真夏の青空に似合う植物
 七月は、梅雨末期の豪雨で思いもよらない大きな災害が起きてしまいました。
 心よりお見舞い申し上げます。
 八月は、旧暦だと「秋」ですが、実際はこれからが本格的な残暑厳しい時期になります。
 旧暦八月は「葉月(ハツキ)」と呼ばれますが、新暦の場合は八月ではなく、九月上旬から十月上旬を秋としているので、「葉が落ち始める月」が転じて葉月になったと言われていますが、現代では「葉が茂っている月」で葉月がピッタリかもしれません。
 どちらにしても、涼しく感じるまでは暫くかかりそうですね。

 今回はそんな真夏から残暑の中でも元気に花を付けている植物を紹介します。
 まずは、ノウゼンカズラです。
 ノウゼンカズラ 学名:Campsis grandiflora ノウセンカズラ科 つる性木本。
夏から秋にかけて橙色や赤朱色、黄色、ピンクの大きな美しい花をつける、つる性落葉樹。
 和名:ノウゼンカズラ(凌霄花)
 英名:Chinese trumpet vine
 日本で栽培されているノウゼンカズラは、中国原産で平安時代に渡来したといわれています。
 平安時代の「本草和名(ホンソウワミョウ)」に「乃宇世宇(ノウセウ)」とい名で記載されていて古くから親しまれている植物です。
 現在一番古いとされているのは、石川県金沢市の玉泉園に豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に持帰ったとされている樹齢400年のノウゼンカズラだと言われています。
 名前の由来はノウセウカズラと呼ばれていたのが訛ってノウゼンになったといわれています。
 漢字では「凌霄花(リョウショウ)」と書き、「霄(ショウ)」は「空」や「雲」という意味があり、空へ向ってつるを伸ばし、真夏の花木の少ない時期に樹姿全体に花をつけ、花の一つ一つは短命ですが次から次へと花を咲かせます。
 花びらは最初二又に開いていて、何かが触れると閉じてしまう性質を持っています。
 曇天だと蕾が落ちたり、つるの勢いが強すぎる場合も蕾が落ちます。
 個人的には夏の花では一番好きな植物です。梅雨明けの頃から花が咲き始めます。見かけると「夏が来たな!」と思います。
 花はラッパ状で、葉は奇数羽状複葉、つるは気根を出しながら伸び、フェンスや棚、もしくは大きい樹木にまで登っていきます。
 幹はフジと同じように大きくなります。
 繁殖は地下茎で株の周囲に芽をだして増えていきます。挿し芽も可能です。
 花が落ちる際に蜜を出します。周囲が少し汚れてしまうかもしれません。また、その蜜に蜂やメジロなどが集まってきます。
 花や樹皮は漢方で使われています。
← ノウゼンカズラの種
    (植物図鑑参照)
 まだ、種から育てた事はありませんが、一度試してみたいと思います。
 剪定の時期は2月から3月。肥料は3月以降に化成肥料を株元へ。
 ちなみに鉢植えで園芸店で売られている「ヒメノウゼンカズラ」は別の属の植物ですのでノウゼンカズラの仲間ではありません。
 緑のカーテンにはならないかも知れませんが、棚を作れば夏の強い陽射しをよけてくれますよ。

 次はハイビスカスです。
ハイビスカス 学名:Hibiscuc アオイ科フヨウ属。 和名:ブッソウゲ
 常緑低木類、花色は赤からピンク、黄色、オレンジなど様々です。
 インド洋や太平洋の島々が原産地と言われています。ハワイに持ち込まれた事から世界中に広まった事は有名な話です。
 ちなみにハワイ州の州花でもあります。
 花を摘んでも、他の花のようにすぐに萎れる事がないので、「レイ(花の首飾り)」に使われています。
 余談ですが、ネパールでは「聖なる花」として大切に扱われ、マレーシアやブータンでは国花にもなっています。
 日本には「仏桑華(ブッソウゲ)」の名で、琉球に伝わり、1600年代に薩摩藩主島津家によって、マツリカとともに琉球産の花木として徳川家康に献上されたと記載が残っています。
 沖縄では街路樹の低木類と同じ扱いで道路沿いに見かけます。放任すると生長して2〜5m程の大きさの樹木になります。 
 日本の本土では冬が越せないので、鉢物での扱いになり、観葉の温室植物として、5月頃から園芸店に出回ります。
 和名ではブッソウゲと呼ばれますが、現在ではハイビスカスで定着しているようです。
 今回は表題にも挙げている「真夏の青空に似合う植物」をご紹介しているのですが、実は真夏にはあまり花を咲かせません。
 ハイビスカスは「南国の花」のイメージなのでしょうか?
 『ハイビスカスと真夏の白い砂浜と眩しい太陽と青い海と青い空』。暑さに強い植物だと思われがちですが、真夏の30℃を越える高温多湿の日本の夏はチョッと苦手のようです。 沖縄より暑い日があるのですから・・・。
 また、真冬も10℃以上を保たなければ枯れてしまいます。
 真夏は遮光ネットやよしずなどで日よけ対策をしておけば、花をボチボチと咲かせます。9月以降11月くらいまで次々に花を咲かせます。その後、鉢物であれば室内で育てましょう。
 最低でも5℃以上を保てば生育可能ですが、落葉してしまいます。
 繁殖は接ぎ木や挿し木で行います。温室内であれば周年繁殖は可能です。
 春先から新芽が出てくれば大丈夫。室内に取り入れても冬越しを失敗してしまう場合もありますので・・・
フウリンブッソウゲ→
 ハイビスカスの仲間で、花弁を反り返して、雌しべが長く下を向いて花を咲かせます。
 通常のハイビスカスに比べ、花は一日花ではなく数日咲き続けます。
 風が吹くと「風鈴のように揺れる」姿から名づけられました。(グリーンパーク熱帯生態園内にて)
  与那国島等では、民家の庭には大きなハイビスカスが植えられています。
塀越しに赤い花が咲いている風景を見ると「南国に来たな〜」と感激します。私にとっては、「夏の青空」が似合う植物の代表です。
 最後はブーゲンビレアです。
 ブーゲンビレア 学名:Bougainvillea オシロイバナ科ブーゲンビレア属。
熱帯性の低木。 和名:イカダカズラ。原産地:中央アメリカ及び南アメリカの熱帯雨林。
 名前の由来は1768年にフランス人の探検家ブーガンヴィルがブラジルで見つけた事で命名されたとされています。
 花の色は赤からピンク、朱色、黄色、白等様々に変化に富んでいます。
 この華やかな花に見える部分は花ではなく、花は中央部の白く見える部分で、色づいている部分は花を取り巻く葉(包葉)なのです。
 春から夏の鉢花として園芸店に出回ります。
 日本の気候の場合、南側に面した、寒風が当たりにくい場所であれば、露地植えでも育たない事はありませんが、冬場は落葉してしまいます。
また、今年の2月から3月のような低温に遭遇すると枯れてしまいます。
 ハイビスカス同様、観葉の温室植物で取り扱う事が一般的です。温室のように、一定の温度を保てる場所であれば周年開花します。
 つる性で大きくなり、10m以上もつるを伸ばします。
 真夏の暑い時期、花は少なくなりますが、鉢物の場合、よく日にあてて育てます。
 あまりにも気温が上がる場合は少し遮光してあげてくださいね。
 花後、伸びたつるを剪定すると、先端から新しい枝が伸びます。その枝の葉腋(葉と茎の接点)から花茎を伸ばしてその先端にまた花をつけます。

 花は一輪ずつ付いているように見えますが、実は3輪が集まっていて、それが一つに見えるのです。
 花の正体は中央の筒状の物で、花びらはもっていません。
 鉢物であれば、10月くらいに室内に取り入れてください。
 基本的には気温があれば周年開花する植物なので、花が咲いた後、剪定し、新しい芽を出させれば開花を繰り返しますが、温度が足りない場合は落葉するか、緑の葉のまま冬を越します。
 その場合、冬場は鉢の表面が乾いたらタップリ水を与え、肥料等は与えません。置き場所はカーテン越しの日の当たる暖かい場所です。
 (※カーテン越に置く場合、夜は一番寒い場所にもなるので要注意、夜は少し室内の中側へ動かしてくださいね)
 来年、3月ごろから肥料を与えて、4月の下旬から5月の上旬になったら戸外へ出しましょう。
 その後、一気に生長し、真夏の青い空に美しい花を咲かせます。
 毎年同じように開花させるのは難しいかもしれませんが、夏の季節にピッタリの花ではないでしょうか。
 
 「真夏の青空に似合う植物」と題してご紹介しました。
 かなり個人的な偏見もあるかと思いますが・・・。でも、夏から秋にかけて、元気に花を咲かせてくれることは間違いありません。
 毎年、梅雨時期までは気温もあまり上がらず日照不足になる事が多いのですが、梅雨明けと同時に「夏日」「真夏日」が急に訪れます。
 これからの時期は植物の手入れが重要になります。
 私達が暑いように、植物も暑い事は事実です。夏バテも同じように症状として表れてきます。
 よく観察をして、植物にも涼しく過ごせるような工夫をしてあげてくださいね。
 暑い夏、元気で乗り越えましょう。

御園 和穂  

(12/08/01掲載)  

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