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花のコーナー 2020年06月

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花のコーナー

御園 和穂##

2020年06月 クレマチスとシャクヤク

 ベランダのミカンの花が咲き終わりました。
 新芽にはアブラムシがびっしり。指先でアブラムシを取り除きながら季節が変わったことを実感しています。
 今年は「春の季節」を部屋で過ごす時間が長く、ベランダの草花の開花や樹木の芽吹きを今まで以上に見ることができました。
 そして、季節は「初夏」を迎えようとしています。



今回は、初夏から楽しむ植物を紹介します。

クレマチス

画像の説明

学名:Clematis
キンポウゲ科センニンソウ属(クレマチス属)
多年草のつる植物
原産地:日本、アジア、北半球の各地に分布
開花時期:5月~10月(品種によって異なる)
花色:紫、青、赤、ピンク、黄色、筋入りなど多彩

 クレマチス属の植物は世界中に約300種の自生種が分布しています。
 日本にも原種のカザグルマ、ボタンヅル、センニンソウなどがあります。
 現在は「クレマチス」と言う呼び名が一般的ですが、以前は「テッセン」の呼び名で親しまれていたような気がします。

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 テッセン(Clematis florida)は日本産のカザグルマ同様クレマチスの原種の一つで中国原産です。カザグルマは8花弁の大輪に対して、テッセンは中輪で白の6花弁です。
 日本へは江戸時代初期に渡来したと言われ、最初のテッセンは白と紫の上品な色合いの花だったようで、「実に日本人好みの花」だったと言われています。

 その後は観賞用として広く普及し、江戸時代中期には人気はさらに高まり、絵巻物や伊万里の焼き物、能装束や着物の文様までテッセンの花姿が描かれました。美しい花は多くの人を魅了したようです。
 ちなみに「テッセン」の名の由来は、「細く伸びたつるは鉄のようにかたい」ことから「鉄線」=「テッセン」と呼ばれるようになったそうです。確かに指先でプチッとは切れずハサミが必要な硬さです。
 ここからは呼び名をクレマチスで統一させて頂きます。

 クレマチスは初夏の庭の生垣や塀、玄関アーチなどに沢山の花を咲かせている姿を見ていましたが、最近は生活様式の変化で見せる場所も変わってきたように思います。

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 現在のクレマチスと呼ばれる園芸品種の多くは、日本に自生する原種のカザグルマから生まれました。
 19世紀前半にドイツ人植物学者のシーボルトが、カザグルマをヨーロッパに紹介しました。これを機に様々な交配が行われ、カザグルマの特徴を生かした大輪の美しい花が登場したのです。
 イギリスでは、「バラは花の王様」「クレマチスは花の女王」とも呼ばれています。
 確かにクレマチスはバラにも見劣りしない大輪の花を咲かせ、バラにはない紫や青色の花も咲かせます。
 豪華で艶やかさを主張もしますが、出しゃばらず、楚々とした姿が多くの愛好家を魅了するのではないでしょうか。
 日本原産のボタンヅルやセンニンソウは小型の白い花を多数つけ、ハンショウヅルは釣鐘型の花を少数付けます。
 カザグルマは先に述べたように多くの園芸品種の元になり、大輪で上向きに平に開いた花が観賞用に好まれています。
 交配は原種を元に長い年月をかけて、現在では2000種を超える園芸品種が生み出されました。
 また、クレマチスは花びらに見える部分は「萼(ガク)」が変形したもので、花弁はなく少し変わった花です。
 一重咲き、八重咲き、万重咲き、チューリップ咲き、釣鐘型咲きと呼ばれバリエーションも豊富です。

 咲き方は大きく分けて3つあります。

 ●つるを残して越冬する旧枝咲き
 ●新旧両枝咲き
 ●地上部が枯れて翌年新しい枝を伸ばす新枝咲き です。

 また、1年に1回だけ開花する一季咲きタイプと剪定すると繰り返し開花する四季咲きタイプがあり、その中に常緑タイプ、落葉タイプがあります。
 一季咲きグループの代表であるモンタナ系は4月~5月に開花し、つるを長く伸ばし小花を沢山付けます。他にも品種もたくさんあります。

 四季咲きグループは、大輪で上を向いて花を咲かせるフロリダ系、横や下向きに小・中輪の花を咲かせるヴィチセラ系、チューリップ型やベル型のテキセンシル系、茎を伸ばし絡みがなく下や横向きに花を付けるインテグリフォリア系などがあります。

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 いろいろと系統を挙げてみましたが、個人の好みの色合いや花の形で選ぶのが一番でしょう。
 気を付けるとしたら、一季咲きなのか四季咲きなのか、また、咲き方が3つのうち、どの仲間なのか~くらいでしょうか。忘れてしまっても問題はありません!

【育て方】

・日当たりの良い場所を好みます。明るい日陰でも生育しますが、花付きが悪くなります。

■用土
・水はけがよく、水もち、肥料もちのよい用土を好みます。お庭の土なら腐葉土をタップリ漉き込んで使用します。鉢植えの場合は、培養土に赤玉土と腐葉土を少しプラスすると良いでしょう。(クレマチス専用用土もあります)

■水やり
・鉢植えの場合
 土の表面が乾いたら鉢底から与えた水が流れ出るまでタップリと与えます。夏場は乾きやすいので1日に2回になることもあります。
・露地植えの場合
 根づいてしまえば、特に必要としません。晴天が続き、葉が萎れてきた時にはタップリと与えます。
 なお、鉢植えも露地植えも蕾から開花中は特に水を欲しがりますので水切れ要注意です。

■肥料
・生育期間中は定期的に肥料を与えます。(早春から晩秋まで)
 緩効性肥料(置き肥でゆっくり効果のあるタイプ)なら、真夏を除いて1~2か月に1回、並行して月に2~3回液体肥料を施します。

■植付け・植替え
クレマチスは移植を嫌う植物です。動かす際、根を切らないよう大きく株を掘り上げます。鉢植えは鉢底から根が出てきたら植替えの目安で、根株は崩さないでください。
・真夏を除けば、どの季節でも植付けができます。適期は休眠中の12月~2月です。
・植替えは、花後の剪定した時行うと作業が楽です。
※植付け、植替えの際、つるを1~2節分土中に深く植えます。
庭植えの場合は、移植をしなくてもいいような場所を見定めてから植付けを行いましょう!

■増やし方
・さし木
 4月~7月の間に、今年伸びたつるを2節ずつ切って、清潔な用土に挿します。2か月ほどで発芽します。その間、水は切らさないでくださいね。
・つる伏せ
 親株から伸びたつるを2節程、そのまま土中に埋め込みます。
 節から発根させる方法です。翌春に土から出ているつるを軽く引っ張って抜けなければ発根しています。親株とつながっている側のつるを切ります。

■その他の作業
★花柄摘み
・花がしおれて、雄しべが散り始めたら花首から切っておきましょう。
放置するとタネが付きます。タネが付くと株が弱るので小まめにチェックしましょう。
★剪定
・基本的に、四季咲きの品種は最初の花が咲き終わったら、つるを半分から1/3程度剪定します。その後伸びたつるに花を咲かせます。品種にもよりますが、年に3~4回開花します。
・冬の剪定
 咲き方が分からない場合は、全体の半分を剪定しておきます。
 来春、枯れた枝から葉がでるのか、地際から新しい芽がでるのか、確認してメモしておきましょう。

画像の説明

 今年、クレマチスの苗を購入。鉢に仕立てました。一重咲きとベル型で、一重咲きは旧枝咲きの四季咲き、ベル型は新枝咲きの一季咲きです。
 まだ、ベル型の方の花は確認できていませんが、今月中には開花してくれるものと信じています。
 
 最近は、クレマチスとつるバラを混植しているお庭を見かけます。
 つるバラの種類や花の大きさにもよりますが、クレマチスの中輪、小輪タイプとの混植が似合うかと思います。色合わせをして楽しまれるといいですね。
 大輪のクレマチスは単独での観賞をお勧めします。朝顔鉢のように行燈仕立てにして楽しんだり、トレリスに絡ませたり、竹垣などでも素敵です。咲き方の異なる品種を選んで植えると、春から秋まで楽しめますよ~



次はシャクヤクです。

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学名:Peaonia lactiflora
ボタン科ボタン属の多年草
原産地:アジア東北部、ユーラシア大陸の北東部
漢字名:芍薬
別名:夷草(エビスグサ)、貌佳草(カオヨグサ)、ピオニー
開花時期:5月~6月
花色:濃紅、淡紅、白、ピンク、複色など多彩


画像の説明

 シャクヤクは、「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」と呼ばれるほど、ボタン、ユリと並んで高貴で美しい女性の立ち居振る舞いの代名詞にも挙げられています。
 シャクヤクはスラっと伸びた茎の先に花を咲かせます。「凛」とした立ち姿を思わせる姿からそのように呼ばれたのでしょう。 
 古くから親しまれていた植物で、日本へは奈良時代に薬草として中国から渡来しました。薬草としては、根を乾燥させて煎じ薬として使用され、現在でもなじみのある「葛根湯」、「当帰芍薬散」などの漢方薬に配合されています。

 薬草で渡来しましたが、花の美しさから観賞用としても栽培されるようになりました。江戸時代中期には栽培品種が100を超えたと記されています。これらは「和シャクヤク」と呼ばれ、一重咲きや翁咲き(写真白花の姿)でシンプルな姿をしています。
 江戸時代には「茶花」としても観賞され、「古典園芸植物」の一つでもありました。また、江戸時代から明治時代にかけて、熊本藩では藩士の素養として選ばれた六種類の植物(肥後六花:肥後芍薬)の中にもシャクヤクは含まれていました。その中で多くの栽培方法や品種が生まれましたが、第二次世界大戦時にその多くを失ったそうです。
 シャクヤクの特徴は、冬になると地上部を枯らし、春になると新芽を出す草本植物です。
 また、ボタンの台木としても使われています。

~余談です~

 バラや野菜苗など「接ぎ木苗」があります。
 接ぎ木苗は強健な苗で耐病性にも優れています。また、植付けの際には、接いだ部分は地上部に出して植付けます。
 これは台木の根が自根より強いため、それを利用することで耐病性に強くなり、実をたくさん付けたり、美しい花を咲かせます。深く植えてしまうと台木が接いだものより強くなってしまうためです。
 ボタンは樹木ですが、苗の時にシャクヤクを台木として育てます。
 植付けは、他の接ぎ木植物とは異なり台木ごと深めに植付けをします。
 「なぜ樹木を草本植物に接ぐの?なんで深く植付けるの?」と思われる方も多いと思います。
 本来、ボタンは木本植物(樹木)なので種から生育しますが、発芽し花が咲くまでかなりの時間が必要で、同じボタンを台木にするも生産性が低いことから、同じボタン科ピオニー属のシャクヤクが着目されました。
 シャクヤクは草本植物なので生育も早く短時間で大きく育ちます。タネから育てたシャクヤクの株にボタンを接ぐことで、ボタンが早く開花し生産性が上がることがわかりました。
 生育上深く植える理由は、シャクヤクは草本なので数年で枯れてしまう恐れがありますが、その間にボタンが自根を出すことで台木のシャクヤクが枯れてもボタンが生き残れるという仕組みなのです。
 バラや野菜類の接ぎ木は苗を強健に育てるため、ボタンの接ぎ木は生産性を上げるためなのですね。

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 19世紀に入るとヨーロッパでも多くの園芸品種が生まれ、特にフランスで品種改良が盛んに行われ、大輪で花弁が多い手毬咲きやバラ咲きなどの艶やかな姿の「西洋シャクヤク」と呼ばれる品種が多く作出されます。
 近年、日本でも西洋シャクヤクと日本の品種との交配により新しい品種の作出や、ボタンの黄花品種との交配により濃黄色のシャクヤクの作出、切り花用の作出など世界的にも注目されています。
 また、シャクヤクは近縁種がいくつかあり、それらとの交雑の試みがなされ、様々な花色が作出されています。
 シャクヤクとボタン、花だけをみると見分けがつかないくらい「似て非なる」植物ですが、全体の姿は異なりますし、花時期も少しずれています。
 最近は5月の「母の日」にカーネーションではなく、シャクヤクを贈る方も増えているようです。
 どちらにしても美しい花は「喜び」を与えてくれるのですね~

【育て方】

・日当たりと水はけがよい場所を好みます。明るい半日陰や午後日陰になる場所でも育てられます。

■用土
・植付け前の土づくりには堆肥や腐葉土をしっかり漉き込みます。太い根が張り、葉も大きく茂るので、苗の間隔も大きく取ります。

■水やり
・鉢植えの場合
 土の表面が乾きはじめたらタップリと与えます。水切れは要注意です。
・露地植えの場合
 ほとんど必要としません。雨がなく極端に乾燥した場合は根まで届くようたっぷりと水を与えます。

■肥料
・不足しないよう、定期的に与えます。
 植付け時の元肥(緩効性肥料)、芽が出始める時期の肥料、花後のお礼肥、秋の追肥(化成肥料で対応)を与えます。また、冬の寒肥(有機質肥料で対応)も効果的です。

■植付け・植替え
・鉢植えの場合
 2~3年に一度植替えます。適期は9月~10月。根はあまり切らないよう全体の土を軽く落とし植替えます。
・露地植えの場合
 出来ればあまり移植しないようにします。(最初の場所特定をしっかりと)
 苗の植付けは10月上旬から中旬にかけて行います。太い根で放射状に広がている物を選びましょう。

■増やし方
・株分け
 適期は9月ごろ。根はなるべく切らないよう注意し、3~5芽くらいの株に分けます。茂っている葉は切り詰めておきましょう。
 株元の赤っぽい芽が新しい芽です。また、シャクヤクは菌に弱いので、切り口に殺菌剤を塗布しておくと病気の予防につながります。

■その他
★花柄摘み
・花びらが落ちる頃、早めに取り除きましょう。
★摘蕾
・シャクヤクは伸びた茎の先に花を咲かせます。通常先端に幾つもの蕾がつきますが小さく、開花しない場合もあるので、先端の大きな蕾を残して脇の蕾は摘み取ります。
★秋に入ると葉が枯れてきます。完全に枯れたら地際で取り除きます。冬の間、マルチングを行ったり、土寄せを行います。

画像の説明

 シャクヤクの花は6月一杯楽しめます。
花は優しい香りがあり、葉には光沢があります。
 ヨーロッパでは初夏になるとシャクヤクが切花で売られています。
 写真はオランダの市場です。
 一束10~15本くらい、日本円で1000円前後でした。日本ではこんなに格安では手に入らないように思いますが、切り花でも楽しめます。お花屋さん(生花店)ものぞいてみてください。
 私としては、苗から育てて、咲き始めたら切り花でも楽しんでもらいたい。これが理想です!
 シャクヤクはボタンに押されてなかなか日の目をみる機会が少ないように思いますが、素敵な花です。季節限定(切花は周年あります)の花は今が見頃です。是非、目にして欲しい花の一つです。



 そろそろ梅雨入りです。
 挿し木、さし芽の季節でもあります。お友達と「挿し木、さし芽のシェア」をして増やしてみませんか? 意外と楽しいですよ♪
 梅雨に入ると、梅雨前線や台風などによる豪雨を予想しておかなければなりません。折りにふれ、シミュレーションしておくといいかもしれませんね!

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 我が家のアマリリスが開花しました。購入時「赤い花」だったような~ 勘違いなのかな?
 どちらにしても嬉しい開花です。

(2020/06/01掲載) 

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