フランス・パリの公園
 今年は本当に暑い夏ですね。お盆を越せば少しは・・・と思っていましたが、 残暑厳しい日が続いています。
 本来なら傷みのある植物を植え替え、秋の準備に入りますが、少し先になりそうですね。
 このような気候の時は、秋が短く、すぐ冬が来るような感じがします。
 もうひとふんばり、頑張りましょう!

 前回からの続きです。
スウェーデンからフランスへ渡り、短い旅も終わりを迎えようとしています。
残すは、「現代の公園」と「芸術家の公園(庭)」です。

 「現代の公園」
 歴史ある公園は近代においても継承される素晴らしさがありました。そして、現代においても、新しい感覚の公園が次々に作られています。
 フランスでは、工場の跡地や公共施設のあった場所に他の施設や高層ビルが建つ事は少ないようです。まずは、ヴィレット公園をご紹介します。
 ヴィレット公園は「食肉処理場のあった広大な敷地に公園」を作る、という事で「21世紀の公園」という国際コンペが開かれました。 スイスの建築家ベルナール・チュミのプランが採用されました。

 メトロで目的地に向かいヴィレット公園で下車。地上に上がって、「あれ?この建物、どこかで見たような・・・」玄関前の撮影しか出来ませんでしたが、マンガや映画の「のだめカンタービレ」で主人公が通う伝統ある国立高等音楽学院、コンセルヴァトワールでした。 夏の休暇中で門は閉まっていました。
 中には学生以外は立ち入り禁止でしたが、眺めるだけでも満足できました

 学院を横目に進むと大きな建物が現れました。
 ここはラ・グランド・アル(直訳すると大市場)。ナポレオン3世(1850年以降)の頃、家畜の市場と食肉処理場があった場所だそうです。
  パリ市内にこんな所が、ビックリ!
1974年まで使用されていたそうです。
 現在は多目的ホールとして使用され、展覧会などが開催されているそうです。
 ヴィレット公園はウルク運河を挟んで左右に広がる近未来都市公園です。


 フォリー(点)と呼ばれる10m四方の立方体の赤い建物が点在しています。
 建築家チェミは天と線、面を重ね合わせ、現代の偶然の事象を表現した公園なのだそうです。
 ジャズバーのフォリーと園路が2階部分で交差し、コンサートなどを行っている横をジョギングしている人が通り抜ける偶然?を期待しているとか。
 光る球体はジェオードと呼ばれる直径36mにおよぶ球体映画館。
 後ろの建物は科学・産業都市館。
 球体には周囲の姿が写し出されています。
 その先にはアルゴノート5636、実戦配備されたフランス海軍の潜水艦も展示されています。(閉園中で中には入れませんでした・・・)
 芝生広場に巨大な自転車のタイヤの一部、そしてペダルのオブジェが立っています。
 とても不思議な空間です。
メリー・ゴー・ラウンド マペット劇場のようです。
 遊具などを配置した広場もありました。もちろん幼児用の広場(上記写真)もあります。覗いて写真を撮っていたら警備の方から呼び止められ、酷く怒られてしまいました。写真も処分するよう警告されました・・・。怖かった!
 近未来都市公園は奇想天外な不思議な雰囲気を感じました。実際、建築家やランドスケープの関係者からは賛否両論のようですが・・・。
 
 次は「アンドレ・シトロエン公園」です。
 公園の名前からも分かるように自動車メーカーのシトロエン社の土地で、パリ市内に長く放置されていました。パリ市は1972年に土地を買収し、パリ市の所有地と合わせ45haの広大な敷地に公園、学校、病院を含め総合的な開発を行い、その内の14haが公園になりました。
 公園計画は国際コンペを行い、もっとも優れた二案が選出。どちらもとても素晴らしかったため、公園の半分ずつをそれぞれのプロジェクトで担当したそうです。
 片方は、直線や石を基調とした「幾何学模様」、一方は植物が自然のまま育成された「自然のまま」の公園です。
公園配置図
  松、コニファー類を中心としたガーデンで幾何学的に作られた構造物の中に、樹木の高さで変化をつけ、空間の演出をしているそうです。
 芝生に白っぽい砂利、黒みかげの縁取り、みかげの敷石、なんとなく日本の庭園を思わすような作りでした。
 下草は黒のホリーホックやディスコロールセージなどが景石の脇に施されています。
 周囲は塀で囲まれており、外から見ると樹木の頭しか見えません。中がどうなっているのかしら?と、入って見たくなる効果を狙っています。
 「黒のガーデン」を通り抜けると中央広場へ。
  広い芝生広場が現れてきます。
 視界が大きく開け、見渡す限り全てが芝生と樹木。(ともかく広い!)
 中央広場には、2棟のおおきな温室があります。周囲には、大型コンテナが配置され、季節ごとの花を植え付けたり、葉の色や落葉後の姿かたちを楽しめるような工夫がなされているようです。
 右上写真コンテナは、サルスベリだと思います。ピンクの花を付けています。

温室内はオーストラリアからの植物を主に配置しています。
 ホソバユーカリをはじめ、コニファー類、オリーブなど。日本の温室とは植物が少し異なるようですね。
 温室を後にして、さらに奥へ進むと、気球が現れました。
 この気球はイベント用のもので、パリ市内が展望できるそうです。
 残念ながら今回は乗ることが出来ませんでしたが、イベントがある時は是非乗ってみたいものですね。


  中央広場の真ん中には、芝生を囲むように人工の川が流れています。
 この川はセーヌ川へと流れ込んでいます。

 川のいたる所を水鳥が泳ぎ、護岸には水鳥の子ども達が寄り添っていました。
 大温室から川に沿って進むと、なんだ?手間隙のかかった植え込みがずらり。ツゲの刈込みでした。
 成形された樹木の通りから一歩中に入ると、ごく自然の花壇が現れます。
 「青の庭園」は名のごとく「青」の色にこだわり植物を配置しています。
サブテーマは「臭覚」です。
 残念ながらクレマチスは終わりかけでしたが、入れ替わるようにフジの花が咲き始めていました。
 足元はラベンダー、手前はスターチスのブルーを中心にピンク、白。
 一見地味になりがちな「青」ですが、華やかな庭園です。ラベンダーの香りに一時の安らぎが感じられました。
 「オレンジの庭園」。オレンジ色を中心にした庭園。サブテーマは「触覚」。
 通路は石を配置し、日本の庭園をおもわせる佇まいです。
 触って見て、足の裏で感じる感覚、全てで楽しめ庭園です。
 その他、「赤の庭園」サブテーマは「味覚」。サクランボやリンゴの木が植樹されています。実が出来るころには鳥達がきて採っていってしまうとか。
 その他、「緑の庭園」(聴覚)、葉の長い植物(グラス等)を中心とし、風が吹くと葉のすれる音がします。
 「銀の庭園」(視覚)、名の色とおりシルバーの葉色の植物を中心とした植栽です。
 人間の五感を中心として作られた庭園でした。でも六ヶ所。
 最後は「想像力」で人間の持つ「第六感」をテーマとしているそうです。
「金の庭園」(想像力)、金(ゴールド)の葉を持つ樹木と芝生、周囲を生垣で囲み、中央に大きな岩のモニュメント。何を想像しましょう〜
 テーマごとに緻密に考えられた庭園、なんて素敵な庭園なんでしょう!
 
 この庭園を抜けると中央広場の一番奥にでます。
広大な芝生広場と人工の川。隣はセーヌ川。
 以前は電車や道路が往来していたようですが、公園を作るにあたり、車は地下へ線路は高架にしたそうです。
 公園を楽しむ時には車の騒音がない方が嬉しいですね。
 
 全てを見るには時間がない・・・残念ながら次へ移動です。
 最後に「白の庭園」を見たかったのですが、(黒のガーデンの横にあるらしい)実は迷子になってしまい結局外へ出てしまいました。
 メトロに乗って次の公園へ向かいます。
  
 この先は次回とさせて頂きます。
 最後の締めくくりは「芸術家の庭」。お楽しみに〜
 
参考
 北九州市 市の面積 487.88km2 人口 98万1445人(2010年7月現在)
 パリ市 市の面積 105.40km2 人口 217万人(2007年1月現在)
 北九州市にも、もっと素敵な公園が欲しいですね!

御園 和穂

(10/09/01掲載)

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