どんぐり
 今年も残すところあと2ヵ月。
 夏から頑張った花たちも次の季節への準備で大忙しです。
 今回は「花」ではありませんが「実」について少しお話してみましょう。

 3年程前からスタッフの一員として小学生と「どんぐり拾い」をしています。
 子供たちと一緒にどんぐりを拾い、どんぐりで工作を。最後は植付をして苗を育てています。
 その後、響灘の埋め立て地に植付けをしています。

 「どんぐり」ってご存知ですか?
 もちろん名前が「どんぐりの木?」ではありません。
名前の由来は・・・漢字で書くと『団栗』と書きます。「団」の字には丸いと言う意味があり、丸い栗で「団栗」と言う説。
 もう一つは韓国語に丸いものを意味する言葉で「ドングル・イ」というものがあり、そこから「どんぐり」になったとの説。
 定かではないようですが。
 どんぐりって見たことはあるけどよく知らない事が沢山あります。
 まずは、どんぐりは日本に約20種類以上あります。
落葉広葉樹だとコナラ、ミズナラ、クヌギ、カシワ、アベマキ・・・。
常緑広葉樹だとツブラジイ、マテバシイ、スダジイ、ウバメガシ・・・。
これらの実を総称して「どんぐり」と呼んでいます。
 内部の種子の大部分を占める子葉はデンプン質に富み、人間を含む動物の食料になっています。
 また、古典的な玩具の材料としても使われてきました。
 繁殖に関しては、実としてのどんぐりはその形や落ち方から重力散布とみなされてきていましたが、動物の餌としての重要性が高く、彼らが大きな役割を果たしているとされています。
 どんぐりを秋から冬にかけて重要な食料としている動物の中にネズミ類、リス類、カケス類などがいます。
 実を採っては林の中に少量ずつ分散して埋め、大半が越冬時の食料となりますが春までに一部が残り、これらが親植物から離れた場所で発芽し新しい植物となります。
 また、どんぐりは乾燥に弱く、単純に落ちただけでは発芽能力を失ってしまい事が多いようです。
 動物の埋蔵貯蔵はどんぐりの発芽において大きな役割を果たしているようです。

 身近に見る事の出来るどんぐりを挙げてみましょう。
 北九州でよく見かけるのは「マテバシイ」です。
 ブナ科マテバシイ属、学名:Pasania edulis 雌雄同株の常緑広葉樹です。
公園や街路樹、一般家庭でも植えられていますね。
葉は互生し厚く光沢のあるものです。防火樹としても植えられることもあります。
 春に花を咲かせ、その翌年の秋に堅果(どんぐり)を付けます。

どんぐりの赤ちゃん
1 どんぐりの赤ちゃん
 1 どんぐりの赤ちゃんです。
昨年花を付けた後、冬を越し少しずつ大きくなってきた実です。
6月くらいの状態です。帽子がうろこのような鎧に覆われています。
直径5mm程度でしょうか?
どんぐりの花
2 どんぐりの花
 2 同じ頃「花」を咲かせます。
上向きに花を付ける特徴があります。
これは虫が花粉を付けやすくしているとか。
花の匂いは「少し青臭い感じ、独特なにおい」です。
 受粉が完了後、花は落ちてしまいます。
来年に向かって実の準備に入るわけです。
 私たちの周りのマテバシイは定期的に剪定をされるので花や実を付ける姿は見る事が無いかもしれませんが、今年実を付けていたらそれは昨年の受粉と言う事です。
 3・4 どんぐりの赤ちゃんが3ヶ月くらいたつと帽子もはっきりして実も確認出来るようになります。その後は実をぐんと伸ばします。

3ヶ月後
3 3ヶ月後
さらに実が大きく育って…
4 さらに実が大きく育って…
マテバシイの実
5 マテバシイの実
 5 今年の10月末に採取したものです。
茶色が濃くなり、帽子が着いているものもありました。
 長さ3cm前後でかなり大きい実です。
 ちなみにマテバシイの実は食べられます。普通どんぐりには渋み(タンニンやサポニン)があり、一般に人間がそのまま食用にするのは適しませんが、渋抜きせず炒ってそのまま食べられます。
 次に紹介するのは、クヌギです。
 ブナ科コナラ属、学名:Quercus acutissima  雌雄同株の落葉広葉樹です。
 最近は見る事が少なくなったかもしれないが、公園や少し山手に行くと見る事ができます。
 虫の集まる木としてもよく知られています。
 幹の一部から樹液を染み出させ、カブトムシやクワガタ等の甲虫類やチョウ等の昆虫が集まってきます。
 また、成長が早く植林から10年程度で材木として利用出来るようになり、伐採後の成長も著しく持続的な里山の樹木の一つであるが、近年は放置される事が多くなったようです。材質は硬く、建築材や薪は椎茸栽培の原木として使用されています。
 特徴のある実です。

クヌギの実
6 クヌギの実
クヌギの実の赤ちゃん
7 クヌギの実の赤ちゃん
アベマキの実の赤ちゃん
8 アベマキの実の赤ちゃん
アベマキの実
9 アベマキの実
アベマキの葉とクヌギの葉
10 アベマキの葉とクヌギの葉
6モシャモシャの帽子が目印です。
 実も大きく、爪楊枝などを刺して玩具として利用されています。
 7 こちらはどんぐりの赤ちゃん。
 来年になるとモシャモシャな帽子を付けて見る事ができます。
 実の大きさは直径2〜3cm。
 食用にするには渋みが強く、灰汁を抜かないと食べられません。ちなみに縄文時代の遺跡から土器と合わせてクヌギの実も発掘されたそうです。
灰汁抜きをして食べていたのでしょうね。
 樹皮や殻は「つるばみ染め」という染料になります。鉄を触媒剤として加えるそうです。染め上がりは黒から紺色になるそうです。

 もう一つ、同じような(ほぼ見分けがつかない)実があります。
 8 どんぐりの赤ちゃんです。
 見た目はほとんど「クヌギ」ですが、実はアベマキと言います。
山地に生える雌雄同株の落葉広葉樹です。
ブナ科コナラ属、学名:Quercus variabilis
別名コルククヌギと呼ばれていて、幹は弾力があり、明治時代には幹をコルクとして使用していたそうです。
また、薪炭材としても使用されていました。
現在ではクヌギ同様椎茸栽培にされています。
 9 実はクヌギと見間違う程です。
 見分け方は、葉の裏に毛が密生していて灰褐色。分かりにくいかもしれませんね。
 10 右側がクヌギ、左側がアベマキです。
 いくつかの種類を挙げてみました。
 まだまだ、沢山のどんぐりがあります。

コナラの実
11 コナラの実
スダジイの実
12 スダジイの実
ツブラジイの実
13 ツブラジイの実
11 コナラ(灰汁が強いです)、12 スダジイ、13 ツブラジイ。(写真は図鑑より参照)

 マテバシイは炒って食べてみました。
 甘みはほんのり、栗のような食感で美味しかったです。フライパンで転がしながら少し焦げ目がつき、殻が軽く割れればOK。
 熊本ではイチイガシの実から採取したデンプンで、イチゴンニャク(蒟蒻)やカシノキドーフ(豆腐)があるそうです。お隣の韓国ではどんぐりから採取したデンプンをムクと言う「外郎のような食べ物」にしたりしているようです。
 一般的な灰汁抜きは重曹を入れたタップリの水で煮て、煮汁が茶色から透明になるまで何回も繰り返すようです。水が透明になったら一晩水につけてさらすそうです。
 手間暇がかかりそうですね。
 手っ取り早く食べてみたい方は、マテバシイやスダジイ、ツブラジイ、イチイガシなどをお薦めします。

 これからの季節、紅葉も美しくなってきます。
 散策がてら上ばかりではなく足元も気をつけて見てください。
「どんぐり」が転がっているかもしれません。
図鑑を片手に、どのどんぐりか調べてみるのも楽しい一時かもしれませんね。
また、自然食ですので是非一度は食べてみてください。


御園 和穂

(09/11/01掲載)

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