新春・松竹梅
 新年明けましておめでとうございます。
 今年も宜しくお願いいたします。
 昨年は東北の震災、原発の問題等心が痛む事が多くありました。
 今年は大きな災害もなく、穏やかに過ごせる一年である事を願っています。
 新しく始まる年の初めに、様々な願いをこめて飾られている花や木は、古い時代からの古事に由来し、現在に伝えられてきたものです。
 門松は以前にもご紹介しましたが、今回は門松の中に使用される松や竹、また周囲を飾る縁起の良いとされる植物をご紹介します。
「松竹梅」の言葉が生まれるまで。
 松(マツ) 学名:Pinus L. 和名:まつ
 常緑針葉樹の高木で、針葉樹の仲間ではもっとも種類が多く、分布は亜熱帯のリュウキュウマツから高山帯のハイマツまで、ありとあらゆる気候に対応したマツがあります。東西にはユーラシア大陸から北米までの北半球で、北は北極圏から南はベトナム・コスタリカまで分布しています。

クロマツ全景




冬の準備(コモ巻き)
 日本で「マツ」というと、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツ等を指します。
 名前の由来は、神が降りてくるのを「待つ」という事から「マツ」、だとか葉が二股に分かれていて「股」が変化して「マツ」、祭木(マツリギ)が転じて「マツ」、になったとも言われています。
 最初の由来が有力で、豊饒・平安をもたらす神霊が、マツを伝って地上に降り立つと信じられており、昔話や伝説でも多く語られています。
 門松はその影響を大きく受けています。
 また、マツは「百木の長」とも言われ、幹姿、根の張り(かなり深根です)、亀の子のような形の幹肌も気品を感じる樹木です。
 日本では山々や海辺、または庭園や公園などで趣きのある姿を見せてくれます。
 アカマツ、クロマツの巨樹は名木として全国に点在し、日本的な雰囲気を出してくれる樹木と言えるでしょう。
 マツは千年の霜雪に耐え、緑の枝姿は、万葉集の中でも長寿や高潔の象徴、吉祥木として親しまれています。
 庭園の中では主木となり、日本庭園の基本の蓬莱島(ホウライジマ)は、仙人が住む不老不死の場所を形づくり、マツを配置することとされてきました。
 森羅万象を表現する盆栽でも、マツは一番の植物として好まれています。
 材木としても梁や桁などに利用されていますが、近年マツクイムシの影響もあり入手困難な状況でもあるようです。
 マツは他の材木と比べると、可燃性の樹脂を多く含み、マッチ1本でも着火できるため、焚き木として用いられたり、第二次世界大戦中の日本では、マツの根を掘り出し、根から「松根油」を採取し、航空機の燃料に使おうとしていた事もあったようです。(使用したかどうかは不明ですが・・・)
 食用として皆さんもよくご存知の「マツの実」。
60%を越える脂質と独特の香りで健康食品や料理、お菓子などで使用されることはよく知られています。
 松脂(マツヤニ)は、枝や幹を傷つけたりした際にでる樹脂のことで、主に昆虫の幼虫の寄生を妨げるために出します。
最初は透明で揮発成分が減少してくると黄色っぽくなり、粘り気が増し固化します。水には溶けないので、地面に落ちた後、酸化固化を繰返し琥珀が出来上がります。
 また独特の香りがあり、海外では「マツの香り飴」や「マツの香りのワイン」などもあるそうです。
 近年マツは少なくなってきている様に思われます。管理にも手間がかかることから伐採されたり、植生の遷移(センイ)からみれば、マツは砂地や岩場などの荒地を好みますが、広葉樹などの落ち葉などが堆積して腐葉土が溜まる場所ではマツそのものが衰弱してしまいます。
 いつも掃き掃除をして株元をスッキリさせておかないといけないですね。
 平安時代から門松を初め、様々な使われ方をしているマツ。
 縁起の良い樹木ですが、その中でも特別な樹木なのかもしれませんね。
 その後、室町時代に入るとともに、マツと合わせてタケが加わってくるようになります。

 竹(タケ) 学名:Bambuseae Kunth ex Dumort 和名:タケ
 イネ科の植物です。
 タケは温暖な湿潤な地域に生育し、アジアの温帯・熱帯地域に分布しています。北は樺太から南はオーストラリアの北部、西はインド亜大陸からヒマラヤ地域までで、北アフリカ、ヨーロッパなどでは確認されてないようです。

モウソウタケ


節の様子


タケの花 (図鑑参照) 

  春は筍の旬の味を楽しみ、籠であったり、竹細工、丈夫でよくしなる事から釣竿や棒高跳びの竿など特殊な物、パイプや器としても様々な加工ができます。
 伐採の時期により耐久性は異なるようですが、成長期に伐採されたタケは耐久性が短く、晩秋から冬の時期であれば耐久性が長いとされています。
 タケは地下茎を広げ、生育場所を広げていきます。タケは「60年に1回開花し一斉に枯れる」など耳にした事があるのではないでしょうか。実際には開花の周期はかなり長いようで、マダケなどで120年周期ともいわれています。
 タケは生長が早く、ピークの時は1日に1m以上も伸びる事があるそうです。
住宅の近くにあったタケが住宅の床を突き破る事も珍しい事ではないようです。
 地下茎が地面を這う事から、地震の時はタケ藪へ逃げろ、と教わった記憶もあります。しかしながら、強風や地すべりには弱いと報告もされています。
 最近は放置竹林によって周囲が覆われてしまい、元々の植生の広葉樹や針葉樹が必要とする光を遮り、結果森林が減少しているという問題も起こっているようです。
 悪者のようになってしまいましたが、タケは神の依代(ヨリシロ:神などが宿る)として邪気を払うと考えられてきたようです。
 タケは幹にあたる部分が空洞で、「竹取物語」などのようにタケの中に宿った神が姿を変えて降臨すると思われていたようです。
 また、芸術家を魅了し、タケを題材にした作品も多く残されています。
 サワサワっと風になびく、何とも言えない清清しい姿や葉のすれる音。
 私は、一瞬にして現実離れした空間を作ってくれる植物だと感じています。

 門松は平安時代に考案されたものですが、マツから始まり、タケが入り、江戸時代に入ると、一番極寒の時期に花を咲かせる花木としてウメが添えられ「松竹梅」が完成したといわれています。

ウメの蕾
 まだまだ蕾は固く、花が咲くまでは時間がかかりそうです。
 その他、縁起のよい植物としてセンリョウやマンリョウ、ナンテン、ユズリハ等以前にご紹介した植物が挙げられます。
 花であれば、ウメはもちろんの事、フクジュソウや鏡餅の上にのせるダイダイ。代々実を付けることから、子孫繁栄の意味で縁起物として飾られます。
 ツクバネ(秋に果実が出来るがその姿が羽根付きの衝羽根(ツキバネ)に似ている)、ウラジロは花ではありませんが、葉の表面は緑で裏が白っぽい、葉がしだれる姿を「齢垂る」(シダル)にかけて長寿を表すめでたい植物なので仲間に入れてみました。そして紅白のハボタンなどが縁起のよい植物として親しまれています。
 門松をはじめとして正月を華やかに演出してくれる植物達です。

 この写真は陸前高田の「希望のマツ」です。(高田市のHPより) 震災で津波に合い、周囲のマツは壊滅状態となってしまいました。
 様々な方が集まり、保存へ向けての取り組みを行いましたが、残念ながら昨年の暮れに枯れてしまったとの報道を目にしました。
 私たちの仲間も、成育を助けるべく、また種の保存のため、挿し木や残った松ぼっくりの中から種の採取をし、それらは現在も順調に生育していると聞いています。
 いつの日か、以前のような美しい松原が見る事ができるよう願っています。

御園 和穂  

(12/01/01掲載)  

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