サルビア・セージ
 梅雨入りの季節ですね。
 あちらこちらでアジサイが咲き始め、これから暑い日が続きます。そろそろ本格的に夏の準備に取り掛からないと!

 今回はサルビアをご紹介しましょう。
 夏から晩秋までの花壇を彩る代表的な花の一つです。 これから「花壇やコンテナに何か?」という時の花として如何でしょうか。

 「サルビア」と言えば・・・皆さんが思い描くのは「真っ赤なサルビア」でしょうか。(植物図鑑より)
サルビア・スプレンデンスサルビア・スプレンデンス
(Salvia splendens)シソ科の一年草です。
和名はヒゴロモソウ(緋衣草)、英名はスカーレット・セージ(テキサス・セージ)と呼ばれています。
 サルビア属はおよそ900以上の種から成っていて、普通サルビアと言えば、この種類を指します。
 原産地はブラジルで、日本へは明治20年以降には入って来たようです。
 原産地では多年草ですが、日本の場合は春播きの一年草として取り扱いをしています。

 突然ですが問題です。
「サルビアの花はなぜ赤い」のでしょう。
 以前に園芸雑誌を読んでいたら、こんな質問がありました。
 色素の関係で赤いのでは?と思っていた私。答えは・・・。
 ・・・南北アメリカ大陸には花と契約?した鳥がいるそうです。それは飛ぶ宝石と呼ばれる鳥で「ハチドリ」です。
 この鳥は飛び回って蜜を吸い、花は花粉を運んでもらいます。
 鳥は赤い色に敏感なのだそうです。一方ハチなどの虫の大半は視細胞の違いから赤い色が見えないそうです。赤い色は鳥だけを呼ぶサインなのだそうです。
 「私はここよ、蜜をあげるから花粉を運んでね」ハチドリを誘って花粉を運んでもらう為。だからサルビアは赤い花なのだそうです・・・・
 花は横向きで細長く、その奥に蜜があります。普通のハチでは蜜の所まで口ばしが届かないのだそうです。
 また、花が横向きなのはもう一つ理由があるようです。雨が入らないようになっているそうですよ。
 ハチドリは長い口ばしを持ち、サルビアの花の形にピッタリなのでしょう。
 残念ながら日本にはハチドリはいませんが、たまに飛んでくるハチが花粉を運んでくれているようです。
 植物の構造には驚くばかりです。

 日本では花を楽しむものを「サルビア」と呼び、ハーブなどに利用されるものを「セージ」と呼んでいるようですが、どちらも同じ仲間で海外ではどちらも「セージ」と呼んでいます。

 難しい事はさておき、少し分類してみましょう。


・ 花と葉の香りを楽しめるサルビア類
 チェリーセージ
サルビア・ミクロフィラ ホットリップサルビア・ミクロフィラ(チェリーセージ)
 夏から晩秋まで開花し、高さは1.2m程度。
花数も多く、少し花も大きいので花壇向きのサルビアです。葉に触れると爽やかな香りが楽しめます。常緑宿根草です。
 耐寒性・耐暑性にも強く花後切戻すと再度開花します。

←こちらは"ホットリップ"
花数も多く、少し花も大きいので花壇向きのサルビアです。葉に触れると爽やかな香りが楽しめます。


サルビア・コクシネアサルビア・コクシネア(コッキネア)
 夏から晩秋まで開花し、高さは50cm程度。
花に香りは少ないですが、葉は爽やかな香りがします。日本では一年草扱いです。
 切戻しをすると、脇から次々と開花してきます。
 ピンク・赤・白と花色も豊富です。花は小花で優しい雰囲気です。大振りの花と合わせると良いですね。


・ 葉の香りを楽しむサルビア類
サルビア・オフィシナリス(コモンセージ)
 葉は刺激のある強い香りがします。苦手な方は・・・。
 開花は5月〜7月くらい。高さ30cm〜60cm程度です。背が高くなると折れやすいので支柱を忘れないでください。
 花を楽しむ場合は夏の開花時は切らないほうが良いですね。常緑宿根草。冬場は株元から切ります。高温多湿には弱い方です。
 その他の仲間として、ゴールデンセージ、パープルセージ、レッドセージ等があります。
 葉は肉や魚の臭み消しや香り付、また乾燥させてハーブティーとして飲用します。豚肉との相性がよく、セージ → ソーセージの語源ともされています。


・ 花を楽しむサルビア類
サルビア・スプレンデンスサルビア・スプレンデンス
 もちろん、サルビアの代表選手ですね。
 春から晩秋まで開花し、高さ30cm程度です。
春蒔き一年草。開花後、切戻して再度開花させます。8月のお盆過ぎくらいに全体の半分くらいまで切戻し、肥料を与えておくと9月の下旬以降から再度開花します。
 背も押さえられ、姿も良くなり、秋口気温が下がってくると花色もグッと良くなってきますよ。

サルビア・ファリナセア(ブルーサルビア)サルビア・ファリナセア(ブルーサルビア)
 こちらも、よく見かけるサルビアの代表です。
 春から晩秋まで開花し、高さ30cm程度です。
春蒔き一年草。開花後、切戻して再度開花させます。切戻しをこまめに行う方が倒れにくく、がっちりと育ちます。
 私の場合は苦手なサルビアで、秋まで上手に育てられません。
 うどん粉病などが発生することもあります。
 基本的に消毒はせずに、すかしたり風通しをよくするように心掛けるのですが・・・真夏の暑さが少し苦手のようです。
 可哀想ですが、晩秋まで花壇に入れたい場合は9月に植替えをしています。

サルビア・インディゴスパイア(ラベンダーセージ)サルビア・インディゴスパイア(ラベンダーセージ)
 初夏から晩秋まで開花し、丈夫で開花時期が長いサルビアです。
高さは1.2m程度です。耐寒性・耐暑性も強いです。
常緑宿根草。
 ラベンダーの花によく似ているので、ラベンダーの代わりに使用することもお薦めです。
 但し、背が伸びやすいので、こまめな切戻しをお忘れなく。冬場は根元で切ります。
 その後の新芽を育て開花させます。霜が降りて気になる場合はマルチングをすると効果的です。夏場のブルーは涼しげな演出効果も大きいようです。

サルビア・レウカンサ(メキシカンブッシュセージ・アメジストセージ)サルビア・レウカンサ(メキシカンブッシュセージ・アメジストセージ)
 開花は9月からです。耐寒性(地域によっては弱い)・耐暑性も強いです。常緑宿根草。
市販で販売されているものは開花株で売られていると思います。
 花穂が長く伸び、やわらかいベルベットのような花を付けます。
 花色も紫やピンクに白が入ったもの等があります。
 花は9月頃から咲くので、他のサルビア類に比べると葉の時期が長いですが、「待つ楽しみ」も植物を育てる過程の一つでしょう。
 冬に入る前に株元から切戻します。寒い場所ならマルチングをしておくと良いですね。


・ 野山で見ることが出来るサルビア
サルビア・グラブセンス“マキノ”(アキギリ)サルビア・グラブセンス“マキノ”(アキギリ)
 日本原産のサルビア類です。
 実は私は見たことがありません。日本では中部から近畿地方の山野に自生しているそうです。
 秋に桐のような花を付ける事からアキギリの名が付いたようです。他にはキバナアキギリ、黄色い花を付けるものもあるようです。 明るい半日陰を好むようですね。高さは50cm程度で多年草。


サルビア・ジャポニカ(アキノタムラソウ)サルビア・ジャポニカ(アキノタムラソウ)
 こちらも日本原産のサルビア類の一つです。
 本州から九州の林道沿いなどに自生しているそうです。見たことがあるような・・・意識をして見ないと覚えていないのが残念です。
 開花は6月頃から11月くらいで、高さ1m程度までになるそうです。
 野山を散策するときには、是非、探してみたいですね。

 数種のサルビアを紹介しました。花壇やコンテナ向きの草花から多年草・宿根草、ハーブ類として取り扱うサルビア(セージ類)。
 ほんの一部のご紹介でした。(写真は植物図鑑より)

 サルビア類は短日植物です。品種によって異なりますが、日長が長くても開花するが、短日の方がより開花しやすかったり、日長の長さによってハッキリ開花する、しないが分かれていたりします。
 早生種や晩生種によっても異なるようですが・・・・・
 さてさて、難しい事を言っても中々理解はし難いものです。まずは気に入ったサルビアを植えてみて、自然と開花する時期に楽しむのが一番かも知れません。
 一年草のサルビア類はカラーリーフや他の草花との相性が抜群です。花壇でもコンテナでも使い道は沢山あります。
 葉の香りを楽しめるサルビア類は花壇の通路の側で、あえて体に触れそうな場所が良いかもしれません。手で触って香りを楽しんでもらえます。
 花を楽しむ宿根草の大型タイプのサルビア類は、花壇等の後ろ手で存在感を出してあげれば最高ですね。
 もちろん、全て最初は小さいポット物で購入、もしくは挿し木等で生育します。まずはコンテナで楽しみ、次の年から花壇や路地などに植替えをすると2度楽しめます。
 宿根草類は毎年、株も大きくなってきますので時期を見て株分けをしましょう。(出来ない場合は植付の際、適度な間隔を取ってください)
 花壇のバリエーションが増える事間違いなしです。但し、宿根草類はその都度手入れをする事で姿形が美しくなります。
少し手間が掛かるかもしれませんが。
 今年はサルビア類を使って、長く楽しめる花壇を作ってみたいと思っています。もちろん、他の草花も組合せて。
 これから挿し木をするにも良い時期になります。増やしながら秋花壇の作成に着手です。その姿をご紹介する事が出来れば・・・・。

 最後に、冒頭で登場しましたサルビア・スプレンデンス。花を取って茎の方を口ですってみたことはありませんか?
 子供の頃試してみた事があるかもしれませんね。チュっとすうと甘い蜜が出てきます。懐かしい味がしますよ。一度お試しあれ。


御園 和穂

(09/06/01掲載)

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