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花のコーナー 2017年01月

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花のコーナー

御園 和穂##

2017年1月 春の七草

 新年、明けましておめでとうございます。

 今年の十二支は「酉」。酉年の「酉」はニワトリの事です。では、なぜ「鳥」や「鶏」という漢字ではないのかご存知でしょうか?
 「酉」の由来は、「果実が極限まで熟した状態・酒熟して気の漏れる状態」という事で、酒のサンズイを外すと「酉」。漢字と音が似ていて身近な動物の一つである「とり」をあてたものと言われています。昔話では「神様に挨拶した順番」が十二支の始まりとなっていますが、もともとの意味は動物とは無関係で、音や成り立ちの似た身近な動物の漢字にあてているそうです。
 十二支の考え方でいう、酉年の特徴は「商売繁盛」に繋がる年と考えられています。
 今年は、無病息災・商売繁盛とこれまで以上に積極的に活動できる年になりますよう!

 今回は「春の七草」です。
 一年の最初の月は「寒の入り」といい、一番寒い季節に入ります。また「睦月」とも呼び、親戚・知人が仲睦まじく集う月でもあります。
 お節料理に雑煮、お酒も嗜んでご馳走三昧。贅沢も続くとそろそろ胃腸も疲れてきていませんか。疲れた胃腸には・・・「七草粥」です。
 七草?言えますか?
 「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」で覚えました。
 「人日の節句」(ジンジツノセック)とも言い、正月六日の夜から七日の朝にかけて「六日年越し」などと呼び、元旦から続いた行事を終了させる日、松の内最後の日として「粥」を頂きます。
 粥の中に入る草が「七草」と呼ばれ、自然の若菜の新しい生命力を頂くことで長寿と無病息災を願います。六日の昼に採取し、七日の朝に食べます。
 七草粥は、冬の青葉のない時期にビタミンの補給と正月のご馳走で疲れた胃腸を休ませる、一石二鳥の粥なのです。

セリ(芹)

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学名:Oenanthe javanica  セリ科セリ属
別名:根白草、根芹
分布:日本、中国、インド、東南アジア、オセアニア。

 湿地帯やあぜ道などに生育し、土壌水分の多い場所に生育します。
 名前の由来は新芽が出る際、競り合ってでることから「競り」=「セリ」と呼ばれるようになったそうです。

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 東洋では2000年ほど前から食べられているようですが、西洋では食べる習慣がないそうです。独特の香りがあり、日本では春先の新芽や若い茎、根をおひたしにして食べます。野菜としての旬は3月に入ってからです。
 セリの香りは発汗作用があり、風邪などによる冷えなどに有効です。
 ビタミンB2・C、カルシウム、鉄分を含み、胃や肝機能を整え、血中のコレステロールなど老廃物を排出する効果が高い食材です。
 セリは発芽率が低いため、生産は計画的に行われ近年は養液栽培が盛んです。
 野外で採取する場合は、水田や小川などの周辺に見られる毒ゼリに注意が必要です。毒ゼリは地下茎にタケノコ状のふしがあり、セリ独特の香りはありません。区別はできると思います。採取の際は必ず確認してくださいね。



ナズナ(薺)

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学名:Capsella bursa-pastoris アブラナ科ナズナ属
別名:ペンペン草、三味線草、撫で菜
分布:日本、北半球の温帯全般

 「これが、ナズナ?!」と思われた方は多いと思います。  
 ペンペン草の方が一般的でしょう。小さい頃に茎をちぎり、三角形の葉がついている部分を茎に沿って軽く裂き、裂き終わったら茎をデンデン太鼓のように、くるくる回すと音がします。
 その音が「ペンペン」というふうに聞こえるので「ぺんぺん草」と呼んでいました。調べると大きく間違ってはいないようです。ムギ栽培の伝来と共に日本へ入ってきた※史前帰化植物と考えられています。

※史前帰化植物:農耕文化の多くが国外から導入されたもので、同時に多くの帰化植物をもたらしたと考えられ、農村や畑の周辺に見られる雑草等の事を言う。

 その昔は冬季の貴重な野菜の一つだったようで、若苗を食べます。
 民間薬として陰干して煎じたり、煮詰めたり、黒焼きにしたものは肝臓病、下痢、高血圧、便秘、目の充血や痛みに効果があり、多種の薬効がある優れた野草です。江戸時代には束にしたナズナを行燈に吊り下げ、虫よけとしても使用されていたようです。



ゴギョウ(御形)

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学名:Gnaphalium affina キク科ハハコグサ属
別名:ハハコグサ、オギョウ
分布:中国、インドシナ、マレーシア、インド。日本では全国的にみられます。人里の道端などに普通に見ることができます。

 かつて草餅に使われていた草だったそうですが、「臼と杵で母と子(別名:ハハゴクサ)をつくのは縁起が悪い」として平安時代ごろから「ヨモギ」に代わったと言われています。

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 ハハコグサの名の由来は、葉や茎全体に白い綿毛が「ほおけ立つ」ことから、「ホオコグサ」と呼ばれ、それが「ハハコグサ」に変化したと言われています。
 生薬として草全体を採取し、細かく切って日干しにしてお茶にします。咳止めなどで使用していたようです。



ハコベラ(繁縷)

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学名:Stellaria media ナデシコ科ハコベ属
別名:ハコベ、ハクベ、ネコノミミ等 
古名:ハクベラ

 日本の全土、日の当たる野原や田畑、人里や低地など様々な場所で見ることができます。
 春から夏にかけて盛んに繁殖し、陽だまりの暖かい場所であれば冬でも花を咲かせます。

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 生薬として使われていたようで、成分についての詳細はわかっていなかったようですが、昔から「血の道を司る」と言われる植物で産前産後に用いられてきたそうです。産後の浄血薬として、またお乳が出にくい時に煎じて飲むとお乳の出が良くなるそうです。
 また、元祖歯磨き粉だったようです。「和漢三才図絵(1713年)」には生のハコベを搾り、搾り汁に塩を加えアワビの貝殻に入れて焼きます。乾いたらハコベの搾り汁を入れて焼く、この作業を7回繰り返し歯磨き粉を作っていたという記録があります。
 塩ハコベを指先につけて歯を磨いたようです。
 若苗を摘み、茹でておひたし、あえ物、汁物の具に。生のまま天ぷらにしても食べられます。



コオニタビラコ(ホトケノザ:仏の座)

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学名:Lapsana apogonoides Maxim キク科ヤブタビラコ属
和名:コオニタビラコ(小鬼田平子)
分布:本州から九州の水田周辺に多くみられます。北アメリカへ帰化している植物です。

 湿地帯を好み、田やあぜ道などに生えています。春先に黄色い花を咲かせ、種子はタンポポのような綿毛があります。
 冬の間はロゼッタ状です。
 ロゼッタ状とは、放射状に葉を広げ、ペタッと地面に張り付いたような姿です。葉は羽状に裂け、先端は亀甲状(丸い形)となります。
 ホトケノザ(仏の座)は、ロゼッタ状の葉が仏様の円座に似ているところから付けられた言われています。
 若葉は食用になり、さっと茹でておひたしやあえ物にすると美味しいです。近年では、見かけることも少なく、大量に採取することが難しくなってきています。
 七草粥以外では食べられていないかもしれませんね。

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 同じ名前の「ホトケノザ」というシソ科の雑草があります(写真参照)。春先にピンクの花を付けます。どこでも見かける雑草で、同じ名前ではありますが食用ではありません。ご注意ください!



スズナ(菘)

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学名:Brassica rapa アブラナ科アブラナ属

 カブ(蕪)の葉をスズナ(鈴菜または菘)と呼び、蕪の昔の呼び名だったそうです。
 実は根が肥大した部分なので、厳密には「根」です。根が丸く、収穫する際に葉を引くと「鈴がついてるような姿」から「スズナ」と呼ばれた説と、昔の錫の入れ物が丸い容器で似ているところから、という説もあります。
 根の部分(白い実の部分)は淡色野菜で、緑の葉の部分が緑黄色野菜です。
 白い部分は、美白効果が期待できるビタミンCを多く含み、むくみを解消するカリウム、食物繊維や消化酵素などが多く含まれています。一方、葉の部分にはビタミンC以外にβ-カロテンや疲労回復させるビタミンB1、皮膚粘膜を正常に保つビタミンB2、骨などに効果的なカルシウム、貧血予防の葉酸や鉄分が多く含まれています。
 七草粥では葉の部分を使うようですが、栄養満点のスズナは根から葉まですべて食べると良いですね。



スズシロ(蘿蔔)

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学名:Raphanus sativus アブラナ科ダイコン属
分布:中央アジア、地中海地方。

 中国経由で日本に渡来しました。「古事記」に「大根(オオネ)」で記載されているそうです。
 スズシロとは、ダイコンのことで昔の呼び方です。
 スズナ同様、淡色野菜であり緑黄色野菜でもあります。根が肥大した部分が大きいタイプです。
 紀元前2200年の古代エジプトにおいて、今のハツカダイコンに近いタイプのダイコンがピラミッド建設労働者の食料とされていたという最古の栽培記録が残されています。
 余談ですが、学生の時「ピラミッドは奴隷によって建設された」と習いましたが、現在では「衣・食・住・賃金を与えられた事業であった」と言われています。本当のところはどちらなのでしょう?
 日本へは弥生時代の頃伝わってきたようで、平安時代には蔬菜(ソサイ)園菜類として利用された記録が残されています。
 江戸時代には江戸の近郊の板橋や練馬、浦和などで栽培され特産地となり、現在でも練馬大根は有名です。
 葉の部分はビタミンAを多く含み、青汁の原料としても使われています。根の肥大部分(本来は胚軸と呼ばれる)はビタミンCやジアスターゼを多く含みます。(胚軸が実の部分で実から出ているひげのような物が根です。その部分は食べずに切り取られ廃棄されます。)



 以上が春の七草で「七草粥」に入る草(野菜)類です。
 私たちの生活の中で、七草を採取するのは「至難の業」かもしれません。
 私も探しに行ったことがありますが、セリやコオニタビラコ(仏の座)を見つけることが出来ませんでした。

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 でもご安心を!現在はスーパーで「七草セット」が販売されています。
 それぞれの野草は栽培されており、この時期に販売されています。
 またフリーズドライになったものまでありました。
 七つの野草を用意できればいいのですが、無理な場合は青菜だけで粥を炊いても問題ありません。
 これから始まる長い1年、まずは胃腸を整えてゆっくりとスタートを切りましょう。
 
 新しい一年のはじまりです。「花のコーナー」も9年目に入ります。
 今後も皆さまの何かの参考になると嬉しいです。
 今年もよろしくお願い申し上げます。 

 (17/01/06掲載) 

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