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花のコーナー 2020年01月

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花のコーナー

御園 和穂##

2020年01月 スミレとパンジー

 
 新年あけましておめでとうございます。
 
 今年は日本でオリンピックが開催される年です。干支は「子年」で、再び新しい十二支のスタートになります。
 最初の干支のネズミは、子供を次から次へと産むことから「子孫繁栄」の象徴とされています。また、ネズミ=「寝ず身」とされ、寝る事も忘れてコツコツと働き、動きの速さから鋭い勘とひらめきが鋭く、「火事や地震の前にはネズミがいなくなる」「ネズミは沈む船を去る」などのことわざもあります。
 ネズミは危機察知能力が高いのでしょうね。
 昨年は豪雨や台風で被害の多い一年でした。毎年災害に見舞われている日本です。ネズミのように察知は出来ませんが、生活の中で被害に遭わない事が一番で、二番目には減災できる努力をしたいと思います。
 今年一年が良い年でありますように!

 今回は早春の可憐な草花を紹介します。

スミレ

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学名:Viola mandshurica 
スミレ科スミレ属の多年草
別名:スモウトリグサ
分布:北海道から屋久島、国外では中国、朝鮮周辺。北米、南米、南アフリカ、地中海沿岸、西アジア、東南アジア
分類:世界に約450種が自生。日本には、スミレ、ノジスミレ、タチツボスミレ、シロスミレ、コスミレ、キスミレなど、50種以上が確認されています。

 スミレの歴史は古く、「万葉集」にも登場する草花です。当時は「野に咲く可憐な花」としてではなく、『春の芽出ちのワラビやセリ、ゼンマイ、スミレなどの若菜を摘んで羹(アツモノ:野菜や肉を煮た汁物のこと)を作った』との記録が残されており、山菜として扱われていたようです。
 春のみずみずしい若芽を食することで、冬の間に失われた精気を取り戻せると信じられていたようです。
 その後時代がかわり、江戸時代には隅田川河畔で「スミレの花見」が開催されるようになったそうです。どの時代で変化したのかわかりませんでしたが、スミレは食べ物から観賞用に代わりました。
 19世紀の半ばになると西洋から「ニオイスミレやパンジー」が渡来します。
 当時、渡来したニオイスミレやパンジーは華やかで舶来品の一つだったようです。
 ニオイスミレは日本に限らず西洋でも大人気でした。キリスト教では「謙虚のシンボル」とされ聖母マリアに捧げる花として、現在でもバラやユリと並ぶ三大花に挙げられるほど親しまれています。
 日本のスミレは日当たりのよい場所を選び、野原や田んぼの畔、南向きの土手の斜面に花を咲かせます。
 先に記載したように、日本では古来からスミレを摘んで、おひたしや汁物に入れて食べていました。
 名前の由来の一説に、「摘み入れ」が訛ったとされ「スミレ」と、また花が咲き始める姿が大工道具の「墨入れ」に似ていることから「スミレ」と名付けられたとも言われています。
 日本各地に多くのスミレが確認されています。一番よく知られているのは、タチツボスミレでしょう。

タチツボスミレ

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学名:Viola grypoceras  
スミレ科スミレ属の多年草
和名:タチツボスミレ
別名:太郎坊(たろぼう)

 タチツボスミレは日本全土の低い山や平地一帯、日当たりの良い道端や草原、林の中や土手などで見ることができます。
 一つの株に10個前後の花を咲かせます。
 茎の元の方に直径1~2cmの薄紫色の花を付け、その後茎が伸びて長いものだと20cmくらいまで伸びます。葉は薄い質感でハート型をしています。

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 タチツボスミレも種類が多く、花色も白や薄いピンク、複色と様々です。
 開花時期は3月~5月。耐寒性、耐暑性は強く、庭植え、鉢植えどちらでも育てやすいです。
 土質は選びませんが、腐植質に富んだ柔らかい土を好む傾向があります。通常の培養土に腐葉土を3割程度混ぜると良いでしょう。
 庭植えの場合、水やりは殆んど必要ありません。肥料を与えるのであれば9月から10月にリン酸とカリウムの多い緩効性肥料を株廻りに与えます。植替え他の手間はいりません。
 鉢植えの場合、土の表面が乾いたらタップリ水を与えます。緩効性化成肥料を春から秋までの間に鉢(5号で5粒程度)の回りに施します。
 植替えは、9月から10月もしくは2月から3月に毎年行います。生長によって鉢の大きさを決めますが、一廻り大きい鉢を用意しましょう。
 庭植えの場合はそのままで増えていきます。 鉢植えの場合は、花後に採取した種を蒔いて増やしましょう。
 種の採取は、果実が上を向き始めたら小さい袋をかけて、はじけて落ちる種を取ります。種は一度低温に遭わないと発芽しないので、種を湿らせた川砂と混ぜて冷蔵庫で1~2か月保管します。 1~2月が蒔き時です。面倒な場合は取り蒔きでも構いません。
 あとは株分けです。植替えの時期に合わせて行うと良いでしょう。古い株や傷んだ株を取り除き、新しい株で育てます。
 一度チャレンジしてみてはいかがでしょう?



ニオイスミレ

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スミレ科スミレ属の多年草
英名:sweet violet
和名:ニオイスミレ
原産地:ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア

 ニオイスミレは、冬から早春に2cm程の香りの良い花を咲かせます。
 紀元前320年ごろにはすでにギリシャなどで栽培され、アテネを象徴する花になっていたそうです。イギリスではチューダー朝のころには様々な品種が庭園で栽培されるようになり、19世紀以降は愛好家による育種が盛んに行われたそうです。
 その後の世界大戦により、多くの品種が失われたようですが、愛好家によって残された品種を元に育苗が行われました。

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 昨年の春に園芸店で見かけました。
 香りは石鹸の香りのようで、早朝よりも日が高くなってくると香りが際立ってきます。
 昔は香水の香料として使われていたようですが、現在は合成香料が使われることが多く、植物香料としての栽培は少なくなったようです。一方、葉を溶剤抽出した香料は青臭い香りで、高級な香水の香料になるため、現在でもエジプトの一部で少量栽培されているそうです。
 肥沃な水はけの良い土壌を好みます。暑さに弱く、耐寒性にはとても強いです。
 庭植えの場合、夏期は落葉樹の下のような日陰を好み、冬はしっかり日があたるような場所に植えます。
 鉢植えの場合、夏は日陰に、冬はよく日に当てて育てます。背の高い花台の上に置いておくと、香りがかぎやすくなります。
 庭植えでも鉢物でも、肥料は緩効性の化成肥料を株廻りに施しておきます。土が乾き始めたらタップリ水を与えます。夏の高温で乾燥する時期はダニの発生が多くなるので、早朝か夕方に葉水を与え、冬場は乾燥気味に育てます。
 種蒔きや株分けで増やします。
 自家受粉の種が採取できますが、一度乾燥させてしまうと休眠して発芽率が悪くなるので、取り蒔きが良いでしょう。発芽には時間がかかります。
 花後の4月から5月が株分けの適期になります。
 株が鉢の中でいっぱいになったら静かに抜き取り、水の中で土をほぐしながら、傷んだ部分や古い株は取り除き、新しいほふく茎の先の株を植えつけます。
 挿し芽も可能です。株分けの際にほふく茎を1~2節切り、水あげしてから挿します。
 花壇でもコンテナでも栽培は可能です。ニオイスミレは背が低いので、枯れ葉が残りやすく、蒸れて病害虫の発生につながってしまいます。防ぐためにも枯れ葉は適宜取り除きましょう。
 花はエディブルフラワーやデザートの飾りつけに使われ、押し花、コサージュ、ポプリ、香料、花壇やロックガーデンなどでも使用します。
 今年の春、園芸店で見かけるかもしれません。是非、手にとって香りをかいでみてください。虜になるかも~しれませんよ。

 最後にパンジーを紹介します。

パンジー、ビオラ

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学名:viola × wittrockiana
スミレ科スミレ属の一年草扱い
原産地:ヨーロッパ
別名:三色菫、遊蝶花など

 ヨーロッパに自生するビオラ・トリコロールや野生のスミレを交雑して誕生。
 かつては大輪のタイプをパンジー、小輪で沢山花がつくタイプをビオラと呼んで区別していましたが、現在では幾度にも渡り品種改良がなされた園芸品種が登場し区別が出来なくなってきているそうです。

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 日本には19世紀半ばに渡来し、日本人はカラフルで可憐な花に魅了されたそうです。東京の下町でパンジー農家が誕生し、その後第二次世界大戦後には、本格的な改良が進められ、現在では世界有数のパンジー生産国になりました。
 十数年前は、1つ花が付いているポット苗を秋に植付け、その後冬の寒さを経験した後に長日下で開花するので春にならないと次の花の開花がありませんでした。
 しかし、現在のパンジーは長日の性質が弱くなり、秋から春まで咲き続ける品種が多く、冬の花壇やコンテナを彩る花苗として、欠かせない花になりました。

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 毎年、新しい色や形、模様のバリエーションも多岐にわたり選ぶのも大変!
 色は様々です。ハッキリした色合い、花びらの中に色のグラデーションがあったり、シマシマ模様やインクを滲ませたような不思議な色合いなど。 
 形もウサギさんの耳のように花弁が長くなったもの、フリンジが入ったもの、絞りで八重咲きのように見えるもの、本当に膨大な品種を見る事が出来ます。
 「やっぱり!パンジーやビオラ」と言われるだけのことはあり、昔から沢山の人に愛されて育てられた花なのでしょう。
 10月に入るとポット苗が園芸店に並んでいます。10月といっても、近年はまだ気温も湿度も高いので、気温が下がる10月下旬から11月上旬になってからの購入をおすすめします。
 風通しの良い、日の当たる場所を好みます。肥料は緩効性の化成肥料を与えます。
 また「根株を崩して植える」とよく言われますが、根詰まりしているものであれば全体の三分の一程度崩すと良いのですが、そうでなければ無理に崩す必要はないと思います。
 土の表面が乾いたらタップリと水を与えます。
 最近の品種は冬の間でもたくさんの花を咲かせます。必ず花柄摘みを行ってください。放置すると種ができて株が弱ってしまいます。
 冬の間、一度開花すると花が長く続くので、そんなに手間にはならないと思いますよ。

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 パンジー、ビオラは単独でも寄せ植えでも組合せがしやすく、色合わせも楽しめます。同系色で落ち着いた雰囲気にしたり、反対色でコントラストを楽しんだり、淡い色合い同士の優しい組合せ。と考えるだけでもワクワクしてしまいますね。
 容器にもこだわった鉢植えにチャレンジしてみては如何でしょうか。


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 ブリキの容器や色付きの鉢に同色のパンジーやビオラも素敵ですね。
 すでに花壇やコンテナへの植付けが完了されていると思いますが、春先の園芸店にポット苗が並んでいたら、好みの品種を選んで、庭先やベランダに追加して植えてみませんか。
 新たな装いを楽しめるのではないでしょうか。

 今年の秋には、「どんな風に植えてみようか」あれこれと思いを巡らせてみてください。

 
 今年最初の草花は「早春の可憐な草花」からスタートです。
 当分寒い日が続きますが、少し暖かくなってきたらスミレを探しに野山を散策してみてはいかがですか!
 
 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

(2020/01/01掲載) 

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