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花のコーナー 2017年07月

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花のコーナー

御園 和穂##

2017年7月 インパチェンスの仲間

 一年の半分が過ぎ、後半にはいりました。
 6月上旬に梅雨入りしましたがなかなか雨が降りませんでした。やはり、草花の水やりは人の手で行う事が望ましいのですが、全ての植物に対して、雨は大切な水を与えてくれます。梅雨に「雨が降る事が当たり前」と思っている私には、雨が少ないとがっかりです。昼間は時間に余裕がないので朝早くか、夕方から灌水作業をしています。雨が欲しいよ~。
 今月中旬には梅雨明けでしょうか。本格的な夏の到来です。いつの間にか鳴き始める蝉の声が暑さを誘います。
 草花の生育はどうでしょうか?一通り開花したら真夏に入る前に切り戻しをしておきましょう。真夏の暑い時期は生育が緩やかになります。花数を減らすことで風通しを良くし、体力の温存を図りましょう。
 あなたの作業も少しは楽になるはず!

 今回はインパチェンスの仲間を紹介します。


ホウセンカ

画像の説明

学名:Impatiens balsamina ツリフネソウ科の一年草
原産地:インド、中国南部
別名:ツマクレナイ、ホネヌキ
漢字表記:鳳仙花
英名:Touch me not Balsam
草丈:30cm~80cm程度
開花時期:7月~9月
花色:赤、ピンク、紫、白、複色

 最近はあまり見かけなくなりましたが、真夏に元気に花を咲かせる草花として古くから親しまれています。
 日本には中国経由で渡来したと言われていますが、その時期は定かではないようです。
 茎は太く直立し、花は茎の節ごとに横向きから下向きに付きます。花軸が短く葉の下に隠れたように花を咲かせます。
 草丈は高い「高性タイプ」と低い「矮性タイプ」があります。また花は八重や一重があり、日本では八重の「カメリア(椿)咲き」が一般的です。

画像の説明

 花後、茎にぶら下がる楕円形の小さい実を付けます。
 果実は軽く触れるだけで弾けてしまいます。ホウセンカは、「花がこのような草花」で紹介されるより、「種が弾ける草花」で紹介される方が知られているかもしれません。
 私が子供の頃、ホウセンカはあちらこちらで見かける草花で、秋になると膨らんだ果実を弾いて遊んだものです。

画像の説明

 弾かせて遊ぶから「あちらこちら」に種が飛んで、毎年花を咲かせていたのでしょう。残念ですが最近は見かけなくなりました。
 弾ける際に「パチン」と小さい音がし、広範囲に種を飛ばします。
 学名の「Impatiens」(インパチェンス)は「我慢できない」という意味で、果実が弾ける性質に由来しているようです。
 ホウセンカは漢字表記で「鳳仙花」で、そのまま音読みします。花の形が「鳳凰が羽ばたいている」形に似ているところから命名されたと言われています。
 別名で「ツマクレナイ(爪紅)」とも呼ばれます。これは、中国、朝鮮などで、昔、若い女性や子供がホウセンカで爪を赤く染める習慣があったことによるようで、日本でも天草諸島では旧暦6月30日に夏越しの行事として、男性が魔除けのために爪を赤くし海に潜る習慣があったそうです。
 花びらを爪にこすり付けると赤い色が付きます。その状態で手を洗うと落ちてしまいますが、楽しめますね。
 爪を染める以外には、草木染として楽しめます。
 花びらを集め、それを煮詰めて濾した染め液にミョウバンを加えます。ハンカチや布を染めて楽しめます。もし、ホウセンカが身近に植わっていれば、夏休みの自由研究に間に合いそうですね。
 もう一つの別名「ホネヌキ」は、私も初めて知りました。
 これは、種を魚と一緒に煮ると魚の骨が柔らかく煮崩れるから、また、種を砕いて飲むと喉に刺さった魚の骨が柔らかくなって取れるから、等の諸説がありました。
 ホウセンカは身近な草花だったのでしょうね。
 日当たりの良い場所を好み、日照不足になると茎は弱々しくなり倒れてしまいます。花付きも悪くなります。育てる際の参考にしてください。
 真夏に元気に花を咲かせますが、乾燥を嫌います。水切れさせないよう注意が必要です。
 種蒔きは3月下旬から5月。根が真っすぐ伸びるタイプ(直根性)なので、移植は苦手です。花壇なら直接育てたい場所に播種した方が良いでしょう。また、挿し芽もできます。
 種で育てて、開花後に茎を切り挿し芽にすると増やせます。
 花は9月頃には終わり、その後種を付けます。本来、開花時期は花柄摘みや切り戻しをして草花に種を付けさせないように育て、たくさんの花を楽しみますが、種まで楽しみたい場合は、8月中旬以降はほったらかしにして種を付けさせましょう。
 種は熟してくると勝手に弾けてしまいます。種を採取したい場合は、弾けそうに熟した草花の株周りにビニールなどを敷いて種を採取するか、ビニールを被せて採取します。
 パチン、パチンと指で果実を弾かせると「何が楽しいのか」わからないのですが、「楽しい」です。一度試してみてください。

 次はアフリカホウセンカ(インパチェンス)です。

アフリカホウセンカ(インパチェンス) 

画像の説明

学名:Impatiens ツリフネソウ科の春蒔きの一年草
原産地:熱帯アフリカ
別名:アフリホウセンカ
草丈:20cm~60cm程度
開花時期:5月~11月一杯。

 先に紹介した「ホウセンカ」と同じ仲間で、その昔はホウセンカが主流でしたが、インパチェンスと呼ばれる熱帯アフリカ原産の「アフリカホウセンカ(園芸品種)」が一般的になりました。
 日本では春に種を蒔いて、初夏から晩秋まで花を楽しみます。
 本来は毎年花を咲かせる常緑多年草で低木のように育ちますが、寒さに弱く霜が降りる頃には枯れてしまいます。日本では春蒔きの一年草扱いとされていますが、温室などの加温施設があれば周年楽しめますよ。
 花色が豊富で、白、ピンク、赤、赤紫、サーモンピンク、オレンジ、絞り等があり、品種によっては色の濃淡が出るので、多彩なバリエーションが楽しめます。
 一つの株がボール状にまとまり開花します。草丈は20cmから60cm程に生育し、茎は太くて多汁質でよく分岐します。
 花は一重咲き、八重咲き、最近ではバラ咲きなどがあります。一重咲きが一般的です。

画像の説明

 花びらは5cm前後で、花の後ろ側に「距(キョ)」と呼ばれる細い管があります。「距」は細長い筒状の管の中に「蜜」を貯めています。
 なぜこんな奥深くに蜜を貯えるのでしょう?
 これも植物の生き残りの一つなのです。植物は動けないので自身の花粉を動き回る昆虫に運んでもらいます。
 花側からの都合を言えば、インパチェンス(ホウセンカ)は別のインパチェンス(ホウセンカ)に花粉を運んで欲しい訳です。受ける側のインパチェンス(ホウセンカ)も他の植物の花粉は役に立たないから欲しくはありません。そこで、植物は長い年月の中で特定の昆虫だけが蜜を吸えるよう進化してきました。その一つが「距」です。
 例えばススメガは長いストロー状の口を持っている昆虫です。この長いストロー状の口を持った昆虫のみが限定され貴重な蜜を吸うことができます。
 花粉を同じインパチェンス(ホウセンカ)に運んでくれる昆虫だけに蜜を提供する訳です。無駄なく効率の良い子孫繁栄の方法ですね。
 花は放置しておくと種を付けます。
 日当たりの良い場所を好みますが、明るい日陰でも充分に育ちます。でも、日当たりの良い方が花付きは良くなりますよ!参考にされてください。
 室内向きではありません。
 身近な草花のほとんどは真夏の「高温多湿」が苦手ですが、インパチェンスは割と高温多湿を好みます。適温・適湿度は気温25℃前後で湿度が80~90%程度です。
 4月、5月に植付けたインパチェンスは元気に花を付けています。梅雨明けくらいから夏の終わり頃になると茎が伸びて姿が崩れてきます。その時は思い切って茎を半分くらいに切ってしまいます。再び脇から芽が出てこんもりとなり沢山の花を咲かせます。
 種蒔きは、4月~5月一杯です。種はとても細かいので、シードパンや平鉢の表面に播種し、芽が出てきたら移植します。種は好光性なので覆土はせず、播種後軽く押さえてやる程度です。
 上から潅水をすると種が流れてしまいます。シードパン等はたらいなどに水を張り、下から浸水させます。
 発芽直後はしっかり日に当ててください。日照が不足するとひょろりとした感じになってしまいます。
 また、挿し芽も可能です。梅雨時期が適期。花の付いていない茎を土に挿しておきます。
 乾燥を嫌うので、適宜水やりをしましょう。
 肥料は元肥にゆっくり効果が出てくる肥料を混ぜておき(緩効性肥料)、その後は控えめな施肥で充分に育ちます。
 インパチェンスには「アリ」が集ると言われています。私が育てているインパチェンスには集ってこないのですが、よく質問されます。
 調べてみると、「アリが集まりやすい」そうです。でも問題はありません。インパチェンスに付いている小さな虫や芋虫などを持ち帰ってくれるそうです。安心ですね。
 インパチェンスは華やかな花です。これから迎える夏でも元気に育ちます。花壇の中に隙間があれば彩として加えてみては如何でしょう。

 最後はニューギニア・インパチェンスです。


ニューギニア・インパチェンス

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学名:Impatiens x hawkeri

 インパチェンスは熱帯アジア・アフリカを中心に500種以上が分布しています。
 その中で、ニューギニア原産の野生種を中心として掛け合わせて改良品種されたものをニューギニア・インパチェンスと呼びます。
 用途は鉢植えです。寒さに遭わなければ(温室があれば)毎年花を咲かせる多年草です。取り扱いは観葉植物の仲間になります。
 花壇にも使用できます。真夏の日差しは苦手ですが、明るい日陰であれば大丈夫です。一方、真夏を除いて、春と秋はよく日にあてて、冬は5℃を下回ると枯れてしまうので、11月には室内に取り込みましょう。
 高温期には次々に花を咲かせます。花は終わったら取り除き、ある程度茎が伸びてきたら切り戻しをします。切り戻した茎は挿し芽にして増やす事が出来ます。発根するまで乾かさないよう半日蔭で管理します。
 乾燥を嫌いますので、春から秋まで水をしっかり与えます。冬場はやや乾燥気味にし、土の表面が乾いたらタップリ与えましょう。
 肥料は生育期間中切らさないよう与えます。真夏と真冬は生育が緩やかになるので肥料も控えめにしておきます。化成肥料の場合は月1回程度、株元に与えます(液体肥料ならば月3回程度与えます)。
 生育は旺盛で、環境にもよりますが植え替えが必要になります。適期は4~5月と9~10月です。年1回一回り大きい鉢に植え替えます。
 植え替える際、株は崩さず一回り大きい鉢に移し、株の周りに新しい土を入れて植え替えます。
 
 同じ学名標記のインパチェンスを紹介しました。これらは同じ仲間で花もよく似ていますいが、育て方や用途は様々です。
 本来、私たちが育てている草花は一つ一つ特徴があり、管理の方法も異なります。コンテナであれば草花の性質や好みの近い種類を集めて作成すれば手間も少なくてすみます。しかし、花壇などの広い範囲になるといささか難しくなります。出来るだけ植付ける草花の性質を知っておきましょう。
 でもね。長い事、多くの植物を同時に管理をしてきている皆さんには脱帽です!これからも楽しんで管理を続けてください。

 この季節のお決まりです。梅雨が明けると例年の事ですが、毎日35℃を超える猛暑日が続きます。管理をするにあたって「無理」はしないでください。
 草花は秋口から徐々に回復もするし植替えも可能ですが、人間の体は交換がききません。炎天下での作業はできるだけ避けて、どうしても作業を行うのであれば、短時間のうちに休憩を取りながら行いましょう。水分補給も忘れずに!

(17/07/01掲載) 

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