都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2020年11月

a:1176 t:1 y:0

花のコーナー

御園 和穂##

2020年11月 晩秋の野山に咲く花

 秋も深まり紅葉が美しい季節の到来です。
 今年は11月7日に二十四節気の「立冬」を迎えます。「冬が立つ」というように暦の上で「冬」に入ります。また、七十二候では「山茶花」の花が咲き始める頃になります。これから冬に入りますが、今からが紅葉の見ごろです。
 もっとも秋らしい、まだ木枯らしも吹かず、雨も少なく、空気が澄み渡り、空も高く感じる穏やかなひと時です。
 今回は、「穏やかな陽気に誘われて~」北九州市小倉南区、平尾台の野山を散策してみました。
 そこで出会った植物を紹介します。



ノダケ

画像の説明

学名:Angelica decursiva(Miq.)Franch.et Sav.
セリ科シシウド属 多年草
分布:本州、四国、九州、中国、台湾、ロシア、ベトナム
英名:common hogfennel
中国名:前胡(生薬名:ゼンコ)
開花期:9月~11月 80cm~150cmの草丈
生育場所:山野の林内、林縁

 茎は直立し、暗紫色で幾つかに枝分かれをしています。殆どのセリ科の植物が白い花をつけるのに対して赤紫色の花を咲かせます。
 丘陵地や草地に普通に生える植物です。ガイドの方に尋ねたら、「この花が咲くとスズメバチが寄ってくる」のだそうです。見かけたら周囲にスズメ蜂がいないか警戒してくださいね。
 根は堀上げ乾燥させて生薬として使用します。漢方薬とし、咳を沈めたリ、熱による頭痛や気管支炎に用いられるそうです。
 野山を歩いていて最初は気が付かなかったのですが、目が慣れてくるとあちらこちらに花を見つけることができました。
 次はフジバカマに似ている植物です。



ヒヨドリバナ

画像の説明

学名:Eupatorium makinoi
キク科の多年草
分布:北海道、本州、四国、九州
開花期:8月~11月 60~120cmの草丈
別名:鵯草(ヒヨドリソウ)、山蘭(サンラン)

 ススキの足元に見つけた植物です。最初は「フジバカマ」かな?と思っていたらガイドさんから「ヒヨドリバナ」ですよ~と教えて頂きました。
 姿形はフジバカマに似ています。フジバカマほど茎が濃い紫色にはならないようです。
 日本各地の林道脇や渓流沿いなどの日当たりの良い場所に自生するそうです。

 この名前は、ヒヨドリが鳴く頃に開花することから命名されたそうです。
 見間違えてしまった「フジバカマ」は、アサギマダラという渡りの蝶の飛来時期になるとよく紹介される植物です。

【フジバカマ】

画像の説明

学名:Eupatorium japonicum
キク科のヒヨドリバナ属の多年草。

 「秋の七草」の一つとして知られています。花は藤色を帯びていて花弁の形が袴に似ていることから「藤袴=フジバカマ」の名が生まれたと言われています。
 日本固有種のアサギマダラは、季節によって住む場所を移動する「渡りの蝶」で、フジバカマを好みます。

画像の説明

 北は北海道から南は沖縄、さらに南下し台湾や中国大陸まで飛来するそうです。
 アサギマダラの寿命は半年ほどで、移動しながら世代交代をします。その途中に敵から身を守る術として自らの体を毒化します。
 幼虫のころから有毒成分アルカロイドを含む植物を好んで食べ、その成分を体内に取り込むことで外敵から身を守っています。

画像の説明

 蝶になると、花と葉に「クマリン」という香り成分をもつ植物「フジバカマ」を好み飛来してきます。
 フジバカマは、地下茎を大量に伸ばして広域に拡がって行く植物ですが、現在の日本ではフジバカマの生育に適した環境が少なくなり、野生種を見かけることはなくなりました。
 現在、「フジバカマ」で販売されている苗は「サワフジバカマ」(フジバカマとサワヒヨドリの雑種)だそうです。

 フジバカマとヒヨドリソウ(ヒヨドリバナ)は自然交雑して様々な種類に遷移しているようです。似ていて判別が難しいですね。

画像の説明

 また、「これはフジバカマ?ですか」「アサギマダラは来ますかね?」「新品種でしょうか?」と鉢に植えた植物を私の元へ持ってこられた方がいました。
 今までのフジバカマやヒヨドリバナと似ているのですが、「葉の形」が異なります。
 フジバカマと同じような花が咲くのですが、葉に深い切れ込みがあり、ヒヨドリバナとも似ていますが、茎は濃い紫色です。ここから先は~ともかくよく調べてみます。

 植物の同定はとても難しく、結果分からないこともありますが、出来るだけ近いところまでは検索をしていきます。
 この植物は多分、「サケバヒヨドリ」と思われます。ヤマヒヨドリバナとヒヨドリバナの交雑が起源と考えられます。(牧野富太郎図鑑より)

画像の説明

 葉は薄く、3枚の深く切れ込みの葉で、葉裏は淡い緑色です。
 私の元にきた問い合わせ植物は、とあるお寺の裏山に群生しているそうです。もう一つの質問の「アサギマダラは飛来する?」は、多分、飛来するのではないかと思われます。

 植物は長い時間をかけて自然交配を繰り返しながらよく似た品種が生まれています。これからも、この自然が保たれることで、「新品種」を発見することがあるかもしれませんね。今回は違いましたが・・・



シラヤマギク

画像の説明

学名:Aster scaber
キク科シオン属 多年草
分布:沖縄を除く日本全域、アジア大陸の北部
開花期:8月~11月 100cm~の草丈

 山地の明るい草原に生育します。
 茎は細く直立し、丈夫で分岐します。写真は花冠が開き始めたばかりで、姿かたちがまだハッキリしていません。 
 小菊のような存在感のある雰囲気ではなく、優しいイメージです。
 若芽や若葉は食用になり、全草を薬用としても使用できます。
 強健で、環境があえば放任でもよく育ちます。優しい小花が印象的でした。



ヒメヒゴタイ

画像の説明

学名:Saussurea pulchella
キク科トウヒレン属の二年草
分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸、モンゴル、サハリン、ロシア沿岸地方
開花期:8月~11月 150cm程度の草丈
別名:姫平江帯(ヒメヒゴタイ)

 日本の広範囲に分布していますが、種子で更新する二年草で生育創元の環境維持が出来ないと生育できません。よって、個体数が少ない希少植物になっているようです。
 直径1cm程の球形で紫色の小花(付属体)を付けています。日当たりの良い草地を好みます。

画像の説明
画像の説明

 産須根の祠(ウブスネノホコラ)からキャンプ場の方へ進む山道脇に確認出来ました。
 希少植物と聞いていたので、見つけることが出来ないと思っていましたが、発見出来ました。

 ガイドさんによると、この時期平尾台の開けた草地に咲いているそうです。このままの環境を維持し続けていければ毎年見ることが出来ますね!
 


ムラサキセンブリ

画像の説明

学名:Swertia pseudochinensis
リンドウ科センブリ属
分布:関東以西から四国、九州、朝鮮、中国東北部
開花期:9月~11月 1年草または多年草

 高さ30~60cmほどの植物で、直立した茎は暗紫色をしています。花は淡紫色で5枚の花弁をもち、花弁内に濃紫色の縦線が入っています。
 花弁の中央には細かい毛状のものが生えていました。
 生薬として使用されているセンブリ(苦味の強い胃健薬)に似ていますが、全体に大きく紫色も濃く、センブリの代用として使用されているようですが、センブリほどの薬効はないそうです。
 どこにでも生えているわけではなく、蛇紋岩地帯の野焼きされた草原が維持されているような茅場に多く生息するそうです。絶滅危惧種の一つで、東京都や埼玉県では絶滅とされています。

 ガイドさんから「ここでも乱獲されている」話をききました。センブリほどの薬効がなくても代用薬として採取されてしまうそうです。

 平尾台という身近な草原に貴重な植物が生息していることを知りました。
 今回は、軽く山歩きした中で観察をすることができた植物を紹介しました。
 まだまだ、多くの植物が生息していますが「見落としていたり、すでに花が終わっていたり」と残念な部分もありました。また名前すら分からない植物も・・・・。これからは、四季を通しての観察のために、事前に下調べをして図鑑を片手に散策したいと思います。

画像の説明   画像の説明
↑ヤマハッカ        ↑アキノキリンソウ

  
 10月中旬から11月上旬、平尾台は、ススキの穂で一面銀色です。

画像の説明

 外来種のセイタカアワダチソウの黄色い花穂も覗かせていましたが、あまり目立ちません。ハギの花はすでに終わっていました。
 久しぶりに平尾台に来てみました。今回は限定的な散策でしたが、色々と見ることが出来ました。
 合わせて今更ですが、植物の検索において「山野草は難しい」としみじみ感じました。「後から調べれば大丈夫」では無理がありました。

 先に述べたように植物の同定はとても難しいのですが、山野草はさらに難しい植物です。まだまだ勉強不足だと実感しました。
 私は、植物の名前を尋ねられることが多いのですが、写真ならともかく一部の方は植物を採取してこられます。
 同じ地域であっても旅先からでも、園芸品種とは異なるので、自生地からの持ち出しはしないでください。植生維持は必須です。軽い気持ちで持ち帰ることはやめましょうね。
 

 そろそろ朝晩、暖房も必要になってくる季節です。これから山歩きには気持ちの良い季節です。
 都会の喧騒を離れて、のんびりと時間を過ごすのも素敵ですね。
 自分の住んでいる近場に素敵な場所があることを忘れていました。これからは散策をしながら、合わせて平尾台の特殊な地形や地質も学んでみたいと思っています。

画像の説明

 それと、写真の奥に見えるのが「ブドウ畑」です。ワインを作るために作付けされたそうです。
「平尾台高原ワイン」が味わえる日もそう遠くはないようなお話でした。
 穏やかな陽気に誘われて~大変リフレッシュした一日でした。是非、皆様も!

 11月に入ると、花壇やコンテナは来春へ向けて植替えの時期になります。
 天気予報では、今年は例年になく「寒い冬」と聞いています。寒くなってしまう前に植付けを終わらせてしまいましょう。
 今年も残すところ2か月です。これから年末まで様々な行事で大忙しだと思いますが、インフルエンザやコロナ感染予防をしながら楽しく過ごしていきましょう。

(2020/11/01掲載) 

powered by QHM 6.0.9 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional