花のコーナー 2015年01月
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花のコーナー
御園 和穂11
2015年1月 洋ラン-3
新年明けましておめでうとうございます。
今年は「未」の年です。群れをなすヒツジは、家族の安泰を示し平和に暮らす事を意としています。
みなさんはどんな新年を迎えられていますでしょうか。
今年も無病息災、元気に過ごしたいですね。新しい一年、宜しくお願い申し上げます。
今回も洋ランを紹介します。
シンビジュウム 学名:Cymbidium ラン科シンビジュウム属
原産地は東南アジア、インド、中国、日本、オーストラリア北部など広い範囲に60~70種が分布しています。
ヒマラヤなどに分布するものは花が大きく美しいタイプが多く、それらを元に交配して作られた交配種は一般的に「シンビジュウム」と呼ばれ、「洋ラン」の一つです。
合わせて、中国や日本でも学名としてはシンビジュウムですが、一部、独自の進化を経たシュンラン(春蘭)やカンラン(寒蘭)は「洋ラン」に対し、「東洋ラン」と総称され、多くの愛好家に親しまれています。
また、中国や日本原産のものと東南アジア原産との交配など様々な品種が生まれ、それらは「東洋ラン」ではなく、「洋ラン」の仲間で「小型シンビジュウム」などと分類されているようです。
日本に入ってきたのは明治以降の長崎です。グラバー氏によって母国イギリスから上海経由で導入されました。現在も「長崎県亜熱帯植物園」に、日本最古(記録の上で残っているもの)のランの株として残っています。
その時のランが、シンビジュウム・トラキアナム(Cymbidium tracyanum)で、100年近くたちますが元気に育っているそうです。
名前の由来は、シンビジュウム=「舟のような」、という意味だそうです。花の中の中心にある「ずい柱」の形が似ている事から、また唇弁(リップ)部分が舟を浜辺にあげた際の筋模様に似ている事など諸説あるようです。
(写真:長崎県亜熱帯植物園より参照)
どう見ても、私には舟には見えないのですが、皆さんは舟のようにみえますか?
通常、私達がよく目にしているシンビジュウムは洋ランの中では一番ポピュラーなランです。日本では「贈答用」として、アメリカでは鉢物より、切り花としての利用が主流だそうです。
前回紹介した「デンドロビュウム」の原産地に近い所で生育しますが、デンドロビュウムが、樹木に根を絡ませ着生し自身を支え栄養吸収をするのに対して、シンビジュウムは、樹木の洞のような所や枝分かれするような所に着生し、根は洞などに張り、あまり空気に触れないような状態を保っています。また、場所によっては水はけの良い所を選び、地面に根を下ろす事もあります。
着生もしますが、その場合半着生ランになるようです。
育った環境から、乾季になっても根は乾燥しない状態だと判断できます。水やりの方法は、一年を通して「乾いたら与える」と、いう事を心掛けて。
生育サイクルは、原産地がインドや中国の山岳地帯で多くの種類は標高800~1,500mあたりの樹木に半着生(もしくは着生)します。
このような地域は初夏から秋口まで雨が多く(雨季)、その後乾季になり、徐々に気温が下がり始めます。冬場の気温は最低5~7℃程度。乾季の終わり頃になると雨が続き、天候の回復と合わせて南から暖かい風が入り込みます。結果、湿った状態に気温が上がり始めるので霧が発生します。
シンビジュウムは春に伸びた新芽を大きく伸ばし、雨季の終わり頃から花芽を付け始めます。その後、乾季に入り気温が下がると、花芽は伸びずにジッとした状態で春を待ちます。
初春、暖かさと霧の湿度によってジッとしていた花芽は茎を伸ばし、天気の良い日に開花します。
原産地では、このようなサイクルで生育しています。
私達の生活サイクルに当てはめると・・・
【育て方】開花株からのスタート
①1月から4月頃は開花時期です。
・置き場は室内のカーテン越しでの日の当たる5℃~15℃くらいの場所。空調等の近くは避けてください。
・水やりは、お天気の良い日の午前中に鉢の表面を指で触り「乾いたな~」と感じた時にタップリ与えましょう。
(空調の影響も考慮して。目安として4~7日に1回程度)
・花は、見頃が過ぎたら早めに花茎の一番下から切ります。
②4月下旬から9月いっぱい。シンビジュウムの生育期です。・霜が降りなくなったら戸外で育てます。最初はいきなり日光には当てないで少しずつならしてくださいね。午前中の柔らかい日差しが大好きです。真夏は遮光して西日はさけてください。
・置き場所は戸外の風通しの良い場所。可能であれば台の上やビールケースのようなメッシュになっている資材の上に鉢を置いてもらえればベストです。
(直接地面への設置はジメジメして苦手です)
・水やりは5月から9月いっぱいは十分に与えてください。シャワーで全体にかけても大丈夫。水はけの悪い場所では根腐れを起こしてしまいます。要注意です。
・肥料は4月から9月いっぱい、生育期なのでタップリ与えます。
油粕と骨粉の混合(玉肥料)を6号鉢では小さじ1杯程度を毎月与えます。
③ 新芽は増やしすぎないようにしましょう。
・春から新しい芽がたくさん出てきます。出来れば1本の茎に1つの新芽程度に数を制限します。
後から出てくる新芽は地際から指で折って処分します。(芽かきといいます)
④ 株分け・基本の植替えは春先の休眠期に行います。3月から4月。
鉢に余裕がなくなってきたら植替え時です。。鉢を一回り大きくしてあげましょう。株が7~8株になったら2つに株を割ります。
※細かく割りすぎないで! 花が咲かなくなってします!
根は傷んでいる部分は取り除いて、株を分けられない場合はノコギリで半分にしても大丈夫ですよ。
⑤秋から
・夏の終わりに花芽が出来はじめます。
葉芽は芽かきをして取り除きます。葉芽と花芽の見分け方は・・・
株の脇からでてきます。先端が丸っこい感じのものが「花芽」、先端が尖っている方が「葉芽」です。間違えないように注意してください!
⑥霜が降りる前に室内へ取り込みましょう。
・11月下旬には室内へ取り込みましょう。
置き場所や水のやり方は①と同じです。
花茎が伸びてきますので、倒れないように支柱などで支えましょう。
どうでしょうか~ 特別難しくはなさそうだと思いませんか?
文章で表すと「長い」ですが、実際はとても単純です。
頂いたり、さし上げたり、もちろん気に入った花色があれば購入もいいですよね。鉢花は鑑賞後の管理が大変!と思われがちですが、少し知識があればまた花を咲かせることができます。
花は涼しい場所であれば1ヶ月から2ヶ月咲き続けます。また、切り花として楽しんでみては如何でしょうか?
鉢物同様、高温多湿は嫌います。開花時ですから水の交換は週に1回程度。
水換え時は花瓶の中も洗ってください。その際、切り口を切戻しましょう。切戻しは切れるハサミで茎に対して斜めに切戻してください。切れないハサミだと、茎の中の菅が潰れて水が上がりません・・・。
延命させる工夫としては、花瓶の中に市販の切り花延命剤、もしくはスプーン1杯の砂糖と台所用漂白剤を数滴を溶いた水でも効果はあります。
鉢物で楽しんで、切り花で楽しんでみませんか?
バンダ 学名:Vanda ラン科・バンダ属
原産地は東南アジアを中心にオーストラリアにかけて約60種が分布しています。
樹木や岩肌にまとわりつくように根を張らせていく着生ランです。
温室のある植物園ではよく見ますが、鉢物としての流通は多くないのですが、切り花としての利用がポピュラーかと思います。
Vanda john cibb
葉が細長い棒状タイプとやや肉厚な帯状タイプの二通りあり、葉は交互に生え、上へ上へと伸びます。枝分かれは殆どありません。
名前の由来はサンスクリット語で「着生する、まとわりつく」という意味の「バンダカ」からきているそうです。
花の咲く時期は品種によってまちまちですが、冬から春、夏から秋に集中するようです。
葉の付け根当たりから花茎を伸ばし、その先端部分に大輪の花を付けます。花色や姿は品種によって異なりますが、一番ポピュラーなのは、青紫色に網目模様が入ったタイプです。(写真参照)
その他、白、ピンク、黄色、紅紫などがあります。
バンダは植物園で何度か挑戦をした事があります。
荷姿は鉢の代わりに木箱に根が詰められ、吊鉢と同じ姿でやってきます。
一番最初に出会った時は驚きでした。
「なんて個性的なランなのだろう!」、今までに見た事のない青紫色と長い茎と葉が印象的でしたね。
実は、名前は知っていましたが、育て方すら知りませんでした。
今のように、インターネットがあって手軽に検索できるわけではないし、洋ランの本にもわずかな情報しかありませんでした。
枯れないのですが花が咲かない・・・、葉がシワシワになって黄色くなる・・・、などなど試行錯誤。数年かけてやっと花が咲くようになりました。
バンダは空中湿度と気温の高い環境を好みます。着生ランなので樹に絡めても構いませんし、吊鉢の状態でさげておいても構いません。日当たりの良い場所を好みますが、真夏の日差しは遮光して、風通しも良くしておきます。後は、上へ上へ伸びていきます。(写真参照:空中に下げている状態)
水は生育時の夏から秋にかけては1日2~3回霧吹きで根・葉・全体にかけます。冬は15℃を保てるのであれば生育期と同様に、13℃を下回ると休眠期に入るので、間隔はあけて与えます。開花時期は花に水がかからないよう注意しましょう。
バンダは寒さに弱いタイプです。最低13℃を下回らない程度で越冬させましょう。肥料は液体肥料を与える場合は水やりと合わせて行い、月3~4回与えます。固形肥料の場合はメッシュ状の袋に肥料を包んで茎にぶら下げておきます。
(↑写真参照:固形肥料の袋)
簡単かな?と思うのですが・・・シンビジュウムのように一般的でない理由として、温度・湿度の環境と茎が上へ伸びて育つ性質なので置き場所の面等で育てにくいと思います。
余談ですが・・・シンガポールは都市計画する時に、風水をベースに東西南北、中央に5つの龍が座り、東・南・中央の重なり合う場所が経済の中心部になるように、シェントンウェイの高層ビルが建てられているとの事。
また、地下鉄を通すにあたって、地下を掘る事で繁栄の象徴の龍脈が分断される事を危惧し非常事態が起きないよう、風水的に幸運を呼ぶ硬貨として、八角形の1ドル硬貨を作り全市民の守護(お守り)にしたとか。
Vanda tan chay yan
微笑ましいお話でした。
3回にわたり「洋ラン」を紹介しました。
正直なところ、頂いても鑑賞が終わるとどうしたらいいかな?と思う「洋ラン」ですが、ほんの少しでも身近な鉢物に思ってもらえると嬉しいです。
ただし、決して無理はしないでくださいね。
1月から3月にかけて、あちらこちらで「洋ラン展」が開催されています。
一番寒い季節ですが、展覧会があれば覗いてみませんか?
(15/01/01掲載)