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花のコーナー 2019年02月

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花のコーナー

御園 和穂##

2019年02月 お多福

 新しい年を迎え、あっという間に一か月が過ぎてしまいました。
 暦の上では「春」を迎えますが、二十四節季の大寒から立春までが一番寒い時期ですね。
 「春」とは名ばかりではありますが、「節分」や「初午」、「御事始(針供養)」などの季節行事を耳にすると「春が来たな~」と、私は感じます。

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 特に「節分」の季節になると神社の門の前に大きな「お多福面」が出現します。その面の大きくあいた口の中をくぐり抜けると「商売繁盛」、「家内安全」と言われています。ご利益をおすそ分けしてもらおうと口の中へ~。
 余談ですが、神社のお多福門は1961年の節分の時に福岡市の櫛田神社が最初にはじめたそうです。
 現在でも櫛田神社の「お多福」は日本一の大きさを誇っているそうです。
 『多くの福を招く』で「お多福」なんでしょうね。でもなぜ「お多福」なのか?少し触れてみましょう。

 2月は「節分」、節分の次の日は「立春の日」です。
 節分は「鬼は外~、福は内~」の掛け声で豆まきをし、鬼を払い、たくさんの「福」を我が家に招き入れます。
 と言うことは「鬼」よりも「福」が目的なので「お多福」なのでしょうか?
 さらに調べていると、狂言の中にお多福の登場する話がありました。

お話の内容は・・・

 ~暴れる鬼たちを豆まきで追い払ったものの、豆まきの豆が無くなってしまい、再び鬼が暴れ始めます。そこへ現れたのがお多福です。
 お多福は優しい笑みで、鬼の怒りを鎮め、同時に優しく話をして改心させたそうです。素行の悪さを反省した鬼はお多福に打ち出の小槌を差し出し、舞いを披露し、おとなしく去っていったそうです。~ めでたしめでたし!

 なるほど!節分の豆まきには、こんな深い意味があったのですね。
もう一つ。
 「おたふく」には、様々な言われがありますが、「頬が丸く膨らみ、魚のフク(河豚)」に由来する説や、「福が多い」という説などもあります。
 また、今は使われるかどうかはわかりませんが、昔は「醜い顔である」という意図で、女性を侮辱する言葉として「おたふく」が使われていたこともありました。
 別の呼び方で「おかめ」と言われることもありますが本来は別物です。

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おたふくは狂言や能の中に登場し、おかめは里神楽(17世紀くらい)で使用され、頬が「瓶」のように膨らんでいるところから名付けられ、道化やモドキ役として使われてきたそうです。男性の仮面の「ひょっとこ」に対して「おかめ」として親しまれてきたようです。
 諸説ありますが、どちらにせよ、ぽっちゃりとした福々しい体躯の女性は「魔除け」になると信じられており、ある種「美人」を意味していたようですよ~
 私は「福」を込めて、新年のご挨拶や節分の季節には、「お多福」が描かれているお菓子や面を用意しています。
 言葉だけでも「福」を感じると幸せな気分になれますものね!


 さて、私たちの周りの植物にも「おたふく」のつく植物がいくつかあります。今回は「おたふく~」を紹介します。



オタフクナンテン

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学名:Nandina domestica cv. Otafukunanten
メギ科ナンテン属 常緑低木
別名:オカメナンテン、ゴシキナンテン

 ナンテンの仲間で「難を転ずる」ことから縁起の良い植物の一つとされています。
 背が低いタイプなので、お正月の門松の葉ボタンの脇や玄関先の植込み、花壇の彩りとして使用されています。
 常緑の植物で、冬の間も落葉しません。霜が降りる季節になると葉が赤く紅葉します。
 私たちがよく知っている「ナンテン」の園芸品種で、丈は50cm程度でコンパクトです。
 品種改良のため、ナンテンのような「赤い実」は付きません。
 樹高も50cm前後で、生育が遅いため中々大きくなりません。庭木低木ではありますが、剪定はほとんど必要ありません。逆に剪定をしてしまうと回復しにくいので要注意です。もちろん邪魔な枝や混み合っている場合は枝抜きをおこなってください。 

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 春になると黄緑の新芽がでます。全体に緑ではありますが赤みのある緑です。真夏になると濃い緑になり、冬場は赤く紅葉し、季節ごとに葉の色が変化する植物です。
 植付け場所は日当たりの良い場所から半日蔭を好むと書かれている書物が多いですが、少しの半日蔭なら問題ありませんが、日当たりが悪いと冬場の紅葉が悪くなってしまいます。
 真夏の炎天下では葉焼けを起こしてしまうこともあります。また、夏場は日焼けと合わせて極端な乾燥が続くと枯れてしまいます。
 そこは注意して育てましょう。
 
 オタフクナンテンには花が咲きません。よって、実も付かないので、繁殖は挿し木で増やします。
 葉はナンテンのように細長くはなく丸みがあります。
 寒くなっても葉が赤くならないこともあります。
 理由の一つは、先に記載したように「日当たりが悪い場合」です。
 もう一つは生育が旺盛な場合や、若い苗木や過剰に肥料を与えてしまった場合も「赤くならない」症状が出ます。

 最後に。四季折々で葉色が変化して、とても美しい植物のように思われがちですが思うほど綺麗ではないと(春から秋まで)私は思います。
 しかし、冬場の赤い葉はとても美しいです。
 冬場の華やかな色がない季節には重宝します。また、周年を通して手間が掛からない植物としては使いやすく、便利な植物です。

 次は。

オタフクアジサイ

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学名:Hydrangea macrophylla cv.Uzuajisai
ユキノシタ科 アジサイ属
別名:ウズアジサイ(渦紫陽花)

 江戸時代からある品種で、ガクアジサイの園芸品種です。
 正式名称は「ウズアジサイ」です。
 園芸店では「ウズアジサイ」や「オタフクアジサイ」と書かれた札が見られますが、同じものです。
 青色が基本で、他の花を連想することはありませんが、ピンク色のオタフクアジサイの場合は「梅の花」に間違われることもあります。
 昔は「梅花」や「オカメ」と呼ばれることもあったそうです。
 本来のウズアジサイの名前は、装飾花の花弁が貝殻のように渦巻になっていたことから名付けられたとされています。

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 また、オタフクアジサイは装飾花が「おたふく豆」に似ていることから付けられたそうです。
 装飾花が丸い形をしているのが特徴ですが、これは病気にかかったアジサイを品種改良した変異品種なのです。
 装飾花は、一重の花弁で全てが綺麗に開くわけではありません。
 手毬咲きタイプのアジサイですが、花房ごとに変化があってまとまりがありませんが、その姿が長い間親しまれてきた理由の一つかもしれませんね。

 基本の色は青色。他の青いアジサイに比べると落ち着いた色と花全体の大きさが小ぶりなのもあり、主張をしないように思います。目立つ場所にポイントで植えても綺麗な花木の一つになります。
 また、剪定を調整して大きな株に育てても、花の大きさは変わらず花の数が増えますので、迫力のある花木としても楽しめます。
 育て方は普通のアジサイと同じです。
 アジサイの育て方は、剪定がポイントかもしれません。
 毎年花を楽しむのであれば放置するのがよいと思いますが、年々大きくなり、花の咲く位置も高くなってしまいます。

 剪定にはいろいろな方法がありますが、失敗が少ない2段階剪定があります。
 まず1回目の剪定は、花が終わったらすぐに花から下の2~3枚目の葉の上で切ります。
 2回目の剪定は秋になります。1回目で切ったすぐ下の目が伸びてきているはずです。その一つ下の葉の付け根に来年の花芽がつくので、その上の茎を切り取ります。コンパクトに育てたい場合は剪定を小まめに行う方が良いようです。それでも忘れてしまった場合。冬場に葉が落ちて茎だけになった時に、葉がついていた脇の部分に芽が見えます。
 細長い芽は葉芽、ぷっくりと丸い芽は花芽です。見分けがつくようであれば丸い芽の上で茎を切ってください。後は、翌年に花が咲く事を願ってください!
 花色に関しては土壌のペーハーによって変化すると言われています。
 試してはみましたが、色が濁ったようになり美しい色にはなりませんでした。もう少し試してみないと・・・。ご存じの方は是非教えてください。

最後は

オタフクマメ

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学名:Vicia faba L.
マメ科ソラマメ属
別名:ソラマメ
英名:Faba bean broad bean
原産地:地中海沿岸、中央アジア
発芽適温:15℃~20℃

 ソラマメは、豆の大きさが1cm程度の小粒から3cm上になる大粒まであります。
 古くから栽培されている豆で、鞘の中に3~4個の種子ができます。
 旬は5~6月頃から。個人的ですが、私は大粒のソラマメが出てくると、「夏の到来」を感じます。初夏の味覚の代表選手ではないでしょうか♪
 出始めの頃は表面の皮も柔らかく、塩ゆでにして皮ごと食べます。生のソラマメは鮮度の低下が早く、「新鮮でおいしいのは3日だけ」ともいわれています。
 選ぶときは、鞘の色が濃くて艶の良いものを選びましょう。
 乾燥に弱いので、すぐに食べない場合は鞘のまま保存します。
 花は白に濃い紫の筋がはいり独特です。
 名前の由来は、花後に付く鞘が上を向いて付きます。このように「空へ向かって鞘が付く」ことから「ソラマメ」と呼ばれています。熟してくると地面に平行もしくは下を向いてきます。
 ソラマメの大粒タイプを「オタフクマメ」と呼んでいますが、豆がおたふくの形に似ていることからそのように呼ばれているようです。
 でも確かに「おたふく」のような形で可愛らしいですね。

 栽培に関しては、播種時期は10月中旬から11月上旬。晩秋から発芽して芽を伸ばしながら冬を迎え、初春からグーンと大きくなり5月中旬~6月中旬に収穫になります。
 大きな豆を収穫するには、大きな豆がつく品種を選びます。また、春先に草丈が50~60cmほどになったら太い枝を6~7本残して整枝し、株の中央にタップリ土寄せを行います。
 その後、生長し70cm程度になったら各枝の先端を摘心して、それ以上花や実が付かないようにすると大きな鞘が付いて実が大きく出来やすくなります。
 マメ科の植物なので、毎年同じ場所での栽培は避けましょう。(連作障害が出やすい)また、酸性土壌を嫌うので土壌改良をしっかり行いましょう。
 植付け時期が早いと、株が大きくなったころに寒波にさらされ枯れてしまうこともあります。適期を守りコンパクトな状態で冬を越させます。
 収穫は開花から35~40日程度。上を向いて付いた鞘が重みでやや斜めに下がってきたら収穫のサインです。

 「おたふく」の名がつく植物をいくつか挙げてみました。
 やはり、形が似ていたり、丸かったりと共通の特徴がありました。適当に付けているわけではなかったようですね。

 「おたふく」(「おかめ」もあり)は諸説の中で軽蔑される言葉であったりすることはありますが、やはりとらえ方としては『幸福の象徴』ではないでしょうか。
 縁起の良いものの一つのようです。
 もうすぐ節分です。
 豆まきをする際には鬼の面とお多福の面を準備してみませんか?
 お多福の面はかぶらなくても飾っておけば、いったん逃げた鬼も戻っては来ないはずです。
 春はもう少し後になりそうですが、気持ちは「福」いっぱいで!

(19/02/01掲載) 

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