花のコーナー 2021年12月
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花のコーナー
御園 和穂##
2021年12月 Christmas Wreath
一年最後の月になりました。今年はどんな一年でしたか?
突然襲われたコロナ感染で、会いたくても会いに行けない状況や、面と向かって話す機会が減り、働き方もリモートなどによる在宅ワークが一般的になりました。コロナ禍で世の中の動きにも大きな変化があった年でもありました。
東京オリンピックは一年遅れでの開催。渦中での祭典でしたが、感動や勇気を与えてもらいました。
コロナ感染も少しずつ治まってくることでしょう。年末年始、気を緩めることなく楽しいひと時を過ごしたいですね。
私は、毎年12月最初の週末あたりに「クリスマスリース」を作成します。
周囲の方を巻き込みながら~11月に入ると材料採取開始です。
どんぐり類や椿の殻、ヤシャブシの実、ナンキンハゼの実、サンキライの実、それと松ぼっくり等を採取します。
少しずつ、箱の中がいっぱいになってくると~気持ちがウキウキします。これは私だけかもしれませんが!(笑)
今回は「クリスマスリース」を紹介します。
まずは、「クリスマスリースとは何?」からお話ししましょうね。
クリスマスリース(Christmas Wreath)は、クリスマスの季節に、常緑樹の葉、松ぼっくり、木の実などを輪状に装飾して戸口に飾るものです。
「リース」はキリスト教でクリスマスの象徴と思われていますが、実は古代ローマ時代までさかのぼります。
古代オリンピックでは勝者に「月桂樹やオリーブ」のリースが贈られていました。今でも聖火ランナーがオリーブの冠をかぶっているのは、ここからきています。
リースは、花や葉で装飾された「輪」のことで、お祭りやお祝いの際に冠として身につけられ、葬儀の石棺にも取り付けられていたようです。
古代ローマ時代から長い年月を経て人々の特別な日の演出として取り入れられたようです。
クリスマスリースとして飾られるようになった詳細は明らかではありませんが、元来のリースを飾る慣習とキリスト教の文化が融合して、クリスマスリースが飾られるようになったという説が有力です。
本来のリースは祭事や結婚式などの特別行事の装飾用でしたが、キリスト教圏における(教派によっては異なる場合もある)飾る期間は、11月30日に最も近い日曜日から1月6日※公現祭もしくは2月はじめの※聖燭祭までとされています。
※公現祭:神がイエス・キリストの姿をとって人間の前に姿を現した日
※聖燭祭:イエス・キリストが聖母マリアと夫ヨセフによって神殿に連れてこられた日
一般的には、11月末から2月上旬くらいまで飾られます。
日本においては特に宗教的な色合いは薄く、12月上旬から12月下旬くらいまでで、お正月の準備を始める際に片づけるような感じですね。
クリスマスリースには、いくつかの意味があります。
★一つ目は「輪」。輪は「はじめも終わりもない」「永遠」などの意味があります。
『生命や幸福がいつまでも続きますように』という願いが込められています。
★二つ目は、豊穣や豊作祈願です。
リースの装飾は、常緑樹の枝葉、松ぼっくりや木の実などを使い、作物を表しています。
使われる常緑樹によって異なりますが、モミや西洋ヒイラギ、ヒノキの葉などは殺菌・抗菌効果を持つとされ「無病息災」の願いも込められています。
マツの場合は不老長寿や豊穣多産の象徴ともされています。松ぼっくりや木の実は、今年の豊作物への感謝と翌年の豊作を祈願するためのものです。
★三つ目は、魔よけです。
常緑樹の西洋ヒイラギは、生命力の源とされ、悪から身を守ってくれるとされています。ヒイラギのリースはヨーロッパだけでなく、中国や日本でも護身の意を持っています。
クリスマスリースを飾ることにも意味がありますね。
リースに使われる素材にも一つ一つに願いが込められていますよ~
・常緑樹≪冬でも鮮やかな緑色、生命力の強さのシンボル≫
モミの木
学名:Abies firma
マツ科 常緑針葉樹
秋田県及び岩手県以南、本州、九州、屋久島に至るまで分布します。
かつては明治神宮など東京都心にも大木があったといわれていますが、大気汚染に大変弱く、現在ではほとんど見ることはありません。
また、かなりの大木になるので庭木としては不向きです。
ヒノキ
学名:Chamaecyparis obtuse
ヒノキ科ヒノキ属 常緑針葉樹
福島県以南、屋久島まで分布します。
天然ヒノキは木曽、高野山、高知県西部に分布しますが数は少なく、材木用として植林されたため、人工林としてのヒノキは多く見ることができます。
木目の美しさ、香りの良さ、材木は千年以上といわれる耐久性、耐水性に優れている建材です。
セイヨウヒイラギ
学名:llex aquifolium
モチノキ科モチノキ属 常緑小高木
ヨーロッパ西部・南部、アフリカ北西部、アジア南西部に分布します。
冬場になる赤い実が美しく、クリスマスの装飾の定番として使われます。クリスマスケーキの上にも乗っていますよね~
実は晩秋に赤く熟しますが、とても苦く冬の間も鳥に食べられることは少ないと言われています。葉には刺があります。
リースの常緑樹として代表的な樹木です。
・松ぼっくりや木の実≪豊作物への感謝と翌年の豊作祈願≫
松ぼっくりと木の実
「松ぼっくり」とは「マツ袋の」という意味です。これを球果といい、針葉樹だけにできる果実の形です。松ぼっくりは、乾燥するとカサを開き、ウロコのような種を飛ばします。
雨の日や湿った時はカサを閉じるのは、自分の種が親の近くで芽を出さないようにするためなのですよ~
木の実は、左から イチイガシ、マテバシイ、クヌギ↓
木の実は、冬の間の長期保存ができ、栄養のある作物です。
身近に手に入る木の実です。
その他として、左から サンキライの実、ナンキンハゼの実、ツバキの殻です。↓
先のセイヨウヒイラギの赤い実やサンキライの実は、「太陽の炎」を表すとも言われています。また、命を削って人々のために血を流したキリストに敬意を払っているとも言い伝えられています。
ヒイラギの実やサンキライの鮮やかな赤い実が神聖を表し、ナンキンハゼの白い実、ツバキの殻は収穫への感謝を意味し、装飾の際には見た目のアクセントにもなり可愛らしいですよね。
最後にリボンをつけます。ベルを付ける方もいらっしゃいますね~
これは「魔よけ」と言われています。
リボンは「赤」を使用します。赤は強さや活力の色とも言われ、魔術や悪意ある人から身を守ると信じられています。
ベルは、その音が魔を祓うと考えられています。
クリスマスリースについて色々と紐解いてみました。私たちの「こよみ」の中にも同じような習慣があるように思います。
例えば、お正月に飾る「しめ縄飾り」も「輪」です。しめ縄は歳神様をお迎えする神聖な場所を表し、輪は終わりのない形を意味します。
節分の「イワシの頭とヒイラギ(やいかがし)」は魔よけです。
毎年6月30日は各神社で「夏越しの祓(なつごしのはらえ)」茅の輪くぐりをすることで心身を清め災厄を祓い、無病息災を祈願します。
リースとこよみをすり合わせるには少し無理がありますが、「同じような思いとと願いがあるのではないか」と私は思っています。
今年も材料が集まってきました。
松ぼっくり、ナンキンハゼの実、木の実、ツバキやサザンカの殻、ヤシャブシ、サンキライの実など。
材料が揃ってきたら、リースの土台になる「蔓」を採取します。
「蔓」は、ブドウ蔓やフジ蔓などが手に入ると良いのですが入手困難です。
私は、身近で入手可能な葛蔓を代用しています。12月にはいると、葉も枯れて長い蔓が見やすくなります。
採取する際は、太い蔓ではなく、細めの蔓を選びます。幾重にも編んでリースにすると形がよくなりますよ。
採取した材料は、各材料ごとに手入れをしていきます。
←ナンキンハゼの実
実の周りに固い殻が付いています。白く弾けた実が確認できます。殻が付いているものは外します。
(真っ白な実がとても美しいです~)
←どんぐり類(特にクヌギは)
採取後はお天気の良い日に半日くらい天日干しをします。どんぐりの中から小さい虫の幼虫が出てきます。
取り除いておかないと~壁や床を徘徊しますよ。(笑)
触れない方は、ビニール袋に入れて冷凍するか、バケツに水を張ってしばらく浸水させます。その後、広げて乾燥させて使いましょう。
準備が整ったら、常緑樹の採取。これで材料は揃いました!
今回はこんな感じのリースを作成しました。
↓
余った材料でいくつかアレンジもしてみました。
↓
ちょうど、綿を頂いたのでつけてみました。終わったら、綿の種を採取して蒔いてみようと思っています。
リースを作っている時間は「あっという間」に過ぎていきます。
材料集めに1か月。作成に2時間ほど。この後、いくつか作成してお友達にも差し上げます。
玄関に飾ると。~これが私の毎年の恒例行事です。
今年も残すところあと僅かです。皆様には、この一年ご愛読頂きありがとうございました。
来年は、良い年良い一年を過ごせますように!
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(2021/12/01掲載)