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花のコーナー 2020年07月

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花のコーナー

御園 和穂##

2020年07月 ハーブ類

 6月上旬梅雨入りと同時に蒸し暑い日がやってきました。
 そろそろ梅雨の終盤、明けると一気に夏の到来です。
 長雨で傷んでしまった草花の手入れは、出来るだけ朝晩の涼しい時間を活用して行いましょう。
 元気に夏を越せる準備に取り掛かりましょう。

 今回は、ハーブ類を紹介します。

【ハーブに関して】
 医療用(薬用ハーブ)、アロマセラピー、化粧品、食用と幅広く使用されている植物です。
 私たちが取り扱うハーブは一般的に栽培できるものばかりで、食べたりお茶として口にしても安全ですが、食物アレルギーのある方や妊娠中の方、薬を服用されている方は取扱いに関して十分な配慮をお願いいたします。
 気になる方はお医者さんにご相談されてご使用ください。



カモミール(カモマイル)
 カモミールは、ジャーマンカモミールとローマンカモミールがあります。
 同じカモミールの呼び名で、形態、成分とよく似ていますが同属ではありません。

・ジャーマンカモミール

画像の説明

学名:Matricaria chamomilla 
キク科コシカギク属 一年草
原産地:ヨーロッパ、中央アジア、
モンゴル、中国東部、朝鮮半島
英名:chamomile
別名:カモミール、カモマイル、ワイルドカモミール、ドイツカミツレ
和名:カミツレ

 ジャーマンカモミールは、名前の通りドイツで薬草として親しまれている一年草のハーブです。
白い花はリンゴの香りを放ち、花のみを薬草茶として利用します。
 ドイツでは治療目的としての使用が許可されており、ハーブティーとして飲用されています。また、入浴剤やうがい薬としても親しまれています。

画像の説明

 茎は分岐しながら葉をつけて伸び、その先に花を付けます。少しお行儀の悪い伸び方をしますが、可愛いらしい姿です。
 花は開花後、中央の黄色の部分が盛り上がり、白い花弁は外へ反り返った姿になります。盛り上がった部分は空でつまむとリンゴのような香りがします。葉に香りはありません。
 今が開花最盛期。花を摘んで乾燥させて保存しておきます。日本で取り扱われている殆んどがジャーマン種です。

・ローマンカモミール
学名:Chamaemelum nobile(Anthemis nobilis)
キク科ローマカミツレ属(カマエメル属)多年草
原産地:西ヨーロッパ、北アフリカ、アゾレア諸島
英名:Chamomile、Roman chamomile
別名:カモミール、カモマイル、イングリッシュカモミール、ペレニアルカモミール
和名:ローマカミツレ

 ローマン種は、ジャーマン種とよく似ていて、葉にもリンゴの香りがあり、常緑の多年草です。背丈が低く横へ広がりながら地を這うように伸びていきます。また、「植物の医師」とも言われ、病害虫に侵された植物の周囲に植えると弱った植物が元気になると言い伝えられています。周囲の植物に良い影響を与えるコンパニオンプランツとしても花壇などに植えられます。
 日本での栽培は、高温多湿な夏が苦手なのでひと手間かかります。
 ジャーマン種、ローマン種どちらも、お茶(ハーブティー)として好まれ、色は金色で鎮静作用があり、不眠症の人が就寝前に飲んだり、発汗作用を働きかけて、引き始めの風邪を治したりします。また、身体を温め、肌をしっとりさせる作用があり入浴用などさまざまな用途で利用され、両種ともほぼ同じ薬効をもっています。
 開花したて2~3日後の、良く晴れた午前中に花を摘み取り、陰干しで乾燥させて保存します。お茶としては乾燥花を15gにお湯1カップ。5分以上蒸らしてからお召し上がりください。

【栽培ポイント】

・播種は春と秋。秋蒔きすると翌年の梅雨前に開花し収穫が可能です。種はとても細かいので取り扱い注意です。

・苗の場合は、そのまま花壇やプランターに植付けます。

・ジャーマン種は一年草なので、時期がくると枯れてしまいます。茎が伸びてきたら摘芯して花数を増やします。

・ローマン種は多年草です。成長が遅くても心配無用。次第に横に伸びた根から茎が立ち上がり、数年もすると芝生のように広がっていきます。冬になって地上部が枯れても翌年にはしっかりとした株になります。

・夏の暑さと乾燥に弱いです。新葉と蕾にアブラムシが付きやすいです。

センテッドゼラニュウム(写真:ローズゼラニュウム)

画像の説明

学名:Pelargonium × asperum
フウロソウ科ゼラニュウム属
多年草・半低木
原産地:南アフリカ
和名:ニオイテンジクアオイ



 センテッドゼラニュウムはニオイゼラニュウムの別称です。
 全草に香りがあるので、センテッド=香りのある/ゼラニュウムと呼ばれています。様々な芳香成分を葉や茎に含み、ヨーロッパでは古くから香料原料として栽培されてきました。
 一般的に親しまれているものはローズゼラニュウムです。花に匂いはなく、葉、茎からローズの香りがします。
 その他ではシナモン、ミント、レモン、ジンジャーなどの香りを放つゼラニュウムがあります。名称はそれぞれに似た花や果物、香辛料の名前が付けられています。
 草丈は30cm~1m程で、茎には産毛が生えています。開花時期は春から初夏の一季咲きで、品種によっては秋にも開花します。
 葉に大きく切れ込みが入るタイプや浅い切れ込みタイプ、丸葉で細かいフリルタイプなど様々です。
 花には花弁が5枚、上部に2枚、下部に3枚ですが、品種によって花の大きさや模様の入り方は異なります。
 殆どの品種において、生葉をジャムやお茶など料理の際に香りづけとして使用できます。葉は美味しくないので、香りが移ったら取り除きます。
 乾燥した姿は美しくないので、ポプリやサシャなどの袋に入れて香りを楽しむと良いですね。

【栽培ポイント】

・凍らなければ0℃まで耐えます。暖地であれば戸外で冬越し可能です。目安は5℃程度です。

・生育は旺盛、随時伸びすぎた茎や枝は剪定します。

・コンテナの場合は根が回りやすいので、1年に1回は植替えを行います。適期は、春:4月~5月、秋:10月です。

・株が老化しやすく、株元の茎は木質化し、下葉が落ちてしまいます。剪定の際に挿し木をしておき、苗の更新を行います。挿し木の適期は5月~6月です。

・肥料は4月~7月、9月~10月、化成肥料を株廻りに与えましょう。

・水は控えめに。

画像の説明

※草丈が伸びすぎて、紐で縛られた姿を目にします。定期的に剪定をして素敵な形をキープしましょう。
 長く伸びてしまった茎は剪定後、他の植物と合わせて花束にしたり、ポプリやリース、入浴料、染物などにも利用できます。
 様々な香りがあるので、複数の品種を集めて育てるのも楽しいですね。育て方はほぼ変わりません。
※購入の際は、信用のある園芸店でラベルの付いている苗を選んでくださいね。



パセリ
学名:Petroselinum crispum  セリ科オランダゼリ属 多年草(二年草)
原産地:地中海沿岸地方 和名:オランダゼリ

 紀元前から食用にされていたようで、日本に入ってきたのは18世紀と言われています。オランダから長崎に伝わったので「オランダゼリ」の和名がついたようです。

・モスカール・パセリ

画像の説明

 葉が縮れたタイプのパセリです。
 一般的には、洋食プレートの緑の添えや細かく刻んでスープの中、ドレッシングの薬味など用途は様々です。
 歴史は古く、古代ギリシャ時代には儀式に使用され、古代ローマ人によって料理に使われていたようです。
 栄養素は豊富でカリウム、カルシウム、ビタミン、鉄などが含まれ、ハーブ類ではトップクラスです。
 上部のもこもこした部分を食べますが、生だとモソモソした食感で残される方も多いかもしれません。乾燥させてソースなどに混ぜて使用すると食べやすくなりますね。 

・イタリアンパセリ

画像の説明

 モスカール・パセリの変種で平たい葉のパセリです。爽やかな芳香があり、縮れタイプのパセリに比べ味や香りに癖がありません。
 イタリア料理の香味野菜として使われています。葉はサラダで、葉茎はスープやシチュー、ドレッシングの薬味としても使えます。
 モスカールパセリ同様、カロテンやビタミンB1、B2、Cをタップリ含み、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルもタップリです。

【栽培のポイント】

・移植を嫌うので、種から育てるか、苗を植え付けます。

・日当たりが良い場所を好みますが、25℃を超えてくると生育が弱ります。
 真夏は明るい日陰で育てます。

・収穫する際は地際から1本ずつ採ります。その後新しい芽が出てきます。

・種蒔時期の適期は4~5月、9月です。苗の植付けは3月~6月上旬、9月~10月です。

・水は適宜与えます。乾燥を嫌います。

・肥料は化成肥料を4月~6月、9月~10月、株廻りに与えます。

※多年草(二年草)ですが、毎年苗の更新をした方が良いでしょう。

 身近にあると、とても便利なハーブの一つです。庭やプランターで育てて、採れたての香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

画像の説明

 余談ですが、よく似たハーブに「コリアンダー」があります。
(写真:上/コリアンダー 下/イタリアンパセリ)

 「コリアンダー?」と思われるかも知れませんね。「パクチー」の方が馴染みあるのではないでしょうか。
 中華料理では「シャンツァイ(香菜)」とも呼ばれ、タイやベトナム、ラオス料理だと「パクチー」、コリアンダーは英語圏で使われています。
 地中海東部原産のセリ科の一年草。
 近年、爆発的な人気になっています。
 パクチーはとてもクセの強い香りで好き嫌いがはっきりしています。
 和名は「カメムシソウ」と呼ばれ、強い香りがカメムシの匂いに似ているのか?連想させるのか?
 ただし栄養が豊富で、食欲増進や消化促進効果やデトックス、殺菌作用の他に、特にビタミン類を豊富に含み肌の健康を維持し、高い抗酸化作用を持っています。ビタミンKやカルシウムも多く含まれます。
 日本では、「インスタ映え」としてパクチーの山盛りやジュース、かき氷や鍋などがSNSで賑わっていますが、本場のタイ料理では添え物のようです。
 栄養豊富なので何かの折に召し上がってみてください。生は苦手でも、ニンニクや唐辛子などと一緒に調理すると香りが和らぎますよ。お好みで!



クレソン

画像の説明

学名:Nasturtium officinale
アブラナ科オランダガラシ属 多年草
原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、
南アメリカ、アジア(日本を含む)、
オセアニア
別名:オランダガラシ、ミズガラシ、
ウォーターレタス
英名:Watercress

 ヨーロッパからアジアの温帯にかけて広く分布し、毎年育つ多年草の植物です。
 日本へは明治時代に宣教師らの食用として導入されたそうです。当時は綺麗な水辺や湿地で栽培されていたものが野生化し、各地に拡がりました。
 茎は這うように伸び、水深のある場所では水面に浮いている状態で育ち、生育が進むと株元が太くなり、場所によっては1mを越す大きさになるそうです。

画像の説明

 クレソンは清流でしか育たないイメージですが、切った茎を水に挿しておけばすぐに発根し、家庭排水が流れている河川でも生育します。
 観光地、湯布院の街中の河川にもクレソンを見ることができます。我が家はプランターで育てています。
 繁殖力が旺盛で野生化することから、水辺に生息する希少な在来植物を駆逐し、水路を塞いでしまう恐れがあることから、日本では「要注意外来生物」に指定されています。
 クレソンは「オランダ水がらし」とも呼ばれ、ピリッとした大根にも似た辛みを持っていて、ステーキなどの肉料理の脇に添えられています。これは、特有の風味と辛みが肉の脂っぽさを緩和してくれるからなのだそうです。
 香味野菜としてサラダやお浸し、ゴマ和え、天ぷら、鍋物などにも利用されています。最近はスプラウトも見かけます。(種子からでたばかりの芽)
 栄養素も豊富で、鉄、リン、ヨウ素、カルシウム、カリウム、ビタミン類を含有しており、発熱、むくみ、解毒、利尿作用があるとされています。

【栽培のポイント】

・水耕栽培でも、土でも育てられます。
 ■葉を食べた後の茎を水挿しにしておくだけで発根してきます。この場合、毎日水を交換してください。
 ■土で育てる場合は、苗を植え付けた後、土が乾かないうちに水をタップリ与えます。

・茎が伸びてきて葉が茂ってきたら随時摘み取って(収穫して)利用します。葉先は柔らかく、先端を摘んでも脇から新しい芽がでてきます。

・置き場所:日当たりの良い場所を好みますが冷涼な気候を好むので、真夏は明るい日陰で育てます。

・肥料:10日に1回程度液体肥料を与えます。
 水耕栽培の場合も時々液体肥料を与えて、水管理をきちんと行います。

※特に病害虫は発生しないようですが、我が家のプランターにはアブラムシが大発生しました。害虫の付いている芽は取り除き、殺虫剤の散布をしました。

 次の収穫まで10日ほど空けて、その後は問題ありません。

 クレソンは茎さえあれば簡単に増やすことが出来ます。また手軽に食べることが出来ますが、日本に導入された時は人気のない香味野菜で、「洋食屋さんの付け合わせ」になってから知られるようになったそうです。
 癖のないハーブの一つです。育ててみるのは如何でしょう。



 今回は4種類の比較的一般的なハーブを紹介しました。お茶や香りを楽しむタイプと香味野菜として楽しめるタイプです。
 個人的には、食べたり飲んだりするハーブ類は少し苦手で香味野菜も癖の強いタイプは好みません。
 ただ、花や姿はワイルドだったりナチュラルな雰囲気を持っている植物なので、野菜花壇にほんの少し、通常の花壇にハーブ苗を加えて、プランター栽培でも同様に楽しみます。
 ハーブ類は一年中育てることが可能ですが、園芸店などに新しい苗が出回ってくる季節は5月からです。比較的容易に育てることができます。
 好みのハーブを探してみるのも楽しいですね。

 これから暑さも本番です。
 花壇の手入れや水やりの作業をされる際には、帽子の着用、水分の補給も忘れずに行ってください。出来れば1人ではなく、複数人で作業しましょう。
 気分が悪くなりそうになる前に涼しい場所で休憩を取り、合わせてソーシャルディスタンスも忘れずに!

(2020/07/01掲載) 

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