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花のコーナー 2017年04月

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花のコーナー

御園 和穂##

2017年4月 マメ科の植物

 桜が開花し、春たけなわです。
 四月は、旧暦では「卯月(うづき)」と言います。
 卯月の「う」は『初』『産』を意味し、一年の始まり、循環の始まりを表わします。また、干支の四番目は「兎(ウ)」からとの説もありますが、他の干支は使用されていませんから怪しいところです。
 一般的には「※卯の花が咲くころ」で「卯月」が浸透しているようです。
 3月の年度末、4月の新年度と、何もかもが慌ただしい季節です。
                 ※「卯の花」とは「ウツギの花」の事です。
 昨年秋に植えた草花や球根類も元気よく育ち始めます。本格的な管理作業もスタートです。

 今回は、園芸店や生花店で見かけた「マメ科の植物」を紹介します。


ルピナス

画像の説明

学名:Lupinus  
マメ科の一年草扱い。
原産地:北・南アメリカ、南アフリカ、地中海沿岸。
草丈:40cm~1.2m程度。
開花期:3月~6月。
別名:ノボリフジ


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 耐寒性、半耐寒性があり、日本では一年草扱いですが、地域によっては一年草、多年草、一部灌木状(低木)になる品種もあります。南北アメリカや南アフリカでは200種を超える品種が分布しています。
 花穂は細長い円錐形、葉の形も独特です。古代エジプト時代には食用や薬用として親しまれていたようです。
 名前の由来は、ラテン語のlupus=「狼の意」に由来すると言われています。土地を選ばずよく育ち、土地を荒らすと考えられた事から名付けられたと言われています。また、ギリシャ語の「嘆き・悲哀」に由来し、強い苦みのあるルピナスの実を食べ顔をしかめた事にちなむ説もあります。

 別名のノボリフジは、花の姿が「フジ」に似ていて、花が下から上に向かって咲き上がるため「ノボリフジ(昇藤)」と呼ばれています。
 日本へは、明治期に※緑肥用植物として導入され、園芸植物としては1900年初頭にジョージ・ラッセル氏が品種改良を行い、その後多様な園芸種が作られ、日本でも流通するようになりました。
※緑肥植物:マメ科の植物は根にコブのような根粒がついている。それを根粒菌といい、根粒菌は宿主のマメ科植物から栄養をもらい、植物が作れない物質を根粒菌が作る。自然界の窒素の循環に重要な役割を果たしている。

 チョウ形の花が幾重にも輪生し、とても美しい花穂をつくります。
 花色は黄色、紫色、ピンク色、白色など多彩です。葉の形も特徴的で、天狗の持つうちわに似ている事から「葉団扇豆(ハウチワマメ)」と呼ばれる事もあります。



 花後、放置しておくと枝豆のような鞘が付きます。中には豆(種)が入っています。
 種は有毒です。決して食べないでください。
 ちなみに、ポルトガルでは「トレモーソス」という「ルピナスの種の塩ゆで」がビールのつまみに出されますが、品種が異なります。
 人から聞く話では「あまり美味しい豆ではない」ようですよ!


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■育て方

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 日当たりの良い場所を好みますが、ある程度の日陰でも生育可能です。
 冬の寒さにはとても強く、逆に夏の暑さには弱いです。気温が25℃を超えてくると生育が止まります。
 大きな花穂は下から順に開花し、全体に花が咲き終わったら花穂を切り取り、脇芽を育てます。(写真参照)

 最初のような大きな花穂は付きませんが小振りの花穂が付き長く楽しめます。
 過湿にすると根腐れを起こしやすいので、土の表面が完全に乾いたらタップリ水を与えましょう。出来るだけ乾燥気味に育ててください。
 ルピナスは移植を好まないタイプです。種から育てる場合は直播きかポット蒔きにして、移植時には根を傷めないよう植付けます。
 用土は水はけの良い土で、酸性土壌を嫌います。鹿沼土やピートモスなどの酸性の強い用土は避けてください。
 直播きをする場合は、播種前に石灰を混ぜて土壌調整をしておくと良いでしょう。肥料は土づくりする際に元肥を加えます。その後は窒素分の少ないタイプの肥料を与えます。
 基本は一年草なので植替えはしません。
 種蒔きの時期は9月から10月頃、発芽適温が20℃前後(品種によって異なります)です。夏越しが容易な寒冷地の場合は春から初夏にかけて播種しても構いません。
 種はとても硬いので、一晩水につけて柔らかくしてから蒔きましょう。
 ルピナスは背が高くとても印象的な花穂を付けます。矮性タイプの種類ならば大型のコンテナに使えます。一般的なルピナスは花壇の後方に植付けると素敵な花壇になりますよ。



スィートピー

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学名:Lathyrus odoratus 
マメ科の一年草。
原産地:イタリア・シシリー島
草丈:40cmから2mほど。
開花期:3月~6月。
和名:麝香連理草(ジャコウレンリソウ)。

 17世紀末頃にイタリア・シシリー島で発見された後イギリスに渡り、イギリスを中心にヨーロッパ各地で品種改良が行われ現在に至っています。
 日本に渡来した時期は不明ですが、1862年にスィートピーが絵画に描かれていることから、その以前から植えられていたようです。日本での本格的な栽培は1960年前後からです。
 現在では切り花の方が一般的です。花色は豊富で、紅・ピンク・紫・青・白・クリーム・絞りなど多彩です。また、白色の切り花の茎から特殊なインクを吸わせ、思い通りの色に染めているものまであります。

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 花壇・鉢物用では、春咲き系・夏咲き系とあり、コンパクトなツルなし矮性タイプなどもあります。切り花用は露地栽培(春から夏場)と温室栽培用冬咲き系品種があり、一年中楽しむ事ができます。
 名前の由来は、甘い香り「スィート」をもつ豆「ピー」の英語名から付けられたと言われています。
 茎の長さは2~3m伸び、葉のわきから花茎を伸ばし花弁は外側に大きくうねり、チョウ形の花を付けます。

■育て方

 茎は自立せず、茎から伸びる巻きひげを他の物に絡ませながら生長していきます。
 日当たりの良い場所を好み、開花時期に曇天が続くと蕾が落ちてしまいます。苗を育てている間もしっかり日に当てて下さい。
 用土は、酸性土壌を嫌いますので、苗の植付けもしくは種を蒔く際には石灰などで土壌調整を行ってから植付けましょう。
 種蒔きの場合、春咲きか夏咲きの品種を選びます。10月から11月に花壇に直播きか鉢に蒔きます。
 発芽後は出来るだけ小苗の状態で冬を越させます。あまり早く播種すると、苗が大きくなりすぎて霜の被害を受けやすくなります。気をつけましょう。
 3月に入ると茎が伸び始めます。この時点で支柱を立てて巻きひげが絡むよう準備します。
 その後、草丈が20㎝くらいに伸びたら5~6節を基準に上部を切ります。切る事で脇芽が伸びて、ボリュウムがでて花数も増えますよ。
 種はとても硬いので、一晩水に付けて柔らかくするか、コンクリートの上で擦って傷をつけてから蒔くようにしましょう。
 一年草なので植替えはしません。
 私は大鉢に種を直播きして、秋に剪定した萩の枝を支柱材にして鉢の周囲に差し込み、上部を紐で結び円錐形を作ります。発芽し茎が伸びてきたら切り戻します。その後、脇芽が伸びながら巻きひげを支柱材に絡ませます。
 無造作に伸びて花を咲かせます。花柄摘みを適宜行ってくださいね。種がつくと花付きが悪くなりますので!
 また、少し長めに切って切り花としても楽しんでみてくださいね。
 これから育てたい場合、鉢物で購入するか、夏咲き種の苗を手に入れて早めに植付けをすると楽しめます。入手できない場合は晩秋に種蒔して来年楽しみましょう。
 


ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)

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学名:Vicia sativa subsp nigra 
マメ科の多年草。
和名:矢筈豌豆(ヤハズエンドウ)。
別名:カラスノエンドウ
分布:本州以南の日本各地、沖縄。ユーラシア大陸に広く分布しています。
草丈:40cm~60cm程。開花期:3月~6月。

 ツル性で道端や堤防沿い、空き地、荒れ地など広域にて生育しています。淡い紫紅色をしたチョウ形の花を付けます。
 古くは地中海沿岸で食用として栽培されていたそうです。
 ヤハズエンドウが本来の名前です。名前の由来は弓矢の弦を受ける部分(矢筈)に似ていることから付いたと言われています。


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 別名のカラスノエンドウは花後の種が黒くなる事から命名されたようです。こちらの呼び名の方が一般的になっているようです。
 「雑草」として取り扱かわれていますが、花はかわいらしく、あえて鉢植えや一輪ざしとして楽しめます。3月以降、花壇や低木の植え込みなど、どんな場所からも生えてきます。
 生育時の若い茎は天ぷらやお浸しとして食べる事が出来ます。また、花後の莢は黒くなる前に収穫し、お味噌汁の具材や天ぷらとして、また茹でて和え物、卵とじでも食べられます。
【要注意:生での飲食は避けてください。必ず火を通してから!】


 ところで、花後に付く緑の鞘の種を取り除き、鞘を半分くらいにちぎってピーピーと吹き鳴らしたりしていませんでしたか。そこに由来しているのでしょう。今でもピーピーマメと呼ばれています。
 すでに花壇や植込みの中に生えてきていると思います。6月ごろになると枯れ始めて茶色っぽくなります。
 花は可愛いですが、やはり「雑草」のくくりなので、早めに取り除いておいた方が見た目は良いでしょう。

 マメ科の植物は、鉢物や切り花、野草(雑草)とさまざまな場所で生育しています。また、畑に植えられている大豆やエンドウ、キヌサヤなども同じマメ科の植物です。見落としてしまいがちですが可愛い花が咲きます。マメ科の植物は葉の形や花の形に特徴があるのですぐにわかると思います。
 畑があったら覗いてみてください。そろそろ豆類の花も開花時期ですよ。
 
 これからパンジーやビオラなど、初冬に植付けた植物がたくさんの花を咲かせます。花柄摘みをしながら、茎が伸びた草花は切り戻しをして肥料(追肥)を与えましょう。
 また、夏に向けて育てたい花を探したり、種まきの時期にもなります。
 やりたいことが一杯ですが、近年、夏場は気温がとても高くなり植物の生育がよくありません。今年は少し楽できるような花苗選びを考えてみませんか。
 決して無理はしないでくださいね。

 (17/03/31掲載) 

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