都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2015年09月

a:5269 t:1 y:2

花のコーナー

御園 和穂##

2015年9月 種子の話

 今年の夏は、遅い梅雨明けと同時に恒例になった連日の猛暑。梅雨に比べると湿度も下がってきてはいるようですが・・・猛暑にジメジメは慣れないものです!
 8月もお盆が明けてからはなんとなく季節が変わってきたかな~と感じるようになりましたが、まだ暫くは残暑が続きそうです。
 草花類の傷みが激しい場合は、軽く切戻して薄めに肥料(液肥が効果的)を与えておきましょう。
 ゆっくりと回復して、晩秋まで楽しめます。

 今回は「種子」の事を紹介しましょう。
 「種子」とは、辞書によると『種子植物の胚珠が受精後発達したもの。種皮に包まれ、胚とそれを養う胚乳をもち、一定の休眠期間後発芽し新個体となる』と、記載されていました。難しいですね。ようは「たね」です。
 種子の起源は・・・シダ植物とされています。

画像の説明

 化石として葉の表面に種子を並べたようなシダ植物が発見されています。
 本来は、葉の上に胞子を作り、胞子が飛び散って湿った地面に付着し、雌・雄の機能を形成しながら植物体が成長します。進化の過程でシダ胞子の機能が少しずつ変化し、大胞子嚢が胞子嚢から出る前に発生するものを保護するための覆いが発達したものが種子の起源と言われています。
 はっきり言って「よくわからない・・・」。です。
 起源は理解し難いですが、簡単に言えば「繁殖に利用される『生きた植物』という事です。
 人が植物を栽培するようになり、翌年も同じ植物を育てるために種を採り、保存して季節がきたら播種をするようになりました。その後、より良い植物を望む事から品種改良が進み、現在の園芸品種が生まれました。
 その種にとって、発芽しやすい条件が与えられれば必ず発芽します。用土も種まき用専用があります。
 では、自然界で種はどうやって生育するのでしょうか?
 親植物が育っている場所は、その植物にとって一番良い環境です。
 親の株元に種子(子供)が落ちて発芽する事が一番安全で、一番簡単な方法ですが、その場所で生育していくためには親株と競争をしなくてはなりません。  
 合わせて植物自体の分布も限られた場所のみに限定されてしまいます。そこで・・・
 基本、種子は移動能力がありません。子孫繁栄を含めて、種子は「何かに頼って」散布する方法を進化させた結果様々な形になりました。まずはその方法を知りましょう。

何かに頼って散布をする方法

・風による散布

画像の説明 画像の説明

 マツの種子です。
日常どこでも見かけるマツです。種子はマツカサの中に入っていて、日が当たりマツカサが乾燥して開いてくると中に入っていた種子が飛び出してきます。

 種子は片方が長くのび、薄い皮膜の羽のような姿になっています。種は黒っぽい部分で2~3mm程度の大きさです。
 空中に出た時、風にのってプロペラの役目をしながら回転して飛んで行きます。

画像の説明

 モミジの種子です。
 花が咲いた後に実を付けます。この実が晩秋、落葉とともに風にのってクルクル回転しながら運ばれていきます。(白い○が種子です)森の中であれば、落ち葉の中に入り込んで翌春に発芽します。

画像の説明

 タンポポの種子です。
 よく目にしますね! 綿帽子がふんわりと飛んでいきます。時には私達が、綿帽子に息を吹きかけ種子を飛ばす事もあります。その飛距離は10㎞にもなるそうです。

 風を利用してあちらこちらへ種を飛ばす植物は、キク科やイネ科のススキ類などもその仲間です。

・動物による散布
これはいくつかの方法があります。

1)鳥などが実を食べて、排せつする事で遠くに運ばれていき発芽するパターンです。カラスがオリーブの実や貝殻を食べて排せつした場所からオリーブの芽が出る事もあるそうです。イタリアンなカラスですよね。
 また、ナンテンやナナカマドなどの実(冬場の実)をヒヨドリなどが食べ、排せつする事で遠くまで運ばれます。

画像の説明

2)ドングリのような実は小動物がエサとして採取し、穴を掘って埋め、そのまま忘れてしまった実物が発芽するパターン。
 また、丸い形の種子は大量に実を付け、時期が来ると落ちるのですが、落ちた勢いで転がっていくのも一つの方法のようです。

↑ドングリの発芽の様子です。

画像の説明

3)動物の体(犬などの体毛について)について遠くまで移動するパターン。
 右の写真は、散歩中に犬が草むらに入り込んで、出てきた時の姿です。微笑んでしまう姿ですが・・・取り除くのに一苦労しそうです。体中センダングサやひっつきむしがいっぱい。(ネットより写真参照)
 取り除くのも大変な作業ですが、ひっついた場所からはかなり遠くまで種子を運んだ事になりますよね。
 また、私達の衣服にも付着します。セーターや靴下に引っ付いて、中々取れなくて母に叱られた事を思いだしました。
 代表的な「ひっつきむし」。なんで虫ってよぶのか?はわかりませんが・・・①センダングサ ②オオオナモミです。

画像の説明  画像の説明
①センダングサ       ②オオオナモミ

4)動物に運んでもらう種子の最後は「エライオソーム」といって、脂肪分を含むアミノ酸や糖物質が種に付着しており、これが蟻の餌になります。蟻が巣穴まで運びこみ、脂肪分を食べた後、種は巣穴の周辺に捨てられます。

 このように動物などに手助けをしてもらって、遠くへ散布してもらいます。

・水(川)や海流にのって

画像の説明

 水は物を運ぶのに大きな力を持っています。風に乗って飛んできた種子が川に落ちた場所から水の流れに乗ると、どこかの岩場や体積している土砂のある場所まで運ばれます。
 海流の場合は、「名も知らぬ遠き島より流れ寄るヤシの実一つ♪」のフレーズは有名です。ヤシの実のように表皮が海水(塩分)に耐えられ、水に浮く事が条件です。ごく一部の限られた植物に見られます。(写真:図鑑参照)

・何かに影響を受けて種子を飛ばす

画像の説明

 ホウセンカは皆さんもよくご存知の植物です。花が咲いた後、ピスタチオのような実をつけます。パンパンに膨らんで、ほんの少しの刺激で「ポン!」っと音がして、表皮が外側に広がり、表皮も種と一緒に飛び跳ねて遠くへ飛んで行きます。他の植物でも炭酸の缶を振ってから栓を抜くと、勢いよく炭酸の泡が出るように噴出する種子もあります。

 様々な方法によって種子はあちらこちらへ運ばれます。到達した場所が好条件とは限りません。長い進化の過程で淘汰され、植物ごとに種の形を作り出し生き残ってきたわけですね。
 私達が通常使用している種子は園芸品種として、品種の固定がなされており、病気やキズなどのない品質良好な物を使っています。播種される過程は自然界の物とは少し異なりますが種子は同じです。
 毎回、種まきをする時は種の大きさと形を確認しながら「面白いな~」と今更ながらに感動しています。
 実は学生の頃、「種の試験」があり、とても苦手でした。週末に長テーブルが設置され100種類程の種が瓶に入って置かれます。一週間後その中から10種類を選択されて個々に「何の種(学名・英名・科名・和名)」を問われるのです。
 ツラッ~と眺めていても覚えられません。当時は一つ一つをよく観察して特徴をとらえながら絵に描いて覚えました。
 辛かった分、今でも種には興味を持っています。残念ながら種の大半は忘れてしまいましたが・・・。

 よく見かける草花の種を紹介しましょう。
 夏から秋の花壇の代表選手。

《マリーゴールド》です。(白い丸印で囲った箇所は種が出来る部分です)
画像の説明 画像の説明
・種の長さは1.0〜1.2cm程度。
花が咲いて、終わりになると子房の部分が膨らんできます。その後、種が出来上がります。

《ペチュニア》(白い丸印で囲った箇所は種が出来る部分です)
画像の説明 画像の説明
・種は微細で1㎜程度。丸型でベタベタしている。熟すと弾けて種を飛ばす。

《ヤグルマソウ》
画像の説明
・種の長さは5㎜程度。先端の毛が特徴的。

《ヒャクニチソウ》
画像の説明
・種の長さは6〜7㎜程度。お米を潰したような感じ。

《バーベナ》
画像の説明
・種の長さは5㎜程度。棒キレのような形。

《キンセンカ》
画像の説明
・種の長さは5㎜程度。アンモナイトのような形。

《マルヴァ モシャタ》
画像の説明
・種の長さは2㎜程度。丸型で一部くぼんでいる。

《カレックス》
画像の説明
・種の長さは3㎜程度。モミのついた米に似ている。

 
 如何でしょうか。種の形って面白いでしょう!
 これらの小さい種から、高さ50~100cmになろうかという植物が育つわけです。

画像の説明

 多くの種子は、種子の中の植物体は休眠状態にあります。種の状態で発掘された古代ハスがあります。(写真:図鑑参照)
 落合遺跡から発掘され、縄文時代の船だまりに生息していたと言われています(大賀ハス。※2014年9月の花のコーナーでも紹介しております)。
 今から約2000年前のハスの種子が3粒、その一つが発芽して花を咲かせました。
 種子は種類にもよりますが、すごく長く保存が出来るもの、短い間しか保存が出来ないものと様々です。
 実は種子が休眠に入る仕組みや、休眠が維持される仕組み、休眠が打破される仕組みはあまりにも複雑で解明されていない部分が多くあるそうです。
 また、私達が通常播種する種は好条件下で発芽しますが、自然界の種子は運搬された後、全ての種子が一斉に発芽するわけではありません。
 発芽条件が整っていても、生長過程で何かがあった場合全てが枯れてしまう恐れがあります。それを回避するために休眠状態で留まる種子もあると言われています。どの条件で休眠し、いつ休眠が解除され発芽するのかは植物によって異なります。種子って神秘的なものだと思いませんか。
同時にとても「たくましい生命力に満ち溢れた物」だと思います。
 最近は、種を蒔いて苗を育てるより、花になったもの(花苗)を植え付けて育てる事が主流になっています。もちろん手間と時間をかけて丁寧に育てる方もいらっしゃいます。
 私も手に入りにくい花苗や簡単に育苗できる苗は播種をしますが、殆ど、花苗になったものを購入しています。
 未だ、発芽に失敗して悲しい思いもしますが、種子の形を楽しんで、土の中から小さい芽が出てきた時の喜び、ポット上げして少しずつ大きくなる苗を眺めながら、花が咲くのを待ち望むのもガーデナーの楽しみの一つですね。

 9月は秋蒔きの播種の時期です。好きな花の種を購入して、少しだけ種まきに挑戦してみませんか。
 若干手間と時間がかかりますが・・・楽しいですよ~。
 まだ暫くは残暑が続きますが、過ごし易くなってきます。疲れた体も十分に休めてください。

 (15/09/01掲載) 

powered by QHM 6.0.9 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional