都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2021年02月

a:1078 t:1 y:0

花のコーナー

御園 和穂##

2021年02月 早春の花木

 2月、暦の上では「春」の始まりです。

 年末年始は「寒波襲来」で、日本海側の地域は記録的な大雪になりました。
 北九州でも積雪し気温も上がらずとても寒い1月でした。
 本来、これから一番寒い季節ですが、「立春(今年は2/3)」を迎えると、春らしい気分になり、三寒四温の言葉通り、日ごとに暖かい日差しを感じられるようになります。

 旧暦では、立春の前後に元日を迎えます。中国やアジア諸国では旧正月を大切にして盛大に祝います。また、禅寺の門に「立春大吉」という張り紙を目にします。これは、文字が左右対称で縁起が良く「災いのない一年を過ごせるように」という言い伝えによるものです。

 余寒はありますが、徐々に暖かくなりながら春がやってきますね。
 今年は明るい春が迎えられることを願っています。

 今回は、これから開花する「花木」を紹介します。
 意外に「見てはいるけど~」、「いつの間にか終わってしまう」花木です。これからの開花ですよ。見逃さないよう!


沈丁花(ジンチョウゲ)

2021

学名:Dafune odora
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属 常緑低木
漢字名:瑞香  英名:Daphne
別名:輪丁花
原産地:中国中部~雲南省、ヒマラヤ地域
開花時期:2月下旬から4月


2021

 花木の香りは、「どこから香っているのかな?」と思わせるものが多く、ジンチョウゲもどこからともなく、甘い香りを漂わせます。
 ジンチョウゲは、外側が濃い紫ピンクで、内側が白色の肉厚な小花がいくつも集まった手毬のような花姿をしています。花弁のように見える部分は、萼が花弁状に変化したものなのですよ。

 日本へは室町時代以前に中国から渡来しました。また、「沈丁花は枯れても香しい」と言われるほど「花の美しさより香りが印象的」な花とされ、茶花としては禁花とされています。 
 ジンチョウゲの香りが強すぎて、香を焚いても負けてしまうからなのでしょうね。
 香り高い花木のなかでも、春のジンチョウゲ、夏のクチナシ、秋のキンモクセイが三大香木と言われています。

 名前の由来は、花の香りが同じジンチョウゲ科の※沈香(ジンコウ)と花の形が丁子(チョウジ:クローブの花)に似ているという説が有力です。

※沈香(ジンコウ:学名:Aquilaria agallocha)とは:
ジンチョウゲ科の常緑高木。雨風や病害虫などから自分の木部を侵されたとき、防御としてダメージ部分に樹液を出し、この樹液が固まって樹脂となり長い時間をかけ胞子やバクテリアの働きによって樹脂の成分が変質。そして特有の香りを放つようになる。沈香ができるまでに約50年、高品質のものは100年~150年かかると言われている。沈香のメカニズムは解明されておらず、人工的にも生成が極めて難しいと言われている。樹脂の呼び名の沈香が樹木の名前でもある。
 
 ジンチョウゲは東洋ばかりでなく、西洋諸国でも好まれ1700年代にヨーロッパへ渡り、「ウィンターダフネ」として現在でも親しまれています。

【育て方】 樹高は1m~1.5m程度。

  • 生育環境
     有機質に富んだ、水はけ、水もちの良い弱酸性の土壌を好みます。西日の当たらない半日陰を選んで根を切らないよう植えます。日陰に植えると花が咲きにくくなるので要注意です。
     また、根を触られることを極端に嫌いますので、庭植えの場合は、場所を決めてから(途中移植のない場所)植え付けます。
  • 水やり
     根が深く伸びないタイプなので極端な乾燥を嫌います。新芽が伸びる春先や真夏の高温時に乾燥させないよう、乾いたらタップリと与えます。
  • 肥料
     花後と9月頃に緩効性化成肥料、寒肥として1~2月に有機質肥料を施します。
  • 植替え・植付け
     植替えや移植は基本行いません。特に大株は困難です。
     小株での植替え、移植の際は根を切らないよう大きく掘り上げ動かします。植替え・植付け適期は3月下旬~4月、9月下旬~10月です。
     土壌に関しては連作障害が起きやすいので、植替え、移植の際は新しい用土を使用し、同じ場所は避けてください。
  • 剪定
     自然に樹形はまとまります。基本的に剪定の必要はありません。
     強剪定も可能で萌芽しますが、病気や株が痛んで枯れることがあります。注意しましょう。軽い剪定を施すなら、新芽を揃える程度で花後すぐにおこないましょう。
  • 繁殖
     種が付かないので、挿し木をします。前年に伸びた枝を利用し4月に挿すか、今年伸びた枝を利用するなら7月~8月に挿します。鹿沼土を使うと発根しやすいです。2~3か月後に2~3号ポットに鉢上げします。根の扱いは慎重に願います。


2021

 その他に、白色の花をつける「シロバナジンチョウゲ」、緑の葉に覆輪が入る「フクリンジンチョウゲ」があります。代表的な園芸品種で、人気種です。
 育て方の中にも記載しましたが、種が出来ませんので挿し木で繁殖させます。

 本来、ジンチョウゲは雌雄異株ですが日本で生育している株のほとんどは雄株なので実を付けることはありません。

2021

 私は見たことがありませんが、ミナリジンチョウゲ(写真参照)という珍しい種類もあるそうです。

 
 ジンチョウゲは香りが良く魅力的な花木ですが、樹木全体に毒があります。樹皮、樹液、根、果実の毒が強く、誤って口にすると嘔吐や下痢、ひどい場合は心臓に障害を生じさせることもあるそうです。樹液が付着するとかぶれや水膨れが出来てしまいます。生薬としても知られていますが、民間療法としての使用はしないようにしましょう。

 環境があえば育てやすい花木です。花を見るだけで香りがしてきそうですね。庭の片隅に1株あるといいかも!


レンギョウ

2021

学名:Forsythia suspense
モクレン科レンギョウ属 落葉低木
漢字名:連翹  中国名:黄寿丹  
英名:Weeping Forsynthia、Golden bell
別名:カンレンギョウ(旱連翹)、空殻(クウカク)
古名:イタチハゼ、イタチグサ
原産地:中国中部~雲南省、ヒマラヤ地域
開花時期:3月から4月

 春一番に開花する代表的な花木の一つです。鮮やかな淡い黄色の花は、暖かさを運んでくれるようです。
 日本へは生薬として平安時代初期に渡来したと言われていますが、実際の渡来記録はないようで、江戸時代初期に栽培記録があることから江戸時代に持ち込まれたと言われています。
 中国から日本、それから欧米に渡りました。
 欧米では「春はレンギョウの花の明るさからはじまる」と言われ親しまれているそうです。レンギョウの黄色い花が咲くと心躍るような喜びを感じるからでしょうね。
 レンギョウの繁殖力は旺盛で、樹高は1m~3mほどのブッシュ状の株になります。庭木はもちろん公園樹としても植えられています。
 日本で栽培されているものは、レンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウで、総称して「レンギョウ」と呼ばれています。

・レンギョウ

2021

学名:Forsythia suspense

 若い枝が垂れて、幹は中空。花が咲いた後に葉が出る。
 葉はチョウセンレンギョウよりさらに幅広い。
 花びらは基部から4つに深く裂けている。

・シナレンギョウ

2021

学名:Forsythia viridissima

 枝が直立し、葉と花がほぼ同時に展開する。
 幹は中空で薄い隔膜で細かく仕切られている。
 開花時期はやや遅めで4月から5月。
 花びらはやや細長くよじれることもある。

・チョウセンレンギョウ

2021

学名:Forsythia viridissima var.koreana

 枝がやや湾曲する。
 幹は中空で薄い隔膜で細かく仕切られている。
 葉がやや幅広く、葉に先立って開花する。
 花びらがやや幅がある。花色は山吹色。

 3種を並べて比較すると違いが分かりますが、庭木や公園樹として植えられているレンギョウを見分けるのは難しいでしょう。
 好みの品種を入手する際は、花付きの苗をよく確認して購入するといいですね。

 レンギョウは「黄寿丹」と呼ばれる中国原産の花木で、果実が漢方薬の原料として日本に伝えられたと言われています。漢方として栽培されたものの、花の美しさから観賞用としても栽培が盛んになったようです。

2021

 漢方薬には果実を使います。果実は芳香があり舐めるとわずかに渋みがあります。
 完熟する前に収穫し、茶色くなるまで天日干ししたものを使用します。
 皮膚疾患、排膿作用などがあるそうです。また、花も採取し天日干し後、煎じて服用すると利尿や緩下や高血圧の予防に良いと言われています。(写真:図鑑参照)

【育て方】 樹高は1m~3m程度。

  • 生育環境
     日当たりの良い場所で、通気、水はけのよい、適度な湿度を保てる肥沃な土を好みます。強い西日は嫌います。
  • 水やり
     庭植えの場合は特に必要としません。鉢植えの場合は土の表面を確認して水切れを起こさないようにしましょう。
  • 肥料
     寒肥として1~2月に有機質肥料、花後に化成肥料を施します。
  • 植替え・植付け
     庭植えの場合は、12月~3月ごろが適期です。植付けの際、植え穴には腐葉土などの有機物を混ぜておきます。
     鉢植えの場合は2~3年に1回植替えます。適期は1月から2月です。
  • 剪定
     枝の伸びが旺盛なので樹形が乱れやすいタイプです。
     花後、4月~5月に徒長枝や古い枝などの不要な枝を切り詰めます。6月中旬から花芽が出来始めるので、以後の強い剪定は行いません。
     12月~1月の整枝剪定は、開花期が近いので長く伸びすぎた枝や地面に垂れてしまった枝などを整理する程度にします。
     ※整枝をする場合:枝を切る際には葉芽のすぐ上で切ります。節と節の間で切ると、切り口の近い葉芽は枯れてしまいます。
     葉芽の無い枝を切っても芽は伸びません。
  • 繁殖
     挿し木をします。3月~4月は前年枝、6月~7月は剪定後に伸びた当年枝を10~15cmほどを切って暫く水に付けておき赤玉土に挿します。2か月ほどで発根してきます。


2021

 生育旺盛で、美しい花を咲かせます。
 多少樹形が崩れやすいのですが、ひと手間かけることで楽しめる花木です。
 用途として、和風、洋風、公園など場所を選びません。手入れが可能であれば生垣としても仕立てられます。
 広い場所であれば自然樹形もいいですね。石垣の上や法面など枝が垂れ下がる性質を活かした使い方も素敵です。

 用途に合わせて、直立タイプか下垂タイプか選んで植付けましょう。
 日本にも固有のレンギョウがありますが生育分布が限定されています。
 ヤマトレンギョウ(岡山県の北部)、ショウドシマレンギョウ(小豆島のみ)がそうです。
 花数が少なく一般的には栽培されていないそうです。
 通常のレンギョウは北海道の南部から九州まで広く見ることができます。

 これからの季節、散策する時に見かけることがあると思います。
 当たり前のように景色の中に溶け込んでいて、意識して観賞することのない花木ですが、是非、見かけたら近くで眺めてみてくださいね。


ニワウメ

2021

学名:Prunus japonica Thunb
バラ科サクラ属 落葉低木
和名:庭梅
別名:林生梅(リンショウバイ)、小梅
チャイナベリー、一才ニワザクラ
中国名:郁李(ニワウメ)
原産地:中国北部
開花時期:3月下旬から4月
1.5m程度の落葉低木です。

2021

 名前は「ニワウメ」と呼ばれていますが、サクラの仲間です。
 また、学名に「japonica」と付いていますが、原産地は中国で、奈良時代に薬用目的に渡来したようです。

 
 ニワウメは、「万葉集」に「朱華(唐棣色):ハネズ」の名で歌に詠まれています。淡い紅色の花色が美しかったことから薬用目的より観賞用として愛でられていたようです。
 俳句においても春の季語として、中国名の「郁李(ニワウメ)」で使われています。

2021

 名前の由来は、「庭に植える樹木で梅に似た淡紅色の花とその後に小さい実をつける」ことから命名されたと言われています。(花色は白色もあります)
 葉より先に2~3輪ずつ固まって枝を覆うようにたくさんの花を付けます。その後、直径1~1.5cm程の果実ができます。展開した新緑に赤い実が美しく映え、観賞用としても価値が高い樹木です。


 果実は、熟すと艶のある赤色になり生で食べられます。漢方薬では、中の種を「郁李仁(イクリニン)」と呼び、利尿や通便作用があるそうです。
 他には、果実酒としても楽しめます。果実200~300gに、約3倍のホワイトリカーを入れて半年保存します。その後果実を取り出して布で漉して飲用します。さらに熟成させると良い味になりますよ~。

 私がニワウメを最初に見たとき、「ユスラウメ」と勘違いをしてしまいました。
 ユスラウメも同じ時期に開花し、同じような赤い実ができます。
 バラ科のサクラ属で、ニワウメとは近縁種です。

・ユスラウメ

2021

学名:Cerasus tomentosa
バラ科サクラ属
和名:ユスラウメ(山桜桃梅)
中国名:桜桃



 中国原産で、樹高1~3m程の落葉低木で、春に葉が出る前に白やピンクの花を咲かせます。花びらは5枚で枝を覆うようにたくさん付けます。
 その後、直径1cmほどの果実を付け、熟すと生食や果実酒で楽しめます。
 ニワウメとほぼ同じですが、ニワウメは葉面が無毛ですが、ユスラウメの若い枝や葉は柔毛で覆われ、花に柄がありません。これで区別が付きますね。



【育て方】 樹高は1m~1.5m程度。

  • 生育環境
     日当たりの良い場所で、通気、水はけのよい場所を好みます。暑さにも寒さににも強いです。日陰だと花付きが悪くなります。
  • 水やり
     庭植えの場合は特に必要としません。鉢植えの場合は土の表面を確認して水切れを起こさないようにしましょう。ただし極度の乾燥は好みません。
  • 肥料
     寒肥として1~2月に有機質肥料、花後に化成肥料を施します。
  • 植替え・植付け
     庭植えの場合は、11月~3月ごろが適期です。植付けの際、植え穴には腐葉土などの有機物を混ぜておきます。
     鉢植えの場合は2~3年に1回植替えます。適期は1月から2月です。
  • 剪定
     特に必要ありません。
     剪定をするのであれば、落葉期に行います。古い枝や弱っている枝を切る程度で十分です。また、枝が伸びすぎたり、樹木全体を小さくしたい場合は、花後から初夏までに行います。晩夏に花芽が付きますのでその前に行います。
  • 繁殖
     挿し木、取り木、株分けで増やします。
     剪定をした枝を利用して挿し木が可能です。
     また、ニワウメは地下茎が伸び株元からたくさんの枝を伸ばします。そのまま放置すると枝が混みあってしまうので、堀上げて絡まっている根を崩し、鋏で切り離して株分けします。2~3月が適期です。
     ※地下茎が伸びて、周囲から枝を出します。株分けが難しければ、付け根から切り落とすか、堀上げて切り取ります。


2021

 ニワウメは、古くから美しい花姿から生け花の花材として好まれてきました。茶花としては蕾の状態で利用されます。
 春先のニワウメは、私たちの目を楽しませてくれる花木です。
 比較的育てやすい樹木です。春を迎える花木として育ててみませんか。


画像の説明

 春を告げるジンチョウゲが咲き始めると、次から次へと花木の開花が始まります。
 ミモザ、ボケ、コブシ、ユキヤナギ、ヤマブキ等‥今年は開花している姿を是非見て欲しいと思います。意識していないと見逃してしまうかも!

 近所の公園に植えられている梅の蕾が少し膨らんでいました。
 昨年、夏は猛暑で冬は厳冬。北陸地域では雪下ろしもままならない状況でした。また、ウイルスの脅威もまだまだ続きそうです。

 今しばらくは人混みを避けて、静かな生活をしましょう。気分転換に人の少ない公園の野山を散策してみませんか。
 季節は移り変わりを直接感じられると思いますよ!
 

(2021/02/01掲載) 

powered by QHM 6.0.9 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional