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花のコーナー 2016年09月

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花のコーナー

御園 和穂##

2016年9月 サルスベリ

 厳しい残暑が続いています。
 8月、お盆を境に「朝晩はなんとなく凌ぎやすくなるかな」と思うのですが、今年は一向に変化なく、日差しの強い暑い毎日が続きました。
 暑さに加えてまとまった雨もなく、街路樹や庭木は葉を落として水分調整をしています。花壇、コンテナの草花類はグッタリですね。
 でも大丈夫!これから涼しくなってくると徐々に回復してきます。 
 減らしていた肥料を増やし、しっかり水を与えていると、新しい芽が伸び始め開花します。これからの季節はゆっくり生育し、一つの花が長く楽しめます。
 今月末の秋の彼岸を境に、涼しくなってくるでしょう。今しばらくの辛抱です。
 
 今回は真夏から初秋まで元気に咲き続けるサルスベリを紹介します。

サルスベリ

画像の説明

学名:Lagerstroemia indica 
科名:ミソハギ科 落葉高木
別名:百日紅(漢字表記)、紫薇(シビ)、怕痒樹(ハヨウジュ)、さるなめり等。
原産地:中国。

 日本へ渡来した時代は定かではありませんが、※大和本草に記載されていることからそれ以前であったと思われます。

※大和本草:1708年に貝原益軒が編纂した本草書。明治時代に生物学や農学の教本が輸入されるまで、日本史上最高峰の生物学書、農学書であった。当時の日本独自の生物学や農学を知る上において第一級の資料。

 開花期は7月から10月一杯。高さ2mくらいから10mくらい。
 真夏を代表する花木の一つです。

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 ミソハギ科のサルスベリ属は熱帯から暖温帯までに分布し、日本のサルスベリは寒さに強く北海道南部まで生育しています(サルスベリ属の北限です)。また、南西諸島(種子島や屋久島)などにはシマサルスベリが自生しています。
 花色はピンク、紅、白、赤紫などがあり、庭木、街路樹、公園樹として植えつけられています。
 春から伸びた枝先に花芽をつけます。葉は楕円形でつるりとした形で光沢があります。

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 花は茎の先端の円錐花序につきます。1つに6枚の花弁で、縁が波打ってフリルのように見えます。花径は3~4cm程度。とても華やかです。
 花は一日花ですが、次々と開花するので夏の間絶える事がありません。
 名前(漢字表記)の「百日紅(ヒャクジッコウ)」は100日間咲き続ける事から付けられたと言われています。

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 花後は、球形の果実を付け、熟すとタネになります。タネには薄い羽がついていて、モミジやカエデ類のタネとよく似ています。

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 幹にも特徴があり、樹木が成長すると同時に樹皮が剥がれ落ちて独特のまだら模様になります。
 触るとツルツルしていて、木登り上手な猿も滑ってしまう事から、「サルスベリ」(猿滑)と名前がついたとも言われています。
 カリンやナツツバキ、ヒメシャラなどの樹皮も肥大成長とともに縦に裂け、灰褐色から茶褐色になるものが多いです。サルスベリは薄片状に剥げて、剥げた個所が灰褐色や赤褐色のまだら模様になります。

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 サルスベリには別名も多く、先の「猿滑」とは別に「クスグリノキ」「ワライギ」「怕痒樹(ハヨウジュ)」などとも呼ばれています。ツルリとした幹肌をくすぐると葉や枝がくすぐったそうに揺れる事から呼ばれているそうです。
 実際に触ってみましたが・・・風に揺れているのか?くすぐったのか?少し揺れたような気がしました。
 また、春になると公園や街路樹などの落葉樹は一斉に展葉しますが、サルスベリは芽吹きが遅く、5月に入らないと展葉しません。7月から10月にかけて花を咲かせた後、すぐに葉が黄色くなり、あっという間に落葉します。この様子から「なまけものの木」とも呼ばれているそうです。

 悲しい伝説もあります。
 ある漁村に、夏の水難防止のために若い娘を龍神の生贄にする風習があり、ある年、生贄の儀式に遭遇したこの国の王子が龍神を退治し、人身御供になるはずの娘を救います。その後100日後に再開の約束をしますが、娘は亡くなってしまいます。100日目に訪れた王子は墓前で慟哭します。すると娘の墓の傍に2本の樹木が生え、赤と白の花を咲かせました。花は100日間咲き続け、娘の切ない恋心の化身であろう、という事で「百日紅」と名付けられたそうです。

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 伝説を知ってサルスベリを見ると、見方が変わりますね。
 樹の特徴として、幹は曲がりやすく枝分かれします。樹冠は不整形になりやすく、株元からも萌芽枝が出やすく、その枝にも花を咲かせます。
 比較的堅強な樹木ですが、大気汚染に弱く、日当たりの悪い場所だと花付きが悪くなります。
 材は固く、床柱や櫛などになるそうです。品種によっては塩水に強く、カヌーの材料にもなるそうです。

~サルスベリの育て方~

【剪定】
 サルスベリは春から伸びた枝先に花を付けます。花が終わって、出来れば実がつく前に花柄摘みをします。晩秋から初冬に落葉し、剪定の適期は1月~3月になります。昨年花を付けた枝(本年枝)の付け根から2~3cmくらい残してバッサリと切ってしまいます。枝を短く切っておくことで、春先から勢いのよい長い枝が出ます。
 先端だけを切り詰めるような剪定をした場合、春先から伸びる枝は貧弱で花付きが悪くなります。春咲きに新枝と同時に株元からも勢いよく枝(ヤゴ)が伸びてきます。弱弱しい枝は地際から取り除いてしまいましょう。
 剪定は、毎年本年枝を切り詰めるので、ほぼ同じ位置を剪定することになります。繰り返していると、その部分が「こぶ状」(ゲンコツのようになる)になってしまいます。
 サルスベリは落葉後の樹形や幹肌も楽しめます。しかし、先端の「こぶ」が見かけを悪くしてしまいます。
 数年に1回は「こぶ」の部分を切り落とします(「こぶ」の手前で切除します)。

【肥料】
 地植えの場合、「冬の寒肥」(油粕と骨粉を混ぜた有機質肥料)を与えます。その他の肥料はいりません。
鉢植えで育てる場合は、枝の伸びる5月と開花中の8~9月にゆっくり効果の現れる緩効性化成肥料を与えます。

【植え付け、植え替え】
 休眠に入る前の10月~11月、もしくは3月~4月が適期になります。

【増やし方】
 挿し木もしくは種まきです。挿し木の適期は3月~4月。前年から伸びた枝先を20cm程用意し、切り口を1時間ほどつけて水揚げさせます。その後赤玉土に斜めに差し込みます。発根するまでは半日陰で用土は乾かないよう育てます。
 その後、6月ごろに1本ずつポット上げします。
種まきは春に行います。発芽するまでは用土を乾かさないように管理します。発芽して花が咲くまで数年かかります。

【病害虫】
 病害虫には強い方ですが、「カイガラムシ」(白っぽい綿のような害虫)の発生と、葉や茎が白い粉を叩いたようになる「うどんこ病」にかかりやすいです。
 基本は風通しを良くし、日当たりが良いと病害虫は発生しにくくなります。冬の剪定の際に枝が混み合わないように切りましょう。

●シマサルスベリ L.subostata

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 台湾サルスベリとも呼ばれて、屋久島から台湾にかけて自生しています。
 写真は小石川植物園のサルスベリの並木です。落葉後の樹形は迫力満点です。
 荒々しい雰囲気ですが、葉が茂り花が咲くと見事な並木になることでしょう。
 残念ながら開花している姿は見たことがありません。一度見てみたいものです。花色は白です。

●一才サルスベリ 

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 サルスベリの矮生種です。多くの園芸品種が作られていますが、コンパクトで鉢物でも十分に楽しめます。
 高さ50cmくらいから2m程度。一度開花した後、地際から剪定をすると秋口から再度花を咲かせます。
 あまり見かけない品種ですが、公園の花壇脇や中央分離帯などに植え付けされています。
 一才サルスベリは、実生からでもよく育ち、播種して翌年から開花します(播種後一年目で開花品種:アスカ)。

●オオバナサルスベリ(L.speciosa)
 熱帯からオーストラリアに分布。ジャワサクラとも言われ花は7cm程もある大きな花を付けます。花色は紅紫、白色です。

●ムラサキサルスベリ(L.×amabilis)
 サルスベリとシマサルスベリの雑種と言われ、樹高はあまり高くならないタイプです。花色は薄い紫と白花です(樹高3~5m程度)。
 
 サルスベリには様々なタイプがあります。現在でもアメリカでは品種改良が盛んで、定番以外の花色や八重咲きタイプ、耐寒性や矮生タイプと今後が楽しみな花木です。

画像の説明

 以前に紹介したキョウチクトウ(2015年8月掲載)やノウゼンカズラ(2012年8月掲載)も、暑い夏から秋にかけて元気に開花する植物です。花の少ない時期に鮮やかな花を楽しませてくれます。
 サルスベリは10月くらいまで開花していると思います。
 結構身近に植わっています。ツルッと幹に触れてみてください。
←白花のサルスベリ   

 
 今年はラニーニャ現象で猛烈な暑さの夏を迎えました。こんな年の冬は寒くなるといわれています。平均気温は例年通りだが、低温などの厳しい寒さが順繰りにやってくるらしい・・・という予報も耳にしています。
 年々気候変動が激しくなってきているようです。これからは植付け植物の選択にも変化が出てくるかも知れませんね。
 「暑さ寒さも彼岸まで」。秋の彼岸もすぐにやってきます。暑さももう暫くの辛抱です!
      

 (16/09/01掲載) 

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