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花のコーナー 2019年08月

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花のコーナー

御園 和穂##

2019年08月 夏の多年草(宿根草)

 6月下旬、関東よりも遅く梅雨入りしました。北九州市は思うほどの雨も降らずに梅雨明けかと思っていましたが、7月中旬には台風の影響もありまとまった雨が降りました。
 昨年のような雨による被害が無かったのはなによりですが、一部の地域では、渇水による水制限が発令されている所もあったようです。
 梅雨から真夏の高温多湿はかないませんが、植物によっては生育や繁殖の季節で、湿度があることで生育が促される時期でもあります。
 でも、花壇の草花は高温多湿が苦手です。
 毎日の手入れの際、花柄摘みと平行して混んでいる部分の切り戻しを行い、風通し良くし真夏を過ごさせてあげましょう。
 8月は真夏ど真ん中!
 今しばらくは暑さとのお付き合いですね。
 
 今回は初夏から真夏に開花する多年草(宿根草)を紹介します。

リアトリス

2019

学名:Liatris
キク科 ユリアザミ属(リアトリス属)
分類:多年草(球根植物)
原産地:北アメリカ
開花時期:6月~9月
和名:ユリアザミ
草丈:60cm~150cm
花色:紫・ピンク・白

 リアトリスは北アメリカ原産で約35種が分布しています。現在は、園芸品種も多く、さらに交配種も多くみられるようになりました。
 地中に塊状の地下茎があり球根植物として取り扱われています。
 日本には大正末期に渡来し、花が「アザミ」に似ていて、葉が「ユリ」に似ていることから「ユリアザミ」の和名を持っています。
 冬、地上部は枯れてしまいますが、春先に芽を出し毎年花を咲かせます。
 初夏から真夏の暑い時期に開花します。

画像の説明

 草丈は大きい種類であれば、120cmから150cmほどになります。
 庭植えや花壇、切り花としても楽しめますね。
 リアトリスは花の付き方によって「槍咲き」と「玉咲き」に区別され、今回紹介するタイプは「槍咲き」になります。
 槍咲き品種はスピカタ種(L.spicata)とスカリオサ(L.scariasa)が元になった品種です。
 春に芽を出し葉を茂らせ、花の時期になると真っ直ぐに花序を伸ばして上から順に下へと花を咲かせます。

 
 新しい品種は花穂の上から下までタイムラグなしに開花するタイプもあるそうですよ!

画像の説明



 花は小さい五角形の星形が集まり、中央の5本のおしべは合着して、めしべが突き出た形をしています。
 葉は、株元周辺は披針形(ヒシンケイ:先の尖った平たく細長い形)で、茎の上の方は細い針のような葉が付いています。
 育て方はいたって簡単。一度植えたら特に手をかけなくてもよく育ちます。

【育て方】

■日当たりの良い場所を好みます。
■やや乾燥気味にし、肥料は3月と9月に化成肥料を与えます。多く与えすぎると株が茂り草丈が高くなり過ぎます。
■あえて手をかけるなら~。今回紹介しました「槍咲き」の場合、春に草丈が30cmくらいまで伸びてきた状態で茎の先端を摘みます。摘むと脇芽が伸びて花数が増えます。
■大きな花穂を育てたい場合、春の芽立ちの時に丈夫な太い茎だけを残し、細く弱々しい茎をかぎ取ることで大きな花穂が育てられます。
■長い間植えっぱなしの場合、株まわりに白いカビが生えることがあります。
これは「※白絹病」といい、植物を枯らしてしまう病気です。

※白絹病(シロキヌビョウ・シラキヌビョウ):
 糸状菌(カビ)やその他様々な病原菌によって引き起こされる病気です。
 発病すると、株元や土の表面に白い絹糸のようなものが現れます。そのままにしておくと株や茎は腐り、葉が黄色くなって枯れます。病原菌はその後茶褐色の菌核を多数形成し、土の中で冬を越して、翌年に土を通して別の植物に感染します。
 白絹病は、一度発生すると治療ができません。そのため防除対策をきちんと施しましょう。

【処理方法】
 病気にかかった植物は抜取り、焼却処分。発生した周辺の土壌は、土を湿らせて黒のビニールなどで覆い(光を吸収するもの)、炎天下で高温消毒します。その後、天地返しをします。
 2~3年に1度は掘り上げて株分けをしましょう。
 株分けの適期は3月か10月。3月は芽立ち前、10月は開花後茎を30cmくらいに切ってから行います。
 掘り上げた株は2~3芽を一株としてナイフで切るか手で割り、今まで植わっていた場所とは異なる場所に植付けをしましょう。

■増やし方は、株分けか種蒔です。
 株分けは上記の方法で行います。
 種蒔きは、自家採取した種か購入した種で行います。適期は5~6月です。種まきをした場合はその年に花を見ることはできませんが、翌年には開花します。
 株が大きくなるので、庭植えや花壇に向いています。庭植えの場合は壁際や樹木と樹木の間に植えると良いでしょう。組み合わせによってはナチュラルガーデンに仕上がりますよ。
 花壇の場合は、花壇後方に群れ植えをすると迫力がでます。
 花後は地際から30cmあたりで切り戻しておくと、茎が倒れたりせず冬まで見栄えが良いですよ。
 お勧めの植物です。



 次は。

エキナセア

画像の説明

学名:Echinacea purpurea
キク科 ムラサキバレンギク属(エキナセア属)
分類:多年草
原産地:北アメリカ
開花時期:6月~9月
和名:ムラサキバレンギク
別名:パープルコーンフラワー
草丈:30cm~100cm
花色:紫・ピンク・白・黄・赤・オレンジ

画像の説明

 エキナセアは中央部分が盛り上がり、花弁が下向きで放射状に「可憐な?」花を咲かせます。
 花の観賞期間が長く、庭植えや花壇にピッタリです。また、切り花にも使われています。
 花後、中央部分の盛り上がりが球状で残り、ドライフラワーにもなります。
 近年、背の高さや花の色などが改良され、とてもカラフルな品種を多く見かけるようになりました。
 私は、多年草植物として花壇で育ててきましたが、エキナセアはハーブの仲間でもあります。
 アメリカの先住民であるインディアンが感染症の治療に、歯やのどの痛みに、そして傷の治療のために使ってきたという歴史があり、欧米では人気の植物です。
 19世紀にドイツ人がインディアン達の使用していたものを持ち帰り、その後欧米に広がったと言われています。
 ちなみにドイツは「ハーブの先進国」と言われています。ハーブを医療品として扱う場合の安全性や効果をきちんと試す国家機関まであるそうです。
 国家機関においてエキナセアは、『免疫活性効果があり慢性的な炎症の治療に有効である』と認定されているそうです。実際に欧米では、風邪のひき始めやインフルエンザの予防・改善に効果が期待されるとして広く使われているそうです。
 ハーブとして「免疫力のアップ」が期待でき、体の中の免疫システムの働きを活発化させ、抗ウイルスや抗殺菌作用がアップするそうです。
 日本国内では、一般的にハーブを医療に使用しないのですが、民間療法として取り入れられている方がいるかもしれません。
 エキナセアに関して、アレルギー反応を起こしやすい方(特にキク科植物)や妊娠中の方、膠原病や結核、白血病、HIV感染などの自己免疫疾患のある方は使用できません。必ず医師に相談をしてからにしましょう。
 ただし、現在私達が手にしているエキナセアは、観賞用の園芸品種として改良されています。ハーブとしての薬効は期待できません。
 
 と、色々と書きましたが花壇の中の植物としてはとても素敵な植物です。一般的にハーブ園でも育てられています。
 また、バラの「バラゾウムシ」のコンパニオンプランツとして植える方もいます。バラゾウムシはエキナセアに集まる習性はあると言われています。
 私も一度試してみたいと思います。
 暑い夏に元気に花を咲かせ、管理も特別難しくはありませんよ。

【育て方】

■日当たりと水はけの良い場所を好みます。水はけが悪いと梅雨時期に根腐れしやすくなります。春の芽だしは遅いですが、6月を過ぎると急激に大きく育ちます。
■水やりは、露地植えの場合はいりません。鉢植えは表土が乾いたらタップリ与えましょう。
■肥料は5、6月と10月に月1~2回化成肥料の置き肥をします。
■病害虫には強い植物ですが、梅雨時期に蒸れてくるとカビ病や※白絹病が発生することがあります。出来るだけ風通し良くしておきましょう。
■植付け、植替えは4、5月と10月が適期です。露地植えは最初に腐葉土や石灰を加えて植えます。鉢植えは毎年根をほぐして古い土を取り除き新しい土に植え替えます。

画像の説明

■開花後、枯れた花を取り除き、わき芽を出させて次の花を長く花を楽しみます。
■増やし方は種蒔きと株分けです。

 
 最近の品種は無性生殖で増やしたものが多く、種ができなかったり、出来たとしても個体差がでるので、株分けをお勧めします。
 冬場は地上部が枯れます。地上部は刈取ってください。
 ほとんど手のかからない、一般的に比較的寿命の長い多年草です。こちらもお勧めの一つです。



 今回は2種類の多年草(宿根草)を紹介しました。
 皆さんから、多年草(宿根草)は「手がかからない植物」。植えっぱなしでも大丈夫ですね~と言われます。
 確かに手がかからない植物のように見えますね。
 でも、一年草植物のようにある一定の季節が来ると植え替えたり、毎回の管理をしなくて放置しておけばよいというわけではなく、きちんと肥料を与え、剪定や植え替え、株分け、土壌管理をしてあげないと健全には育たないのですよ。
 また、植物の品種や性質によっては、花壇に植えても3~4年程度でなくなってしまうものもあります。
 植物は地域環境によって長く生育したり、すぐに消えてしまったりします。育て方の問題がある場合もあるかもしれませんが、こればかりは仕方がないものと判断をして頂きたいと思います。また、とても環境が合い、増やしたくないし大きくしたくもないのに勝手に育ってしまう植物もあります。
 このことは、是非覚えておいてくださいね。

 今回は、長く楽しめて毎年開花し、あまり手のかからない多年草(宿根草)を紹介しました。他にも沢山の同じような多年草(宿根草)があります。
 季節によって異なる多年草(宿根草)を園芸店で手にとってみてくださいね。

 これからの花壇、もしくは来年の花壇に取り入れてみては如何でしょうか?夏花壇の彩りとして!


【注意喚起】

 6月に掲載しました『初夏に咲く花』の中に「コンフリー(ヒレハリソウ)」を事例として挙げています。
 近年、コンフリーが原因と思われるヒトの肝静脈閉塞性疾患等の健康被害例が海外において多数報告されています。
 現在、日本では中毒や被害の報告はありませんが、平成16年6月から厚生労働省はコンフリー及びコンフリー成分を含む食品については販売禁止となっています。ご家庭で栽培されている場合、摂取はしない方が良いでしょう。

(19/08/01掲載) 

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