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花のコーナー 2016年10月

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花のコーナー

御園 和穂##

2016年10月 モクセイの仲間

 暑かった夏もようやく終わって、過ごしやすい季節が来ました。
 8月、9月といくつもの台風が通過し、台風シーズンが終わると清々しい秋晴れが続くようになります。
 本当に暑い夏でした。草花も樹木も随分枯れてしまったようですが、草花は晩秋まで楽しめるタイプに植替えるか、もしくは花壇内の枯れた植物を取り除き、土は改良材を加え、攪拌(カクハン)、均(ナラ)してそのまま放置して休ませてあげると良いでしょう。

 今回は、これからの季節に香りを楽しませてくれるモクセイ科の花木を紹介します。
 モクセイ科は世界中で約30種あります。主にアジアに集中しています。
 この季節、香りがよく庭木としても親しまれているキンモクセイから紹介します。

キンモクセイ(金木犀)  

画像の説明

学名:Osmanthns fragrans var.aurantiacus
モクセイ科モクセイ属の常緑高木。
原産地は中国桂林地方。

 日本へは江戸時代の初期に中国から渡来したといわれていますが、ハッキリとした記述がなく、日本に自生しているウスギモクセイ(ギンモクセイの変種と言われている)から生まれたとも言われています。
 私たち日本人には最も馴染みのある香りだと思います。
 暑さが一段落して、空が高くなった頃にどこからともなく優しいキンモクセイの香りが漂ってくると、季節が秋になったと感じます。
 春のジンチョウゲ、秋のキンモクセイ。香りで季節の変わり目を知らせてくれる花木です。
 キンモクセイは、雨が降りそうな少し湿度が高くなる時、特に香りが強くなります。
 名前の由来は、樹皮がサイ(動物の犀)の皮膚に似ていて、黄色(金色)の花を咲かせる事から「金木犀(キンモクセイ)」の名がついたといわれています。
 学名は「Osmanthns fragrans var.aurantiacus」、オスマンツス・フラグランス ワリエタス オウランティアスクと読みます。
 属名のオスマンツスはギリシャ語でオスメ=香り、とアンサス=花、の重なった言葉で「香りのする木」という意味です。
 種小名のフラグランスは「良い香りのする」、変種名(Var.)のオウランティアスクは「橙黄色の」の意味を持っています。

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 葉はやや硬く、縁が波を打ったような形をしているものと、鋸歯(ギザギザ)があるものとがあります。形は幅2~4cm程で長楕円形、先端は尖がっていて、葉裏は淡緑色です。

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 本来雌雄異株で実がなりますが、日本に生息しているキンモクセイの殆どが雄木です。
 私も実は見たことがありません。
 写真は植物図鑑から拝借いたしました。オリーブの実に似ているようですね。この後黒く熟してくるそうです。
 食べられるのかどうか?はわかりませんが、以前に台湾のお土産でキンモクセイの香りがして、ハスの実や栗が入っている月餅を頂いた事があります。もしかしたらキンモクセイの実も混じっていたかも~。

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 日本に渡来した時点で雄木のみだったようです。理由は雄木は花つきがよいので好まれたのでしょう。その後の繁殖は挿し木です。
 日本各地で見られるキンモクセイは全て同じ形態です(クローンですね!)。
 もし、土地によって葉の寿命に差があるとしたら、それは育っている環境の違いによるものでしょう。
 キンモクセイは、排気ガスなどの大気汚染に敏感で、空気の悪い場所では花が咲かなくなったり、開花しても香りが弱くなったりします。
 葉の表面が汚れる事が原因と言われています。
 公園ではよく見かけますが、街路樹で見かけないのはこのせいでしょうか。
 また、「雨の多い年は花付きが良くなる」とも言われています。
 これは葉の表面が洗われるからなのでしょうか?定かではありませんが、キンモクセイを生育させる時に、「時々樹木全体に水をかける」と花付きが良くなるとは言われています。

画像の説明

 花木なので、剪定はいつ頃?とよく聞かれます。
 剪定は毎年行う方法と3~4年に1度行う方法があります。
 毎年行う場合は新芽が出る前の2~3月、もしくは開花後の10月頃です。
 花の咲き終わった枝を枝分かれしている部分から5~10cm程度の所で切ります。
 一般的には円錐形や縦長楕円に刈り込んでいる樹形を見かけます。
 適期であれば多少切り詰めても大丈夫ですが、葉がなくなる程まで剪定すると枝が枯れてしまう恐れがあります。コンパクトにしたい場合は毎年ある程度の剪定を施しながら整える方がよいでしょう。ただし、放任している木の比べると花数は少なくなります。
 3~4年に一度剪定の場合は、新芽が出る2~3月に長く伸びた枝を以前切った位置まで切り戻します。この場合、剪定を施した年の花数は減りますが、翌年からは普通に花を付けます。
 2つの剪定方法以外に、間延びして樹形から飛び出した枝や突き出た枝を剪定することもあります。その場合は枝どうしが重なり合って混み合っている部分を風通しを良くするために透かし剪定は適宜行うと良いでしょう。
 キンモクセイの花の形成は、春に伸びた新芽に8月上旬ごろ花芽分化を起こし、その年の秋に開花します。花木の中でも花芽分化から開花までが最も短い樹木だといえます。
 植付けは日当たりの良い場所を好みます。土質は選びません。油粕などの窒素分の多い肥料を多く与えすぎると葉はよく茂りますが、花付きが悪くなるので要注意です。
 そろそろ花が咲き始めます。
 キンモクセイの香りを楽しんでください。合わせて黄色い花を使ったお茶も楽しんでみませんか。
 キンモクセイの花(蕾から咲き始めくらいがよいです)を適量摘みます。
 気になる方はサッと水洗いします。気にならない方はほこりを飛ばす程度で使用します(乾燥させてからでもOK。市販で花の乾燥した品物もあります)。
 お茶は紅茶のダージリン茶葉やウーロン茶葉を使います。発酵の浅いタイプの茶葉が最適です。
 茶葉2に対してキンモクセイの花が1の割合です。混ぜ合わせて90度くらいのお湯を注ぎます。香りを楽しめるお茶の出来上がりです。
 「Made in自宅の庭の花」だったら安心して飲めますね。

次は、姿形はよく似ています。
ギンモクセイ(銀木犀)

画像の説明

学名:Osmanthns fragrans
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。
原産地は中国。中国名は桂花。

 ギンモクセイは江戸時代初期に中国から渡来しました。
 材がかたく、とても緻密だったことから、そろばんの珠や櫛、将棋の駒などに加工されて使われてきたそうです。
 
 本来、モクセイといえば「ギンモクセイ」を指しますが、私の周りで見かけることはありません。
 樹形や花の形、咲き方を観察するとキンモクセイそっくりです。じつは前述のように、ギンモクセイの変種がキンモクセイとも言われています。
 葉はキンモクセイより大きめで長楕円、鋸歯(葉の縁がギザギザしている)があり、触ると痛いです。花の色は「白」で、香りは樹木の傍にいくと「あ~咲いているな」と感じる程度の香りです。
 キンモクセイとの違いは花色と葉のギザギザ、香りが弱いことでしょう。
 多分花のない時期にこの二つの樹木を遠目で見たら、区別がつきにくいかも知れません。
 剪定や管理の方法はキンモクセイと同じです。
 株も雌雄異株で、残念ながら雄木のみなので、身近で実を見ることはなさそうです。
 高校の修学旅行で妻籠宿を訪れた時(多分10月の上旬)、樹木全体に白い花を付けている大木を見ました。当時は樹木など全くわかりませんでしたが、現在は「県の天然記念物」として登録がされているギンモクセイでした。
 今でも「白い花」の印象が強烈に記憶に残っています。
 もう一度見てみたいものです。

こちらも似ています。
ヒイラギ

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学名:Osmanthus heterophyllus
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。
原産地:台湾、日本(福島以西本州、四国、九州、沖縄)
別名:日本桂花 方言で鬼刺しとも呼ばれています。

 みなさんもよくご存じのように、節分の時には、ヒイラギの枝にイワシを突き刺したものを玄関に吊るす風習があり、鋭い棘をもつ葉が古くから魔除けとして親しまれてきました。
 日本の民話に「腹をすかした鬼がイワシの匂いに誘われてやってくるが、ヒイラギの棘が痛くて恐ろしいため近づけなかった」というお話もあります。
 名前の由来も、葉の縁の鋭い棘に触るとヒリヒリすることから「ひいらぐ」(痛いとい意味)=「ヒイラギ」と呼ばれるようになったそうです。
 生育場所は半日蔭の水はけのよい場所を好みます。生育は遅く、庭木としては「縁起木(魔除け)」として植えられます。
 最近は葉に斑の入った園芸品種も多く見かけます。
 材は固く、鉋(カンナ)の台や鉈(ナタ)の柄に使われています。
 ちなみにクリスマスに飾る西洋ヒイラギは、モクセイ科の植物ではなくモチノキ科の植物で、よく似ていますが異なります。

最後にギンモクセイとヒイラギの雑種とされている樹木です。
ヒイラギモクセイ

画像の説明

学名:Osmanthus × fortunei
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。
原産地は中国。

 公園樹や庭木としてよく見かけます。特に生垣として使われています。
 葉の大きさや形はギンモクセイに似ていますが、葉脈がしっかりしているので硬い感じがします。
 また縁はギザギザで棘になっているのはヒイラギの性質を受け継いでいると言われています。
 キンモクセイ、ギンモクセイ同様、雌雄異株です。花は咲きますが、実はなりません。
 花は「白」。木は生育旺盛で、目隠し用の生垣は定期的に剪定をする事によって目の詰まった整形された姿になります。よって、花を見ることが少ないのは剪定によるものかもしれません。
 ヒイラギモクセイは生垣以外にも庭木として植えられます。剪定時期を守り、ある程度放任すれば花は咲きます。香りはギンモクセイよりやや弱いのですが、良い香りがします。
 また、葉が固く葉脈がしっかりしているので、葉肉を取り除き葉脈だけにしてしおりにして楽しんだ経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。

 今回紹介しましたキンモクセイ、ギンモクセイ、ヒイラギ、ヒイラギモクセイは、全て同じモクセイ科の個性のある花木(樹木)です。
 香りが楽しめるのは、ほんの2週間程度です。
 一年をかけて生育し、ほんのひととき「花と香り」を楽しませてくれます。
 これから暫く良い季節です。散策をしながら「秋の到来を告げる花木」を探してみてください。
     

 (16/10/01掲載) 

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