパとはトルコでターバンを意味する「ツルバン」から来ています。
 16世紀にトルコ駐在のローマ帝国の大使がチューリップをみて、現地のトルコ人に尋ねた所、名前ではなく、「花の形」を聞かれたと勘違いし「ツルバン」と答え、誤った認識をしたと記されています。
 原産地は地中海沿岸ですが、原産地は?と聞くと、大概の方は「オランダ」と言われます。ですが、実は「トルコ」だったのです。
6世紀の終わりには、オスマン朝トルコの時代に壁面から、栽培された記録も見つかっています。
 チューリップの発祥は天山山脈と伝えられています。オスマン・トルコは勢力を広げる中チューリップに出会います。そして魅了されたのです。
 やがて、現在のイスタンブールを陥落させると、トルコ人は荘厳な宮殿を建て、その中でチューリップの栽培・品種改良を行います。
 衣服の模様や絵画にもその様子は登場します。
 チューリップは17世紀頃になると、商人によってヨーロッパ各地やイギリス、フランスへと伝えられていきます。
 チューリップの人気は異常なまでに盛り上がり「チューリップ狂時代」とまで呼ばれる、世界最初の「バブル経済事件」となっていきます。
 最初に美しいチューリップに心奪われたのは、ゆとりある植物愛好家で、手に入りにくい球根は高値で売買していましたが、自ら品種改良も行われ高級品種を生み出すことにより、単色の品種は安いが、より美しい花のチューリップは人気と同時に高値となっていったのです。
 チューリップの人気に目をつけたのは投機家でした。彼らはチューリップの美しさではなく、球根の値上がりを目的とし市場に入り込んできました。
 チューリップがとんでもない価格で取引されるようになり、高級チューリップや珍しいチューリップは、ビール工場と交換したというような逸話も残るほどです。巨万の富を得た者、倒産した者と様々だったようですが、ある時暴落が起こります。
 値が下がるというのではなく、チューリップの買い手がみつからない状態になり約4年間の混乱の時を経て、市場の崩壊後、経済は沈静化しました。
 この短い期間に起きた騒ぎを「チューリップ狂時代」として記録に残っています。日本のバブルと同じ状況ですね。
              (『チューリップ ヨーロッパを狂わせた花の歴史』より)
 日本にチューリップが入ってきたのは江戸時代末期と記されています。本格的に生産を始めたの大正時代に入ってから、現在もチューリップの生産が盛んな新潟県とされています。ちなみに現在日本での生産量の第一位は富山県です。
 
 チューリップは秋植え球根。富山県や新潟県が有名な産地ですが、冬に雪が降り、夏はあまり気温が上がらない所でよく育ちます。
 多種の園芸品種があり、ダーウィン系のように成育も旺盛なタイプから八重咲き・ユリ咲き・パーロット咲き・原種系とバリエーションも豊富です。
ダーウィン系
ダーウィン系
八重咲き
八重咲き
パーロット咲き
パーロット咲き
ユリ咲き  ユリ咲き
  (タキイ種苗他カタログより)
  と、様々な品種、色、形と楽しめます。

 まずは球根を入手しましょう。
 今後、再度入荷する事は望みにくいので、「欲しい」と思ったチューリップは購入しておくことをお薦めします。
 購入の際は手で取り、皮が剥けてなく、ずっしり重く、カビの生えてない、傷のない物を選びましょう。
 早めに購入した球根は、雨や日当たりのよい場所は避け、涼しい場所で保管しましょう。あまり暖かい場所ではカビが生えてしまいます。要注意を。
 球根を入手したら植付けです。
 気温が下がり始めた11月頃から植付けの適期になります。
 コンテナに植付けの場合は市販の球根用の培養土を使うと便利ですね。
花苗を植付ける要領で土まで用意して、球根は頭が出る程度の深さにうえつけます。間隔は球根1個分くらいあけるのが基本ですが密植でも大丈夫です。
 花壇の場合は、球根を植える場所を決め、耕して腐葉土などを漉き込みます。
 球根の植付けは表面から球根2〜3個分下へ、間隔は球根1〜2個分を基本とします。咲かせ方にもよりますが、間隔を詰めて植えても大丈夫。まとめるとボリュームのあるチューリップを楽しめます。
 その後の管理はコンテナの場合は室内ではなく戸外で育てましょう。
植え付けた球根にはタップリ潅水してください。その後も変化はありませんが土の表面が乾いたらタップリ水をあげましょう。これは、花壇でも同じです。
 肥料は球根だけなら殆ど必要はありません。(球根に栄養を蓄えています)
花苗と一緒の場合は粒状の肥料か、液体肥料(コンテナの場合)を与えましょう。
 寒い時期を土の中でジッと過ごし、春先気温が上がってくると同時に葉が出始めます。

プランター植付けの開花状態。《楽しみ方》
プランター植付けの開花状態。
一つのプランターに沢山のチューリップ
も美しい姿です。
開花するころ、花壇の中へプランターごと
埋め込んで楽しむのもいいですね。
(花が終わったらプランターごと取り除いてください。取り除いた場所へは他の花苗を植え付けましょう)

こちらもプランター植付けです。
キンギョソウの赤とチューリップの赤を
組み合わせてみました。

使い方や見せ方で今までとは違ったチューリップの演出をしてみてはいかがですか?



個人的には、花壇へ直接チューリップを植付けるよりか、プランターで作り葉が出始めたら花壇へ移す方法を使います。もちろん大きな花壇の場合は別ですが。
 チューリップは開花の時期が短いので、咲き始めは花壇が華やかになりますが、咲き終わると急に花壇が淋しくなってしまいます。
そこで、咲き終わったらプランターごと取り除き、他の花苗を植え付けます。
 球根を取る場合もこちらの方が後々の管理が楽になるんですよ。

 来年の話をすると「鬼が笑う」といいますが、来年の春先を想像しながら、これから植付けのチューリップや他の球根類、花苗を探しにナーセリーへ足を運んで見ませんか。
 あなたらしい花を咲かせてください。

御園 和穂

(08/11/01掲載)

 
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