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花のコーナー 2018年03月

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花のコーナー

御園 和穂##

2018年03月 ヴィクトリー・ブーケ

 2月は、例年になく低温の日が続きました。
 本当に寒く、少しお天気が良くて普段より2~3℃気温が高いと暖かく感じられるような日が続きました。
 冬場は管理のタイミングが難しく、一般的には乾燥する時期なのでお天気を見ながら水やりや花柄摘みなどを行います。しかし、寒波が来ると積雪や風雪、低温が続き外へ出るのもままならず、管理が出来なくなってしまいます。
 寒い季節の悩みですね。ですが、草花も寒い中では「ジッと」しているので、寒さが過ぎるのを待ってから管理を行いましょう。

 今回はヴィクトリー・ブーケ(Victory bouquet)を紹介します。
 ヴィクトリー・ブーケって何?と思われる方も多いかもしれませんね。先に説明をしておきますね。
 オリンピックや競技などの表彰をする際にメダルと一緒に手渡される花束のことです。メダリスト・ブーケとも言われています。
 先月開催された平昌オリンピックは、花束ではなくマスコットのぬいぐるみでした(花束や景品に関して、オリンピックプロトコルガイドに記載はありませんでした)
 ヴィクトリー・ブーケには基準はありませんが、その土地特産の花や開催国の国花を使用したりしています。また、表彰台で選手が大きく手を振る際に花束が壊れないよう、また見栄えが良いように作られます。
 近年のオリンピックのヴィクトリー・ブーケを挙げみましょう。



【1998年長野オリンピック(日本)】

画像の説明

 2月7日から22日の間、長野市、白馬村、軽井沢などで開催されました。
 ノルディックスキーの団体で金メダル、500mスピードスケートで清水選手が金メダルを取った大会です。
 ヴィクトリー・ブーケはアルストロメリアで、紫のリボンで束ねられてました。花茎の廻りに安定を良くするため、蔓を丸く編んで支えにしているようでした。 
 長野県の県花は「リンドウ」ですが、この時はアルストロメリアを使用しています。実は、「アルストロメリア」の生産は、長野県が国内では一番です。

≪こんな花です≫

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学名:Alstromeria  
アルストロメリア属ユリズイセン科の球根植物。  

長野県で年間1300万本を出荷しています。
花色が豊富で花持ちが良い事も選ばれた一つと言えます。デザイナーはフラワーアーティストの村松文彦氏です。ちなみに、トルコキキョウ、テッポウユリの生産も上位にあがっています。


【2000年シドニーオリンピック(オーストラリア)】

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 9月15日から10月1日までオーストラリアのシドニーで開催されました。20世紀最後で2000年代最初のオリンピックでした。
 日本人選手はマラソンの高橋選手が金メダル、柔道女子の田村選手、男子の井上選手らが金メダルを取りました。
 ヴィクトリー・ブーケはバンクシア、オオニソガラム、ピンクッション、カンガル・ポー、クラスペディアを一つにまとめて束にしています。リボンはありませんでした。

≪こんな花です≫

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バンクシア 
ヤマモガシ科 オーストラリア原産
学名:Banksia speciose


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カンガル・ポー(アニゴザントス)
ヘラドラム科
オーストラリア南西部原産
学名:Anigozanthos 


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ピンクッション 
ヤマモガシ科 南アフリカ原産
学名:Leucospermum cordifolium


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クラスペディア 
キク科 オーストラリア原産
学名:Craspedia globosa

花は、南半球の花っていう感じですね。
色や形からのイメージですが、「元気いっぱい」な感じを受けます。



【2006年トリノオリンピック(イタリア)】

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 2月10日から2月26日までイタリアのトリノで開催されました。20回目の記念大会でもありました。日本人選手はフィギュアスケートの荒川選手の金メダルは皆さんご存じですね。
 ヴィクトリー・ブーケはバラ(ピンク、ローズなど)とカスミソウ。シンプルにまとめたラウンド型で、リボンはメダルのリボンと同じ色の赤色です。



【2010年北京オリンピック(中国)】

 8月8日から8月24日まで中国の首都北京で開催されました。
 日本人選手は水泳の北島選手の金メダル、レスリングの吉田選手の金メダル、柔道やソフトボールでも金メダルを獲得しました。
 ヴィクトリー・ブーケは赤いバラを使った花束でした。中国では「赤」という色は特別で、「幸せを呼ぶ良い色」とされているそうです。オリンピックを歓待する意味で赤いバラを選んだと言われています。(PCなどで検索してみてくださいね!)

 花束は6つの花で構成されています。
 中国では「6」という数字は「滑らかに事が運ぶ」という意味があり、バラ以外の花は6枝ずつ使われているそうです。
 赤いバラ、ハイペリカム、トラノオ、リリオペ、レザーファン、ギボシです。持ち手はゴールドの包みは「バイオディグレーダブル」(生物由来)のものを使用しており、また、梱包材料(箱など)も使用後は微生物によって分解されるものを使用していたそうです。リボンもバラの赤に合わせて、オリンピックのロゴが織り込まれていました。
 アレンジスタイルはポンパドールでバラを生かした本当に素敵な花束でした。



【2010年バンクーバーオリンピック(カナダ)】

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 2月12から28日までカナダのバンクーバー市で開催されました。
 日本人選手は、フィギュアスケートの浅田選手が銀メダル、高橋選手が銅メダルを獲得しました。
 ヴィクトリー・ブーケはオリンピックでは珍しいグリーンでまとめた花束でした。選手のどんな色の衣装にも似合いますね。
 全てグリーンのスパイダーマム、ヒペリカム、リリオペ、レザーファン、ハランでした。

≪こんな花です≫

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(スパイダーマム・ヒペリカム・リリオペ・ハラン)

 こちらは普通の花ですが、色合いやアレンジスタイルで素敵なブーケになりました。



【2012年ロンドンオリンピック(イギリス)】

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 7月27日から8月12日までイギリスの首都ロンドンで開催されました。
 日本人選手ではボクシングの村田選手や体操個人の内村選手などが金メダル、水泳で銀メダル、銅メダルを獲得しました。
 ヴィクトリー・ブーケは、デザイナーのジェーン・パッカー氏によるもので、国花の「赤いバラ」ではありませんが、カラフルなピンク・オレンジ・キイロ・緑黄色のバラを用いて、十字にラベンダー、ミント、ローズマリー、小麦を配したラウンド型のデザインです。リボンはメダルのリボンと同じ紫色でした。

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 余談ですが、イギリスの国花が「赤いバラ」になったのは15世紀に白バラをシンボルとするヨーク家と赤バラをシンボルとするランカスター家が王位継承をめぐって戦い(バラ戦争)、ランカスター家が勝利したことに起因しています。イギリスにとって激しい戦いの中で国が一つになった象徴として、赤バラの中心に白バラ(各家の紋章)を配して二重のバラとして描かれたそうです(紋章:図鑑参照)
 イギリスの国花が「赤いバラ」になったお話でした(かなり端負ってますが~)。
 夏場のオリンピックだったので、ビタミンカラーの元気なブーケですね。



【2014年ソチオリンピック(ロシア)】

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 2月7日から23日までロシアのソチで開催されました。
 日本人選手は、フィギュアの羽生選手が金メダル、スノーボードの平野選手が銀メダルなどを獲得しています。
 ヴィクトリー・ブーケは、白と黄色のポンポン咲きスプレー菊、紫のスターチス、黄色はソリダゴ、葉はユーカリとレモンリーフを使ったラウンド型の花束です。リボンはメダルのリボンと同じブルーです。
 どちらかと言えば一般的な普通の花なのですが、こんなに素敵な花束になるのですね。花壇では地味になりますがアレンジメントにすると素敵!です。

 リボンは「ソチマーク」が印字されたオリジナルです。こだわっていますね。



【2018年平昌オリンピック(韓国)】

 2月8日から2月25日まで韓国の平昌で開催されました。つい最近まで盛り上がっていて記憶に新しいオリンピックです。
 日本人選手はスピードスケートの小平選手が金メダル、フィギュアスケートの羽生選手が金メダル、宇野選手も銀メダルと日本も沸きました。

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 平昌ではヴィクトリー・ブーケはなくて、「スホラン」、パラリンピックは「バンダビ」という名前のマスコットを渡していました(写真:公式オリンピックより参照)
 「スホラン」白い虎は、韓国を代表する守護動物だそうです。
 オリンピックに参加する選手、参加者、観客の保護を意味する「スホ」、虎の「ホライン」、アリランを象徴する「ラン」という意味を含んでいるそうです。

画像の説明

 パラリンピックのマスコット、ツキノワグマは「意志と勇気」の動物で、「バンダビ」は胸元の半月を意味する「バンダ」と対話を意味する「ビ」という意味を含んでいるそうです。
 花束もいいけど、マスコットも可愛らしくていいですね!

 近年のオリンピックでの花束を紹介してみました(写真:公式オリンピックより参照)

 ヴィクトリー・ブーケにおいて、使用する花の基準はありませんが、サイズ規定があり、縦・横のサイズや手に持って振り回しても壊れず、ブーケトスにも耐えられるものです。また、開催時期にもよりますが夏場の暑さに耐えられるよう、冬場は寒さで葉が傷んだりしないよう、また、アレルギーの出やすいタイプの花や葉は使用せず、固い葉の先(ハランなど)は出さないようにまとめる、など様々です。

 2020年は「東京オリンピック」です。現在、専門の方が色々な趣向を凝らして演出できるよう試行錯誤されている事でしょう。
 日本では、2016年あたりから「ヴィクトリー・ブーケ コンテスト」も開催されています。
 日本の国花は「キク」です。是非、使って欲しいですね!
 近年のオリンピックのブーケはハイセンスで目を引くブーケばかりです。競うわけではありませんが、「記憶に残る東京オリンピック」と同じように「記憶に残る素敵なヴィクトリー・ブーケ」になる事を願っています。
 全ての競技は精一杯の応援をします。そんな中、ヴィクトリー・ブーケの存在はあまり知られていないと思います。表彰の時にブーケにも是非とも目を向けてみてくださいね。
 全ての競技は、皆さんの精一杯の応援で盛り上がります!

 3月も中旬以降、日中は陽ざしの強い日もあります。

画像の説明

 寒さを耐えてきた草花が元気に生長を始めます。2月の低温で傷んでしまった草花を手入れをして復活させてあげてくださいね!
 写真のパンジーは2月の低温でクシャクシャになってしまいました。その後、少しずつ回復をしてきました。
 気温も上がってきます。肥料も与えましょう。水やりの回数も増えてきます。
 冬の間はノンビリしていましたが、ガーデナーにとって忙しい季節がやってきました。
 春に向けて頑張っていきましょう!

(18/03/12掲載) 

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