クリスマスローズ
 新年あけましておめでとうございます。
 「花のコーナー」も6年目に入りました。昨年は北九州緑化協会設立30周年の記念として、5年間分を一冊の本にまとめて頂きました。
 お手元にある方は、どうぞ必要な植物の頁を開き、皆様の経験や独自の育て方などのメモを書き込みながら「自分の本」にしていって頂きたいと思います。
 もう暫く、頑張って書き続けたいと思います。
 これからも宜しくお願い申し上げます。

 今回は、晩冬から初春の少し寂しいガーデンにひっそりと咲くクリスマスローズを紹介します。
クリスマスローズ
学名:Helleborus キンポウゲ科の多年草。
別名:レンテンローズ、ヘレボラス、ヘレボルス。
原産地は中国四川省から雲南省にかけて生息する「チベタヌス」1種を除けば、東ヨーロッパからバルカン半島、トルコ等に約20種が生息しています。開花時期は品種によって異なりますが、12月から4月頃。(多くの品種は2月の節分頃から3月に開花)
 本来、クリスマスローズと呼ばれるのは、12月のクリスマスの頃開花する「ヘレボルス・ニゲル」という種に付けられた名前です。
 日本では春に開花する「ヘレボルス・オリエンタリス」を元に品種改良品が普及していますが、なぜか、すべてのヘレボルスを「クリスマスローズ」と呼んでいます。少し変ですよね。
 ちなみにイギリスではオリエンタリスの事をレンテンローズと呼び、これは「レント(四旬節)」の時期に開花するので、名づけられたそうです。
※「レント」四旬節(シジュンセツ)とは、イースター(復活祭:今年は4月20日)の前準備段階で日曜日を除く40日間断食し、イースターを迎える事を言う。
 ちなみに「リオのカーニバル」は今日では大きなお祭りになっていますが、厳粛な四旬節に入る前の祝いのお祭りなんですよ。
3月の上旬の開花で、レントと姿形がバラに似ている事から「レンテンローズ」。
 日本へは、明治初期に導入されましたが、当時は鑑賞用ではなく、薬草として入ってきたようです。
 ジキタリスに似た効用が葉や茎にあり、昔は民間薬として、強心剤、下剤、堕胎薬などとして使われていたようです。
 
 クリスマスローズはザックリ大きく分けると2種類あり、その中に判断の付きにくい中間種(茎に葉も花もつくが、葉は地際にあり姿は無茎種に似ている)があります。
 分類として有茎種(ユウケイシュ)と無茎種(ムケイシュ)のタイプがあります。なぜ、分けるかというと、タイプによって生育サイクルや育て方が異なるためです。
 本来のクリスマスローズの「ニゲル」は有茎種(原種)で「オリエンタリス」は無茎種(交配種)に分類されます。
 有茎種は茎を伸ばしながら葉を広げ、茎の先端に花を咲かせるタイプで常緑性がほとんどです。無茎種は地際から葉を広げ、まっすぐ伸びる茎を持ちません。花は地際から花茎を伸ばして開花し、常緑性、落葉性があります。
有茎種 無茎種
有茎種
無茎種
 クリスマスローズは中央の部分が花で周囲の花びらに見える部分は萼(ガク)になります。
  こんな構造です。
クリスマスローズの構造
 花びらは退化して蜜腺として残りました。萼の中を覗いてみてください。
 萼は長期間残るので、いつまでも花が咲いているように見えます。が、本当はあっという間に雄しべ、蜜腺はポロポロと落ちてしまい、種をつける準備をします。
 中央の黒くなっている部分が「種」です。
 クリスマスローズの面白い?(私はそう思うのですが)所は、この種はある程度世代交代をして花色や形が安定している場合を除くと、同じ花が咲くかどうかは不明です。
 花粉が自然交配しますので、その苗の花とは異なる花が咲いたりします。
 本来は交配種であっても、株分けすることで同じ花を咲かせる事はできますが、株分けの量は限られています。(1株から2〜3株程度)
一般家庭であれば十分かもしれませんが、生産の場では大量に必要なため、人工的に植物の生長点を培養して苗を作っていきます。(メリクロン苗)
 同じ性質の苗が出来上がります。
 ただし、通常の植物に比べるとクリスマスローズのメリクロン苗は増殖率が低く、実生苗の方が多く出回っています。
 
 先に述べたように、ザックリではありますが有茎種と無茎種に分けたのは、生育サイクルや育て方の違いによるものです。
 一年間のサイクルは・・・
■有茎種の場合: 冬から初春にもともとの茎の先に花を咲かせ、花が終わった時点で茎の付け根から切ります。その後、春から初夏に新しい茎が伸び始めます。
夏の間は半休眠状態で生育はお休み。
秋口から大きな変化はないが、春から伸びた新しい茎の先に花芽をつけます。
■無茎種の場合: 春から初春に花芽が伸び開花します。
同時に地際から新芽が出始めます。初春に咲いた花は花茎の下の部分で切ります。(花柄摘みです)春から初夏にかけて葉が展開します。夏までに葉が大きく育ち半休眠状態で生育はお休み。
秋口から生育を開始します。
この時点で古い葉は株元から切ってしまいます。
(切らなくても冬に入ると茶色くなってしまう。緑の葉を切るのは勇気がいりますが・・・)
切る事で株元までしっかり日が当たります。
 このようにサイクルが異なるので、ザックリで構わないので、どの種を持っているのか確認しておきましょう。
 置き場所は、冬の間は落葉樹などの下で葉が落ちた樹木の間から日が十分に当たる場所で、真夏は日陰になるような場所が適しています。
 有茎種は、温暖な地中海地方のものが多いので、寒さや湿度が苦手。
 よって、「冬場は少し暖かい日の当たる場所で、梅雨時期や夏場は半日陰から日陰で、やや乾燥気味で風通しのよい場所」で育てます。
 無茎種は、その大半が東ヨーロッパ周辺のものが多いので、寒さには強く湿度の高い地域も苦にしません。
 「冬場は日当たりの良い場所で、夏場に半日陰から日陰」という事になります。
  (植物の原産地は、日本の中で生育させる上ではとても大切です!)
 水やりに関しても、生育期は土の表面が乾いたらタップリと与えましょう。
 夏場の半休眠期で生育をお休みしている間は、極度の乾燥にならない程度で、極端に雨が少ない場合はタップリ与えましょう。
 肥料も秋から春にかけて緩効性肥料もしくは液体肥料(1000倍から2000倍に希釈したもの)を与えます。半休眠期に肥料を与えると株や茎が傷むので与えません。(これは地植え、鉢植えとも同じです)
 植替えや株分けの適期は10月から3月です。
 鉢植えの場合は生育旺盛なので、毎年一回り大きい鉢に植え替えるか、株分けを行います。株分けの場合はあまり細かく株を分けず、一つの株に3芽を目安に分けましょう。
 古い土は取り除き、傷んで黒っぽくなっている根は取り除き、新しい土に植替えます。
 土の配合は、水はけを良くするために、赤玉土(小粒)4:腐葉土3:軽石(小粒)3くらいの割合です。(培養土の場合は軽石を少し混ぜて使用)
 
 クリスマスローズの育苗は難しいイメージがありますが、思ったより育てやすい植物の一つだと思います。
 これからの時期は開花株が販売されます。(1月から3月くらい)
 花の色や形などを沢山見て、「お気に入り」を探してみるのは如何でしょうか。
 苗の購入にあたっての注意点。
  ・葉が虫に食われていないか。
  ・葉にモザイクのような模様や黒い斑点が入っていないか。
  ・葉が傷んでないか。 等です。
 健全な苗は、株元がしっかりしていて、茎も間延びしてなく、がっちりしています。葉の緑色もいきいきしている物を選びましょう。

 カタログから見てみました。Helleborus・hybrids(ヘレボラス・ハイブリッド)実生系の割と育てやすいタイプです。(無茎種です)
ピンク系 バイカラー 八重咲きの白 イエロー系
ピンク系
バイカラー
八重咲きの白
イエロー系
 黒色や紫色、えんじ色から八重咲き、斑点が入っている物、ともかくたくさんの種類があります。どれが好みでしょうか?
 ゆっくりと選んでみてください。

 寒さはこれからが本番です。
 例年になく、寒い冬を迎えています。今は作業も殆どありませんが、お部屋でジッとしているのも・・・。
 晩秋から初冬に植え付けたパンジーやビオラ、プリムラなどは元気に花を付けていると思います。
 お散歩がてら、公園や園芸店など覗いてみませんか?
 掘り出しものが見つかるかも知れませんよ!!

御園 和穂  
(14/01/01掲載)  

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