都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2020年02月

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花のコーナー

御園 和穂##

2020年02月 街路樹とグリーンインフラ

 一年で一番寒い季節の到来です。
 私は寒さが苦手なのですが、この時期の冷えた澄んだ空気は気持ちよくて大好きです。
 ガーデナーの皆さんも今はゆっくりできる時期ですね~
 春は目前です。寒いからと言って閉じこもらずに、ナーセリーを覗いてみませんか?春先にしか出会えない花に遭遇出来るかも!しれませんよ。

 今回はお花ではなく、身近で毎日目にしていますが気に留めることの少ない樹木、街路樹について紹介します。

街路樹とは。

 辞書で引くと「市街地の道路に沿って植えられた樹木」のことと記されていました。「並木」とも言われます。
 街路樹の役割は、都市の美観の向上や道路環境の保全、歩行者に対する日陰の提供などがあります。道路と歩道の間や中央分離帯に植えられているのが一般的でしょう。

 街路樹はいつの時代からあったのでしょうか?

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 海外で最も古い街路樹は、約3000年前にヒマラヤ山麓に作られた「グランド・トランク・ロード(Grand Trunk Road)」というインドのカルカッタからアフガニスタン国境までの幹線道路の一部に石を貼り、その左右や中央に植樹された樹木が初めとされています(写真参照:現在の様子です)。

 日本で最初の街路樹は6世紀後半に難波宮に作られたクワの並木とされ、8世紀半ばに聖武天皇の治世に、平城京にタチバナとヤナギの並木が作られたそうです。合わせて当時の皇后は、貧しい人たちが飢えないよう果実であるモモとナシの並木を作ったと記されています。
 その後、754年に遣唐使の僧が唐の諸制度と一緒に街路樹や並木の状況を伝えたとの記録があります。内容は、『道路は百姓が絶えず行き来し、樹があれば傍らで休憩が出来る。夏は暑さを避け、飢えれば樹に実った果実を食べることができる。』です。
 報告を受け、当時の太政官符【だじょうかんぷ=日本の律令制の下で太政官が管轄下の諸官庁などへ発令した正式な文書の事】で畿内七道諸国駅路【きないしちどうしょこくえきろ=畿内(きない)は京都を中心に5国(大和・山城・摂津・河内・和泉)から7つの道(東海道・東山道・北陸道・山陽道・山陰道・南海道・西海道)のこと。各道に官人が派遣されていた】へ通達を出し、各駅路両辺に果樹を植えたとされており、これが、日本で初めての行政主導による街路樹と言われています。また、平安京にはヤナギやエンジュが等間隔に植えられました。
 鎌倉時代に入るとサクラ、ウメ、スギ、ヤナギの並木が登場し、戦国時代になると織田信長が旅人の安全を守るために並木道を作ったとも言われています。
 江戸時代に入ると、五街道(日本橋を起点とする東海道・中山道・日光街道・奥州街道・甲州街道のこと)などの道路が整備され、マツ、スギ、ケヤキなどが植えられました。

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 余談ですが並木街道には一里(約4㎞)ごとに塚が作られ、休憩所や距離の目印として利用されていました。今の高速道路のパーキングのようですね。
 また海辺や川沿いにはマツやヤナギが植えら れ、現在でも約12,500本(日光杉並木)が残っているそうです。
 写真は日光杉街道の一部。世界ギネスにも登録されています。


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 開国後は、馬車の普及に合わせ馬車道が整備され、横浜市では馬車道にヤナギやマツが植えられました。現在は「近代街路樹の発祥の地(写真参照)」の石碑が建てられている場所です。
 当時の樹木は大正12年の関東大震災の火災で焼失し、その後昭和52年以降アキニレが植えられています。
 明治7年、東京の都市緑化事業で銀座通りにサクラとクロマツが街路樹として植えらました。その後樹木の生育が悪く、明治17年頃にはシダレヤナギに植え替えられたそうです。
 東京では(当時は東京府)、明治6年に大政官布告(だじょうかんふこく:明治時代初期の法令の形式のこと)によって公園や街路樹の新設改良を専門家に依頼し、整備が進められました。街路樹の改良計画が立てられ、10種類の樹木が選定、植樹されました。これが現在の街路樹の元になり、継承された樹種の基本と言われています。さらに、大正12年の関東大震災による火災で多くの街路樹も消失してしまいましたが、それらの災害を契機に街路樹の樹種は変化してきたそうです。

 私たちが住んでいる北九州市内にも多くの街路樹が植えられています。

~北九州市が打ち出している街路樹の役割~とは。

■自然に触れ合う機会の少なくなった市民に、季節の移り変わりを知らせてくれます。
■夏の暑い陽射しや車から出る排気ガスや騒音を和らげます。
■車を運転している時には、季節の花がドライバーの緊張を和らげ、道路の目印やドライバーの視線を導いてくれるので道路の安全な交通に役立ちます。
■街路樹の緑や色とりどりの花は、私たちの目を和ませ、やすらぎを与えます。

 このように街路樹には、私たちが安全で快適な生活を送るために欠かせない役割があります。
 北九州市内に植えられている街路樹を紹介します。
 高さ3m以上の街路樹で、植えられている本数の多い順番です。(北九州市HP街路樹より)
街路樹は高木だけの場所もありますが、高木、中木(高さ3m未満1m以上)、低木(高さ1m未満)と取り混ぜて構成されている場所もあります。

ケヤキ(第1位)

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学名:Zelkova serrata
ニレ科ケヤキ属 落葉高木 陽樹
別名:ツキ、ツキノキ 漢字表記:欅

・適潤地を好み生長は比較的早く、萌芽力は強い。
病害虫に強く、耐風性がある。煙害、潮風、耐火性に弱い。
・東アジアの一部と日本に分布。
・箒を逆さまにしたような樹形が美しく、街路樹や公園、公共の緑陰樹として親しまれ、巨木が天然記念物になっていることが多い。

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 高さ20~30mの大木になり、40mを越す個体もあります。雌雄同株で雌雄異花。花は4~5月頃、葉が出る前に開花します(写真参照:図鑑よりケヤキの花)。
 肥沃な深い土層を好みます。葉は比較的柔らかく、風にそよぐ姿は見た目にも涼しく感じられます。また、街路樹の上位にあがってきます。しかし、大気汚染に耐えるために、年に数回葉を落としたり、落葉樹なので秋口からは大量の葉を落とします。乾燥に弱く、梅雨に雨が少なく夏の暑さが厳しいと、早期に葉が黄色くなり落葉します。
 街路樹や公園樹として景観や緑陰形成を目的とした場合は最高の樹種ですが、落葉時期の葉の清掃は、近隣住民にとっては大変な作業になる場合もあるようです。
 また、強剪定を施すと箒のような姿がシダレのようになってしまいます。
 ケヤキ材は木目が美しく、磨くと光沢が出ます。堅く強いため家具や建具、日本家屋の建築用材として、古くは神社仏閣などに使われています。
材は乾燥させると収縮するので、長い時間寝かせることで寸法の狂いは少なくなり、工芸品や建築用材として使用できます。

イチョウ(第2位)

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学名:Ginkgo biloba
イチョウ科イチョウ属 落葉高木 陽樹
別名:ギンナン(銀杏) 漢字表記:公孫樹

・乾燥に強く、生長は極めて早く、萌芽力は強い。
・瘠せ地でも育ち、病害虫、煙害、潮風に強い。
・耐火性、耐風性も比較的強い。
・中国原産、日本各地に分布。
・円錐形の樹形が美しく、街路樹、公園樹、記念樹など添景樹として親しまれている。
 高さ15~30mの大木になります。分類は特殊な針葉樹にあたります。


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 世界古来の樹木の一つで、イチョウ科の植物は中世代から新生代にかけて繁栄し、世界各地で化石が発見されています。氷河期にはほぼ絶滅し、私たちが目にしているイチョウは、唯一現存するイチョウで「生きている化石」として、レッドリストの絶滅危惧IB類に指定されています。
 葉は扇型で原始的な平行脈で二股に分岐し、先端の中央部は浅く割れています。
 雌雄異株で、種子はギンナンとして流通しています。日本では4月~5月に新芽が伸びる時に開花します。イチョウは風媒花で1㎞離れていても受粉は可能とされています。雄木、雌木の区別は難しいです。
 イチョウは油分を含み水はけが良く、材質も均一でゆがみがでにくく、加工に優れています。天板、建具、家具、碁盤や将棋盤などに使われ、特にイチョウのまな板は高級品とされています。
 現在、街路樹として多く使われているのは、火に強い性質があるからです。関東大震災の火災にも延焼を防いだとの記録があります。イチョウは葉や幹に水分を多く含んでおり引火しにくいため、都市の防火樹として植えられています。
 葉は秋になると、美しい黄色に紅葉して落葉します。ケヤキ同様大量に葉を落とすため近隣の住民からの苦情も多く、また葉は厚みがあり落葉後雨にあたると滑りやすくなります。
 美しい景観をつくりますが、通行の際はお気をつけくださいませ!

クスノキ(第3位)

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学名:Cinnamomum camphora
クスノキ科ニッケイ属 常緑高木 陽樹
別名:クス 漢字表記:樟、楠

・適潤地、肥沃地を好み生長は早く萌芽力は強い。
・病害虫、煙害、耐風性に強く、潮風に弱い。
・台湾、中国、ベトナムなど暖地に生息。日本では、関東南部以西の暖地に自生している。
・公園樹、街路樹、庭園樹など公共の場の緑陰樹として親しまれている。


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 高さ20~40mの大木になり、幹の周囲が10mを超える巨木になります。単体ではこんもりとした樹形になります。
 葉は革質でつやがあり全縁が波状で、葉を切るとハッカのような香りがします。クスノキは特有の香りを持ち、この樹が植わっていると虫が寄ってこなくなるため、厄除け樹木として神社などに植えられたといわれています。
 材は耐水性が強いため、広島の厳島神社の海中鳥居の柱はクスノキが使われています。樹齢は500~600年の自然木で8代目、135年経過した柱だそうです。
 特有の香りは樟脳(ショウノウ)と呼ばれ、クスノキの枝葉を蒸留し抽出されたもので、防虫剤や医療品として使用されています。
 クスノキの英語名はcamphor tree(カンフルツリー)で樟脳は英語名を「カンフル」と言われます。呼吸や血管、心臓の興奮薬として用いられています。昔からダメになった物事を復活させるために「カンフル剤を打つ」などと言われています。 
 現在薬としては使われていないようですが、ここからきていたのですね。

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 クスノキは常緑樹です。時折「常緑樹は葉が落ちないので植えたい」とおっしゃる方がいますが、実は春先に新芽とともに古い葉が入れ替わります。
 新芽が伸びてくると古い葉は赤っぽくなり落葉します。落葉樹のように枝だけにはなりませんが、たくさんの葉が落ちて新しい葉が茂ります。


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 5~6月に小さい白っぽい花を咲かせます。
 実は10~11月ごろに黒く熟します。熟した実は食用にはなりませんが、鳥が食べて種を散布します。

 余談ですが~公園など駐車場にクスノキが植えてある場合、秋に熟した実が車に落ちると染みになるので気を付けてください。街路樹がクスノキの場合、道路が汚れていたりするのは実のせいだと思いますよ。

 その他の街路樹は何があるのでしょう。

・第4位 サクラ類 

ソメイヨシノなどのサクラ類ですが、街中の一般道路沿いではなく観光地や郊外の街路樹だと思われます。

・第5位 トウカエデ

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学名:Acer buergerianum
カエデ科(ムクロジ科)カエデ属 落葉高木 陽樹
別名:サンカクカエデ 漢字表記:唐楓、三角楓

・乾地、湿地に強く比較的土壌を選ばない。
・生長は極めて早く、萌芽力は強い。
・病害虫、煙害、潮風に強い。
・中国東南部原産、日本は北海道南部から九州に生息している。公園樹、街路樹、庭園樹として活用されている。

 20m程になる高木で、紅葉が美しく生長と共に樹皮が裂けて剥がれる特徴があります。
 材が堅く、剪定が難しい樹木です。
 街路樹として紅葉が楽しめます。樹形は剪定の技術が必要なのでしょう。貧弱な姿をしているものが多いように思われます。公園樹や庭園樹として自然形で育つ場所であればとても美しい樹木なのですが!

・第6位 コブシ

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学名:Magnolia kobus
モクレン科モクレン属 落葉高木 中庸樹
別名:ヤマアララギ、ヤマモクレン 
漢字表記:辛夷、迎春花、望春花

・日陰に比較的強く、湿地に強い。
・生長はやや早く、萌芽力は強い。
・病害虫、煙害、潮風、耐風には強いが、火には弱い。

 日本全土に生息し、山地の湿った平地を好みます。20mを超える高木になり、幹は殆んどが直立します。早春、一番最初に花を咲かせ、花や枝は芳香があります。今、街路樹のコブシは「拳のような蕾」を沢山付けていますよ。

 それ以外では、アメリカフウ、クロガネモチ、ハナミズキ等。中木だとサザンカやウバメガシ、ベニカナメモチ等。低木だとヒラドツツジ、アベリア、シャリンバイ等が挙げられます。

 都市の中において、無機質な構造物を緩和し、緑陰や花による色どりで私たちは無意識のうちに安らぎを貰っています。しかし、これらの樹木は手をかけないと美しさを維持できません。
 近年の台風や大雨の被害で、街路樹が倒れて住宅や河川に流れ込み被害が拡大したニュースを耳にすることがあります。また、葉が多く落ちることへの苦情から街路樹が伐採されているのも実際です。
 決して悪者ではないですが、被害の際にはクローズアップされてしまいます。
 街路樹にとっても、決して楽な環境で生育をしているわけではありません。植えられる土地は狭く、土は固く、樹種によって耐性の強いタイプが選別されてはいますが未来永劫堅強に生育できないことも知っておかないといけないでしょう。
 先に述べたよう「手をかけなければ~」の手のかけ方や街路樹の在り方を再認識するとともに、都市型豪雨対策にこれらの緑化を活用すべきだと思います。
 都市整備によってコンクリートやアスファルトに地面が多く覆われたことで雨水が直接水路に集中して一気に流れ込み、想定外の雨量による被害が発生しています。一部の都市においては雨水貯留対策の義務化がなされ、人工的な営造物によるグレーインフラは一般的ですが、近年「生態系を活用した防災減災の考え方」のグリーンインフラに注目が集まってきています。
 日本は島国で海に囲まれ、また稀にみる火山国でもあります。ヨーロッパなどの諸外国に比べると平地の面積が狭く、山から海までの距離が短いことからいったん災害が起こると甚大な被害となってしまいます。
 自然が豊かで多くの恩恵を受けられる分、災害と表裏一体なのかもしれません。


 今回は「街路樹」を紹介しました。普段、比較的意識されない位置にある樹木ですが、この景観の美しさを「価値ある美しさ」に変えてみては如何でしょうか。

 例えば、街路樹が明確な機能を持てるように、植付けの際に今までのような施工ではなく、広域に植栽基盤を整備し、植物の根が深く伸び生育することで茂った緑は都市の冷却効果を生み出し、保水量を増やし、大雨が直接水路へ流れ込む時間がわずかでも遅らせることが出来れば、災害が起こっても被害を減らせるのではないでしょうか?

 実は友人からの受け売りなのですが、身近に活用できるグリーンインフラの一つです。最近意識をしています。
 前述しましたが、都市の「美しい景観」は住んでいる人が「高い美意識」をもって絶えず整備をし維持しなくては保たれません。
 グレーインフラとグリーンインフラの相乗効果を考えながら、緑豊かな環境にも地球にも優しい、住みよい北九州市になってほしいと考えています。
 まだまだ勉強が足りていません。今は「何をどうすれば~」雲をつかむような状況です。これから多くの方々と語らい意見しながら身近に出来るグリーンインフラを実行していきたいと思っています。

 寒いとはいえ、今年は暖冬のようです。
 お天気の良い日は陽射しが気持ちよく、いつもより少し遠くまで歩いてみたくなりますね。
 市内の街路樹を意識してみませんか?
 私は、じき開花するコブシの街路樹を見に行ってみようと思っています。

(2020/02/01掲載) 

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