都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2015年05月

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花のコーナー

御園 和穂##

2015年5月 シンガポール植物園-1

 5月は気候も安定し、気持ちのよい季節ですね。
 花壇はパンジーやビオラが満開。今、花が満開の草花もこれから気温が上がってくると終わりを迎えます。合わせて初夏から夏に向けての花に植替えです。
 気温が上がってくると同時に慌しい時期になりますね!

 今回は「シンガポールの植物園」をご紹介します。
 シンガポールの繁華街オーチャード・ロードの西端に位置する広大な国立の植物園(Singapore Botanic Garden)です。世界最大級のラン園(National Orchid Garden)を併設しております。敷地面積52haという広大な面積を誇る世界有数の植物園です。

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 熱帯植物が鬱蒼と茂り、美しく手入れをされた園内は市民を始め観光客の憩の場となっています。
 園内を紹介する前に、実は日本との関わりがあった植物園の歴史に触れておきたいと思います。
 この植物園はイギリス植民地であった1859年に熱帯性の有用植物の栽培と研究を目的に作られました(当時の名称はラッフルズ博物館)。
 シンガポールは1942年から1945年の終戦まで3年半の間、日本軍が占領していました。
 日本軍の占領と合わせ、「昭南博物館」と呼ばせていたそうです。当時、蓄積された論文や標本などの文化財が破壊される事を危惧したイギリス人学者(コーナー博士)がいました。その窮地を知った日本人の学者田中館(タナカダテ)秀三氏がシンガポールの文化財を守るため、現地司令官・山下奉文(ヤマシタトモユキ)に直談判し、博物館、植物園の保護・管理を日本人学者達と捕虜になったイギリス人学者との共同研究が継続できるようお願いしました。

 また、尾張徳川19代目徳川義親侯が、軍事顧問としてシンガポールに赴任した際に田中館氏らの活動に理解を示し、自らも昭南博物館の総長を務めました。
 1945年日本軍は降伏し、シンガポールにはイギリス軍が上陸、イギリス人の学者は捕虜から釈放され、逆に日本人学者は抑留される事となります。その後は無事に解放されますが、彼らの働きがあった事でラッフルズ博物館の文化財は破壊されず守られました。国籍を越え、学問という結びつきで博物館や植物園を守った人々がいたという歴史があります。

(E.J.H.コーナー博士著『思い出の昭南博物館』より参照)

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入口周辺のイグアナの彫刻

 シンガポール植物園は入場無料で、朝5時から深夜12時まで開園しています。(併設のラン園は有料で8時半から夜の7時まで) 
 週末は家族連れでピクニックや結婚式の写真撮り、早朝・夕刻はジョギングや太極拳をする方たちが集まってくる都会の中の憩いの場です。
 緑豊かな植物園には、熱帯植物は勿論の事、伝統的な樹木や多彩なジンジャー類・ヘリコニア類、また植物だけでなく、あちらこちらに設置された彫刻なども目を楽しませてくれます。

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 また、犬は公の場で犬種(大型種)によっては口輪をすれば連れて入ってもいいですよ~との看板がありました。その下にはエチケットビニールまで設置されていました。
 シンガポール植物園は、1859年に開園。農業園芸協会によって設立されましたが、1874年に国の管轄になりました。当時、コーヒーのプランテーション経営者にゴムの生産をするよう奨励し、植物園は1900年代前半にゴムの木栽培において木への負担を軽減するゴム採取方法を考案しました。その後自動車産業が盛んになりゴムの需要は増え、大きな収益をもたらす事になります。
 植物園での研究成果がアジアのゴム産業、近代産業の発展の基盤になったのは言うまでもありません。
 その後、植物園はランの交配や繁殖に力を注ぎ、丈夫で優れたランは日本でも大人気の切り花です。(切り花の世界市場の15%を占めている)
 現在でも交配、繁殖は盛んに行われています。こちらはラン園の方でご紹介しましょう。
 園内で日本語は通じませんが、看板表記は一部日本語で記載されていました。
 通路以外は芝生で覆われ、木々の間に草花が配置され、開花した花は賑やかな雰囲気を創出しています。通常の花壇とは違い、自然の中に調和しています。
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  Allamanda violacea(アラマンダ)    osiphon aristatus(ネコノヒゲ)   Couroupita guianensis(ホウガンボク)

 どんな花が咲いているのかを調べながら歩くと楽しいですよ!

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                                Cissus verticillata

 「緑のカーテン」のようなアーチが見えてきました。なんでしょう?
 近づいてみると・・・、蔓性の植物のキッスス(学名:Cissus verticillata)です。葉がハート型で小さい黒いブドウのような実が付きます。伸びているのは「気根」で放置すると10mくらいまで伸びます。風になびく姿が見た目にも涼しく感じます。この気根、1時間に1cm伸びると言われているんですよ。
 植物園では花壇の草花はもちろんの事、パーゴラやアーチを使って見せる蔓性の植物も沢山みられます。
 キッススのアーチの横にはコネモルファを絡ませたパーゴラがあります。
 下の花壇にはカラテア類(ビクトゥラータやセブリナ、オルナーター等)の半日陰を好む観葉植物の葉物が配置されています。残念ながらコネモルファの花はパーゴラの外側でしか見られないんですけど・・・。
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                                Chonemorpha penengensis

 この場所で少し休憩して、次の場所へ移動します。
 見えて来たのは「バンドスタンド」と言われている東屋です。

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 1859年開園時には東屋の中でバンドが演奏をし、その廻りでは淑女、紳士が踊ったり会話を楽しんだそうです。
 周囲はイエローレインツリー(学名:Samanen saman)というマメ科の葉が黄色という特徴的な樹木が植えられています。シンガポール植物園のパンフレットの表紙を飾る東屋です。他の場所とは少し異なりヨーロッパ的な雰囲気です。
 1859年、日本では「江戸の大火」や、横浜、下田、長崎、函館の4港を開き海外との交易を開始した年でした。

 時代の流れを感じていると・・・「サボテンや多肉植物」が見えてきました。

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 簡単な雨避けが付いた建物の足元にはサボテンのオブジェが飾られています。
 看板があるわけではないのですが、説明のためのオブジェで「なにが植わっている」かが一目瞭然。コンクリートの壁面にはサボテン画が描かれていて、その手前も立体的なオブジェが立っています。

 日本ではあまり見る事のない演出ですね。
 とても可愛らしい感じがしました。
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 サボテンや多肉植物の環境に配慮した配置です。

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 先へ進むと、「なにかしら?」。植込みの間に置かれた「鯉」のようなパーテーションのオブジェが目に飛び込んできました。「鯉の滝登り」を表しているのでしょうか?リアルな姿です。
 丘の上の展示は「盆栽」でした。
 私達が知っている盆栽と姿形は似ていますが、中の植物が異なるようです。
 ブーゲンビレアとバショウの盆栽です。その他はプルメリアやガジュマル。どんな形であろうと「盆栽」である事には間違いない展示でした。

 丘を下ると、ツバキが目にはいってきました。
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 ヨーロッパでは「カメリア」として親しまれていますが、ここで見られるとは思いませんでした。品種までは不明ですが、ロウ細工のようなツバキ。
 葉の形や付き方がキョウチクトウのような感じで、花もかなり大型です。

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 芝生のあちらこちらで、シートを広げて訪れた方がくつろぐ姿がみられます。
 ヨーロッパの公園であれば、木陰の近くの花壇は草花に覆われているのをよく見かけますが、さすがに一年中暑い国は、観葉植物の植込みでした。

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 植込みの中にはブロンズの彫刻も点在しています。表情豊かな今にも動き出しそうなオブジェは必見です。あちらこちらに設置されています。どのようなオブジェがあるのか探してみても楽しいでしょうね!

 芝生広場の周囲には池があり、鯉やハクチョウの姿が見られます。

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 周辺の植物は、湿地帯に生息可能な、メガスケパスマやクレロデンドルムが花を咲かせています。
←Megaskepasma erythrochiamys 

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 大型の円錐形のピラミッドのような花で存在感十分です。
 後ろ手にはパピルスや水辺にはガマ、水面ではスイレンが花を咲かせています。
←Clerodendrum paniculatum

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 池の周囲を歩いて行くと、ここからは「ジンジャーガーデン」です。
 中南米から東南アジアに分布するショウガ科の植物が楽しめます。
 ジンジャー類は地下に根茎があり、地上に葉だけが出てきます。光沢のある緑の葉は美しく、茎には竹のような節が見られます。花は、鮮やかな色合いで独特の姿をしています。また、ほのかな香りがあります。咲いた花はその日一日しかもたないほどデリケート。花を楽しむには午前中から昼過ぎくらいまでが最高だそうです。

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↑Tapeinochilos ananassae(タペイノキロス・アナナス)  

ワックスジンジャーです。
株元から直接花序を発生させ、茎は長いもので30~50cmまで伸び、先端に円錐形で小さなロート状の筒が螺旋状に重なった塊(花の塊,写真の白い○印で囲った部分)を付けます。筒の中から光沢のある黄色い花を咲かせます。

 その他にも、美しい花が咲いています。
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(左)Costus lucanusianus
(中央)Hedychium coronarium ホワイトジンジャー
(右)Costus speciousus

 ジンジャーガーデンはその区画全体がジャングルのようになっています。
 その中に育っているジンジャー類は圧巻です。花を楽しみ、香りを楽しみながら歩いてみてはいかがでしょう。

 「シンガポール植物園」、ここまで散策してきて全体の半分。本当に広い公園です。十分な説明もできないのがとても残念ですが今回はこの辺で。
 次回もこの続きをご紹介します。
 
 5月の連休が明けると植替えの最盛期を迎えます。花壇やコンテナ類もスッキリさせて夏への準備をしっかりしておきましょう。
 日差しも強くなります。つばのある帽子をかぶり、日焼け止めもバッチリ塗って、「日焼け対策」万全で作業に臨みましょうね!

 (15/05/01掲載) 

※2015年2月から4月にかけてもシンガポール関連の記事を掲載しています。バックナンバーからご覧いただけます。

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