都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2015年03月

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花のコーナー

御園 和穂##

2015年3月 シンガポール2

 暦の上では春。そろそろ「啓蟄」の頃ですね。
蟄(ちつ)は虫が土の中にこもる、啓(けい)は扉を開く、と言う意味で、「啓蟄」とは、寒い季節が少しずつ和らぎ暖かくなって、土の中から虫が出てくる時期を表しています。
 また、冬を越した虫たちが出てくるこの時期に鳴る雷を「発雷(ハツライ)」や「蟄雷(チツライ)」といい、春を表す季語にもなっています。
 植物の根も動き始めます。花壇やコンテナの草花にも肥料を与えておくと効果的ですよ!

 今回も「シンガポールの植物園」の続きを紹介します。(前回はこちら
 
 フラワーフェスティバル会場を後にして、それ以外の「Gardens by the Bay」を散策です。
まずは、「Gardens by the Bay」とは。
 ガーデン・バイ・ザ・ベイはシンガポールの都市構想の大きなパラダイムシフトの具現化されたもので、緑化計画を進める構想として「自然環境と共存した持続的な豊かな都市」をめざしているそうです。省エネ、リサイクル等の環境への配慮が園内に多く見られると同時に、古い歴史における貴重な植物の保存や文化遺産の保存にも取り組んでいるそうです。
 「ガーデン・シティーからシティー・イン・ガーデン」への取り組みを知ると、見方が変わってきますよね!

 中央ゲート北側に位置する「植物の世界」をテーマにしたガーデンから見ていきましょう。

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ゲートを抜けた、階段壁面にはエアープランツやアナナス等が設置されています。
 無機質な壁面のデザインとしても素敵な演出です。

 階段を上ると、デザインされた鮮やかなブルーの壁とスーパーツリーが姿を現します。

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 ガーデンの中央にそびえ立つスーパーツリーは、高さ25mと50mある人工の樹木です。上部は小枝を広げた姿でとても印象的です。全部で18本。その内12本が中央部分に集中して配置されている姿は大迫力です。

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 写真はスーパーツリーを見上げたところと上から眺めたところです。高さ25mのツリーとツリーの間には空中回廊なる「スカイウェイ」が通っており、ガーデン全体を見渡しながら歩いて渡る事が出来ます。(全長128m 入場料は5ドルS$約450円)

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 スーパーツリーは夜になると照明が点灯します。ツリーの上部には太陽光発電を利用した環境に優しい持続可能な機能が設置されているそうです。また、地下にある巨大な冷温室からの暖気を外へ逃がす排気口の役割も果たしているそうです。

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 ツリーの周囲は樹木の骨格を形作る鉄パイプで構成されていて、壁面には比較的管理のし易いアナナス類、シダ類、ラン類などが取り付けられており、各スーパーツリー毎にテーマを決め、植物の葉の色合いで演出されています。

 スーパーツリーを散策し、次に目指すのはドーム型の温室です。

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 一つは「フラワー・ドーム」(写真:背の低い方、左側のドーム)、もう一つは「クラウド・フォレスト」(写真:右側のドーム)です。
 「フラワー・ドーム(※)」から見学です。
※フラワードーム:高さ38m 1.2haの敷地を有し、保存温室を除き、除湿を行い平均22℃に保つことで一年中「春」の環境を作っている。

 ガラス張りのドームに入ると「涼しい」環境にびっくりです。熱帯のシンガポールにおいて、涼しく乾燥した地中海性気候(※)から半乾燥地帯に生育する植物が展示されています。
※地中海性気候とは:ケッペン気候区分における気候区の一部。冬は温暖で雨が多く、夏は高温で乾燥する地域。エジプト・リビアを除く地中海沿岸、南アフリカ、アメリカ西海岸、チリ中部オーストラリアパース近郊などの地域。日本は温暖湿潤気候 温帯に属し、気温の差が激しく夏は高温多湿。四季がはっきりしている地域。

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 ドームに入り左手からリュウゼツランやアロエなどの多肉植物を見てサボテン類のサキュレントガーデン(Succulents garden)を散策。棘を持つことで、柔らかい組織を食べる動物から身を守り、葉の光沢は乾燥防止の役割をもっています。

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 次に出現するのはアフリカに生育する「バオバブ」の木。星の王子様の中で星を破壊する巨木として登場する木がこの木です。
 世界最古の木と言われ、精霊が宿る木として古来から信仰されてきました。また、長い干ばつに耐えられるよう、木の中に水分を蓄えます。大きいバオバブだと7,500ℓ以上の水を貯えられるそうですよ。

 通常見る事のできない樹木や植物を観察しながらドーム内を移動。

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「南アメリカガーデン」では、チリマツが展示されています。チリマツは幹や葉全体がギザギザになっていて「猿も登ることが難しいだろう」と言われている木なのだそうです。
 全体がギザギザとしており剪定しても、片付けのしたくない樹木だな~と思いました。ただし、チリマツが自生する地域には「猿」はいないそうですよ。

 次に目を引いたのは、「オリーブグローブ」(オリーブグローブは老木のオリーブの里)
 樹齢千年以上のオリーブ、身近な植物ではイチジク、ザクロ等が展示されています。オリーブは実も油も食用となる重要な木、イチジクの葉は聖書に出てくる禁断の果実を食べた後に自分たちを隠すためのもの、ザクロは実は食用、樹皮は薬用、実は美しさから装飾としても用いられてきました。
 どこでも目にする樹木なのですが、古来から私達の生活の中に欠かせない木だった事に改めて気づかされました。

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 「メディテラネアン・ガーデン」で、ナツメヤシやコルクガシ、リュウケツジュなど砂漠地帯に生息する樹木が展示されています。
 ナツメヤシの実は食べる事ができ、種から油を採り、幹は材木として使用されます。コルクガシは古くから瓶の栓(コルク)として利用されています。

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ガーデン内を歩き回り、あれもこれも興味津々で散策しました。最後にドーム内で一部低くなっている部分が「フラワーガーデン」です。
 大花壇が設置されており、期間ごとに内容を変えての園芸展示を行うそうです。

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 今回はフラワーフェスティバルに合わせて、ラン類を中心に、シンガポールでは切花以外では見る事のできないバラ、シャクヤク、ツツジ、ツバキ、ベゴニアやジニア類、マリーゴールド、ユリ、アジサイ、グラス類、ヒマ、コニファー類と私達には見慣れた植物が所狭しと植付けられています。ランやバラなど美しい花が咲いている場所は多くの人が写真撮影で立ち止まり先に進みにくい状況でした。
 私達には身近な植物(草花)ですが、熱帯の地域だと見る事はない植物です。でも、当たり前ですね~。
 快適な空間で珍しい植物や美しい花を堪能しました。
 次は隣のドーム「クラウド・フォレスト(※)」です。

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※クラウド・フォレスト:雲に覆われた寒冷な高山の世界、標高1,000mから2,000mの「雲霧林」を復元した温室。
 フラワードームよりさらに背の高い温室に入ると、高さ38mの人工の山、その頂上からは勢いよく滝からの水が流れ落ち、水のしぶきと頂上の方から吹き出るミスト。入った瞬間から標高1,000mの高山に来た雰囲気です。山の周囲は散策路になっていて頂上は標高2,000mの設定になっています。

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 エレベーターで頂上まで上がり「ロストワールド」ブースから見ていきます。滝のしぶきと霧の発生で衣服もしっとり、肌寒い空間です。
 高山の樹木に着生するランのパフィオペディルムや食虫植物が展示されています。
 ウツボカズラやムシトリスミレ、モウセンゴケなどをタップリ見る事ができます。

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「餌のいない温室内で食虫植物?」と思われるかもしれません。食虫植物は痩せた土地で育つので、餌となる虫や動物がいなくても、窒素補給があれば生育します。

合わせて湿度と光を必要とします。たまには紛れ込んだ虫が餌になっていると思います。

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標高が下がるにつれて、着生植物が多く見られるようになります。
シダ類、ラン類、アナナス(ブロメリア)類など、根を長く伸ばし水を蓄えながら生育する姿が観察できます。また、放射状に広がる葉は中央の部分に水を溜めるタンクの役目をしています。
 環境の再現でこれらの植物の適応能力にも驚きです。

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 標高が下がってくると、セロームやアンスリュウム、ベゴニア・ドラゴンウィング、インパチェンスなどに植物も代わってきます。
 洞窟をイメージしたトンネルは地質に関する情報が満載です。中には鍾乳洞の再現もありました。 
地上部まで下ってくると、最後に「シークレットガーデン」があります。

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 地球上にかつては豊富に存在した植物などが展示されています。現在では高地の人目のつかない場所のみでしか見られない「木性シダ」と呼ばれる樹木のようになるシダ。幹は肥大生長しないので木本ではありません。また、ハワイアンツリーファーンなど、葉の裏に胞子を付着させ葉を広げ、花や種子を作らず葉裏の胞子が十分に湿った場所のみで繁殖する植物です。
 これら様々な植物が集められたドームは、普段着で本格的な山歩きが出来る場所のようです。

 二つの温室を見て回りました。外気温は周年30℃前後のシンガポールで、涼しい温室はどのように管理されているのか?一番気になるところです。
 温室の冷却に関して、省エネのプロセスがありました。
 周囲のガラスはハイテク素材で作られた植物の光伝達を最大限に活かし且つ熱吸収を最小にでき、採光を調節。温室全体を冷やすのではなく、地下に埋められたパイプに冷えた水を流し、特定エリアを冷却しているそうです。
 温室内に入る空気は、液体乾燥剤を通過し除湿をされた空気が流れ込みます。また、バイオマス発電ででる廃熱と温室の上部の熱気は液体乾燥剤を再生する熱源に使用されるそうです。
 バイオマスに関しては庭園や国立公園の園芸作業で発生する植物の廃棄物から作られているそうです。冷却のための電力依存を削減しているそうです。
 分かったような分からないような・・・でもきちんと考えられて作られています。

 今回はここまで。次回もこの続きにお付き合いください。

 3月に入ると、暖かくなる日も増えて、気持ちも体も軽くなってきますね!
 ただ、花粉の飛散もピークを迎えてきます。季節の変わり目、年度の変わり目と慌しい時期ですが、元気に乗り切りましょう。

 (15/03/01掲載) 

        
           

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