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花のコーナー 2018年12月

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花のコーナー

御園 和穂##

2018年12月 球根植物

 平成最後の12月を迎えました。
 「冬はこないのかも~」と感じるくらい「暑い夏」でした。
 11月、暦の上で秋になっても暖かいような蒸し暑いような日が続きました。
 天気の良い昼間に「夏日」になる日もありました。中旬を過ぎると、さすがに肌寒くなりました。そして12月「冬の到来」です。
 今年はパンジー・ビオラの流通も例年に比べると遅かったようです。
 花壇やコンテナの植替えは、お天気の良い暖かい日を選んで片づけてしまいましょう。
 今回は秋に植付けた球根植物の紹介とこれからまだ間に合う球根植物を紹介しましょう。



サフラン

画像の説明

学名:Crocus sativus L.
アヤメ科クロッカス属多年草(球根植物)
英名:saffron 仏名:safran
日本名(漢字):咱夫藍
原産地:南西アジア
 

「サフラン」という名前はよく耳にしますが、観賞用として楽しむ球根植物より、香辛料として知られているのではないでしょうか。
 サフランは、秋咲きのクロッカスの一種です。元は薬用や染料を目的として栽培されていましたが、現在は観賞用としても利用されています。

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 資料によると、最初に栽培されたのはギリシャとされており、地中海の島で発見された壁画にも描かれており青銅器時代から栽培されていると考えられています。
 サフランは20cmほど葉を伸ばし、その中央から1球で3~4個の花を咲かせます。花の中に3本ずつある濃いオレンジ色の雌しべ(柱頭)が貴重とされ、乾燥したものを料理や染料、薬用、香料として使用します。旧約聖書の中にも「芳香を放つハーブ」として記載されており、古代ギリシャ時代やローマ時代には香水の原料として重宝されていたそうです。
 日本へは江戸時代に薬として伝わり、栽培は明治に入ってから行われ、その後衛生試験所の認可を受け、本格的な栽培、商品化を経て輸出されるようになったそうです。

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 球根は夏頃から流通し、8月から9月に植付けると細長いマツのような葉が伸び10月から12月にかけて開花します。
販売店で入手する際、本来ならば「芽」が出ているような球根が販売されることはないのですが、サフランは「芽」が伸びていて、花芽が見えているものもあります。
 このサフランは土や水がなくても、そのまま球根を放置しておくと、時期がくると葉が伸びて花を咲かせます。不思議な球根ですね。

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 サフランの栽培はとても簡単です。
 日当たりと風通しの良い場所を好み、酸性土壌を嫌うので花壇などに植える場合は苦土石灰を散布して土壌改良を施します。また、高温多湿を嫌うので水はけには注意しましょう。植えっぱなしの場合は夏越しが難しいので、夏前に球根を掘りあげた方が無難です。鉢植えの場合はそのまま夏越し可能です。
 生育期は花後から4月一杯。土が乾いたらタップリ水を与えます。肥料は植付け時に元肥と追肥を与え、花後と生育期間中の2月下旬から3月上旬にカリ分の多い液体肥料を与えると効果的です。
 肥料を与えすぎると軟腐病(球根がとろけたようになって腐る病気)の発生を招きます。
 球根は5月頃から葉が枯れ始め、梅雨前に枯れた葉を付けたまま掘りあげます。その後、雨の当たらない場所で乾燥させます。葉が完全に枯れた時点でその部分を取り除き、涼しい場所で保管します。
 鉢植えの場合は雨の当たらない涼しい場所で保管します。球根を分球すると小さくなるので翌年は開花しないか花が貧弱になる可能性があります。球根を養成させれば肥大して立派な花を咲かせます。

 ここからは余談です。
 サフランは「世界でもっとも高価なスパイス」と言われています。ご存じの方も多いと思います。

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 先にも述べましたが、秋に茎が伸びて葉が出るのと合わせて明るい紫色の花を咲かせ、花の中から覗かせる濃いオレンジ色(赤色も)の雌しべを乾燥させたものが、香辛料のサフランです。
 なぜ高価なのか?
 多数の雌しべの先端を手で摘み取る熟練の作業が必要で、大変な手間がかかるからです。サフランは雌しべ(柱頭)の先端だけに香りと味があります。写真のように雌しべ(柱頭)のみを摘み取り乾燥させます。
 今回9個のサフランの球根を植付けてみました。花を咲かせ雌しべを採取し乾燥させます。
 写真上から雌しべ(柱頭)を採取し乾燥させています。中央は十分に乾燥した状態です。下部は柱頭のみにした状態です。9個(球根)×3本の花×3で81個のサフランが採取出来ました!
 1gのサフランを採取するには160本の雌しべ(柱頭)が必要になるそうです。商品取引で1£=450gの乾燥サフランを採るには約5万本の花(物によっては7万本必要とも)が必要で、耕作面積はサッカーフィールド1面分だそうです。
 またサフランは開花満開時に一斉に採取しなければなりません。収穫時は驚異的な忙しさで農業従事者は2週間程の間、昼夜を問わず作業が行われるそうです。これだけの手間がかかれば高価なはずですね。
 通常のサフランは雄しべも雌しべも混ざったもので、雄しべは香辛料の役目はありませんが染料として役割を果たすそうです。
 良質のサフランの香辛料は鮮やかな真紅をしていて、潤いがあり弾力があるものだそうです。私が乾燥させたサフランは・・・ちょっとパリパリになりすぎたような~
 料理に使用される場合、サフランは干草(ほしくさ)の味にたとえられます。基本的には苦いです。色は黄色からオレンジ色です。
 焼き物、チーズ、カレー、肉料理、スープ、お酒などに入れられます。インドやスペインなどでは米料理に使われます。
 一般的には香辛料を加えた米とひき肉で作られる「パエリア」や魚のシチューの「ブイヤベース」などに使用されます。
 皆さんも一度は口にしたことがある料理だと思います。ただし、サフランは高価なので、「ベニバナ、ウコン、クチナシ」が代用されていることが多いようですよ。
 医薬としては、民間療法(ハーブ療法)として使われており、迷信も多くあるようです。生薬として「番紅花(ばんこうか)」と呼ばれ、鎮痛、鎮静などに効果があるとして流通しています。
 着色や風味付けでの用途で、食事から口にする量は安全とされていますが、妊婦の方は避けられてください(安全性に関しての充分な情報がないので)。
 また大量摂取やアレルギーのある方は注意が必要だそうです。
 使用するにあたっては充分に注意を払ってお使いください。
 サフランは高価であるにもかかわらず、染料としても使われてきました。伝統的にサフランによって染色された布は上位階級専用であったようです。ヒンドゥー教や仏教の僧は、サフランで染色された朱と黄土色のローブをまとっていたそうです。中世アイルランドやスコットランドでは、裕福な修道士がサフランで染めた麻の長袖のシャツを着ていたそうです。また、中世のころは髪の毛を染めるためにも使われていたそうですよ。

 あとこのような注意点もありました。参考までに。

・サフランの成分を充分に抽出するには事前に水に浸してください。
 最低20分、最大限成分を抽出するなら一晩かけてください。サフランは水溶性なので油には抽出しません。常温のアルコール、温水、酸(柑橘類)に溶けやすいです。

・サフランをパウダーにする場合は石臼やすり鉢またはミルで粉砕します。

・相性の良い食材は、アーモンド、ピスタチオ、リンゴ、トマト、ポテト、ローズマリー、シナモン、ニンニク、柑橘類、白ワイン、ビネガー、魚介類、米、麦、トウモロコシ等

・調理の際、木製器具を使うとサフランの成分を吸収してしまいます。

・サフランで染める際には、水溶性なのでミョウバンなどの色止め剤を使います。

・サフランを保存する場合は湿気と光を避けます。ブリキ缶などを使用します。また、容器の臭いを吸ってしまうので、容器が清潔で臭いのないものを使用します。賞味期限は3年程。

 以上です。
 
 実は、今まで料理で使用したことがあります。もちろん友人に手料理をご馳走するためと見栄を張って~です。それ以外では、高価なものなので使ったことがありません。そこまでグルメでもないので~。
 でも、世界中では、高価であっても「サフラン」を求める方は多くいらっしゃるようです。
 花壇に植付けたことはありません。インテリアの一部や鉢植えで楽しむ程度です。今後もこのスタンスは変わらないと思っています。
 皆さんはどのように使われますか?
 食べるものよし、植えつけてもよし。一度は楽しんでみてくださいね。

 次は前回紹介した「似て非なる植物」になりますが、サフランに似ているけど異なる植物です。



コルチカム

画像の説明

学名:Colchicum ユリ(イヌサフラン)科(球根植物)
原産地:ヨーロッパ、北アフリカ
別名:イヌサフラン、オータムリリー


 コルチカムは60種ほどの原種があり、欧州、中東、北アフリカの地中海沿岸地域に自生しています。
 ほとんどの種が秋咲きで、花色はピンクや紫色です。一部黄色で春咲きの種もあります。

 秋になると、土も水もなく、根も葉もないのに球根から白い茎が伸びてきて開花します。

画像の説明

 夏の終わりから秋口に流通しますが、販売店の球根陳列棚で花が咲いている姿を見ることがあります。わかっていても、花が咲き始めていると「あ~咲いてる!」とビックリするものです。
 翌年も開花させるためには、土に植付けて水を与え、よく日にあてて育てないとダメですよ。
 生育期は冬から春にかけてです。花後に根や葉が伸びてきて春までに栄養を貯え、その後、葉は枯れてしまいます。葉はチューリップの原種のような形をしています。
 開花している姿や花が「サフラン」に似ています。しかし、科が違うので見た目とは異なり縁遠い植物です。
 また、コルチカムはサフランのような濃いオレンジ色(赤色)の雌しべはありません。残念ながら香辛料でもありません。
 球根や種には「コルヒチン」という成分が含まれており、痛風の治療薬としてもちいられています。ただし、この「コルヒチン」は「劇物」なので、中毒を起こした例も挙げられています。
 球根を誤って口にしたりしないよう十分に注意をしてください。
 
 ここまでは夏植えの球根で、12月くらいまで楽しめる球根植物をご紹介しました。秋植えの球根は12月一杯に植付けを済ませておけば、来春気温が上がってくる頃に開花します。今までも球根植物をいろいろと紹介してきました。重複する部分もありますが~



ラナンキュラス

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学名:Ranunculus asiaticus
キンポウゲ科キンポウゲ(ラナンキュラス)属
多年草、秋植え球根
別名:ハナキンポウゲ
原産地:中近東からヨーロッパ南東部
開花時期:3月~5月

 早春から鉢物で流通する球根植物です。キンポウゲ属の植物は世界中で500種程確認されています。ラナンキュラスと呼ばれるのは、その中で地中海沿岸気候帯に分布するラナンキュラス・アシアティクスを品種改良したものです。秋から春に生育し、気温が高くなる夏に休眠します。
 「ラナンキュラス」は「カエル」という意味です。これらの属の多くは湿地帯を好むそうで、そのように名付けられました。しかし、品種改良されたアシアティクスは多湿を好まず水はけの良い場所を好みます。
 花の特徴は紙のような薄い花弁が幾重にもかさなりあった姿で、形だけでなく香の良いものもたくさんあります。
 花壇でも使用しますが、鉢物や切花で販売されているのを見ます。

画像の説明

 秋植え球根なので、10月~12月に植付けをします。適期は10月です。
 球根は写真のような乾燥状態で売られています。気を付けないと、植付けの際に急激に水を吸わせると「腐って」しまいます。
 まずは、ゆっくり給水させて戻します。

~戻し方~

・戻した水ゴケを硬く絞り、水ゴケと球根をビニール袋に入れて、一晩かけてゆっくりと水を吸わせます。

・キッチンペーパーを湿らせて軽く押さえて水分を切り、ペーパーの間に球根を挟み、ビニール袋もしくはラップで包んで給水させます。

 このように戻した球根はピチピチになります。この状態で花壇やコンテナに植えます。
 もちろん、そのまま花壇やコンテナに植付け、徐々に水を与えることでも大丈夫ですが、傷んでいる球根や水を吸わなくて腐ってしまう球根も出てきてしまいます。面倒でもひと手間かけてから植付けましょう。

画像の説明

 写真の白の輪の部分から発芽します。
 数年たって株分けする時も、この部分を残して株分けをします。
 葉が出てきて花が咲き始めたら、枯れた花や葉は取り除き清潔に育てます。日当たりの良い場所を好みます。鉢物の場合、べランダの凍結や霜に遭わない場所で育てます。逆に室内に取り込むと暖かくなり過ぎて茎が徒長してしまいます。少し寒い場所でかっちりと育てることをお勧めします。
 花壇の場合は、低温になりそうな場所では、土の表面にマルチングなどの防寒を施して過ごさせましょう(1~2月の間)。
 水は土の表面が乾いたらタップリ与えてください。乾燥させすぎると葉が萎れて、やり過ぎると球根が腐ります。ほどほどでお願いいたします。
 芽が出てから花が咲き終わるまで、2週間に1回程度の割合で薄めの液体肥料を与えます。
 管理は面倒ですが、花は本当に可憐で美しく次から次に咲きます。切り花でも楽しめます。
 花後、葉が黄色くなったら掘り上げます。掘り上げた球根は葉を取り除き日当たりの良い場所でしっかり乾燥させます。その後は涼しい場所で保存します。掘り上げの適期は6月です。
 ちょっと管理が面倒かも!!でも、まだ間に合います。是非、育ててみませんか!
 まだまだ色んな球根があります。
      アネモネ          ヒアシンス         チューリップ

画像の説明

 実は、「植えよう」と思っていて購入していた球根類です。
 アネモネの球根もラナンキュラスと同様、「戻してから」の植付けになります。今回、ヒヤシンスは水栽培にしようと思っています。
 秋植えの球根類は、1月、2月の寒さを経験することで、春から芽を出して花を咲かせます。
 球根植物は発芽時期がこないと姿が分からないものもあります。定番の花壇の色付けに少し加えてみては如何でしょうか?
 植付けが終わっている花壇でも、花苗と花苗の間に球根を幾つかまとめて植えておくのもいいですよ!
 寒い冬を越して少し暖かくなった時に、「これなんだ?」って思うに違いありません。結構忘れてしまっていること多いので!
 もの忘れが、「素敵な花壇」になるのです。

 今年もこれでおしまいです。
 毎回、目の前に咲いている植物を題材にしたり、自分の好みばかりで進めてしまっています。「何かあればご意見でも!」と思っています。

 この一年、ご愛読いただき有難うございました。
 来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

(18/12/01掲載) 

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