都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2022年09月

a:155 t:2 y:0

花のコーナー

御園 和穂##

2022年09月 これからの球根植物

 今年は本当に暑い夏を過ごしましたね。
 8月に入っても雨はもちろん夕立も少なく、抜けるような青空と突き刺さるような日差し。毎日が「晴天」で夏らしくて嬉しいのですが、植物管理の立場からすると地獄のような毎日ではありませんでしたか。
 私は、「灌水で明けて灌水で終わる」日々でした。
 9月に入ると、朝晩の気候も徐々に変わってくる季節です。花壇の草花の手入れもしやすくなりますね~
 今回は、これからの球根植物を紹介します。


クロッカス

2022

学名:Crocus sativus L.
アヤメ科 クロッカス属多年草
原産地:地中海沿岸
英名:saffron 仏名:safran
和名:サフラン

 サフランは、2018年12月に紹介しました。今回、球根をたくさん入手したので、もう一度、紹介しようと思います。
 内容が重複すると思いますが~上書きしながら色々と知っておきましょう!
 
 「クロッカス」というと、まだ雪が残る庭先に花を咲かせる「春を告げる花」として親しまれていますが、本来は春咲きと秋咲きに大別され、一般的に知られている観賞用のものは春咲きの品種です。
 秋咲きはサフランと呼ばれ、赤い雌しべを生薬や香辛料、料理の着色料、染料として使うことを目的として広く栽培されています。
 原種は約80種が確認されており、園芸品種も数多く育成されています。
 実は、クロッカス栽培は観賞用としてではなく、実用品(生薬や香辛料)としてのサフラン栽培から始まりました。
 サフラン栽培の歴史は古く、3000年以上前のエーゲ海のクレタ島遺跡の壁画にはサフランを採取する絵図が描かれており、紀元前15世紀にはサフランが生薬や染料として利用されていたことがわかります。
 また、古代ギリシャではサフランの黄色は珍重され、王族だけが使用を許された色であった時代もあるそうです。
 日本には江戸時代に薬として伝わってきたようです。
 国内での栽培は、明治19年神奈川県で、一般の方が母親の病を治すために球根を輸入し栽培を試みたのが始まりとされ、明治30年に内務省が認可し国内での栽培が始まったそうです。
 現在では、日本国内の8~9割が大分県竹田市で生産されています。
 ちなみに、世界の90%はイランで生産されており、ギリシャ、スペインでも多く生産されていますが、イラン産が圧倒的に高品質です。
(世界総生産量200,000㎏ イラン産は170,000㎏ 球根100㎏=約1㎏採取)
 観賞用としてのクロッカスは1600年ごろイギリスにおいて数種類の栽培記録が残っており、1770年にはクロッカスの分類研究が進み、これを機にクロッカスは観賞用としての脚光を浴びるようになっていったようです。
 クロッカスの歴史はサフランが先に栽培され、その後観賞用が。実は知りませんでした。同じ仲間で咲く時期の違いだけかと思っていました~

2022

 4年前に採取したサフランの雌しべ(乾燥したもの)が棚の隅からひょっこり姿を現しました。
 すっかり忘れていて、お茶として飲むのには時間が経ちすぎていますし(保存で3年と記載あり)、捨てるには勿体ないので、知り合いのハーブの先生に相談しました。

2022

 あとは先生にお任せです。
 暫くすると、写真が送られてきました。ウォッカに漬けて「チンキ」に。薬膳酒を作られているようです。
 2週間ほど漬け込み、その後服用出来るとのことでした。
 サフランは女性にピッタリのメディカルハーブのようです。
 今回は、薬膳酒なのでサイダーで割ったり、お茶に、料理、入浴剤、化粧水などに試せるそうです。
 女性の「血の道を守る」効果があり、女性が見舞われやすい冷え性や更年期症状の改善にも役立つそうですよ。

 サフランは水溶性なので水でもすぐに黄金色の抗酸化力抜群のクロシンというカロテノイド系の植物色素成分が抽出できます。
 サフランはもともと寒性で体を冷やすのに用いられますが、体を温める働きのあるアルコールを使用することで、身体を冷ます作用が抑えられるそうです。
 余談ですが~アンチエージングにも効果があるようですよ。(サフランオイル)
 抗酸化作用の高いクロニン成分には、紫外線による肌の炎症やメラニンを抑える働きがあり、ニキビやしわ、くすみなどの改善にも役立つとのことです。
 更に、薬用効果もあり生薬としては「番紅花(バンコウカ)」と呼ばれています。
 更年期障害、月経不順、精神安定、ヒステリー、抗うつ、不眠、頭痛、めまいなどに効果があるそうです。

2022

 球根1つから、3本の雌しべが出ます。(写真:赤い部分)
 サフランは夏植え球根で、8月下旬から9月上旬に植え付け、10月~11月に開花します。
 針のような葉を出して、その後薄紫の花が現れます。もともと観賞用ではありませんので、観賞用クロッカスとは少し異なりますが、私にはサフランも十分に可愛いお花です。
 観賞後にサフランの採取もできる!「1個で2度楽しめる」優れものです。
 花後、種子はつけません。分球させながら増やしていきます。


2022

 今年、球根を購入しました。花壇の一部に植付けし、後はプランターで生育させようと思っています。
 球根は7月くらいから販売されています。

【植付け方法】

■8月下旬から9月上旬の植付け
・庭植え(花壇植え)の場合:10cmほど間隔をあけ、球根2~3球分の深さに植えます。

2022

・鉢植え(プランター植え)の場合:直径15cmの鉢で5~6球植えとして、球根1~2球分の深さに植付けます。
       (写真:直径15cmの皿の上に並べた球根→)

■水やり
・適宜水を与えます。特に鉢植えは極端な乾燥は避けます。

■用土
・庭植えの場合:水はけと通気性に富んだ、適度な保水性がある用土を好みます。
・鉢植え(プランター植え)の場合:市販の草花用培養土で大丈夫です。

■サフラン(雌しべ)の採取
 私たちは、生産者ではありませんので、採取を目的とせず、まずは花を楽しみましょう。
 その後、赤い雌しべ部分の先端を持って優しく引き抜きます。後は乾燥させて保存します。

■花後の管理
《花柄摘み》
・花が咲き終わったら、花を引き抜きます。
《掘り上げ》
・庭植えの場合:5月ごろから葉が枯れてきます。球根は寒さには強いのですが、夏の高温多湿が苦手なので、できれば掘り上げて乾燥させて保存が好ましいです。もちろん、場所によってはそのままでも。
・鉢植え(プランター植え)の場合:容器を雨の当たらない場所で管理が可能であれば、掘り上げは数年に1回で大丈夫です。
※球根は年々分球して小さくなります。小さい球根だと翌年開花しないか、貧弱な花になることもあります。しかし、肥培管理を行うことで球根は肥大し立派な球根になります。

2022

←写真は春咲きのクロッカスです。
学名:Crocus
アヤメ科サフラン属(クロッカス属)
開花期:2月~4月
花色:黄色、白色、紫色、複色

 春一番のクロッカスは、小さいながらも存在感があります。寒さに強く、霜や多少の雪もへっちゃら!です。
 春咲きは、葉が出てきたな~と思ったら間もなく開花します。
 6月ごろには枯れてしまい休眠に入ります。
 植付け適期は10月下旬から11月になります。
 用土や花後の手入れは「サフランと同じ」です。
 球根植付け後は開花まで特別な作業は必要ありません。

 開花後、一般的なクロッカスは種をつけます。種が付くと球根の太りが悪くなるので、花柄摘みは早めに行いましょう。(黄色花のラージイエローは種ができません)
 クロッカス、古くから栽培されている球根です。小型球根なので、狭いスペースなどでも楽しむことが出来ます。
 また、ヒアシンスのように水耕栽培でも楽しめますよ!

 これから楽しめる球根は「夏植え球根」になります。
 植付け時期は様々ですが、7月下旬から9月上旬の植付けになります。
 まだ、間に合う球根植物もあります。紹介しますね!


ヒガンバナ

2022

学名:Lycoris ヒガンバナ科 ヒガンバナ属/リコリス属

 リコリス属の仲間には、秋の彼岸の頃に開花するヒガンバナがあります。
 日本での生産は多くありませんが、欧米でのリコリス人気は高く、花色は赤色、黄色、白色、オレンジ色、ピンク色、紫色など豊富で、光沢のある花弁が美しく、多くの園芸品種が作られています。

 植付けは7月下旬~、開花は9月中旬頃。花が咲いてから葉が出ます。

ネリネ

2022

学名:Nerine ヒガンバナ科 ヒガンバナ属/ネリネ属

 姿形がヒガンバナに似ていることから、あまり人気がありませんが、欧米では育種が盛んにおこなわれています。花弁に艶があることから「ダイヤモンドリリー」の名で親しまれ、近年日本でも切り花や鉢物で出荷されています。リコリスのような黄色などの花色はありませんが、白色や絞り咲きなどがとても美しいです。また、花は1か月ほど楽しめます。
 植付けは8月~9月、開花は10月下旬~11月。花が咲いてから葉が出ます。

コルチカム

2022

学名:Colchicum spp.
イヌサフラン科 イヌサフラン属/コルチカム属

 60種ほどの原種があり、欧州、中東、北アフリカの地中海沿岸地域に自生しています。

 土に植え付けなくても、机の上などに球根を放置しておくだけで花が咲く性質を持っています。よって、受け皿やコップ、様々な容器を使って楽しむことができます。もちろん花壇にも植付けます。球根は5cmを超えてくれば開花します。早春から新芽が伸びて、大きな艶のある葉が6月くらいまで茂ります。球根は有毒です。決して食べないでください。

2022

 植付けは8月~9月、開花は9月下旬~10月
 9月上旬くらいまでの植付けリミットはありますが、このような夏植え球根があります。一部は鉢植えで販売さえる植物もありますので、園芸店で見かけたら思い出してくださいね。

画像の説明

 まだ暫くは暑い日が続きそうですが、やはり「暑さ寒さも彼岸まで」の通り、9月下旬になってくると季節が変わってきたことを感じます。
 真夏に傷んだ草花も「息を吹き返して」くる頃です。
 開花はゆっくりですが、朝夕の気温が下がってくると花色も良くなってきますよ。
 私は~花壇の草花と、サフランのその後を楽しみにしています。
 合わせて、ハーブの先生のチンキもどのように活用するのか!わくわくしています。またご報告しますね。
 9月いっぱいはまだ気温も湿度も高く、日差しも強い日が続きます。
 作業をする際には、油断のないようにしましょう!
 

powered by QHM 6.0.9 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional