樹木医からの一言(3)

土壌について

土壌浸食(エロージョン)とは、風雨により土壌が流されることをいう。自

然においても発生するが、むしろ人為的影響により発生しているものが多く、浸食速度は表層土壌の形成速度をはるかに上回っている。

過剰な生産を行っている農耕地では、作物が栄養分を奪い取ってしまうため、

いくら化学肥料などで外から補給を続けても土壌が疲労し、団粒構造が失われ土壌が浸食されてしまう。また表層土壌の過剰な耕起や攪拌は、土壌の生物的酸化を促進させるため、土壌中の有機物が減少し土壌浸食も起こりやすくする。

浸食によって表層土壌が失われると、植物が生えていない部分は風や雨で表層土壌が失われ、生産性が低下し、その土壌を覆う植物の生育も制限される。この結果、土壌浸食がますます進行するという悪循環が起こる。植物が生い茂る熱帯地方の土壌は非常に豊かに思われるが、実際には有機物の分解と植物への再吸収のサイクルが早いため、土壌は非常に薄く森林伐採などで急速に侵食が進行してしまう。

 乾燥地帯での大規模な灌漑では、水路の維持や排水の管理が適さない場合に塩類化を引き起こすことがある。これは、乾燥地帯では、土壌表面から蒸発する水の量が降水量より多いため、地中の水の流れが下から上に向かい、地下水や灌漑水に含まれる塩類(炭酸カルシウムや塩化ナトリウム等)が地表近くに集まるためである。

 塩類化と同様、砂漠化も世界規模で深刻な問題となっている。砂漠化の原因は、気候的な要因のほか、家畜の過放牧、休耕期間を十分に設けない過剰耕作、過剰伐採といった人為的影響も大きい。

 

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