花のコーナー 2022年10月
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花のコーナー
御園 和穂##
2022年10月 シラン
やっと秋の到来でしょうか。
9月中旬、気温も高く蒸し暑い日が続きました。そんな中でも時期がくると開花するのがヒガンバナです。
開花気温は25℃前後と言われています。早めの開花から最後の開花までにはしばらく時間がかかりそうですね。
秋間近。涼しさが恋しい今日この頃です。
猛暑を超えて、軽く切り戻した草花もこれから徐々に開花し始めます。気温が下がる分、開花期間も長くなり、本来の花色を取り戻し香りも強くなる時期でもあります。
楽しみですね!
良い季節はほんの少しだけ。満喫しましょう!
今回は建物の後ろ手にひっそり生育している植物を紹介します。
シラン(紫蘭)
学名:Bletilla striata
ラン科シラン属 多年草
原産地:関東地方以西の本州、四国、九州、中国、台湾。
和名:シラン(紫蘭)
別名:紅蘭(コウラン)、白及(ビャクキュウ)
草丈:40~70㎝
開花期:5~6月
野生ラン(シュンランやエビネなど)は、ほの暗い木陰で生育しますが、シランは里山の畑地や土手などの日当たりの良い場所で開花する数少ないランの一種です。
植栽植物としても親しまれ、現在では公共の公園などの植込み材料としても使用されています。
シランは古くから親しまれており、こぼれ種で増えたものも多く、野生種なのか植栽されたものか区別がつかず正確な分布は分かっていないようです。
晩秋に地上部を枯らして休眠します。春になると、※地下球(偽球茎)から笹のような葉を伸ばします。
※地下球(偽球茎)とは
地下茎が塊状ないし球状に肥大したもの(塊茎・球茎)。ラン科植物では、地下茎でも同様に肥大することから偽球茎と言われる。単にバルブとも呼ばれている。地下に偽球茎を形成するものは、シラン、シュンラン、エビネ、カンランなどがある。
春に葉茎が伸ばし、その先端に目にも鮮やかな美しい赤紫色の花を咲かせます。
江戸時代の園芸書『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう/1829年)』には、葉の縁に白く覆輪(フクリン)の入った斑入りのものが紹介されており、歴史の中で長く親しまれてきた植物であることがうかがえます。
また、地下の球茎の乾燥させたものを「白及」(ビャクキュウ)と呼び、漢方薬として肺結核や外傷に用いられたそうです。
中国では現在でも喀血(カッケツ)の治療に漢方薬として百及を使用しているようです。
また、「白及」は粘着性があるので、七宝細工の糊としても使われています。
シランがこのように様々なところで活用されていたとは‼
個人的に、シランにはトラウマというか~いいイメージがないというか。
学生時代「生物学実験」において、植物器官の切片切りと細胞の確認をする実践がありました。その素材がシランでした。
その昔の講義です。薄いカッターの刃をもって、茎の表面を薄く薄く切り、切ったものをプレパラートに設置、試薬をかけて顕微鏡で観察。その一部もしくは全体をスケッチし、各器官の名称を記載します。
シランを見るとその部分だけの記憶が思い出されて~
その講義に苦しんだのでしょうか?はっきりした記憶はないのですが、シランを見かけるとこのようなことを思い出してしまいます。(笑)
「建物の後ろ手にひっそり」は今年の猛暑で傷んでしまったシランのことでした。
「復活しますか?」
本来は強健な植物の1つですが、極度の乾燥が続いたり、土壌が悪かったり・・・と。冬に入る前に掘り上げて、下地を確認してから対策を考えることにします。
来春からの復活を期待して欲しいものです。
失礼な言い方ですが、一般的に植物が植わっていると「当たり前」で興味も示さないのに、葉が茶色になると急に気になるのでしょうね~植えっぱなしの結果なのですが。
【育て方】
■栽培環境
・鉢植え、庭植えでも日の当たる場所を好みます。比較的夏の暑さに強く、葉焼けを起こしても特に問題ありません。
冬の寒さには特別強いわけではありませんが、地上部を枯らして休眠します。
特別低温にならない限りは大丈夫! 鉢物は軒下に。
※比較的湿り気の多い場所を好みます。
■水やり
・鉢植えは、毎日しっかり水を与えてください。乾燥には強いのですが、芽や根が詰まったものには多めの水やりが必要です。
・庭植えは、自然の雨で十分です。
■肥料
・植付けや植替えの際に、元肥として緩効性肥料を施します。成長期には定期的に置き肥をすると効果的です。
・株が増えてくると、地上部分はやせてきます。この場合は少し多めの施肥を。
・用土は特に選びません。鉢植えは水はけの良い用土や山野草用土、もしくは赤玉土小粒(2~10㎜程度)、鹿沼土、軽石を等量配合してもいいですよ。
・庭植えの場合は、発生土にバーク堆肥や腐葉土を加えて植え付けます。
・植付けは真夏・真冬を除けばいつでも大丈夫です。
■増やし方
・分球:地下球を毎年分球しながら増えます。芽が付いている所を確認して分球します。芽の無い部分でも植えておくと2年目以降に発芽します。
・種まきでも増やせますが、一般的ではないようです。
すみません!私も試してみたことがなくて。わかりません!
育て方は至って簡単です。
場所に適応すれば、庭植えの場合は本当に手間いらず。数年に1回株分けを施す程度で生育可能です。
近年、赤紫色の花以外にも多くの品種があります。
紹介しておきましょうね。
・シロバナシラン(白花紫蘭)
名の通り白い花を咲かせます。まれに芯柱が薄いピンクになったりすることもあります。
姿は通常のシランと同じです。
・クチベニシラン(口紅紫蘭)
全体は白く、中央の花弁は口紅を差したようなピンク色で回りは赤紫色をしています。
シロバナシランとも似ていますが、なんだか女性的な雰囲気を感じさせる花です。
花壇花では、趣を感じにくいかも~是非、鉢植えで育ててみたいですね。
・シランの斑入り(覆輪紫蘭)
覆輪紫蘭と呼ばれ、葉に白色の斑が入っているのが特徴です。
「覆輪(フクリン)」とは、馬具や甲冑、鞘、太刀などを金や銀、錫などで縁取りし、装飾や補強を施したものです。
葉の斑入りがその姿に似ていることから「覆輪紫蘭」と名付けられたそうです。
斑入りは白花や薄い紫色、薄い黄色を咲かせる品種に多いそうです。
開花時期以外でも美しい葉が観賞出来ます。
シラン、多くの品種があります。残念ながら、薄い紫色や薄い黄色のシランはまだ見たことがありません。
今回は、傷んでしまったシランの手当をするにあたり調べていたら知らなかったことが~まだまだ勉強が足りないことを痛感しています。
「シラン」にすっかり魅了されてしまいました。
シランの特徴は、縦じまの葉と横向きに開花する花姿です。
様々な資料を覗いていると、シランの花姿がしとやかな女性の恥じらう様子を連想させ、その風情ある姿が多くの文人らに愛され、北原白秋や幸田露伴の作品にも登場していました。
環境への適応能力は高く、一度植付ければ株が生長し毎年美しい花を咲かせます。
切り花や植栽植物として、花壇での植付けは場所を選ぶかも知れませんが、チャレンジしてみたいです。いい感じで植付けが出来たらご報告しますね。
今年の夏は本当に暑い夏でした。
北九州市は雨も少なく、溢れる日差しで「水管理」に苦労された方が多かったかと思います。
私もその一人で、夕方から夜にかけて灌水していると、通り掛かりの方が声を掛けくださいます。その一声が背中を後押ししてくれて頑張れたと!
今年の夏は皆さんの協力があって乗り越えられた次第です。感謝しています。
毎年毎年暑さが厳しくなり、台風が大型化し強風や大雨、極端な乾燥に遭遇したりしています。
我々は被害にあわないよう身を守ることはできますが、植物は移動が出来ない分、雨風、乾燥にさらされています。
それでも元気に花を咲かせてくれ、今年ほど、植物の生命力の強さや凄さを感じた年はなかったような気がします。
これから暫くは「過ごしやすい季節」が続きます。
その短い期間に植物を労わってあげたいと思っています。
皆さんも直にやってくる植替えシーズンの前に英気を養っておきましょうね。
~猛暑の中、本当にお疲れ様でした!~