花のコーナー 2020年03月
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花のコーナー
御園 和穂##
2020年03月 スイートピーとマメ科の花
あっという間に3月を迎えてしまいました。
昨年末から比較的暖かい冬が続き、豪雪地帯では積雪がなく、生活面では助かっているのでしょうが、スキー場はオープン出来ず、雪下ろしの仕事はなくなり・・・様々な場面で支障があったようです。
暖冬だった分、今年は夏が猛暑になるのでしょうか?
オリンピックを控え、コロナウィルスの拡散、じきに来る夏の猛暑、と対策もしっかり行わないとならないですね。
今回は、うららかな春の季節を象徴する花、スイートピーとマメ科の植物を紹介します。
スイートピー
学名:Lathyrus odoratus
マメ科レンリソウ属(ラティルス属)
秋蒔きのツル性一年草
別名:ジャコウエンドウ(麝香豌豆)、
カオリエンドウ
和名:ジャコウレンリソウ
原産地:イタリア・シチリア島
開花期:4月中旬から6月上旬
花弁にウェーブが入り、蝶々が舞っているような姿を連想させるスイートピーは皆さんもよく知っている花の一つでしょう。
本来、露地植えで4月から開花する花ですが、近年では開花時期も様々になり春咲き種、夏咲き種、温室栽培の冬咲き種や、鉢物栽培用・切り花用の高性種、つるなしの矮性種等があります。また甘酸っぱい香りが特徴のものなど、花色は数えきれないほど多彩です。
原産地はシチリア島で17世紀にローマ・カトリック教会の司教によって発見された比較的新しい花の一つです。現在のスイートピーに比べると花は小さく、花弁のウェーブは殆んどなかったそうです。品種改良はとてもゆっくりしたもので、当時はピンク、白、紫など5色程しかなかったそうです。
その後、本格的な品種改良は19世紀の終わり頃から20世紀初頭にかけて、イギリスの育種家によって行われ一気に種類が増えます。15品種程度だったのが200種を超えたと言われています。
ロンドンでは1900年に「スイートピー200年大展示会」が開催され、品種の多さや花の華やかさで大賑わいだったそうです。同時期に公爵付きの庭師によって大輪系のウェーブの強い品種「スペンサー夫人」が作出され、瞬く間に一世を風靡したそうです。
姿形が変化をしていくと同時に花色も変化し「ペインティッド・レディー」と呼ばれるほどに多くの花色があります。
名前は、甘い香り=スイート、とマメ科の植物=ピー、合わせてスイートピーの英語名からきています。
【育て方】
■日当たりが良く水はけの良い場所を好みます。酸性土壌を嫌うので、植付け前に苦土石灰を加え土壌改良を行います。
■マメ科植物なので、毎年同じ場所では育ちません(連作障害がでる)。また、根が直根性なので移植を嫌います。
晩秋から早春にかけて、ポット苗や行燈仕立てになった開花株が店頭に並びます。ポット苗の場合は、ポットの土を崩さないよう花壇やプランター、鉢に植え付けます。
■種蒔は発芽適温が15℃程度の時に。10月中旬から下旬に花壇へ直蒔きするかポットに播種します。種は硬実種子なので一晩水につけて膨らんだものを1か所あたり3粒ずつ蒔き、発芽後間引き1本にします。覆土は1cm程度です。
発芽後、茎が7~8節伸びたら、摘心します。摘心すると脇芽が伸びて横へ広がっていきます。
■肥料は、窒素分の少ないタイプを使用します。与える量は一般的な草花の半分で十分です。
■水やりを控えて乾燥気味に育てます。根が深く張るので、土の表面が乾いてきたらタップリ与えましょう。
育て方(見せ方)によりますが、花壇直播きの場合は後方のフェンス際で育てます。また、後方のトレリス、ネットに絡めるのも良いでしょう。花壇に高低差が出て、奥行きのある素敵な花壇になります。
鉢の場合はオベリスクや行燈支柱につるひげを絡ませても楽しめます。
草丈は品種によりますが、矮性種で30cmくらいから高性種(切花用)だと3m近くになります。
用途に合わせて育ててください。花壇なら高性種の方が見栄えがしますよ。
花が咲き終わったら花柄摘みをしましょう。そのまま放置すると種が出来ます。マメ科なのでサヤエンドウのような形の毛が生えた果実莢(さや)が付きます。マメそっくりですが食べられません。
採取するなら莢が茶色くなるまで放置し、その後種を取ります。乾燥貯蔵して秋に播種します。
現在は「スイートピー」が一般的な呼称ですが、残念ながら、和名のジャコウエンドウ(麝香豌豆)、カオリエンドウ(香豌豆)など素敵な名前で呼ばれることは殆んどありませんね。
この香りには疲労回復の効果があるそうです。古くから香水にも使われ、現在ではエディブルフラワー(食用花)としても販売されています。
花を楽しむだけでなく、香りと味わい二刀流ならぬ三刀流でしょうか
原種が発見されて300年、まだまだ変化する花の一つでしょう。
この花はイギリスでこよなく愛されており、また世界万民に愛される花の一つと言っても良いでしょう。
次は。
スイートピーはマメ科の植物です。折角なので「マメ科の花」をいくつか紹介しましょう。
マメ科:エンドウ
学名:Pisum sativum L.
マメ科一年草 食用
別名:エンドウマメ、ノラマメなど
漢字名:豌豆
英名:garden pea
古代オリエント地方や地中海地方の麦作農耕の発祥・発展と共に栽培された植物で、原産国のフェルガナ(現在のウズベキスタン共和国東部の都市)から漢に伝来、その後9~10世紀に日本に入ってきました。
原種の野生種は、麦栽培の間に生えた雑草が元で、種実を食べ、根粒菌による土の肥沃化に効果があることが解明され、麦との混ぜ植えから、栽培植物として品種改良が進んだとされています。
エンドウには、サヤエンドウ、グリーンピース、スナップエンドウ、豆苗などがあります。
写真:左から サヤエンドウ、グリーンピース、スナップエンドウです。
・サヤエンドウは未熟な莢を食べます。
・グリーンピースは完熟前の柔らかい豆を莢から取り出して食べます。
・スナップエンドウ(スナックエンドウ)はグリーンピースくらいまで育った柔らかい実と莢の両方を食べます。
⇔エンドウの種子と豆苗
現在の種子は、人体に影響のない微量な消毒がなされています(種子の表面の赤い色、もしくは緑色)。また、畑に播種した場合も色で判別ができる利点もあります。
豆苗はエンドウ豆から発芽した新芽を食べます。昔はエンドウの伸びた茎の新しい部分を摘んでいましたが、現在では工場で水耕栽培として安全に栽培しています。
通常は種から発芽した姿で販売されています。一度切って食べたあと、種をバットにいれて水に浸し、半日陰に置いておくと再度新芽が伸びてきますよ♪
乾燥豆として使用された子実用エンドウは、北海道で栽培されており、ヨーロッパへの輸出品でしたが、現在は乾燥豆の大半はカナダ、イギリス、中国などから輸入されています。
今は冷凍食品や缶詰、様々な加工品が並びますが、エンドウの旬は春から初夏です。タンパク質、ビタミンCに富んで栄養価の高い緑黄色野菜です。これから旬を迎えます。美味しい季節に食べてましょうね~。
マメ科:ソラマメ
学名:Vicia faba
マメ科一年草 食用
別名:ノラマメ、ナツマメ、シガツマメなど
漢字名:空豆、蚕豆
英名:Broad bean、Fava bean
世界最古の農作物の一つとされています。原産地は北アフリカからカスピ海沿岸や地中海、西南アジアなど諸説あります。
紀元前3000年以降に中国に入り、日本へは8世紀ごろに渡来したといわれています。
名前の由来は、莢が上をむいてなることから「空豆=ソラマメ」となったそうです。初めて見たときは驚きました!
秋に播種します。苗の状態で越冬し、3月~4月に開花します。独特な花で、薄い紫の花弁に黒の斑点があります。
収穫は5月中旬からです。
長さ10cm~20cmほどの莢がつき、中には3~4個の種が入り、豆の重みで莢は下向きになります。下向きになってくると、莢の状態が背にある筋が黒っぽくなり、表面のうぶ毛がなくなり、光沢が出てきます。中の豆にも黒い筋がはっきりしてきます。収穫の合図ですよ!
栄養豊富で良質のたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル、特に鉄分を多く含みます。収穫後は鮮度が命です。
完熟の豆は煮豆や甘納豆などに使われ、未熟な豆を塩ゆでにして野菜として食べるのが一般的です。莢ごと蒸し焼きしても美味しいですね。
ソラマメが店頭に並び始めると、「夏が来るな~」と思うのは私だけでしょうか~
エンドウ、ソラマメとマメ科の花を紹介しました。
3月から開花時期に入るので家庭菜園などで見かけることが増えています。もちろん食用なので「食べる」が優先になりますが、「花」はスイートピーに似ていてとても美しいです。
花色は決まっていますが、花壇の中にも取り入れてみませんか。
花壇も草花だけではなく、マメ科の花を植えてみませんか?3月から花を楽しみ5月以降に収穫を楽しめます。配置を考えれば楽しい花壇ができそうですね。
あと一つ紹介しておきます。
マメ科:カラスノエンドウ
学名:Vicia sativa subsp.nigra
マメ科ソラマメ属の多年草
和名:ヤハズエンドウ
英名:Narrow-leaved Vetch
本州から九州、沖縄の空き地、畑、堤防など、いたるところに普通に生育します。
秋に発芽し、春になると高さ60cmほどに伸びます。マメ科特有の巻きひげを伸ばしあらゆるところに絡みますがほぼ直立します。
開花期は3月~6月でスイートピーに似た赤紫の小花を付けます。花後、種を付けサヤエンドウに似た姿が見られます。 その後、莢は黒く熟し、激しく中の種を弾き飛ばします。
原産地はオリエント地方から地中海あたりで、エンドウと同じように麦作農耕の際に利用されていましたが、考古学資料によると栽培植物としてはほぼ断絶したと記されているようです。
現在では雑草として扱われています。雑草扱いではありますが、野草としての若い莢は茹でてお浸しやみそ汁の具として食べられます。
また、未熟な莢は両端を切り落とし、草笛で遊んだ方もいるのではないでしょうか。ソラマメの仲間とは思いにくいのですが、茎は角ばっていて、豆のへそが長いソラマメの特徴をもってはいますが食用になれなかった残念なマメ科の植物でした。
これからの季節どこでも見ることがあります。少しだけ意識して観察してはいかがでしょうか。
今回はスイートピーとマメ科の花を紹介しました。いろいろと調べていて、英名の部分で、PeaとBeanがありました。今まで気にすることなく過ぎていましたが、英語読みで『エンドウのような丸い豆は【Bean】ではなく【Pea】と総称』され「Pea」と言った場合はエンドウのことを意味しているそうです。
辞典では【Bean】インゲン、ソラマメ類
インゲンはキドニービーン、ソラマメはブロードビーン、大豆はソイビーン、大豆を原料の豆腐はビーンカード、もやしはビーンスプラウト、小豆はレッドビーンと呼ばれます。「莢も食べれる」や「豆の大きさ」での分別ではなさそうです。豆莢はビーンポッド、エンドウ豆莢はピーポッド。ピーナッツはなんだ?
分からなくなってきたので深く考えることはやめることにします。調べて分かったらお知らせしますね。
『スイートピー』、学生の頃寮生活をしていました。同室の一学年下の女の子が「赤いスイートピー」という楽曲をいつも歌っていました。
春にふさわしい詩だったと記憶しています。これも一世を風靡した楽曲でしたね。多分、私はいまでも歌えます。
~I will follow you・・・・・ 心の岸に咲いた 赤いスイートピー♪~
春本番。花壇や草花の手入れも忙しくなります。みなさん頑張っていきましょうね。
私は、園芸店でスイートピーの苗があれば育ててみたいと思います。
(2020/03/01掲載)