花のコーナー 2019年10月
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花のコーナー
御園 和穂##
2019年10月 赤い実と秋の草
9月は涼しくなったかな~と思ったら、蒸し暑く気温の高い日が繰り返しありました。暑い夏は終わらないのかも~と思っていましたが・・・後半に入るとようやく過ごしやすくなりました。
今年は昨年以上に暑い夏でした。梅雨時期に雨が少なく、その後、降る雨は大雨で気温湿度が高く、多くの植物や草花が傷んでしまいました。
本来、9月に入ると傷んだ草花の植え替えを行いますが、植え替える「草花が育っていない」状況です。
しかし自然の中、植物や草花はこのような状況下にあっても、たくましく花を咲かせ実をつけていました。
暑さで気が付かない間に、季節は少しずつ移り変わっていました。
今回は、手入れがおろそかになっていた花壇の周辺の草抜きをしていて、思わず抜いてしまいそうになってしまった赤い実の草花から紹介します。
ジュズサンゴ
学名:Rivina humilis
ヤマゴボウ科リビナ属 多年草
別名:ハトベリー、数珠珊瑚
原産地:北米南部~南米
花色:薄紅色から白
果実:赤、ピンク、黄色
草丈:30~100cm程度
原産地では森林や林、道端などの半日陰でやや湿り気のある場所に自生しています。
日本へは大正時代初期に渡来し、現在では小笠原諸島や沖縄などで帰化植物として野生化しています。
比較的暑さには強いのですが、逆に寒さに弱く暖地以外では一年草扱いです。
半つる性で、庭植えにすると100cm以上に成長し、冬を越せば茎は木質化します。
九州北部あたりでは、冬の寒さにあたり地上部が枯れてしまいますが、根は残るので春になれば芽吹きます。また、環境にあえばこぼれ種でよく増えます。
開花時期は6月から10月。
時期が来ると、上部の葉の付け根から花序をだし、小さな花を房状に咲かせます。
花は3mm程の大きさで、花びらに見えている部分(4枚の部分)は萼です。
萼は薄いピンクから白色です。
「花を楽しむ」というよりは「実を観て楽しむ」タイプの草花です。
名前の由来は、数珠のように連なって実る果実から付けられました。
花が咲く期間が長く、花は次々と赤い果実を実らせるため、花と実が同時に楽しめます。
現在は園芸品種も増え、赤い実が基本ですが、ピンクや黄色い実のものも見かけるようになりました。
春先に種を蒔くか、苗を植えます。
真夏の炎天下でも元気に育ちますが、乾燥に弱く傷んでしまいます。
庭植えする場合は、夏場の対策も考えて最初から半日陰に植える事をおすすめします。耐陰性もあり、よほど暗い場所でない限りは育ちます。
赤い実が鮮やかなので花は目立ちませんが可憐な花です。
今回のジュズサンゴは、シェードガーデンのシュウメイギクの株まわりに植わっています。
暑い夏の間は忘れていましたが、株元から伸びた茎の先に沢山の赤い実が付いていました。
これから季節が変わり赤い実をつける草花はありますが、特にジュズサンゴは葉の色合いや柔らかさ、草花の持っている雰囲気は繊細なイメージです。
管理する際に、繊細さゆえなのでしょうか? 雑草と間違えて抜いてしまいそうになります。夏の間、気がつく事もなく申し訳なかったな~と思いながら、暑い中にも秋の気配を感じました。
ナチュラルなガーデンの草花として、是非お勧めの一つです。
次は。
ミズヒキ
学名:Polygonum filiforme
タデ科タデ属 多年草
別名:赤子(アカゴ)、髪引草(カミヒキクサ)、山蓼
原産地:日本、朝鮮、中国、インドシナ、ヒマラヤ
花色:赤 草丈:20~50cm(花茎40~70cm)
ミズヒキと言うと、正月飾りや祝儀袋などに使われる「水引」を思い出す方も多いと思います。
ミズヒキは、線のような細長い花茎を伸ばし小さい赤い花を穂状に咲かせます。
名前の由来は、線状の細長い花茎にまばらにつく花が、上から見ると赤く、下から見ると白く見えるところから、紅白の水引に例えられました。
【花は雄しべが5つ、雌しべが1つ。
4枚の萼のうち、上部の3枚は紅色になり、下部の1枚が淡い白色になります。】
花は夏の終わりごろから晩秋にかけて長く咲き続けます。
茶花として、他の花と取り合わせて引き立て役として用いられたり、ミズヒキのみで活けられることもあります。
ミズヒキはとても丈夫な草花で、様々な環境で育ちます。適地は日当たりのよい場所から明るい半日陰で、肥沃な水持ちのよい場所を好みます。
放任で育ちます。こぼれ種で思いもよらない場所から芽を出し広がっていきますので、苗のうちに抜き取って調整します。
葉もタデ科特有の矢印マークが入ります。
最近は斑入りの品種もあるようです。
ミズヒキは線状の花茎なので遠目にみると「線」にしか見えません。
群植して存在感をださせるようにして楽しむと素敵です。
日本庭園の石組の間や池のせせらぎと苔の生えた岩との間に赤い線状の花が映えます。
野性味あふれた草花なのであまり飾らない見せ方が似合いますね。もちろん、花壇の中に配置しても印象的な使い方ができます。
ただし、前述の通りこぼれ種で増えやすく雑草化しやすいので、安易に庭植えすることは・・・おすすめしません。
きちんと管理が出来る方であれば大丈夫ですよ!
秋の花の一つです。
次はよく似た名称の草花です。
キンミズヒキ
学名:Agrimonia pilosa
バラ科キンミズヒキ属 多年草
和名:金水引
原産地:本州、四国、九州、サハリン、朝鮮半島、中国
花色:黄色 草丈50~100cmほど
前述のミズヒキと同じような長い穂が伸びて開花しますが、ミズヒキとは全く異なる植物です。
私達の身近では、山道の脇や野原のやや湿り気のある明るい半日陰に自生している、毎年花を咲かせる多年草の草花です。
名前の由来は、ミズヒキに似た花を付けて、花色が黄色(黄金色)であることからだそうです。
姿は似ているとは思えませんが(笑)。茶花としても使われています。
株元で葉が茂りながら、花茎を100cmほど伸ばしながら分岐します。先端の10cmほどに房状の花を咲かせます。
1つの花の大きさは1cm前後で、花弁は5枚。葉は縁がギザギザで5~7つの小葉にわかれます。
開花時期は7月~10月。開花し始めると重みで花穂が垂れてきます。
九州北部では8月下旬くらいから花を見ることができます。
花後の実は観賞用ではなく、他の植物と同じように子孫繁栄用として種を付けます。
種は「引っ付きムシ」と呼んでいたように思います。
花弁が落ちると、萼が果実の周りを包みます。萼の先端はフックのように内側に曲がっています。
全体が枯れてくると、果実の元部が茎から落下します。その際に運よく動物や人が近くを通った時、体毛や衣服に引っ付いて遠くまで運んでもらう仕組みです。
私達も家に入る際、玄関先で「引っ付きムシ」に気が付けばその場で取り除き、多くの方はそのまま捨ててしまうはずです。
よって、あちらこちらで繁殖をするわけです。
最近では、野原を駆け回る子どもも犬もいないかも知れませんが~
キンミズヒキは草全体(根、茎、葉、花等)にタンニンやクマリンなどを含んでおり、乾燥させたものを漢方薬として用いているようです。
キンミズヒキは平地や山地にふつうにみられる秋の花です。
種が入手できれば庭植えでも楽しめます。高くなった青空に黄色の小花は繊細で優しい風景を演出してくれそうですね。
暑くもなく寒くもない過ごしやすい季節の到来です。
夏を越した花壇の草花は、これから再び花を咲かせてきます。また、この時期だけに開花する草花や植物もあります。
今回紹介した草花は、花壇草花というよりは山野草に近いものです。
観賞はこの時期だけになります。植物園や自然公園、山歩きの際に見ることが出来ると思いますよ。
何気ない花や赤い実が変わりゆく季節を感じさせてくれているようですね。
是非、散策して「秋」を見つけてみませんか?
(19/10/01掲載)