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花のコーナー 2017年10月

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花のコーナー

御園 和穂##

2017年10月 道沿いの花壇

 暑かった夏が過ぎ、台風シーズンも終わり「天高く馬肥ゆる秋」がやってきました。
 「天高く~」空が高くなったように感じるのは、高気圧の発生場所によるものです。夏の高気圧は海上で発生するので水分を多く含んでいますが、秋は大陸で発生します。大陸育ちの高気圧は空気中の水蒸気が少なく、空気が乾燥しているので、空が青く澄み渡り高くなったように見えます。
 また、雲の発生する場所にも影響され、夏の「入道雲(積乱雲)」は低い位置に発生しますが、秋の「いわし雲」は高い位置に発生します。目線が上にあがるので、より空が高く見えるのですね。
 花壇やコンテナの草花は、息を吹き返し元気に育っていることでしょう。
 日中は、汗ばむ日もありますが、朝晩の気温は少しずつ下がってきました。
 これからの季節は気温が低くなるので、花は長く楽しめ、花色は本来の色合いが出てきます。また、香りのある花はより香りが強く感じられるようになります。私の一番好きな季節の到来です。
 いつも車で通り過ぎてしまう場所なのですが、ふと目に留まった花壇(植え込み)に引き付けられました。今回は何か「懐かしい花壇」だったので紹介します。

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 大きな道路から少し中に入った脇道沿いの花壇です。多分、「何気なく」植付けたのではないかと思います。でも、配置や色合いが素敵でした。

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 倉庫の横に広がっていたのは、淡い紫色のヤナギバルイラソウ。ふわふわした感じが風に揺れて涼しそうな雰囲気です。

ヤナギバルイラソウ

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学名:Ruellia brittoniana Leonard
キツネノマゴ科ルイラソウ属 
半耐寒性宿根草(一部小低木)
原産地:メキシコ、熱帯アメリカ、アフリカ
別名:ルエリナ、コモン・ルエリナ
開花時期:4月~10月ごろまで

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 最近、道路脇などで見かける草花で、真夏の厳しい日差しの中でも元気に花を咲かせている植物です。
 草丈が高くなるので、風になびく姿も可憐です。
 日本にはいつ伝わった植物なのか?ハッキリしていませんが、1977年に発行された「琉球植物目録」の中に記載があるそうです。当時、沖縄では一般的な草花だったようです。
 沖縄の米軍基地に届く物資の中に種が紛れ込んでいたのかも知れませんね。
 名前の由来は細長い葉なので「ヤナギバ(柳葉)」、ルイラは学名の「ルエリナ」からで、ソウは「草」です。合わせると「ヤナギバルイラソウ(柳葉ルイラ草)」です。花の形がペチュニアに似ている事から「メキシカンペチュニア」とも呼ばれているようです。
 日本において園芸植物としての人気は今一つのようです。
 園芸店で販売されているかどうか?私は見たことがありません。どちらかと言えば、道路脇に育つ雑草のような扱いかも知れません。

 花は一日花ですが、春から晩秋まで長い期間、細長い葉の脇から花茎を伸ばして薄紫色の花を咲かせます。
 花弁は5つに分かれて、花弁には全体にたくさんのシワが見られます。
 花は一日花で、朝日が昇るころに咲き始め、お昼を過ぎるとぽろりと、雄蕊とガクを残して花弁ごと落ちます。その後、サヤが出来て種が出来ます。
 海外では花壇花や低めの生垣として使われている事が多いようです。一度植えておけば、特に細かな管理をしなくても毎年季節が来ると咲きます。
 管理上は魅力的な植物ですが、容姿が地味なのでしょうか?人気は低いようです。また、繁殖力が強いので、あっという間に広がってしまいます。  
 育てるのであれば、ほんの少し管理に工夫をしましょう。

【育て方】
 苗の入手は困難かも知れません。株分け、挿し木、種で育てます。よく日の当たる場所を好みます。
 繁殖力が強い理由は、開花後「種」が出来ますが、放置すると自身でサヤが弾けて中の種を飛ばします(自動散布植物:こぼれ種です)。土壌も選ばないし、肥料も殆ど必要ありません。

≪注意点:この一手間を≫
 花後、「サヤ」を見かけたら取り除いてしまいましょう。また、茂って背丈が高くなってきたら短く切ってしまいます。これだけです。
「ずぼらな私にはピッタリ!」な草花です。



 次はシコンノボタンです。
 倉庫沿いにヤナギバルイラソウ、倉庫の角にシコンノボタンが植わっています。

シコンノボタン

画像の説明

学名:Tibouchina urvilleana
ノボタン科ティボウキナ属
熱帯花木(常緑性の低木)
原産地:ブラジル
和名:シコンノボタン(紫紺野牡丹)
開花期:7月から11月 
樹高:1~3m程度

 園芸店で見かけるシコンノボタンの鉢物は、「ノボタン」と記載されていますが、本来「ノボタン」はノボタン属でシコンノボタンとは「属」違いになります。同じ仲間なので問題はありませんが、園芸上では総称ノボタンとして扱われているようです。
 南向きのよく日が当たる場所を好みます。冬場の九州北部当たりでは葉を落としてしまうようですが(落とさない場合もあり)、戸外で十分越冬します。
 シコンノボタンは一日花で5~6cm程の紫色の花が次から次に沢山開花し魅力的な花木ですが、花以外にも、葉に産毛が生えていて触るとフワフワで、触り心地が優しくて気持ちいいですよ。
 一般的には、晩春から初夏にコンパクトな形に仕立てた鉢物もしくは苗木で売られています。
 市販されている鉢は、草丈を抑えるための薬剤を散布されているものがあります。購入した年は小さく育ったのに、翌年、薬剤の効果がなくなってくると急に草丈が伸びてきます。

【育て方】
 日当たりのよい場所を好みます。熱帯の花木ですが最低3℃までは戸外でも大丈夫です。

・鉢の場合:用土は水はけの良い土を使用し、根の生育が早いので、1年に1回の植替えが必要になります。植替えの適期は4月~6月で、根鉢を崩さず一回り大きい鉢に植え替えます。冬場は南向きのベランダもしくはカーテン越しの室内に置いてください。4月に入ったら外へ出しましょう。
水やりは鉢の表面が乾いてきたらたっぷり与えます。

・地植えの場合:植付けは4~5月が適期。南向きの明るい場所に植付けましょう(直射日光は真夏に葉が焼ける恐れあり)。

 水を好むタイプの植物です。地植えでも、生育期の5月から9月一杯までは土の表面が乾いてきたら水を与えましょう。
 冬場でも晴天が続けば、10日に1回程度は水を与えてください。
 肥料は生育期の5月から9月いっぱい、化成肥料もしくは月1回程度、油粕の玉肥を与えます。鉢の場合は通常より薄めの液体肥料を水やりの代わりに時々与えると効果的です。

≪この一手間を≫
 開花中、花が一通り咲き終わったら全体を2~3節程度枝を切り戻します。すると脇芽が出てきて再び開花します。これを繰り返すと、11月くらいまで花を楽しめます。そのまま冬を越します。春先、株が大きくなり過ぎたら草丈を三分の一から半分くらいまでに剪定します。4月中旬までに行っておきましょう。
 園芸品種(ノボタンの仲間)として花色がピンクもあります。一度は楽しんでみてください。
 シコンノボタンの横手にはカイヅカイブキ、その脇からピンクのルリヤナギが顔を覗かせています。その手前によく育ったメランポジュウム、道路沿いにオレンジ色のマリーゴールドが育っています。その後ろ手はピンク系のアンゲロニアです(図面参照)。

画像の説明

画像の説明 画像の説明 画像の説明
アンゲロニア       マリーゴールド       メランポジュウム

 アンゲロニア、マリーゴールド、メランポジュウムはよくご存じの植物だと思います。今回、説明は割愛させて頂きます。



 次は、アンゲロニアとメランポジュウムの後ろ手から伸びている植物がルリヤナギです。

ルリヤナギ

画像の説明

学名:Solanum glaucophyllum(Solaunm melanoxylon)
ナス科ソラナム属 小低木
原産地:ブラジル南部、アルゼンチン北部、パラグアイ
和名:ルリヤナギ(瑠璃柳) 
別名:リュウキュウヤナギ(琉球柳)
開花時期:7月~9月 
花色:薄ピンク 
高さ:1~2m

 日本へは江戸時代に琉球経由で渡来しました。「ヤナギ」の名がついていますが、ヤナギではありません。
 花は枝の上部に、茎に対して花柄が下から上に向かって房状に付きます(散房花序)。ナスの花によく似ています。
 夏の暑い時期に周辺の花が弱っても、比較的元気に育ちます。やや乾燥気味に育てます。冬場は地上部が枯れてしまいます。地際で枯れた部分は取り除いておきましょう。春先、新芽が出てきます。

≪注意点≫
 ナス科の植物なので、地植えにする場合は前回植えていた植物がどんな植物だったかを確認しておきましょう。※連作障害が起きやすいです。

※連作障害とは・・・
 植物を続けて育てると、生育不良を起こしたりして、うまく生育せず、枯死することもあります。農作物と園芸用植物は異なりますが、ナス科、ウリ科、アブラナ科、マメ科などの植物を植える場合は気を付けましょう。



最後に左手黄色の低木です。

ハナセンナ

画像の説明

学名:Cassia corymbosa
マメ科カワラケツメイ属 常緑低木
原産地:ブラジル、アルゼンチン
開花時期:9月~11月
別名:アンデスの乙女 カッシア

 10年程前から庭先や塀越しに黄色の鮮やかな花を見かけるようになりました。最初は「この花はなんだ?センナ?」と思って調べてみました。センナと花はよく似ていましたが、「ハナセンナ」と判明。
 花木で、夏の終わりから晩秋まで花を咲かせるものは珍しいと思います。
 日本には昭和初期に観賞用として渡来したと言われています。別名「アンデスの乙女」と呼ばれているようですが、これは市場での流通名で、本来は「ハナセンナ」と言います。
 一部において別物と言われてもいますが、調べる限り判断ができません。悪しからず・・・。
 ハナセンナは比較的耐寒性もあり、屋外でも生育可能です。本来常緑低木ですが、九州北部では冬場葉を落としてしまう事もありますが、枯れてしまう事はありません。
 植木鉢でも地植えでも育てられます。マメ科の植物なので、地植えで植付けする際は根を傷めないよう注意してください(直根性なので)。
 また、生長が早く2~3mの大きさになるので、周囲の植物にも配慮してくださいね。植木鉢の場合、最初は良いのですがいずれ大型の鉢が必要になります。
 肥料は特に「やせ地」でない限り必要ありません。
 花はマメ科の植物同様、3cm程の蝶のような花を沢山付けます。開花後放置しておくと鞘(豆果)が付きます。
 育てるうえで特別な手はかかりません。
 植付けは4月~5月が適期です。日の当たる場所を好みます。植付け後は適宜水を与えます。特別な肥料は必要ありません。植木鉢であれば、化成肥料を少し置き肥します。耐寒性はある方ですが、植木鉢なら霜の当たらない玄関先や軒下に移します。地植えの場合は葉が落ちてしまうこともありますが、枯れたわけではありません。ご安心を。
 また、晩秋になり花が終わった時点で、全体の枝を3分の1ほど切り込みます。

 ≪ここは覚えておいて!≫
 ハナセンナは夜になると葉が閉じます。明け方になると開きますが、水が切れたと思って水を与え続けていると根腐れを起こしてしまいます。
 昼間も葉が閉じ気味になってきたら、こちらは「水切れサイン」です。この場合はタップリ与えてください。
 また、日当たりが悪いと葉が黄色くなり、花も咲きにくくなります。置き場所(植付け場所)はきちんと選んでください。

 今回は、気になった「道沿いの花壇」を紹介しました。花壇というのは、様々な場所によって姿かたちが変わります。
 道沿いの「平凡」と言っていいのかわかりませんが、「何気なく植付けた植物」に魅了されました。色合いや配列など、習われたのかも知れませんが自然な雰囲気に目を引かれました。
 私も「何気ない、でも素敵な花壇」を目指していきたい!と、気持ちが高ぶっています。
 過ごしやすいこの時期、色々なものに触れて、見て、心の蓄積をしたいと思います。
 合わせて「食欲の秋」でもあります。一緒に美味しい物も探して食べたいと思います。太る時は皆さん一緒ですよ!

(17/10/01掲載) 

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