樹木医からの一言(12)

 

「マツ枯れ」について その4
        ―穿孔性甲虫類と樹木―

・ マツ枯れに関与している可能性のある昆虫として、四種の
  キクイムシ、三種のゾウムシ、マツノマダラカミキリの計
  八種が重要害虫として挙げられたが、実験の結果は、これ
  らの害虫には一次性害虫の能力がないことを強く示唆する
  ものであった。

・ 枯死したマツの材中から線虫が発見されたが、この線虫は
  ブルサフェレンクス属の線虫で、九州の各地の被害木から
  検出され、マツの根幹枝に寄生しており、各組織の靭皮部
  や木質部の仮導管、樹脂溝、髄線中に発見される。

・ 病原体である線虫がマツ樹体に侵入後、侵入部位以外から
  はほとんど分離できないほどその数が低密度であるうちに
  すでにマツを発病させ、松ヤニ分泌が異常になる。病徴が
  驚異的な速度で進行する。

・ 昆虫の気管系の開口部は「気門」と呼ばれ、胸部に二対、
  腹部に八対あるのが原則であるが、マツノマダラカミキリ
  の場合は、腹部には七対。

・ マツノザイセンチュウは、腹部の最も前に位置する腹部第
  一気門と、二対の胸部気門を主たる入り口として、その気
  管系内に侵入する。

・ 気管系の内部に侵入する線虫は、耐久型(分散型第四期)
  幼虫と呼ばれる特殊ステージになっており、まったく栄養
  摂取しない「静止状態」にある。つまり、カミキリを移動
  のための手段として利用している。

・ 一頭のカミキリの虫体に、多い場合には二〇数万頭といっ
  た高密度の線虫が潜んでいることがある。これらの線虫は
  その気管内で、すべて頭部をカミキリ虫体の内部に向けて
  いる。

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