花のコーナー 2021年01月
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花のコーナー
御園 和穂##
2021年01月 スイセン
あけましておめでとうございます。
今年は丑年。
干支はもともと日付や時刻、方角を表わすために使われており、漢字表記や記号のようなもので一般民衆には覚えにくく難しいものだったようです。
そこで、人々が覚えやすいように干支(十二支)を「動物に割り当てた」ことが始まりと言われています。
牛は食用だけではなく、農耕作業や物資の運搬をする労働力であり、勤勉に働く姿が「誠実さ」の象徴として、縁起のよい動物とされています。
また、菅原道真など学問の神様をまつる天満宮でも牛の像を見かけます。
なぜ牛なのか?なぜ牛の像は「立ち姿」ではなくどの牛も「座り込んだ姿」なのか?
気にしたことがなかったので調べてみると、数多くある「牛と菅原道真」にまつわる話の中に、『道真の亡骸を運んだ牛が急に座り込んで息絶えてしまった。移動ができなくなったためその場に埋葬をした場所が「大宰府」で、大宰府天満宮が建立された』という話がありました。
また、牛の黙々と働く姿が道真の教えに通ずることから、神の使いとして祭られているようです。それ故に牛であり、横たわった姿なのでしょう。
丑年は、先を急がず一歩一歩着実に物事を進めることが大切な年と言われます。今年は結果を求めず、コツコツと基礎を固める時期として目の前のことをこなすことが将来への展望につながるとも言われています。
今年が良い年になるよう!コツコツと進んで行きましょう。
今回は、以前にも紹介しましたが(2009年4月、2012年2月)、日本の冬を彩る「スイセン」を紹介します。
スイセンとは
学名:Narcissus ヒガンバナ科/スイセン属(ナルキッスス属)
和名:スイセン(水仙)
イベリア半島を中心に、イギリスやヨーロッパ中部、北アフリカを含む地中海沿岸地域に分布、アジア中部まで拡がり30種程の原種が自生しています。
また、世界中で多くの園芸品種も栽培されています。
代表的な種類として、ラッパスイセン、八重咲スイセン、房咲きスイセン、口紅スイセンなどがあります。種類によって開花時期が異なり、早いタイプは11月中旬から開花し、遅いタイプは3~4月ごろの開花となります。そして秋から初夏まで生育し、真夏は休眠します。
※スイセンは全草に毒性があります。アルカロイド系の有毒物質を含んでおり、誤食すると下痢や嘔吐などの中毒症状を引き起こします。
事例は、スイセンの葉とニラの葉を間違えてしまう誤食です。
ニラの葉は独特の匂いがありますが、スイセンにはありません。植付けをする際にはニラの近くには植付けないよう注意を払ってください。
ニホンスイセン
学名:Narcissus tazetta var.chinensis
日本で古くから親しまれてきた房咲きスイセンです。
冬枯れの庭先に、寒さに耐えながら凛とした姿で花を咲かせる姿が印象的で、降り積もる雪の中から頭をもたげて開花する姿に「雪中花」という呼び名もあります。
新春の生け花や茶花としても親しまれています。
ニホンスイセンは「日本」とついてはいますが、原産地は地中海沿岸で、平安時代頃に中国を経て渡来したと言われています。
名前の由来は、「水辺を好んで繁茂する清らかな植物」から「水の仙人」と呼ばれ、水の仙人から「水仙(スイセン)」と呼ばれるようになったそうです。
関東以西、四国、九州の主に海岸部に多く生息し、群生地は観光の名所にもなっています。
長さ20~40㎝の細長い葉の間から、40㎝ほどの花茎を1本もしくは数本伸ばし、その先端に2~3㎝の花を1個もしくは数個、横向きにつけます。
6枚の花弁が拡がり、3枚ずつ交互に分かれています。その中央にスイセンの特徴である筒状の副花冠があります。
ニホンスイセンは花弁が白で中央が黄色です。
開花時期は12月中旬から2月くらいまでです。地域によって少し異なりますが、比較的長い間楽しめます。
球根の植付け適期は10月~11月です。
冬場は日当たりがよく、夏場は日陰になる水はけがよい肥沃な土地を好みます。
球根植物なので、一度植え付けると暫くは放置しても毎年花を咲かせますが、可能であれば3年に1度は掘り上げて土壌改良を行い、球根を整理(分球)して再度植え付けると良いでしょう。
ニホンスイセンは放任していてもたくさんの花を咲かせる方ですが、長い年月放置すると、土の中で球根が混雑して花が咲かなくなることがあります。
掘り上げた球根には、親球根の脇に子球根がついていますが、土の中で混雑しながら放置されると子球根がたくさん増え、栄養不足により子球根は太らず開花しなくなります。
開花後は花柄摘みをして葉が枯れるまで放置します。この時点で葉が邪魔になるので切ってしまう方がいますが、球根が栄養を蓄える時期です。邪魔にならないように縛っておいて構いませんから切らないでください!
6月下旬から7月頃には葉が枯れてきます。枯れたら掘り上げます。
掘り上げた球根は、風通しの良い場所で乾燥させ、枯れた葉を取り除き、土を落として球根を整理します。
そのままネットに入れて雨の当たらない風通しのよい場所で保管し、10月以降に植付けをします。
ニホンスイセンは、結実をしないので種は取れません。増やす方法は分球のみです。
また、分球した際の子球根が小さい場合は、球根が栄養を蓄えて太るまで開花はしません。
植付ける際に、大きい球根と小さい球根を交互に植付けておくと、大きい球根が開花中、小さい球根は葉を茂らせて栄養を蓄えます。2年目以降はたくさんの花を楽しめるはずですよ♪
注意点は、肥料はたくさん与えすぎないようにします。特に窒素分の多い肥料を与えすぎると、葉はよく茂らせますが花が咲かなかったり、球根自体が腐ることがあるので気を付けてくださいね。
キズイセン
学名:Narcissus jonquilla L.
別名:イトズイセン、ジョンキルスイセン
スイセンと言えば、白い花びらに黄色の副花冠のニホンスイセンと思われていたところへ、西洋からキズイセンが渡来しました。
江戸時代末期(1831年)、鎖国中、貿易を許されたオランダ人によって長崎の出島に持ち込まれたとか、同時期に長崎に入港したイギリス船から持ち込まれたとか、どちらにしても長崎に入ってきました。
葉が、糸のように細いので「イトズイセン」や「糸葉スイセン」などと呼ばれています。とても強いタイプでヨーロッパや北アメリカでは野生化しているそうです。
キズイセンは、他のスイセンよりも繊細で華やかな香りを放ち、ジョンキルオイルという油が抽出されています。
原種に近いタイプで、草丈は20㎝ほど、遅咲きのスイセンで4月下旬頃開花します。
育て方は他のスイセンと同じです。球根が手に入ったら育ててみてください。
小型タイプで可愛らしいですよ~。まずは香りをかいでほしいです。
ラッパスイセン
学名:Narcissus Pseudonarcissus
英名:trumpet daffodil lent-lily
最初の発見は、スペインのピレネー地方だったと言われています。
名前の通り、副花冠がラッパのように突き出した形のスイセンです。分類の上では、副花冠の長さが花弁の長さと同じかそれ以上のものを「ラッパスイセン」としているそうです。
西ヨーロッパに自生し、世界中で広く栽培されています。また、ヨーロッパ東部、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでは野生化し、自然交配雑種も確認されているそうです。
これらの園芸品種は明治以降、日本に紹介されています。
育て方は他のスイセンと同じです。
開花時期は2月中旬から3月頃です。英名ではレント・リリーと呼ばれており、※「四旬節(シジュンセツ)」の季節に咲くので、その名が付いたようです。
大振りの華やかな姿は、春を告げる風物詩としても親しまれています。
ヨーロッパでは、春先になると玄関前や庭先、窓辺に色とりどりのスイセンが植付けられます。スイセンは「希望と喜びの花」として、今でも愛され続けています。
※四旬節:カトリック教会などの西方教会において、復活祭(イースター)の46日前(日曜日を除く)の水曜日から復活祭の前日までの期間の事です。復活祭は3月下旬から4月下旬のいずれかの日曜日です。よって2月上旬から3月10日あたりをさします。
シロバナスイセン
学名:Narcissus papyraceus KerGawl.
英名:paperwhite narcissus
西ヨーロッパ、地中海沿岸、北アフリカ原産で、コルシカ島やアゾレス諸島、アメリカの一部地域では帰化しているそうです。
日本へは平安時代に渡来したとの記録があります。
真っ白なスイセンで、ニホンスイセンの基本種とも言われています。園芸品種ではなく、れっきとした原種です。
花は1本の茎から8~10個程の花を咲かせる房咲きです。育て方は他のスイセンと同じです。高さは20~40cmで、12月~1月に開花します。
英名は、紙のように白い花なので「ペーパーホワイト」と呼ばれています。
本来、スイセンは香りが良い植物ですが、シロバナスイセンの香りは決して良くありません。
真っ白で清楚なイメージの雰囲気なのに、ちょっと残念~かな。
クチベニスイセン
学名:Narcissus poeticus
英名:Poet’s daffodil
地中海沿岸地域からアフリカ北部に分布し、世界中で帰化しているそうです。
花の中央の副花冠の先が口紅にように縁取られています。
名前の由来は縁取りが口紅を差したように見えることから名づけられたそうです。
高さ50~60㎝ほどで、比較的大きめの花を咲かせ、良い香りを放ちます。
開花時期は遅めで、桜が開花するころから咲き始め4月一杯楽しめます。
長い歴史の中で、スイセンにはその美しさを褒めたたえる言葉が多く残されています。
その中で、クチベニスイセンは、「詩人のスイセン」という学名が与えられています。
縁取りが入る姿に詩人も心を奪われたのかもしれませんね。
ナルキッスス・バルボコジュウム
学名:Narcissus bulbocodium
別名:ペチコートスイセン、原種スイセン
小型の原種スイセンの代表的な種類で、ヨーロッパ南西部や北アフリカに広く分布しています。
自生地は雨季、乾季がはっきりした地域で、日当たりの良い草原や岩場に生息しています。
通常のスイセンより副花冠がとても大きく、開花するとペチコートを広げたような姿になります。
草丈は15~20㎝ほどで、開花時期は3月~4月頃です。秋ごろから細長い葉を成長させながら冬を越し、早春に、1茎に1花を付けます。
育て方は他のスイセンと同じです。分球が一般的ですが、種を付けますので実生からでも!楽しめますよ。
よく似た白花は、バルコジュウムのモノフィラという品種です。
八重咲スイセン
その他のスイセンとして、八重咲きのスイセンがあります。
品種が多く、華やかなスイセンがさらに艶やかな姿になります。
1本の茎に1つの花が咲き、副花冠、雄しべ、雌しべが花弁化して八重咲きになったものです。
八重咲きは突然変異から生まれたものが多く、交配の品種がどれであれ、八重であればすべて同じ分類になるそうです。
今でも古い品種から、新しい品種が作出されています。ニホンスイセンに似た甘い香りを放ち、さまざまな品種があり人気も高まってきています。
育て方は他のスイセンと同じです。開花時期は、品種によりますが3月から4月頃です。
今回は、春の代表的な花「スイセン」を紹介しました。
最後に、古代ギリシア人たちが生み出したギリシア神話の中の「スイセン」をご紹介します。
~妖精のエコー(こだま)は、ギリシアの美少年ナルキッソスに恋をしていた。しかし、ナルキッソスはエコーをだまして、最後には捨ててしまう。森の奥に身を隠したエコーは失意のためやせ細り、ついには声だけになってしまった。哀れに思った復讐の女神ネメシスによって、ナルキッソスは水面に映った自分の姿に恋い焦がれ、水辺で息絶える。その亡骸がスイセンに生まれ変わった~
スイセンの学名ナルキッソスやナルシシズム(自己愛)の語源となったお話です。
スイセンは色鮮やかで目を楽しませてくれる花であり、花首を傾げて咲く姿も神秘的な雰囲気をもっています。
これからの季節、あちらこちらで目にします。是非、一度は手に触れて香りをかいでみてくださいね。これから冬本番ですが、一番早い春を感じさせてくれるかもしれません。
新しい年が始まりました。
今年はどんな年になるでしょうか。コロナ禍で生活様式が変わりました。これからは終息に向かって少しずつ変化すると信じています。
この一年は、無理をせず歩みも確実にゆっくりと事を進めていきたいと思っています。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
(2021/01/01掲載)