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花のコーナー 2016年12月

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花のコーナー

御園 和穂##

2016年12月 秋の名残の植物とナンキンハゼ

 今年もカレンダーが最後の一枚になりました。
 一年を振り返ってみましょう。
 1月下旬、マイナスという低温が数日続き、あまりの寒さで草花に傷みがでてしまいました。3月、徐々に暖かくなり、例年どおりの春を迎えました。
 4月、5月は気持ちの良い天候でしたが、梅雨に入ると局地的な大雨で災害が発生しました。
 梅雨明けと同時に連日35℃を超える猛暑に見舞われ、雨もほとんど降らず街路樹や花壇の草花は枯れ始めてしまいました。8月下旬にはまとまった雨が降ったのですが、程よい雨ではありませんでした。
 9月に入ると雨が降り続き、蒸し暑い梅雨のような天候が10月の半ばくらいまで続きました。曇りの日が多く日照不足による植物への影響が出始めました。 
 秋蒔きの種まきにも影響がでました。
 11月に入るとさすがに寒くなってきましたが、例年に比べれば暖かい日や暑い日もありました。
 植物を育てる中で、気温や日照は生育に大きく影響を与えます。ここ数年随分様子が変わってきたような・・・。将来の話ではありますが、育てる植物が少しずつ変化をしていくのでしょうか?
 
 今回は秋の名残り植物とナンキンハゼを紹介します。
 今年は酷暑で草花は瀕死の状態でしたが、秋から元気を取り戻し11月には見ごろを迎えていました。もったいなくて植替えに躊躇された方も多かったのではありませんか。それでも12月上旬には思い切って植え替えましょう。

白花夕顔(夜顔:ヨルガオ) 

画像の説明

学名 :Ipomoea alba 
原産地:熱帯アメリカ 

ヒルガオ科の多年草ですが、寒さに弱いため一年草として取り扱っています。

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 植替え作業時、植物を撤去していく際フェンスに元気よく蔓を伸ばして花を咲かせている白花夕顔。
 取り除くには蕾がたくさん付いていて撤去できませんでした(皆さんには思い切って取り除け~と言っているのですが・・・)。今暫く楽しんで種を取り、葉が枯れるまで放置する事にしました。

画像の説明

 白花夕顔は、名前のとおり夕方から開花し、朝方にはしぼんでしまいます。
 朝顔に似たラッパのような形をした花で、花径10cm~15cmもある大きな白花を付けます。
 蕾はソフトクリームに似た形でらせん状に少しずつ膨らみ開花します。ほのかに甘い香りがします。
 夏から秋の蒸し暑い夜に、白い花がぼんやりと浮かんでみえる幻想的な花です。

 「夜顔」が本当の名前ですが、園芸品種として「白花夕顔」「赤花夕顔」と名付けられ、流通の場では「夕顔」が一般的になっています。
 本来の「夕顔」はウリ科の植物で「かんぴょう」の原料になるもので、花もよく似ていますが別物です。
 こちらの花(かんぴょうの方)は同じ白の花ですが、花弁がしわが寄っています。見分け方は花を見れば一目瞭然です。
 ちなみに源氏物語の「夕顔」は「かんぴょう」の方の植物です。夜顔は明治の始め頃に観賞用として渡来したとの記録があります。

 種まき、育て方は朝顔と同じです。
 発芽温度は20℃以上を必要とするタイプです。5月の連休明けからの種蒔きがよいでしょう。発芽率も高く、わりと簡単に育てられます。
 もちろん花苗も店先に並びます。少しの量であれば花苗をお勧めします。
 気温が高くなると生育旺盛になり、グングン大きくなります。
 発芽し双葉が出て、その後出てくる本葉が10枚程度になったら半分くらいに摘心をします(花苗の場合は双葉から本葉が出る程度で購入になるはずです)。
 摘心をした部分から小さいツルが2~3本伸びてきます。そのツルを支柱材(鉢なら行燈仕立て)やフェンスに絡ませていきます。
 植付けの際には1株40cm~50cm間隔で植付けます。あまり狭い間隔で植付けると、生育途中でお互いのツルが絡み合って手に負えなくなってしまいます。
 反対に根が張らず生育不良となって枯れてしまうこともあります。
 鉢植えならば、10号鉢(直径30cm程度)に1株、細長いプランター(幅60cm・奥行27cm程度)の場合も真ん中に1株です。
 夜顔は水を好み、鉢植えやプランター植えの場合は出来るだけたくさんの用土が必要です。水やりは小まめに行いましょう。

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 もう一つの注意点は、朝顔などと同様「短日植物」であるため、一晩中外灯が付いていたり、部屋の明かりが漏れてしまう場所では花付きが悪くなったり、咲かない場合があるということです。植え付けをする場所も考えておきましょう。
 ツルを伸ばしながらある程度生育していくと花を付け始めます。朝顔は無理に花柄摘みをせず種を付けても勢いが衰えませんが、夜顔は花後に種を付けさせると種に栄養を取られるため花付きが悪くなります。

       ↑ 夜顔の種 ↓

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 種は花の大きさに比例して大きな種を付けます。それだけ栄養を吸収するので体力の消耗も激しいのです。肥料が切れないようしっかり与えましょう。

 夜顔はツルが良く伸びるタイプなので、「緑のカーテン」にはうってつけです。しかし、花は夕方から夜にしか咲かないので、朝顔と混植しておくと良いでしょう。
 朝顔は朝から咲いてお昼まで楽しめ、夜顔は夕方から咲き始め朝方まで楽しめます。
 緑の葉は旺盛に茂り、十分な日陰を与えてくれます。来年は是非チャレンジしてみませんか!

 毎年楽しみたい方へ一言。ヒルガオ科は連作を嫌います。プランターや鉢植えの場合は用土を新しくして花苗の植付けを行ってください。
 花壇の場合は、植付ける場所を替えてください。
 どうしても同じ場所でなければという場合は、土壌改良材をタップリ混入して土づくりが出来れば大丈夫です。でも、数年続けると生育が落ちてきます、覚えておいてください。
 暑い夏の間、勢いよく生育していましたが、酷暑は苦手で一休みしていました。それでも今年は長い間楽しませてくれました。そろそろ・・・。

ナンキンハゼ

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学名 :Triadica sebifera 
トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木(以前はシラキ属に分類されていたので学名:Sapium sebiferumであった) 
原産地:中国
別名 :トウハゼ、カンテラギ
漢字名:南京櫨
高さ :10m~15mほどになる高木

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 乾燥に強く、剪定にもよく耐え、紅葉が美しい樹木で公園や街路樹などに植えられています。
 葉はひし形状の卵形です。

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 春先には美しい新芽を、初夏には柔らかい緑の葉にひも状の花を付けます。
 花後、果実が出来ます(雌雄同株)。

 ナンキンハゼの名前の由来は、原産地の中国=南京と呼んでいたものと、ハゼノキ同様に種子から「ロウ」や「油」を取っていたことから「南京のハゼノキ」=「ナンキンハゼ」になったそうです。
 実は黒っぽい殻に覆われていて、晩秋から初冬に葉が色づき始めた頃、黒い殻がはじけて中から白い種子が現れます(種子は有毒)。

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 種子は1つの殻に3個ずつ入っています。
 白い種子は表面が脂肪で覆われていて、手で取り除くには大変な作業になります。
 樹木上で黒い殻ははじけて落ちてしまいますが、白い種子は葉が落葉しても枝についています。
 ちょうど、白い星をちらしたような雰囲気で目立ちます。冬場、ムクドリなどの鳥類が食し、表面の脂肪分を吸収し、中の種子を排泄することで種子分散を行っています。

    ↑ナンキンハゼの実(種)↑

 種子の脂肪分(烏臼油)は蝋燭の原料や石鹸の原料になり、根の皮や果実は乾燥させて利尿剤として漢方でも使われています。

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 毎年、この時期になるとクリスマスリースを作成します。
 材料として、一年の豊作を感謝するための松ぼっくりや椿の実、キリストの血や太陽の炎を意味する赤い実、純真な心を意味する白いナンキンハゼの実など、それぞれ意味のある色や樹木の実を採取します。
 11月下旬ともなるとナンキンハゼの葉は落ち始めるか、もしくは完全に葉が落ちて白い実だけになっている事が普通ですが、今年はいつまでも暖かい日が続いたせいか紅葉も落葉もすすんでいませんでした。

画像の説明

 枝先を切ってもらって実の採取をしたのですが、葉があまりにも美しかったので「葉のグラデーション」を作ってみました。
 採取した枝でも葉の色は様々です。緑から黄色、オレンジから赤へと移り変わります。
 並べているだけでワクワク。ついでにワイヤーへ葉を突き刺しリースにしてみました。我ながら「良い出来」で、皆にメールして自慢しちゃいました!

 ナンキンハゼの木でここまで楽しめるとは思っていませんでした。晩秋の紅葉樹木での楽しみ方の一つでしょう。
 初冬に入る前の短い期間ですが、イチョウやサクラ、スズカケノキなどは葉の色が美しい樹木です。今年はまだ落葉していない樹もあります。落葉したら落ち葉でも楽しめます。手に取ってみてくださいね。
 最後に、ナンキンハゼの種を蒔いてみようと思うなら~黒い皮から白い種子を取り出し、しばらく水につけておきます。
 数日すると、白い種子の表面(脂肪分のところ)が柔らかくなってきます。布でこすって脂肪分を取り除き播種してみてください。そのまま蒔くよりかは発芽率は高くなると思います。確実に発芽するか?はわかりませんが~
 
 秋の名残の植物はまだまだたくさんあります。しかし、そろそろ暖かい日を選んで植え替えをしてしまいましょう。
 寒くなると億劫になってしまいますよ。
 落葉樹の葉は、紅葉を楽しんだ後、葉が落ち始めると「厄介者」にされることもあります。
 大きな街路樹の葉は一気に落ちるわけではありません。何万枚という葉を順次落とします。新芽が芽吹くころや夏の緑陰の清々しさを思い出しながら落葉掃除をしてみませんか。

 平成28年もあっという間に年末を迎えようとしています。
 今年一年も、「原稿を書く」という事で頭を悩ませてきましたが、改めて「植物は面白い」「自然はすごい」と気づかされています。
 また、原稿がHP上に掲載されるまでに、見やすいように編集をしてくださっている方、多くの方がいて出来上がっている事に感謝しています。
 皆さまにご一読いただければ嬉しいです。
 今年一年、有難うございました。良い年をお迎えください。

     

 (16/12/01掲載) 

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