樹木医からの一言(17)
樹木の「幹焼け」について
・ 周辺樹木の消失や樹冠衰退、あるいは移植などによる幹へ
の強い日光直射に起因する、樹皮の溝腐れ状の損傷である。
「皮焼け」又は「日焼け」ともいう。
・ サルスベリ、ケヤキなど樹皮のコルク層の薄い樹種に多く
見られる。また、クスノキなどではコルク層の発達する前の
若木に発生しやすい。
・ 移植木などで、根系や枝条の著しい切断により葉からの蒸
散量と根の吸水量が減って、木部における水分上昇速度が極
端に遅くなると、木部通導組織、とくに最も外側の年輪を通
る水による形成層や師部に対する冷却効果が働かなくなる。
・ さらに、葉量の減少によって光合成量が減り師部・形成層・
辺材部柔細胞、及び根に十分な糖が供給されず、代謝エネル
ギーが不足することが大きく影響する。
・ とくに、切除された大枝の直下の幹部分では大枝からの糖
の供給にほぼ100%近く依存しているので、それがなくな
るとエネルギーが著しく不足する。
・ また、剪定等の傷口から胴枯れ病菌が侵入して上下に形成
層、師部及び辺材の柔細胞を侵し、そこに木材腐朽菌が感染
して溝腐れ症状を起こすことも深く関係しているので、幹焼
けと同じような症状は、幹の南面や西面ばかりでなく東面や
北面にも見られる。
・ 生理活性機能が正常な状態で日射が強く当たるようになっ
た場合、樹皮の薄い樹木はコルク形成層の働きを旺盛にして
コルク層を厚くし、ざらついた木肌となるが、胴枯れ症状に
は至らないことが多い。