都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2015年07月

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花のコーナー

御園 和穂##

2015年7月 シンガポール植物園-3

 まだまだ梅雨真っただ中。この時期は湿度が高く、カビが発生しやすいジメジメした決して心地よい時期ではありません。しかし、稲作において、また山の木や庭木等植物にとっても恵の雨と言えます。
 7月中旬くらいに梅雨明けでしょうか?明けると同時に真夏の暑さが訪れます。想像するだけで「暑さ」を感じてしまいますが、真っ青な空と白い入道雲、セミの声を聞くと・・・好きな季節ではないのですが、ワクワクするような気持ちにもなります。

 今回も引き続き「シンガポール植物園」を紹介いたします。
 前回は「National orchid garden(ラン園)」からヘリコニアを見て回りました。
 今回は「Evolution garden」からスタートです。
 Evolution=進化です。

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 生命のない地球から、たった一つのバクテリアが生まれた事が私達生物の起源です。
 そして、進化と絶滅を繰り返しながら現在に至ります。45億年前に地球が誕生したと言われています。その後最初の生命は海の中で誕生しました。海の中では紫外線が遮られ、水中のみで生きられる大気や岩から海水中に溶け込んだアミノ酸などの単純な有機物が、メタンや硫化水素などと反応し原始的な細胞が生まれたと考えられています。27億年前になると、地球は強い磁気圏に包まれるようになります。よって太陽からの有害な物質が遮られたことで光合成を行うシアノバクテリアが誕生。シアノバクテリアの大量発生によって酸素を作る事が出来るようになります。5億年前に地球の周りにオゾン層が出来上がり、まずは地面を這う植物が出来上がり、その後茎を伸ばす事でより遠くへ胞子を飛ばす植物へと進化します。

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 3億5千年前になると、地球最初の森林が出来上がり、現在のような種子からの樹木ではなく胞子によって増える植物がうまれました。現在のヒカゲカズラやイワヒバ、スギナの先祖になります。石炭紀を迎え、その後の進化において胞子だけで増える樹木の時代を経て、次の時代に入ります。
 写真(上部)は石炭紀のリンボク:レピドテントロン(変な形をした樹木)で、擬木でできたレプリカですが、今のような木質化した樹木ではなく、草が巨大化したものと言われています。その後裸子植物とシダ植物が出現します。現在のソテツやシダ類の祖先になります。(写真:中段部)
 古生代、中生代、中生代ジュラ紀、白亜紀へと時代が移り変わり、植物も裸子植物から被子植物へと進化します。
 6,500万年前に恐竜を始め多くの生物が絶滅します。第三紀に入ると、哺乳類、鳥類、そして人類の祖先が現れます。植物も同様に進化し、熱帯植物が出現し、現在に至ります(もの凄く、かいつまんで説明しました)。
進化の過程を表した「Evolution garden」では植物と各時代の雰囲気を感じる事が出来ます。現在、当たり前にある植物のルーツはあまりにも壮大で、ガーデンの中にいると自分の長い歴史がホンの一瞬である事、あまりにも自分が小さい米粒のような存在である事を実感してしまいました!

 進化ガーデンを後に、次は「Healing garden」です。

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 4年前にオープンしたそうで、薬用植物が約400種類植えられており、その植物毎の効能を説明しているガーデンです。
 日本で言う、「薬用植物園」です。

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学名:Jatrpha podagrica トウダイグサ科の植物で、ナンヨウアブラギリの仲間のようです。花後にイチジクの形に似た実が付きます。
 これを利用するらしいのですが、効能に関してはよくわかりませんでした。

 ちなみにナンヨウアブラギリは高木で、同じような実を付けます。こちらの実は、現在、植物バイオ燃料として研究されているんだそうです。
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                          名前の分からない植物とランタナ

 様々な薬用植物を集めたガーデンです。散策途中だったのですが、突然のスコールで、この場を離れ雨宿りです。

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 雨宿りの先は「Fragrant garden」でした。「香りのある庭園」です。香りはもちろんですが、花の姿の面白いものや、ここでは、香りだけではなく植物の効用・用途も丁寧に説明されていました(残念ながら全て理解は出来ないのですが・・・)。

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 左の写真から 学名:Hedychium coronarium “Butterfly Ginger”白い蝶がとまっているような姿の花が咲き、夜になると甘い香りを放ちます。ショウガの仲間で、料理用としての用途もあるそうです。
 真中の写真 学名:Lonicera japonica “japanese Honeysuckle”蔓タイプのとても繁殖力の強い植物で、日本に自生しアメリカやヨーロッパに渡って帰化し、少し問題になっている植物だとか・・・。私の大好きな植物の一つなのですが。甘い香りがして、花の中に蜜をたくさん蓄えます。
 右の写真 学名:Strophanthus preussii 蔓タイプの樹木で、花びらの先端から糸のような物を伸ばす姿が特徴です。30cm以上伸ばし、途中でお互いに絡んでしまっているのですが構わないのでしょうね。キョウチクトウ科の植物なので植物自体有毒ですが甘い香りがあり、姿は不思議な様相ですが可愛い花です。

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 雷が鳴って、雨は激しく降り続いています。
 傘は持っていましたが、散策しながらカメラを濡らさないために自分はずぶ濡れです。
 余談ですが、スコールとは突発的な強風の事で、しばしば強い雨を伴うものなのだそうです。
 雨で花の香りは楽しめませんでしたが、珍しい花を見ることができました。

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 次は「Fobage garden」、葉を観賞するタイプの植物を集めているガーデンです。
 カラーリーフは日本でも花壇やコンテナなどで注目されている植物です。
 夏場の暑い時期に元気に育つ植物が多いので、是非、参考にしたいものです。葉の形や色合い、配置デザイン等興味津々です。

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 Eupatorium(ユーパトリュウム)の仲間のCostus(コスタス)、Cordyline(コルディリネ)、Dracaena(ドラセナ)、Pandanus(パンダヌス)。観葉植物はある程度知っているつもりでしたが、見慣れた植物と「これは何?」という植物も沢山ありました。
 私が作ってきたガーデンでは季節を選んでしまう植物を沢山使ってきました。また、温室の中でも制限があって難しい植物配列もあります。ですが散策している内に「ぜひ作ってみたい!」って気分にさせられました。
 雨もやんだようです。ガーデンも終盤です。次は「Bougainvillea」で、今までのような仕切りはなく芝生広場の周囲にドーンと生育していました。
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                        Bougainvillea spectabilis “Calcutta”
 高さ10mを超える大きさです。支えているパーゴラは大丈夫?下のベンチで休憩する気持ちにはなりませんでしたが、花(顎の部分)は全体に咲いていて見事でした。ブーゲンビレアは蔓を伸ばして絡み合って生育します。株元はかなりの太さでした。
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 その他、ピンクに赤に白、斑入りの葉の薄いピーチ色と賑やかな色合いです。
 香りは感じられませんが、花(顎の部分)の色合いを楽しめます。暑い戸外でベンチに座って休憩するには落ち着ける場所ですね。

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 芝生広場の通路を挟んで対面に見えて来たのは「Bamboo」。竹の見本園です。
 私達の生活の中で「竹類」はどこでも見られる当たり前の植物ですが、いろいろな種類があるのはご存知でしょうか?
 笹系に始まり大型のモウソウ竹系までが、植付けられています。

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 左の写真は 学名:Bambusa lako “Timor Black Bamboo”で、住宅の庭園などでも見かける黒竹です。新芽は緑なのに皮が剥げてくると黒くなる不思議な竹です。
 真ん中の写真は 学名:Schizostachyum brachycadum “Buluh nipis”バリ島の竹とかインド竹という意味なのだそうです。孟宗竹より葉が広く、若竹は食用にしているとの事です。インドネシアで多く生息していて竹細工を作る材料になるとの事でした。
 右側の写真の竹の名前はわかりませんでした。15m以上あるでしょうか、放射状に広がった竹の姿は圧巻です。

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 学名:Pogonatherum crinitum “Bamboo Grass”
 背は低く葉は柔らかいですが竹の仲間で芝生のような使い方をするようです。
 私達が行っている芝生に施すような管理の必要はないようです。用途に合わせれば、芝生の代用や苔(少し粗めですが)の代用でも使えるかも知れませんね。
 この竹(笹のような)は園路の両サイドに植えられていました。ちなみに園路は「那智黒石」によく似ている小石が張られていました。
 同じ植物でも「所変われば~」ですね。とても勉強になります。

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 休憩施設は大型のパーゴラが設置されていて、蔓タイプの植物を巻きつかせています。オレンジ色の手毬のような花は 学名:Bauhinia kackiana マメ科の植物で和名イロモドリの木と言われます。
 開花当初の花びらは黄色で受粉をするとオレンジ色になります。そして実を付けるとき花びらの色が黄色に戻ります(ここからイロモドリと言う和名が付きました)。
 小さい花が手毬のようにまとまる事でより多くの虫を引き付けるのだそうです。

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 パーゴラで一休み。そこから見える池では水鳥が遊んでいます。シンガポール植物園の最後の場所になりました。
 あまりの広さに全てを見ることは出来ませんでしたが、たくさんの刺激を受けました。
 実は、南国の植物(観葉植物やラン類など)は一年中いつ訪れても花等は見ることができると思っていましたが(もちろん周年花は楽しめますよ!)、少し考え方が変わりました。

 確かにヨーロッパの花壇やコンテナのように色鮮やかでその都度入れ替わるような事はありませんが、一年中気温が変わらない場所には、その特徴を生かしたものが見られました。当たり前の事ですが、その当たり前がとても魅力的で素晴らしく感じられました。

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 帰りのゲートへ向かう途中にある子ども専用のガーデン「jacob Ballas Children's Garden」です。12歳までの子ども達が、遊びながら新しい発見や学習体験が出来る子ども専用の公園です。
 入場できるのは子どもとその親のみ。私達のような見学者は中に入る事は出来ません。 
 水遊びの場があり、小さなグラウンドがあったり、子ども達が生命科学の分野に興味を持つように、光合成の勉強が出来たり、ハンドルを回すと発電するような仕組みになっていたりと自然と調和して遊びながら学べるスペースもあるそうです。
 また大型のツリーハウスなどもあり、ハウスからは大きな滑り台で滑りおりてきてはネットをよじ登り、またツリーハウスの中を自由に駆け回れるようになっているそうです(パンフレット参照)。 
 私達は当然中には入れません。外からでも覗いて見たかったのですが、残念ながら覗けないようになっていたのと、休園日でした。

 ちょっと悔しい気持ちを抑えつつ帰りのゲートへ向かいます。途中、「Nat Garden」(果樹ガーデン)があり、「Beverrage Crops」(飲料作物)などの植物が植えられているスペースもありました。本当に沢山の植物を見ました。

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 「ラン園」と「子どもの公園」、それ以外は全て無料区域で、規則を守れば小動物を連れて入る事ができます。
 日本では中々難しい事なのかもしれませんが、いつかこの様な公園が出来ると素晴らしいですね!

 私にとっては帰りのゲートです(何ヶ所か出入りできるゲートがありました)。これまた素敵な門扉でした。
 また訪れる事が出来ればよいのですが・・・楽しい散策でした。

 今回は少し長いシンガポール(ベイサイドから植物園まで)の紹介になりましたがこれでおしまいです。だいぶ端折っての説明でしたが楽しんで頂けましたでしょうか。もしもシンガポールを訪問する機会があったら是非立ち寄ってみてください。

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 これから暑い夏がやってきます。
 草花の管理がとても大変な時期になります。
 大切に育てている草花ではありますが、どうぞ、熱中症や熱射病にはくれぐれも気をつけて作業をされてください。草花は植え替えられますが、人間は入れ替えできませんからね!

 (15/07/01掲載) 

※2015年2月から今月にかけてシンガポール関連の記事を掲載しました。2月から6月分はバックナンバーからご覧いただけます。

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