新年 明けましておめでとうございます
   「一月」は、新しい年の始まる最初の「月」だけではなく、一年に一度「年神様」が訪れる大切な月でもあります。
 「年神様」とは新しい年に実りをもたらし、人々の命与えてくれる神であり、ご先祖様であるとも考えられています。
春に里へ降りてきて「田の神」となり、収穫が終わると山へ帰って「山の神」となり、新年を迎えると「年神」として戻ってくるわけです。
 新しい年を迎え、「年神様」は皆様の所へも来ていることでしょう。

 これからが一番寒い季節の到来。草花、花木の蕾はまだまだ堅い状態ですが春を迎える準備をしながら寒さに耐えています。
 寒くなると外へ出るのも億劫になってしまいますが、今年も一年間美しい花を咲かせ、美味しい野菜を作り、花木を楽しむ。植物を育ててくれるのは「土壌」です。
 今回は冬の間に行う「土作りと土壌改良材」を紹介します。

 「土作り」と言うと、大変な作業になってしまいそうですが、冬の寒さを利用し、土を改良(再生)して使う方法です。
花壇や畑、コンテナや鉢植えなど用途に合わせて説明しましょう。

『何で土作り?』 と思われる方も多いことでしょう。
 植物にとって、生育するためには「根」を土の中に十分に張らなくてはなりません。そのために病害虫の少ない、良い土を作るのです。
 勿論、「肥料」も大切な役割を果たしますが、でも、「土」なのです。
 『この寒い時期?』 これは、本格的な冬を迎え、越冬植物もありますが、冬は休閑期に入るので、空いている花壇や畑が多くなります。
また、花壇や畑を掘り起し、有機物を入れるには寒冷の冬が最適な時期になります。
 堀起こした下層の土を厳しい寒さに当て風化させることにより物理性が改善され、病原菌や害虫、雑草の種子を少なくする効果が期待されます。
 根が健全に伸びることができる土には、水はけ、通気性、そして保水力の良い事が条件としてあげられます。
 土は小さい粒が集まって「土」という構造をつくっています。
 永く植物を育てていると、粒の構造がつぶれてしまい、水はけの悪い窮屈な土になってしまうのです。
 最近、「あまり植物の生育が良くないな〜」と思われる事があれば「土」が原因かも知れませんね。

《花壇や畑の場合》 
 まずは何も植わっていない花壇や畑から改良してみましょう。
 花壇や畑を荒く掘り返して「天地返し」を行います。
(あくまでも、土の再生を意味しています)

天地返しの方法とは
・深さ40cm程度(幅は掘りやすい幅で)で溝を掘ります。(番号@)
・隣の上部の土を下に入れます。(番号B)
・番号Aの土を番号Bの上にあげます。
・番号Dの土を番号Aがあった場所へ動かします。
・番号Cの土を番号Dの上へあげます。 これを繰り返し、最後に最初にあげた番号@の土が戻って完了。
 下層部の土を掘り上げ、寒さにあて、越冬している病害虫の駆除をします。
 月に1回程度、冬の間2〜3回程行うことになります。
 作業自体は簡単ですが、労働としてはかなりキツイかもしれませんね・・・。でもとても効果的です。
 2月の下旬から3月の上旬までに行い、最後の一回は苦土石灰を施し、その後土壌改良材を混ぜ込みます。これで春先からの植え付けの準備完了となります。

《コンテナや鉢植えの場合》
 一年間楽しんで、終わってしまった植物の土だって少し手間はかかりますが、再生させて使用できます。
 コンテナの中の土を園芸シート等の上に出し、鉢底の石(ボラ土)、古い根っこ、枯れた葉などを取り除き、残った土をフルイにかけ、さらに古い根などを取り除きます。
 園芸用トレーや花苗ケースなどに不織布や新聞紙を敷き、フルイにかけた土を入れ、水をタップリかけます。後は、この土を寒さに充分に当てます。
 ひと手間かけられるなら(量が少ない場合)、水の代わりに熱湯をかけてやると、病害虫の卵の駆除や殺菌作用も期待できます。
 花壇や畑同様、月一回程度上下の土を入れ替えるとさらに効果的です。
 春の植付けの際には、この土に赤玉土や腐葉土などを加えてやれば充分です。
 「土つくり」(再生)は如何でしょう? 作業は決して難しくはありません。冬の間にしっかり「土つくり」をすることで、春から美しい花を咲かせ、沢山の収穫物が取れる、まさに最大の秘訣かもしれません。

 さて、「土つくり」をした後に「苦土石灰」「土壌改良材」「腐葉土」などと、聞きなれた言葉が出てきました。
 聞きなれた言葉で、よく使われている「資材」なのですが、本来の用途を御存知でしょうか? 土つくりと合わせて確認しておきましょう。
 まずは、「土壌改良材」。これは読んで字のごとく「土を改良する資材」です。
 一般的なものとして、「バーク堆肥」「腐葉土」と呼ばれている物です。
 「バーク堆肥」は、木の枝や葉などをチップにし、牛糞や油かすなどを混ぜ醗酵させた物で、よく土壌改良材として使用されます。


バーク堆肥
 また、「堆肥」と名が付きますので、肥料という区分にも分類されるのです。
 法律で決まっており、肥料は肥料取締法が定めた、「植物に栄養を供すること又は植物の栽培に資するため、土壌に化学変化をもたらす目的で施される物」。
 簡単に言えば、N・P・K(窒素・リン酸・カリ)が微量でも含まれている物は「肥料」として、また、地力増進法の中で、「土壌に施用し、土壌の物理性、化学性あるいは生物的変化をもたらし、農業生産に役立てる資材」を改良材として扱っています。
 バーク堆肥の場合は肥料成分そのものが、全体の割合からすると少ないので、まずは改良材として使用し、排水性や保水性を高め、後から配合量に合わせ肥料を与えてあげると効果的になります。「牛糞堆肥」もあります。こちらも用途は改良材として使用し、排水性や保水性を高め、土壌中の微生物を活性化させます。
 ただし、醗酵が充分に進んでいない物が多いので、冬の間に土壌へ漉き込み、土壌の中で完熟させます。
 「腐葉土」は、葉を醗酵させたもので、上記の資材と同じ用途で使用されます。生の葉では効果はなく、山などでよく見かける、堆積した葉の下層部分の葉が真っ黒になり、ほぼ原型を留めなくなったものが完熟状態となります。


腐葉土
 代表的な物をあげましたが、最初の土つくりを行った後に改良材を施すことでさらに「土」の物理性をアップさせるのです。
 最後によく耳にするのが「苦土石灰」。
 こちらは、土壌改良材として使用しないわけではありませんが、基本は土壌の「酸度」を調整する資材になります。
 少し勘違いされている方が多いように思われますが、「苦土石灰」を散布攪拌して使用しても、土壌消毒をしたわけではありませんので、要注意を。
 通常「石灰」は、土壌の酸性が強い場合中和をするために用います。効果が穏やかで、微量要素のマグネシウムが補えるタイプとして「苦土石灰」が扱いやす事からお薦めです。


苦土石灰
 使用方法として、散布にあたり改良材との併用や植物の植え付け可能との事ですが、出来る事であれば、土つくりを行い、一度土の酸度を試験キットで計り、必要があれば石灰を加え、その後一週間程度置いた後に改良材を加えると効果的です。
 苦土石灰を施す事で、「土壌消毒が出来る」と思われている方がいらっしゃるようですが、残念ながら思うほどの効果はありません。
 土壌消毒とは、土中で発生した病原菌や雑草の種等を死滅させる物で、方法は薬品による熱水や蒸気(ガス)などによる方法です。畑に薬品を散布後、攪拌しビニールなどで被覆、その後ガスや熱が発生します。
 一週間から10日程放置した後、土壌中に拡散したガスを抜きます。
 このガス抜きが上手く行えないと、次の植物や作物はガス焼けして生育できません。これだけ土壌消毒は手間も時間もかかる大変な作業です。一般的には、大規模農家などで広範囲に病害虫が発生した時等に行われる作業となります。
 苦土石灰が全く効果がないわけではありませんが、昔使っていたような「生石灰」のように「水に触れると発熱」するタイプではないので、効果は期待するほどではありません。
 私達が土壌消毒に近い方法として行う場合は、土つくり(天地返しなど)をきちんと行い、改良材(完熟の物)をタップリと漉き込む方法が効果的です。
 ちなみに石灰は施しすぎると、草花や収穫物に影響が出てきますので、注意をしてください。
 (使用量は誤らないよう、取扱い説明書を必ず読んでください)

 今回は少し難しい内容になってしまいましたが、改良材と肥料をしっかり区分して、上手に「資材」を使って欲しいと思います。せっかくの植物が上手く育たなかったり、病害虫に犯されてしまったりと、楽しむ間もなく処分をしなくてはならない悲しい事もあります。
 その状態になる前に、基本的な作業を行っておくことで回避する事が可能になります。
 寒い季節に行う一番大切な作業です。
 新年を迎え、少しノンビリして重くなった身体を動かすには、丁度よい作業かも知れませんね!
 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

御園 和穂  

(13/01/01掲載)  

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