ヒマワリ
 季節は移り変わって、急に春から初夏の気候になってしまいました。
 朝夕はまだ肌寒い日もありますが、日中は汗ばむ(汗だく?)陽気になりました。
 もう、植替えは終わりましたか? それともこれからでしょうか。
 
 今回は夏を代表する一年草「ヒマワリ」のお話をしましょう。
 ヒマワリ(学名:Helianthus annuus L. キク科 和名:向日葵 英名:Sunflower)は、キク科植物の中では最大草丈と花を持ち、品種改良もたいへん進んでいて、巨大輪の高性品種から中小輪の矮性品種まで多数あります。
 種実は食用や油をとるために、花は印象的な形をしているため花壇やコンテナに、また切花用としても広く栽培されています。
 高さ2mくらいまで生長し、真夏に大きな黄色い大きな花を咲かせます。
 この大きな花、実は小さな花が集まり一つの形を作っています。(頭状花序)キク科の特徴です。 外側の花びらは虫を引き付ける飾りで(舌状花)、内側の筒のようになっている花の部分(筒状花)には雄しべ・雌しべがあり種をつけます。

ヒマワリの花
ヒマワリの花
中央部分(小花が集まっている)
中央部分(小花が集まっている)
種をつける様子
種をつける様子
(植物図鑑より)
 和名の由来は、太陽の動きによって花が回るという事から「日まわり」「向日葵」と言われています。
 この動きは生長に伴うもので、実際に太陽と共に動くのは若い時だけ。  若いヒマワリは、茎の上部の葉は太陽に正対するように動き、朝は東を向き、夕方は西に向き、日没後まもなく起き上がり、夜明け頃再び東の方へ向きます。
 この運動はつぼみをつける頃まで続き、開花と同時に止まります。完全に開花した花は基本的に東を向いたまま、ほとんど動きません。
 ただし、これは茎頂に一つだけ花をつける品種に限り、また周囲に日光を遮るものが無い場合で、房咲き品種や周囲に日光を遮るものがある場合は必ずしも動くとは言えません。
 でも、「太陽の方向に向かって・・・」なんて、面白い植物ですね。

 種はみなさんも一度は見た事があるのでは・・・。ハムスターを飼っている方であれば餌として見る事もありますね。
 長い卵型で平たく、食用や観賞用は黒と白の縦じま模様があります。
 
 少しヒマワリの歴史にも触れてみましょう。
 ヒマワリの原産地は北アメリカ大陸西部であると言われています。
 学名の「Helianthus(ヘリアンサス)はギリシャ語の「helios(太陽)+anthos(花)」が語源とされていて「太陽の花」という意味があります。
 ギリシャ神話にも、太陽神ヘリオスに夢中になった娘が強い思いで見つめ続け、遂にはヒマワリの花になった、それゆえ、ヒマワリは太陽の方向を向くと言う逸話もあります。

 コロンブスのアメリカ発見後、中央アメリカからペルーにかけて分布していたようです。既に紀元前から「インディアンの食用」とされていたようですし、ペルーでは「ペルーの黄金の花」と呼ばれていたようです。
 その後、スペイン人が種を持帰り、マドリード植物園で栽培を開始したと言われています。マドリード植物園はダリアやコスモスを最初に栽培されたことでも有名です。
 その100年以上後に、フランス、ヨーロッパへ。16世紀にはイギリスに伝わり「太陽の花」(花の形が太陽を思わせる)と呼ばれたようです。
 太陽王ルイ14世は紋章のモチーフにし、オランダの画家ゴッホも13枚のヒマワリの絵を残しています。
  
 ゴッホの「ヒマワリ」
 印象的な花姿は人の心の中にインパクトを与えるのでしょうね。
 その後ロシアに伝わります。ロシアに到達して初めてヒマワリの種子は、日の目を浴びる事になるのです。
 ロシア正教会は*四旬節の40日間、復活節までの厳格な断食と食品制限による*「ものいみ」を行っていました。(現在でも行われている)
 19世紀の初期には全ての油脂食品が禁止されていたが、唯一ヒマワリは教会の法学者に知られていなかったため、ロシア人たちは法を犯すことなく食用可能なヒマワリ種子を常食としていたのです。
 19世紀の半ばには民衆にも普及し、ロシアは食用ヒマワリ生産の世界の先進国となったのです。
 *四旬節(シジュンセツ) ラテン語で「クアドラジェジマ」と言い本来「40」と言う意味を持っている。「40」という数字は旧約聖書の中で特別な準備期間として示されている数字。その伝統に従い、カトリック教会などの西方キリスト教において復活祭の46日前(日曜日を除いて40日と数える為46日前になる。)今年の復活祭は4月12日。
 それと、四旬節中に食事の制限を行う習慣には実践的な意味も含まれているらしい。古代秋の収穫物が冬を越し、春になる頃少なくなる事が多かったため、食事を質素にし、その時期を乗りきらなくてはならなかった、とも言われている。

 *ものいみ 祭事において神を迎えるため、一定期間飲食や行為を慎み、不浄をさけ、心身を清浄に保つ事。
 17世紀には中国を経由して日本にも入ってきています。
 日本に関しては、大きな記述は残っていません。ただ、日常に庭先に植え付け、種を採取しては炒って食べたりしながら楽しんでいたようです。
 その後は様々な食糧が出回り、「ヒマワリの種を食べる」という事は、なかなか行われなくなったようです。
 現在では種子をつけないヒマワリも登場しています。(花粉対策かな!?)

 余談ですが、OIL WORLD誌の統計によると、ヒマワリは大豆・ナタネ・綿実に次ぐ生産量を誇っています。
 ヒマワリの生産地域はロシア周辺のヨーロッパに偏り、ほぼ半分以上がヨーロッパ州に集中しています。
 近年では、ディーゼルエンジン用燃料(バイオディーゼル)としての利用研究も進んでいるようです。
 最近、スポーツニュースの記事にこんな事が書いてありました。
 「スプリングトレーニングの全体練習を終え、大きなバッグを肩に下げた福留選手が、グラウンドで何気なくヒマワリの種を"ぺっ"と吐き出し、クラブハウスへ・・・」日本では馴染みが薄いがヒマワリの種はベースボールの国では、ガムやスポーツドリンクと並んで必須アイテムであるようです。
 ヒマワリの種はカロリーが高く、ビタミンEやミネラルも豊富で、かつ糖分やコレステロールがないそうです。アスリートにとっては理想的な補助食品と言えるようです。ただし、メジャーリーガーにとっては別の意味もあるようです。
 一つは噛みタバコを頬張ってプレーする選手が多かったが、15年ほど前から健康面と子供への影響を考え使用が禁止になったと言う事と、もう一つは試合で退屈しない為になんとなく食べて(かんで)いる事らしい。
 メジャーリーガーはヒマワリの種を食べ、吐き出す姿も絵になる。ベースボールの一部なんですね。(笑)

 【ヒマワリの種まき】
 ヒマワリは発芽温度が高く(高温種)20℃以上にならないと発芽しません。 5月以降(これから季節)が適期となります。
 早まきの場合、発芽しない事もありますので要注意です。
 直接まく方法(露地まき)とポットにまく方法とあります。
出来れば、十分に日の当たる、水はけの良い場所を選びましょう。直接まく場合(花壇等も)は腐葉土などを土の中にすきこみます。
 ヒマワリの大きさ(大型種なのか中型種なのか小型種なのか)によって、種の間隔を決めます。
 発芽するまでは乾かさないようにします。その後は割りと乾燥に強いタイプなので、土の表面が乾いたらタップリと水を与えましょう。
 夏場、極端に乾燥状態になるのであれば、足元に敷き藁などをするのも効果的です。肥料は開花時期でも1ヶ月半から2ヶ月に1回程度、緩効性肥料を与えれば十分です。
 ポットまきの場合は本葉が5〜6枚のころ、まだ根がポットの中で回らないうちにコンテナや花壇に植えつけます。
 ヒマワリは移植を好まない植物なので、ポットから出す時は根を切らないよう丁寧に扱いましょう。
 その後の管理は直接まく方法と同じです。
 開花は7月中旬くらいから始ります。
 開花中はハダニがつきやすいので、時々「葉みず」をかけてあげましょう。やりすぎ禁物です。晴天の日を選んで、さーっとかけましょう。
(※初期のハダニ駆除には、葉みずをかけることが有効です。酷い場合は薬剤散布になります)
 背の高くなる大型種タイプは、途中で倒れたり、折れたりする事があります。
必ず、丈夫な支柱で支えてあげてください。

 今年は久しぶりにヒマワリの種をまいてみようと思い、4月に園芸店を回り「食用のヒマワリ」を探しましたが残念ながら見当たりませんでした。
 大型種の「ロシアンヒマワリ」を購入しました。
 袋を眺めながら、少し古い映画の話を思い出しました。
 1970年頃に放映された「ひまわり」です。
当時のポスター
 当時のポスターです。
(残念ながら私はビデオでしか見てないのですが・・・)
 最後のシーンで列車の窓から一面の「ヒマワリ畑」、
時代背景から「悲しい」ストーリーの中でのヒマワリではありますが、
その景色は圧巻です。



 ヒマワリの存在感はその季節だけのものです。
 真夏に元気に咲くヒマワリは、私たちにも「元気」を与えてくれそうですね。

御園 和穂

(09/05/01掲載)

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