樹木医からの一言(14)
「マツ枯れ」について その6
・ マツノザイセンチュウは病原力があるからこそ、健全なマ
ツに侵入して次世代が残せる。つまり侵入後そのマツを発
病させ、枯死に導くことができるので、そこに運び屋マツ
ノマダラカミキリを誘い、産卵を促すことができる。
・ マツノザイセンチュウに近縁でありながら、病原性のほと
んどない、ニセマツノザイセンチュウという線虫がいる。
・ マツノマダラカミキリの蛹室にはマツノザイセンチュウを
集める条件がそろっている。カミキリの虫体から出る排泄
物や分泌物は蛹室壁に豊かな栄養分と適当な湿り気を与え、
青変菌など微生物の繁殖を促すことになり、結果的にそれ
らの菌類を餌とするマツノザイセンチュウの集合と増殖を
もたらす。
・ 蛹室内で成虫になったマツノマダラカミキリは、そのまま
三〜七日間この蛹室内にとどまる。この間に、蛹室周辺に
ザイセンチュウがカミキリの気管内に侵入する。
・ 北米に自生するマツ属樹種とマツノザイセンチュウとの関
係は、日本におけるアカマツ・クロマツとニセマツノザイ
センチュウの関係に似ており、この線虫に対して抵抗性が
ある。
・ カミキリが摂食に専念している最初の十日間には、線虫は
カミキリの体から離脱しない。
・ 羽化直後のカミキリの体内にいる線虫は大部分が頭を虫体
内部に向けているが、羽化後の日齢が経つほど、体をUター
ンさせて、頭を気門の方に向けた線虫が増えてくる。
・ マツノザイセンチュウは、侵入後しばらくの間は、主に形
成層の外側、柔細胞からなる皮層部分に分布している。
また、移動は主として細胞の間隙にできた樹脂道を利用し
ている。