樹木医からの一言(2)
今、問題になっている大事なこと
@ 種の絶滅
生物の歴史において、膨大な数の種が絶滅した。しかし、過去2億年の脊椎動物の平均絶滅率は、あの恐竜の大絶滅を含めてもせいぜい一〇〇年に90種ほどだったと推定されるのに対し、現在では一年に4万種という桁違いの速さで生物種が消え去っている。その主な要因が人間の活動の影響によるものであることはいうまでもない。あわせて多様性の問題が緊急の問題として浮かび上がっている。原因は、環境の多様性の消失であり、生物相互関係の乱れである。レッドデータブックが、具体的に現状を警告している。
A 外来種の問題
自然界における生物個体群は、それぞれが生態系におけるニッチ(生態的地位)を持っている。ニッチの確立には、安定した多くの生物種との相互関係や物理化学的な環境が維持され、さらに長い時間が必要である。近年の急激かつ無秩序な外来種の侵入や意図的な導入は、長い時間かけて築き上げてきた生態系を、大混乱に陥らせている。生命誕生以来の歴史を考えてみても、これほどの混乱はなかったのではなかろうか。
B 温暖化の問題
温室効果ガスの問題は人間が引き起こした物質循環の乱れが原因のひとつと分かっている。しかし、当面の快適な生活を捨てることができないため、事態は一向に解決しない。地球規模の環境問題と地域や個々人の行動との関係を理解することが、解決の道である。