白い花木・白い草花
 年が明けて、今年はいつまでも寒い日が続きましたね。寒の戻りや日照不足で植物の生育にも大きく影響がでました。
 やっと暦通りに3月末からは桜も咲き始め、暖かい春の到来です。  昨年の初冬から咲き続けてきたパンジー、ビオラ類も急に株が太りだし花も沢山つけ始めました。花柄を小まめに摘んで肥料を与え、これからの最盛期に見事な花を咲かせましょう。
 4月に入ると急に気温も上がり、春から初夏へと移り変わりの季節でもあり、植替えの時期が間もなくやってきます。

 今回は3月の末から4月、5月頃に咲く白い花木、草花を紹介します。
「白」を選んだ理由は「スタート」の月でもあるので、無垢で新しい気持ちで草花と向き会いたいという所から選びました。

 まずは、ユキヤナギです。
ユキヤナギ  学名;Spiraea thunbergii  バラ科の落葉低木。
和名;ユキヤナギ(雪柳) 別名;コゴメバナ、庭柳、岩柳など
 春3月〜4月にかけて小さな白い花を咲かせます。原産地は中国原産という説もあるのですが、日本原産説が強いようです。
 名前の由来は白い小花が鈴なりにつき、「雪が積もったような姿」に見え、花後に出る葉が「柳の葉」に似ていることから「雪柳(ユキヤナギ)」とつきました。
 大きさは1.5m〜2.0m程度で地際から伸びた枝は弓のようにしなり、花はその枝に小花をいっぱいつけます。
 ユキヤナギが満開になると、春本番という雰囲気になりませんか?
 日本で見る花木の中でも特別美しい姿なのですが、観賞用として普及し始めたのは、江戸時代以降との記録が残っています。
 それ以前は野山へユキヤナギを鑑賞しに行っていたようです。
 自然の中の野趣こそが、本来の美しい姿なのですから!

ユキヤナギの新葉

ユキヤナギの紅葉(植物図鑑参照)
 花が散り始めると足元は雪が積もったような感じになり、その後しなる枝につく緑の葉はさわやかな雰囲気を出します。
 秋には紅葉を楽しみ、冬は枝の鑑賞。一年を通して情緒のある花木と言えるのではないでしょうか。
 育て方は至って簡単で、日当たりの良い、風通しの良い場所であればどんな環境でも育てやすい花木です。
 病害虫もほとんど付きません。
 株を太らせながら大きくなる株物で、古い枝は地際から切り、新しい枝を育てます。(風通しもよくなりますよ!)
 若木は枝に細かい産毛のようなものがあり、いずれ大きくなるにつれ無くなってしまいます。
 最近は公園や公共の場でよく見かけますが、庭木として好まれていないのでしょうか?

 ユキヤナギといえば次はコデマリでしょうか。
コデマリ 学名;Spiraea cantoniensis バラ科のシモツケ属 落葉低木。 和名;スズカケ 原産地;中国 日本では帰化植物です。
 高さ1.5m程度の花木で、枝が細く垂れ下がります。
 4月、中・下旬から開花し、白い小花を集団で咲かせます。その集団が手毬のように見えることから「小手毬(コデマリ)」と呼ばれたのが名前の由来です。
 中国原産のコデマリが日本へやって来たのは江戸時代の始め頃で、当時の園芸書では「鈴掛(スズカケ)」と呼ばれていたようです。
 また切花や茶花としても好まれ、現在でも茶花として使用されています。
 コデマリは、遠めから見るとユキヤナギとよく似ています。ユキヤナギほど枝が細くなく、しならないのですが、何とも言えない愛らしさのある花木です。
 育て方は割りと簡単で、日当たり、風通しのよい場所を好みますが、土壌は特別選ばす、どんな場所でも生育します。病害虫も少ないです。
 通常の剪定は花が終わった後に行い、出来るならば細い枝を沢山出したいので、古い枝は地際から切ってしまいます。
 株そのものが大きくなってくると、花つきが悪くなり、枝が枯れこんできてしまうので、その場合は落葉したあと、姿形が見えてきた段階で古く太い枝は切ってしまいましょう。

←コデマリの蕾(植物図鑑参照)

 ちなみによく似た名前で、オオデマリと言う花木がありますが、コデマリとは異なりスイカズラ科の植物になります。
 開花はコデマリの後、5月から6月で、花はアジサイと同じ装飾花で種はつけません。
 密集した花は大きな手毬のようで、その名に相応しい花を咲かせます。
 育てやすく、一般的には日当たりよい場所を好みますが、半日陰でも育ちます。
 広い場所があれば、剪定をせず放任しておくと、大きく素晴らしい花をつけます。
 庭植えや鉢植えに適していますが切花は水上げが悪いので適さないようです。

 次はトキワマンサクです。
トキワマンサク 学名;Loropetalum chinense マンサク科トキワマンサク属。
常緑低木。原産地;日本(極めて限定的)、台湾、中国南部、インド。

 樹高3.0m〜4.0m程度で4月〜5月に緑色を帯びたクリーム色の紐を束ねたような花を咲かせます。
 今から100年くらい前に中国から入ってきたランの鉢に何か分からない苗が一つ付いていたそうです。その苗はやがて芽を吹き、誰も見たことのない新種の花を咲かせたそうです。
 1905年に牧野富太郎先生によって「トキワマンサク」と命名され、中国の一部に生息する珍種として考えられていたようです。


←トキワマンサク花(植物図鑑参照)
 その後、伊勢神宮周辺で自生木が発見され、現在は静岡県湖西市、伊勢神宮、熊本県荒尾市のみ自生木が育っています。
 勢いのある常緑樹で花もつける事から親しまれている樹木の一つです。

ベニバナトキワマンサク
 現在では花の色が赤いベニバナトキワマンサクが中国から輸入されています。
 単木でも美しく、生垣やスタンダード仕立てなどでも人気を集めています。
 名前の由来はマンサクの花に似ていて、常緑樹なので「常盤万作(トキワマンサク)」と名づけられたようです。
 育て方は、日当たりのよい暖地を好みます。北九州辺りではそのまま越冬しますが、少し冷え込むと葉を落としてしまいす。
 葉が無くなっても春先から新芽を吹きますのでご心配なく!
 鉢植えや盆栽も素敵です。


白い草花は沢山あります。春の代表選手と言えば・・・なんだろう?
アリッサム 学名;Lobularia maritima アブラナ科の秋蒔き一年草。
 冬の間は少し花が少なくなりますが、早春から盛り上がるように花を咲かせます。花を房状に次から次へと咲かせ、茎が伸びてきたら切り戻して次の茎が伸びるまで待ちます。その後再び花を咲かせます。
 本来は一年中花を咲かせる多年草の仲間なのですが、日本の高温多湿がとても苦手。扱いは一年草です。気温が上がってきたら花が咲きにくくなります。夏越しをするなら掘り取りして涼しい場所へ移動させ育てましょう。
 花色は白、ピンクなどがあります。
 花壇で使う場合は縁取りや球根類の間等で使用すると可愛らしく仕上がります。こんもりするタイプなので、コンテナの場合でも縁に使い、花色と合わせましょう。ハンギングバスケットの場合は下の方でも構いませんが、全体の半分から上で使用するとやさしい感じに仕上がります。

ノースポール 学名;Leucanthemnm paludosum Syn.キク科の秋蒔き一年草。
旧学名はChrysamthemum paludosum
 北アフリカ原産で1970年代に日本へ入ってきました。花一面の姿が北極の雪と氷の世界のように真っ白になることから「ノースポール」と呼ばれるようになったそうです。(ノースポールは種苗会社がつけた名前、今は一般名になっている)

 秋に種を蒔いて晩秋から冬、早春、6月くらいまでの間咲き続けます。
 草丈は30cm以上に大きくなり、マーガレットに似た小花を最盛期には株一面に咲かせます。大きくなりすぎたら、全体を刈り込むと再び開花します。
 一年草なので気温が上がってくると終わりになります。
 秋に再び種を蒔くのですが、こぼれ種でも発芽してきます。
 花壇で使用する場合は、大きくなるので通常より植え付け間隔を広めに取りましょう。ビオラやキンギョソウ等と合わせても綺麗です。
 コンテナの場合は後手や中央やや後方で使用すると最盛期でも見栄えがよいです。


マーガレット 学名;Argyranthemum frutescens キク科半耐寒性多年草。
和名;モクシュウギク(あまり使われてない)

 カナリア諸島原産、17世紀に欧州に渡り、日本へは明治時代末期に伝わったとされています。
 白の一重咲きが通常のタイプですが、黄色、ピンク、赤等の一重、八重と品種が多くあります。
 北九州は暖地なので十分に冬を越すことが出来、3月〜7月くらいまで開花します。花後全体を刈り込むと再度花を咲かせます。
 増やし方は挿し芽で簡単に増やせます。
 鉢やコンテナの場合は、ある程度大きくなったら植替えをしましょう。
多年草なので、周年花を咲かせ大株に生長します。
 花壇の場合、初めは手前に植付けても、次の年は後ろ手へ動かしてあげましょう。
 大株になってくると自然に半円形の形にはなるのですが、茎が木質化し折れやすくなるので目立たないように支柱や支えなどを使われると良いでしょう。

キンギョソウ 学名;Antirrhinum majus  ゴマノハグサ科キンギョウソウ属
地中海、ヨーロッパ原産。
 秋蒔きの一年草として扱うのが一般的ですが、上手に夏越しが出来れば、本来が多年草なので周年楽しむ事ができます。名前の由来は花の形が金魚が泳いでいる姿に見えるところからきているそうです。
 育て方は割と楽な方で、種を蒔く場合は種の上に土は被せないで発芽させます。(光を好むタイプです)
 花柄は小まめに取り除き、切戻しを行う事で脇芽から枝が伸び沢山花をつけます。
 多湿を嫌うので、水やりには注意が必要ですが、いったん水を切らすとすぐに枯れてしまうので要注意です。
 種類は多く、切花用の背の高いタイプからわい性の背の低いものまで様々です。色は白、黄色、ピンク、赤、オレンジ等多彩です。
 鉢やコンテナではわい性タイプで楽しみます。花壇などの場合は高性タイプを後手にカラフルな色使いをすると豪華な雰囲気になりそうですね。
 用途に合わせて選んでください。

 白い花木、白い草花と、ポピュラーな所での植物を挙げてみました。
まだまだ沢山あるのですが、今回はこの辺で。

 いつも目にしている植物なのですが、よく観察をしていると意外に知らなかった事や、へぇ〜と思う事が沢山あります。
 随分と長い事、植物と向かい合ってきたつもりなのですが・・・
 今回のように、今最盛期で咲いている植物も植え方一つで表情が変わるのでとても参考になります。(今年の秋まで覚えていたらよいのですが・・・)
 4月。さらに新しい気持ちで取り組んで行きたいと思います。

御園 和穂  

(12/04/01掲載)  

前回へ バックナンバー 次回へ