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花のコーナー 2018年05月

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花のコーナー

御園 和穂##

2018年05月 園芸店だより-1

 「風薫る爽やかな季節の到来!」と言いたいところですが、連日の暑さは「夏」がやってきたような~。
 今年の1月、2月は低温の日が長く続き本当に寒かったのが、3月に入り、徐々に「春を迎えるな」と思いきや、初夏の到来です。春の過ごしやすい時期は短くなってしまったのでしょうか。
 個人的なことですが4月から心機一転、一度やってみたかった「園芸店」での仕事を始めました。今までは、「花苗を育てる」、「植付けた後の管理をする」、という位置にいましたが、花市場や直接生産者からの仕入れで販売している「花苗、鉢物、野菜苗、資材etc.」を目の当たりにしています。
 本来の季節より少し早めの出荷と販売の状況をある程度は知っていたものの、流れの速さに追いついていない自分にあきれています。
 様々な植物を知っているようで知らなかったり、忘れてしまっていたことや曖昧なこと、再度勉強をする機会になりそうです。

 今回から、園芸店で見かけたり気になる花苗を紹介しようと思います。

バーベナ

画像の説明

学名:Verbena
クマツヅラ科 クマツヅラ属(バーベナ属)
別名:ビジョザクラ(美女桜)
原産地:南北アメリカから熱帯、亜熱帯地方に分布。
種類:一年草扱い、宿根草(多年草)

 バーベナは約250種の野生種があります。日本にもクマツヅラ(Verbena officinalis)の1種が自生しています。
 春から秋にかけて、サクラソウによく似た小花を咲かせます。

画像の説明

 19世紀の中頃にイギリスで作出された園芸品種が愛好家の間でとても好評で、多くの品種の栽培が行われたようです。
 花穂は丸く、20~30花ほどを放射状に付けます。
 花の中心が白くなるものや、花弁の縁に白いラインの入るもの、花弁の内2枚が赤3枚がピンクなどのものもあります。
 1880年代までに、名前のついている品種は100種にものぼったという記録がのこっています。

画像の説明

 日本では園芸的に一年草として扱われる品種と、比較的耐寒性があり宿根草(多年草)になる品種があります。
 一年草タイプは「種」で生育、多年草タイプは「挿し木(栄養繁殖系品種)」で増やされています。
 宿根草(多年草)タイプは、3月下旬から園芸店でポット苗が並びます。
挿し木で増やした栄養繁殖系品種の多くにはラベルがついていて品種名が記載されています。
 一年草タイプは4月中旬からラベルの付いてないポット苗が並びます。
 バーベナは、やや立ち上がる草丈が20cm程のものから高性種で150cmまで大きくなるものまであります。
 また、株を横へ横へと「匍匐(ホフク)」させるものもあり、匍匐タイプは栄養繁殖系品種に多くみられ、暑さや比較的寒さにも強く育てやすいです。

■匍匐タイプ:バーベナ・テネラ(Verbena tenera)
 ブラジル原産で、葉は細かく切れ込みが入っています。草丈は30cm程度で、地面を這うように広がります。茎が伸び倒れて地面に接する部分から発根しながら広がって行きます。
 水はけがよく、日当たりの良い場所を好みます。春もしくは秋に株分けを行うか、挿し木をして増やします。
 開花時期は5月~11月くらいまで。ただし、真夏は少し花が少ないかと思います。花色は薄い青色から始まり、現在は品種改良が進み、ピンクや赤、白などもあります。冬場は-5℃くらいまで耐えられます。常緑の葉のまま越冬しますが一部葉が枯れることもあります。
 グラウンドカバーやハンギングバスケット、コンテナの縁などで使うと良いですね。夏の終わりごろに全体を半分くらいまでに切り戻しておくと秋から美しい姿で開花します。
 その他の匍匐タイプは、サントリーフラワーズが販売している「タピアン」シリーズや「花手毬」シリーズがあります。

■高性タイプ:バーベナ・ボナリエンシス(Verbena bonariensis)

画像の説明

 中・南アメリカ原産で毎年花を咲かせる多年草です。
 サンジャクバーベナ(三尺バーベナ=90cmほど)、ヤナギハナガサと呼ばれています。高さは1m以上になります。
 茎は細く四角形ですが、とても丈夫なので特に支柱は必要ありません。
 細い茎が伸びて、上部が三つ又に分かれ先端に丸い花を付けます。花色は濃い紫から淡い紫、青です。
 庭植えの場合は自然な感じに仕上がります。花壇の場合は後方に配置し、他の背の高い植物と組み合わせてみると良いでしょう。
 その他の高性タイプは、「バーベナ・リギダ(verbena rigida)」です。
 高性とはいえ、30cm~40cmくらいです。茎はボナリエンシス同様四角形で風にも強いタイプです。
 名前のリギダは「曲がらない、かたい」という意味だそうです。
 花は半円球で下から徐々に上に向かって開花、円球部分が伸びて、最後は長く伸びた穂の先に花を付けます。花色は白と紫です。
 庭や花壇に植えると自然な雰囲気になります。大型のコンテナでも使用できますよ。

【育て方】

・一年草タイプ
 開花後、花柄摘みを行います。春に1か月ほど開花し、真夏は暑さに弱いので開花が止まる事もあります。
 露地植えも良いですが、出来れば鉢植えをお勧めします。春と秋はよく日の当たる場所で育て、夏場は暑さで花が咲かないこともありますので、明るい半日陰に異動して育てます。冬場は耐寒性がないので植替え時に抜き取るか、鉢ごと室内で育てます。
 水やりは土の表面が乾いてきたらタップリと与えましょう。肥料は春か秋に化成肥料を与えます。

画像の説明

 増やし方は「種蒔」です。発芽適温が15℃~20℃です。適期は3月下旬から4月、もしくは9月~10月です。
 種の表面には発芽を抑える物質が含まれています。一晩水に浸けて、揉むように水洗いします。
 その後、種がかくれるまで、覆土をします。発芽するまで土を乾かさないよう注意しましょう。3週間くらいで発芽します。葉が4枚ほど展開したら小さいポットに植え替えます。秋に播種したものは、室内に取り入れるか、ベランダなどの寒さに当たらない場所を確保し、春に植付けます。
 小苗の状態で過湿にすると立ち枯れ病を起こしやすいので要注意です。

・宿根草(多年草)タイプ
 バーベナ・テネラを参照してください。
 日常管理において高性種は特に管理を必要としません。肥料も不要です。
 花後に茎を切っておくと良いでしょう。
 増やし方は「挿し木」です。適期は4~5月。茎を2~3節(10cm程)を切り取り、下の葉は取り除き用土に挿します。用土を乾かさないように管理すると3週間くらいで発根します。苗がある程度の大きさに育ったら植付けましょう。
 バーベナは花の色合いも明るく、華やかなタイプや自然風のタイプです。組み合わせる花の大きさや色合いを考えてコンテナ植えや花壇植えにチャレンジしてみてください。品種や特徴を考えて、花壇や植付ける場所によって使い分けをしましょうね。



スカビオサ(セイヨウマツムシソウ)

画像の説明

学名:Scabiosa atropurpurea
マツムシソウ科 マツムシソウ属(スカビオサ属)
別名:西洋松虫草、ピンクッション・フラワー
原産地:アジア・アフリカ・ヨーロッパに分布
種類:一年草扱い、宿根草(多年草)


画像の説明

 ヨーロッパを中心にアジアやアフリカに約80種類が分布しています。
 毎年花を咲かせる宿根草(多年草)と一度花を咲かせ実を付けて枯れてしまう1・2年草のものがあり、品種によっては切り花としても市場に流通しています。
 写真のスカビオサは1年草(本来は多年草ですが、日本では1年草扱い)です。宿根草(多年草)はコーカサスマツムシソウ(S.caucasica)で、鉢植えが出回っています。
 スカビオサ(セイヨウマツムシソウ)はマツムシソウ属の中では、もっとも古く17世紀の初頭から栽培されていたようです。日本には明治初期に渡来しています。
 スカビオサの名前の由来は、ラテン語で疥癬(カイセン:疥癬虫による伝染性皮膚病)を意味するそうで、マツムシソウ属の一種が疥癬に効果があると信じられていたことにちなんでいるそうです。(園芸図鑑に記載あり)
 別名のピンクッション・フラワーは花の形が丸く盛り上がり、「針刺し」に見えたのでしょうね。そこから付いたそうです。
 また、日本にもマツムシソウ(S.japonica)、1種類があります。北海道から九州に分布する多年草で、ブナ帯などの山地草原に自生しています。草丈は50cm~1m程で、淡い青色の花を咲かせます。(花の形は写真と同じです)
 スカビオサは春から開花しますが、マツムシソウは「マツムシ」が泣き始める頃にさきます。
 ちなみに「マツムシ」はスズムシの古名で、スズムシをスマートにして一回り大きくしたような形の虫です。小学校の音楽の時に歌った「虫の声」の中で、「チンチロリン、チンチロリン」と鳴く虫のことです。
 マツムシソウの名前の由来は「マツムシが鳴くころに開花する花」からきているそうですよ。
 スカビオサは、花色は青や紫、薄い紫、白、深紅などがあります。草丈も小さいものは10cm程、大型種だと1mを越して、低木のように茂るものもあります。

画像の説明

 一般的に草花として栽培されているスカビオサ(セイヨウマツムシソウ)は園芸品種も多く、花壇やコンテナなどで楽しめます。
 花茎を20~30cmほど伸ばして開花します。茎が風に吹かれて「ゆらゆら」揺れる姿を見ると愛らしく感じます。しかし、茎同士が絡んだり、茎が途中で折れてしまったり、先端の花の重みで横へ倒れてしまったり、想像以上に暴れてしまうので支柱を添えるか、軽く紐でくくるか、そのまま放置するか。皆さんの好みにお任せします。
 咲き終わった花は花茎の下で取り除くと、開花期間中は次から次に花を咲かせます。
 開花時期は5月からですが、梅雨を越せれば9月一杯開花します。
 本来は一年を通して、風通し、日当たりの良い場所、涼しい環境を好みます。
 高温多湿になると下葉が蒸れて腐って枯れてしまう事があります。
 花壇植えの場合は植え付ける場所を考えてください。コンテナの場合は真夏の間は風通しの良い明るい日陰で出来るだけ涼しい場所に移動してあげると良いですね。
 耐寒性は強いので、夏を越すことが出来たらそのまま戸外で来春まで育てられます。

【育て方】

・水やりは、乾燥に強いタイプなので、手で土の表面を触って乾いてきたら与えます。また、極端に乾燥させると花が咲かなくなるので要注意です。真夏は蒸れやすいので朝早くか夕方に水を与えます。

・肥料は春先、秋に入って液体肥料か化成肥料を置き肥します。真夏と冬の休眠時期は与えません。
 用土は、酸性土を嫌います。花壇などの地植えの場合は、事前に苦土石灰を混ぜ込んでおくと良いでしょう。培養土や市販の用土を使用する場合は問題ありません。

・植替えは、1・2年草タイプは必要ありません。
宿根草(多年草)タイプは3~4年に1回株分けを兼ねて植替えをするとよいでしょう。鉢植えの場合は鉢の中の根がいっぱいになったら一回り大きい鉢に植え替えます。 3~4月が適期になります。

・増やし方は、1・2年草は「種」を蒔きます。
種まきは9月~10月、黒ポットに数粒ずつ播種して間引きながら苗を育てると管理しやすいです。種は薄く覆土します。発芽するまでは土を乾かさないよう管理しましょう。 苗が1本になるまで間引き、その後は1週間おきに薄めの液体肥料を与えます。冬は肥料を与えません。春になったら鉢や花壇に植付けます。
 宿根草(多年草)は株分けやさし芽で増やします。株分けは春先に行います。
 さし芽は茎の先端8cmくらいを肥料成分のはいっていない用土に挿します。適期は春ですが、9月ごろ株元から出てくる新しい新芽も挿せます。
 スカビオサ(セイヨウマツムシソウ)は茎を伸ばして揺れる姿が特徴です。
 単独で寄せ植えしたり、コンテナに植えて飾ったり、花壇の中に鉢で持ち込んで花を楽しんだりします。花が少なくなる夏場は涼しい場所で管理し、秋も楽しんでください。もちろん地植えでもOKです。
 咲いた花は、一部切り花にして戸外でも室内でも楽しんでみては如何ですか。

ライヤ・エレガンス

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学名:Layia elegans
キク科ライア属  秋まきの一年草
別名:カリフォルニアデージー
原産地:カリフォルニア州
草丈:30~50cm
開花時期:5月から8月ごろ


画像の説明

 ワイルドフラワーなどの種の中に入っている草花で、やせ地でも育つ丈夫な花です。
 本来は秋蒔きの一年草ですが、春にも播種ができます。春の播種の方が草丈を低く抑える事が出来ます。
 ワイルドフラワーの仲間なので、全体の姿は「野の花」のような自然な雰囲気の花姿で可憐ですね。また、切り花でも使用できます。
 実は、苗でライアを見たのは初めてでした。本来は種のみ(市販でも種の入手は難しい)なのだと思っていたので、花苗を見た時に「何の花?」かと思いました。
 ラベルに「ライア」と書いてあったのでわかりました。
 花壇などに固めて植付けると黄色に白の縁取りがとても美しく、華やかな雰囲気が演出出来ます。
 開花時期は3月下旬から5月一杯。耐寒性は強いのですが暑さに弱いので、気温が上がってくると終わりになります。

【育て方】 

 苗が手に入れば、花壇やプランター、コンテナなどで育てます。

・肥料は必要ありません。元肥に化成肥料を入れる程度で大丈夫です。

・水やりは、土を触って乾燥していたらタップリ与えます。

・種蒔で増やします。通常は9月下旬から10月の播種です。秋蒔きの場合は、寒さが来る前に根をしっかり張らして冬を越します。
種は種蒔用用土に播種して、薄く覆土をします。発芽まで用土は乾かさないよう管理します。葉が4枚程度になったらポット上げをします。薄い液体肥料を与えて生育させます。

・植えつけは春先3月下旬くらいからです。花壇なら耕して土壌改良材を混入、攪拌、元肥として化成肥料を1㎡あたり50g程度(手で一握りくらい)混ぜた所へ植付けます。1株が大きくなるので、30cm間隔で植付けると良いでしょう。

■種蒔が面倒くさい方へ
 すこし乱暴かもしれませんが、日当たりと水はけが良く、乾燥した風通しの良い場所に直播きします。痩せている土地の方が徒長しなくてよく育ちます。直播きして育てるのですが、もともとワイルドフラワーの一種です。環境が合えば自然に開花します。
 場所を見極めて、「花壇植え」にするか、「自然」に育てるか、楽しみ方は様々です。一度は試してみて!
 今年の花の見ごろは過ぎてしまいました。秋に種が入手できたらチャレンジしてみては如何でしょうか?

 園芸店勤務も大変です。狭い空間に「あれもこれも」とたくさんの花苗が並んでいます。水やりも含めてですが、黒のポットの中で「花が咲き始めてしまう」状況の中での管理になります。植え付け後の管理ように切り戻して~ではないので苦労しています。
 これから少しの間、園芸店での草花の紹介をしていきたいと思います。
 珍しい草花があれば是非紹介しますね!私も楽しみです。

 5月に入り、そろそろ夏の草花への植替え時期ですね。
 花壇やコンテナの様子、今年の花苗の様子、昨年の夏がどうであったかを思い出しながら準備をしましょう。
 日焼け止め、麦わら帽子、グローブ、タオル、飲み物を用意して花壇へGO!
 これからは強い日差しの下での作業になります。体が慣れていないと体調不良になりがちです。注意しながら作業を進めてくださいね。

(18/05/01掲載) 

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