花のコーナー 2021年09月
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花のコーナー
御園 和穂##
2021年09月 トクサとツワブキ
これから厳しい残暑の到来です。
9月1~2日頃を暦では「二百十日」と呼び、立春から数えて210日目を指します。昔、この時期は稲の開花時期にあたりとても重要とされており、合わせて台風が多く発生するため、農家の方々はこの頃を厄日として警戒してきました。
また「防災の日」としても定められています。
この「防災の日」は関東大震災が9月1日に発生したことにちなみ、1960年に国民にも災害の認識を深めてもらうために制定されました。
8月、お盆前後に大雨に見舞われました。梅雨末期を思わせる大雨と長雨。日本列島のあちらこちらで災害が発生しました。
近年、台風や長雨の勢力が強く、雨の量も尋常ではなく立ち向かえないほどの自然災害を目の当たりにします。
まずは「身の危険を感じたら避難」を。自分の身は自分で守ることが一番の対策だと思います。
「災害への備えを怠らないように」この戒めを忘れないよう!にしないとなりませんね。
今回はトクサとツワブキを紹介します。
トクサ
学名:Equisetum hyemale L. var.ramosum Honda
トクサ科トクサ属 常緑の多年草(山野草)
英名:Scouring rush、dutch rush
和名:とくさ(砥草)
原産地:北半球の温帯地域、日本
大きさ:高さは50~100㎝
トクサはヨーロッパや北アジアに分布し、日本でも本州中部から北海道の山間部の湿地に自生しています。
トクサは、観賞用(鉢植え)や造園の植込み材料として坪庭に植えたり、生け花の花材として用いられています。
地下茎が横に伸び、地上に茎を直立させます。同種のスギナ(ツクシ)などのような枝分かれせず、茎には節があり、中は空洞です。
節の部分は、ツクシのようなハカマ状のものがあり、上の節の茎がソケットのような構造になっています。
手で茎を引っ張ると節の部分からスポッと抜けてしまいます。
ちなみにハカマ状の部分(ギザギザした黒っぽい部分)が「葉」に当たります。
花は茎の先端にツクシによく似たとんがり帽子のような胞子葉群として付きます。季節は7月~8月です。
トクサは茎が固く表面はガサガサしており細胞壁に※プラントオパールと呼ばれるケイ酸が蓄積しています。
※プラントオパール:植物の細胞組織にできるガラス質の結晶で、土の中に含まれるケイ素を根から吸い上げる過程の中で酸化し、葉や茎にとどまったものです。
トクサ科の植物は、※石炭紀から存在すると言われています。
※石炭紀:地質時代の区分のひとつ。現在より3億5920万年前から2億9900万年前までの時期のこと。地層から多くの石炭を産することからこのように呼ばれている。
当時とても大きな森林が形成されていたことの証とされている。
石炭紀は、酸素の濃度が高かったといわれており、稲妻による野火のリスクがとても高かったそうです。
トクサは耐火性のあるケイ酸を蓄積していて野火から生き延びるように進化したといわれています。
また、トクサの茎の表面は細かい筋がありガサガサした特徴があります。
茎は、固く砥石に似ていて物を研ぐことが出来ることから、古来から茎を煮て乾燥したものを薄板に貼り付け、現在の紙やすりのように使用していました。
日本では「高級つげ櫛」の櫛部分の仕上げや漆器の木地加工の仕上げ道具として使用されていました。
また、クラリネットなどの葦製リード(マウスピースに取り付け振動させて音を出すもの)を研ぐ際にもトクサが使用されていました。
爪を磨いたり、歯も磨けて歯磨草とも呼ばれていたそうです。生のトクサを束ねて「たわし」のような使い方もできるそうですよ。
茎を乾燥させたものは木賊(モクゾク)と呼ばれる生薬として使われています。
細長い茎が思いもよらない用途があることにビックリですね。
私たちは植込み材料としてトクサを使います。
少しだけ~トクサの使い方をご紹介します。
材料としては、坪庭や盆栽など「和」のイメージが強いのですが、葉ものと組み合わせると洋風になりますし、単独で鉢植えにしてもすっきりして素敵です。
今回、私は玄関脇の構造物の隙間を隠すために使用しました。
個人住宅で、玄関脇門扉の壁横に意図的にデザインされた20cm程の隙間が設置されていました。
門扉が取り付けられた後でも、不思議なことに、訪ねて来られた方が門扉を開けずにこの隙間から出入りしていたのです。
実は、おしゃれな門扉の開閉方法が分かりづらく、隙間から入る方が早かったのではないかと思います。
しかしながら、人が出入りできる隙間は不用心ですよね。そこで、トクサの登場。細長い隙間に縦長の姿がぴったりでした。足元が淋しかったので、次で紹介するツワブキと組み合わせました。さすがに誰も通り抜けなくなりました。
もう少し茂ってくると~いい感じになりそうです。こんな使い方もいかがでしょうか?
育て方はとても簡単です。
【育て方】
- 植え場所:真夏の直射日光や西日が直接当たる場所は苦手です。理想は明るい半日陰です。
- 用土:水はけのよい土壌であれば、特に選びません。
- 水やり:乾燥にはある程度耐えますが、湿地性の植物なので極端に乾燥する土地は好みません。乾燥する場合は、土の表面が乾いてきたらタップリと水を与えましょう。
- 肥料:特に必要ありません。
- 増やし方:株分けで増やします。また地下茎でも増やせます。茎を長めに採取し、2,3節付いていれば挿し木も可能です。
- 剪定や切り戻し:必要ありません。1mくらいまで伸びます。高くなり過ぎた時は、伸びすぎた茎を地際から切ります。
※トクサを植えてから注意してほしいことは…。
地下茎で繁殖する植物です。環境が整うと至る所から茎を地上に伸ばしてきます。気を付けておかないと「庭中トクサ」になってしまうかもしれません。
増え始めたら、必要のない場所のトクサは株ごと掘り上げてくださいね。
地植えはもちろん鉢植えも素敵です。オススメです!
次はツワブキです(バックナンバー2011年12月掲載)。
ツワブキ
学名:Farfugium japonicum
キク科 ツワブキ属 常緑の多年草(山野草)
原産地:日本列島:東北以南の本州、四国、九
州、朝鮮半島、中国、台湾
和名:ツワブキ
別名:ツワ、イソブキ、イシブキ
開花期:10月~12月
草丈:20~50cm程度
ツワブキは海岸沿いの岩場(崖)や草原、林の周辺に見られる常緑の多年草です。
葉は革質で艶があり、丸い形をしています。
10月~12月に、株の中央から花茎が伸びて先端に20輪ほどの黄色い花を咲かせます。
寒くなりはじめた山中や庭園内に華やかな彩が目を引きます。
最近は園芸品種も多くなり、斑入り葉の品種も多くみられるようになりました。
私はまだ見たことはないのですが、花色も黄色だけでなく、クリームホワイト色や朱色、レモン色などの品種もあるそうです。
白系は想像がつきますが、朱色は?絵具の朱色とは異なり、きっと素敵な花色だと思います。
前述のように「構造物の隙間」にトクサとツワブキを合わせました。
トクサは上に伸びますが脇芽が出ないので、足元をツワブキでカバーしようと考えました。
また、構造物の角がむき出しに見えることを緩和したり、雨による土の流失も抑えられます。
用途に合わせての選択ですが~我ながら「良かった」と思っています。
ツワブキの葉は独特な丸い形をしています。
時間が経つととても大きくなって‥‥。 好き嫌いがはっきりする植物ですが、カラーリーフの一つとして、葉ものの寄せ植えやちょっとした空間を埋める素材として重宝します。
例えば~
トクサの細長く上に伸びる姿にツワブキの丸い葉、細長い葉が放射状に延びるヤブランや、地面を這いながら伸びるアジュガを組み合わせると、野趣味な感じに仕上がります。
花も咲きますよ。個々の開花時期はバラバラですが、一年中、庭に彩りを添えてくれる植物ですね。
何度か、カラーリーフを紹介してきました。
特に意図したわけではないのですが、毎年記録的な暑さに見舞われ、せっかく春から育てた草花も枯れてしまったり傷みがちになります。植物を管理する上で、梅雨明け前後で切り戻してと「夏を涼しく」と指導しますが、年々暑さは酷くなっているように思われます。
今までの草花を少し減らして、比較的手のかかりにくいリーフ類を多めにしておけば如何でしょうか?
管理上、少しだけ手間が減り、少しだけ作業時間が短くなるのではないでしょうか。お試しを!
暑さ寒さも彼岸まで。
今月を乗り越えれば、過ごしやすい季節がやってきます。
今はまだ自由にあちらこちらへ出向けない状況ですが、辛い時期はいずれ通り過ぎていきます。
もう一踏ん張り頑張りましょう。
過ごしやすい季節ってことは~食欲の季節。
9月~10月は「サツマイモ」の収穫時期でもありますね~。汗のたくさん出る時期に体を絞って、「これからの食欲にそなえたい!」と思うのは~私だけでしょうね♪
まだまだ暑い日が続きます。
作業は控えめに。無理はされませんよう!
(2021/09/01掲載)